一週間のハイライト(4月26日~30日)
前週の流れを引き継いで、週初は下値を探る動きとなり、一時107.65円へ下落。
しかし株式市場やビットコイン市場が落ち着いた動きとなりリスクオフムードが広がらなかったことから、ドル円も買い戻しが入り108円台へ反発。
戻り売りに押される場面もあったものの、月末がらみの需要もあり、週後半には109円台を回復しました。
金曜日には109.37円と4月13日以来の水準まで上昇しています。
バブル崩壊は杞憂
先週の当レポートでは、「当面はビットコインの動きを注視し、ビットコイン急落、株安・円高、米国債利回り低下・ドル安という連鎖も想定しておくべき」と述べましたが、皮肉にも先週月曜日がビットコイン相場の大底(47075ドル近辺)で、その後はあれよあれよという間に急反発を演じ、金曜日には一気に58000ドル台まで駆け上がりました。
ビットコイン 調整は終了か
一週間で1万ドル以上、23%もの上昇です。潜在的な買い手(安値で買ってやろうと考えていた人々。筆者も実はその一人)がいかに多かったかを示していると思います。
史上最高値の64800ドルからの調整局面は、筆者の予想に反して早々に終わってしまった可能性が高く、こうなると買いそびれた人々(含む筆者)が買いに動き、遠からず高値をトライすると考えた方がよさそうです。
米国株はこの間34000ドル付近での高止まりとなり、米国10年債利回りも1.53%付近から1.65%付近へと持ち直し傾向。
ビットコイン発のリスクオフやバブル崩壊のシナリオは遠のき、ドル円も先々週の107.48円が当面の安値だった可能性が高まりました。
米国10年債利回りも持ち直し傾向
FOMCはハト派スタンス維持したが・・・
先週行われたFOMCは、予想通り現行の金融政策(FF金利目標誘導レンジ0~0.25%、月1200億ドルの資産購入)の据え置きを全会一致で決定。
声明はワクチン接種の進展で若干上向きのトーンになっているものの、完全雇用と2%超のインフレが軌道に乗るまで利上げしないというフォワードガイダンスに変更はなし。
パウエル議長の会見では、「インフレの一時的上昇は利上げを正当化しない。まだ資産購入ペース縮小について協議する時期ではない」と、引き続き慎重姿勢を強調しています。
にもかかわらず、金利先物市場は年内の利上げ確率を15%織り込み、来年中の利上げを90%、2023年3月までの利上げを完全に織り込んでいます。
FOMCがなんと言おうと、市場は米国の経済再開や景気回復に期待を持ち、インフレ上昇を予想しているわけです。
これはドルが潜在的な上昇力を有していることを暗示しています。
FF金利先物は利上げ前倒しを予想
ちなみに先週発表された米国1-3月期GDPは、前期比年率6.4%と予想(6.7%)をやや下回りましたが、直後の市場の反応は「金利上昇・ドル買い」。
ドルの地合いが悪ければ下落してもおかしくありませんでしたが、そうならなかったところを見ると、ドルの地合いは好転していると考えてよさそうです。
米国雇用統計に注目
今週の米国重要イベントは以下の通り。
日付 | 米国重要イベント | 前回 | 予想 |
---|---|---|---|
5/3(月) | 4月ISM製造業景況指数 | 64.7 | 65.0 |
5/3(月) | パウエルFRB議長スピーチ | – | – |
5/5(水) | 4月ADP雇用統計 | +51.7万人 | +88.8万人 |
5/5(水) | 4月ISM非製造業景況指数 | 63.7 | 64.2 |
5/7(金) | 4月失業率 | 6.0% | 5.7% |
5/7(金) | 4月非農業部門雇用者数 | +91.6万人 | +97.5万人 |
全体的に強めの数字が続きますが、中でも金曜日の米国雇用統計は、非農業部門雇用者数が100万人オーバーとなる可能性もあり注目です。
強い数字が出て素直にドルが上昇するようなら、調整局面終了、上昇局面再開と見ていいでしょう。
押し目買いスタンス
チャート上も、日足が一目均衡表の先行スパン(雲)の上限にぶつかったところで下げ止まり、反発したところ。
高値からおおむね38.2%押しで切り返したことで、適度なガス抜き調整に終わった可能性が高まりました。
ここから一気に前回高値の111円を抜いていくかどうかはともかく、当面は分厚い先行スパンにサポートされ、下値を切り上げていく展開が予想されます。
今週は日本の大型連休とあって上値には輸出企業などの売りオーダーが並んでいますが、節目の110円を試す可能性は十分あると見ています。
再び押し目買いスタンスで臨むのがよいでしょう。
一目均衡表の雲がサポートに
雨夜恒一郎氏のプロフィール
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから