【PR】

【NYダウ3万ドル時代のドル円相場は?】 2020年11月25日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(11月18日~24日)

世界各地で新型コロナウイルスの感染が猛威を振るう中、米国の一日あたり感染者数が19.8万人に達し、累計の死亡者が25万人を突破

ドル円は一時103.65円と下値を探る動きとなりました。

しかし東京市場が勤労感謝の日で休場となった23日の海外市場で突然ドル買いが強まり、一気に104円台後半まで急騰。

米11月のPMI速報値が予想より強かったことや、英国のアストラゼネカとオックスフォード大が開発中のワクチンが最大90%の有効性を示したとの中間報告を行ったことも、反射的なドル買いにつながったようです。

さらに昨日24日には、NYダウがついに3万ドルの大台を達成。

これを受けてリスクオンの円売りや、米国債利回り上昇に伴うドル買いが入り、ドル円は104.76円まで続伸しました。

株高は本物か

さて、コロナ禍で先行きが不透明な中でのこの株高は果たして本物なのか?

感染が再拡大する中、実体経済とのかい離を指摘する声もありますが、株式市場は6か月から9か月先の景気を先取りするものであり、筆者は少なくともバブルではないと考えています。

現在の株高の原動力は2つあります。

一つ目はコロナ終結期待です。

今月に入って米ファイザー、モデルナ、英アストラゼネカから相次いで「ワクチン治験で好結果」とのグッドニュースが飛び込んできました。

ファイザーはすでにFDA(米食品医薬品局)に緊急使用許可を申請し、現在承認待ち。

10日に行われる有識者会合で承認されれば、早ければ12月11日にも接種が始まると言われています。

競合他社もまもなく追随するでしょう。

これらのワクチンの安全性や有効性に不安がないわけではありませんが、感染に対して事実上行動制限しか対策がなかったこれまでとは明らかに違う「新たなフェーズ」に入ったことは間違いなく、いよいよ「コロナ終結」という言葉も浮かんできます。

もう一つは強力な金融・財政政策期待です。

トランプ大統領は敗北をはっきり認めていませんが、政権交代をおおむね受け入れた模様。

予想よりごたごたが長引かず、バイデン氏が予定通り来年1月に大統領に就任すれば、巨額のインフラ投資をはじめとした大規模な財政出動が期待できます。

また新財務長官にはイエレン前FRB議長が起用されると報じられており、これも市場に好感されています。

労働市場の専門家であり、ハト派で知られるイエレン氏が、議長時代の腹心だったパウエル現議長と良好なコミュニケーションをとりながら、財政政策と金融政策を一体推進するとの期待が高まっているのです。

ドル安を生み出すポリシーミックス

FRBは現在のゼロ金利を2~3年先まで維持する姿勢を示しており、来月のFOMCでは追加緩和も視野に入っています。

バイデン新政権・イエレン新財務長官が拡張的な財政政策に打って出れば、FRBはさらなる金融緩和でそれにこたえるでしょう。

拡張財政(財政緩和)と金融緩和の組み合わせは、通貨下落(ドル安)につながるポリシーミックスです。

株高はリスクオンを通じてドル安要因と認識されていますが、ドル安もまた米多国籍企業のドル建ての収益増を通じて株高要因となります。

株高とドル安がスパイラルに進行する、米国にとっての好循環となる可能性も出てきました。

すでにドル独歩安は進行中

これまで株高局面では、安全通貨のドルと円が並行して売られ、ドル円はもみ合いというのがよくあるパターンでした。

しかしこれから数か月は、リスクオンのドル安に加えて、財政緩和・金融緩和のポリシーミックスにより、ドルの独歩安が鮮明になっていくのではないか。

実際、ドルの総合的な価値を示すドルインデックスは92ポイントを割り込んで年初来安値に接近しており、ドルの独歩安はすでに粛々と進行しています。

ドルインデックスは年初来安値に接近 出所:NetDania

G7通貨ではない人民元や、法定通貨でないビットコインがこのところ急騰しているのも、ドル独歩安がもたらす現象と考えると合点がいきます。

ドル円が年内に103円台を割り込んで年初来安値の101.19円を試す展開となっても全く不思議はないのです。

ドル安・人民元高 出所:NetDania

ビットコインは2万ドルに迫る 出所:NetDania

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
タイトルとURLをコピーしました