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【米国株式市場は正念場 ドル円は104円割れへ】 2020年10月28日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(10月20日~27日)

欧米のコロナウイルス感染が急速に拡大する中、リスク回避の円買いが強まりました。

英国とEUの通商交渉が期限切れとなるリスクが高まったことも重石となり、ドル円は105円台を割り込み104.34円へ下落。

欧米の株式市場が大幅に下落し、リスク回避のドル買いも入ったことから、ドル円も一旦105.05円まで反発。

しかし安全通貨の円がドル以上に買われたことから、105円台は維持できず、再び104円台前半で安値をうかがう展開となっています。

NYダウは26日には一時1000ドル近い急落。その後も下げ止まらず、本稿執筆時点(28日夕方)では先物が一時2万7千ドル台割れと約1か月ぶりの安値圏で推移しています。

コロナ感染は第3波局面へ

米国の1日当たり感染者数は23日に8.5万人に達しました。7月の7.7万人を突破し過去最高を更新したことで、感染第3波が襲来しているとみられています。

フランスは5.2万人、英国は2.6万人に達し、イタリア・スペインも2万人を突破、いずれも過去最高を更新中です。

スペインでは非常事態宣言が出され、全土で夜間外出禁止、イタリアやフランスでも規制を強化する動きとなっています。

米国の感染拡大は欧州より深刻ですが、トランプ政権は都市封鎖などで経済を止めるつもりはなく、ワクチン開発や治療薬の確保によってパンデミックの緩和に努める意向です。

これから冬を迎えるにあたり、さらなる感染者数の爆発的増加は避けられないでしょう。

米国株式市場は弱気サイン

米国株はこれまでコロナ禍でも上昇してきましたが、9月のはじめに2万9千ドル台を付けたあとは高値更新がなく、10月も2万9千ドル台にわずかに届かず失速しました。

チャートの形状はダブルトップの天井形成、一目均衡表でも日足が先行スパンの雲を割り込んできました。弱気のサインであり、下値警戒感が高まる局面です。

NYダウ日足はWトップ 一目均衡表雲割れ 出所:NetDania

また今週は米国ハイテク大手GAFAの決算発表が29日に控えています。

コロナ禍でもリモートワークなどニューノーマルにおいて成長期待が高まりましたが、7-9月の株価上昇が速すぎただけに、期待ほどの決算が出なければ失望となる恐れもあります。

先週までに決算発表を終えたS&P500企業139社のうち、83.5%が予想を上回る利益を計上しているそうです。

そのわりにはNYダウもナスダックも高値更新していないのは、「相場の息吹」の考え方によれば、買われるべき材料が出ているにもかかわらず買われない、弱気のサインということになります。

大統領選挙を間近に控えたこの局面での株安は、想定以上のリスクオフを引き起こす可能性があり、要注意だと思います。

株式市場は今年最後の正念場を迎えると言っても過言ではありません。

大統領選挙は視界不良

米大統領選挙までいよいよ1週間を切りました。

世論調査では依然バイデン候補がリードを保っていますが、世論調査があてにならないことは4年前のヒラリーvsトランプの戦いで実証済みです。

リアル・クリア・ポリティクスの最新予想(獲得する選挙人)を見てみると、バイデン232に対してトランプ125となっており、一見圧倒的なバイデン優位に見えます。

しかし「トスアップ」つまり互角が181もあるのが曲者。例えば大票田のテキサス38、フロリダ29人、ペンシルベニア20、オハイオ18、ノースカロライナ15などが激戦州です。

州ごとに割り当てられた選挙人はその州の勝者の総取りなので、これらの州がトランプ側に傾けば、一挙に差が縮まり勝敗は分からなくなります。

市場はバイデン候補が勝ち上下両院とも民主党が制する「ブルーウェーブ」を想定していますが、実際は上院・下院も接戦となっており、大統領と上院・下院がどのような組み合わせとなっても不思議はありません。

さらに、今回は郵便投票4600万人を含む期日前投票が6900万人と過去最高になったとのこと。

最終的な投票者数は約1億5千万人と言われていますので、実に半数近くが期日前投票を済ませたことになります。郵便投票の集計は極めて時間がかかることから、接戦となった場合は混乱は必至です。

バイデン勝利なら株高とか、トランプ逆転なら株安とかいうことではなく、本当に最後までどちらかわからない、不透明ということがリスクオフにつながります。

為替市場ではジワリ円高か

最後に為替市場へのインプリケーションですが、通常のレベルのリスクオフならば、安全通貨のドルと円が並行して買われるため、ドル円は普通大きく動きません。

しかし想定を超える悪材料が出て極端なリスクオフとなった場合は、やはりドルより円が強くなり、ドル円は下落していくというのが冷静な読み筋です。

長い目で見ると、ドル円は3月以降、高値・安値を切り下げる緩やかな下落トレンドが続いています。

今週は105円台の重さを確認してから下げているため、次の動きは前回9月21日安値の104.00円を割り込む可能性が高いと思います。

選挙当日にかけては、下値警戒レベルを一段と高めておくべきでしょう。

3月以降緩やかな下落トレンドが続いている 出所:NetDania

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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