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【今注目される二つのドル安材料】 2020年12月2日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(11月25日~12月1日)

米感謝祭休暇をはさんで参加者の動意は乏しく、狭いレンジでの小動きとなりました。

株高・リスクオンによる全般的なドル安の流れで一時103.83円まで下押す場面もありましたが、一方では株高・米国債利回り上昇を背景としたドル買い・円売りもあり、104円台半ばまで反発し、小康状態となっています。

年内はレンジ取引か

ここ1か月103円台を試す展開が続いていますが、11月安値の103.18円を割り込むには至っておらず、先週からは値動きが104円付近に収斂し、持ち合いを形成しつつあります。

今年も残すところあと1か月を切りましたが、米国では感謝祭休暇が過ぎるとニューヨークのロックフェラーセンターに巨大なクリスマスツリーが飾られ、一気にホリデーシーズンに突入します。

金融市場では参加者が減りはじめ、次第に閑散となっていく時期です。

今週金曜日は米国11月の雇用統計が発表されますが、おそらくはこれが今年最後の重要イベント。

これで動かないようだと、いよいよ年末ムードが強まり、ドル円は居心地のいい104円近辺に収束していく可能性が高くなるでしょう。

ちなみに予想では失業率6.8%(前回6.9%)、非農業部門雇用者数が+50万人(前回+63.8万人)と鈍い回復にとどまる見通し

市場の関心がコロナ感染とワクチンに集中しているなか、よほど予想レンジから外れた数字が出てこない限り、相場へのインパクトは限られるでしょう。

全般のドル安は進行中

ただし、すでにユーロドルやNZドルが2年8か月ぶりの高値(ドル安値)をつけ、豪ドルやカナダドルもパンデミック後の高値をつけるなど、ドル円以外ではドルの下落がすでに鮮明になっています。

ユーロドルは節目の1.20ドルを突破 出所:NetDania

ドルの総合的な価値を示すドルインデックスは今日一時91.10ポイントまで下落し、同じく2年8か月ぶりの安値をつけました。

ドルインデックスは下落中 出所:NetDania

ドル円は、同じ安全通貨同士のドルと円が並行して動くため比較的動きが緩やかですが、中長期で見ると、やはりドル安傾向が続いていることが分かります。

今後もドル全体が下落していくとすれば、ドル円だけがそれに逆らって上昇することは極めて難しいでしょう。

来年まで視野に入れると、ドル円もまだ下落余地があるのです。

ドル円は緩やかな下落トレンド続く 出所:NetDania

ではこのドル安の原因は何でしょうか。

ドル安材料はいろいろとありますが、最近市場が新たに意識しはじめた材料は二つあります。

双子の赤字

一つ目は、米国の双子の赤字(貿易赤字と財政赤字)が持続不可能な水準まで膨らんでいることです。 米国8月の貿易赤字は-670億ドルと過去最大(2006年8月-676億ドル)に迫りました。

今週金曜日には10月分の貿易収支が発表されますが、予想は-650億ドルと高水準で、過去最悪を更新する可能性もあり注意を要します。

財政赤字はさらに深刻で、コロナ対策で3兆ドルもの財政支出を行った結果、今年の対GDPでの赤字比率は18.7%(IMF予想)と先進国の中で突出します。

来年は民主党のバイデン大統領が積極的な財政政策を打ち出し、財政赤字はさらに拡大する見込みです。

財政赤字は貿易赤字の遠因であり、貿易赤字は、理論的に海外から同額の資本を輸入する(つまり海外の投資家に米国の資産を買ってもらう)ことによって賄わなければなりません。

しかし赤字がこれだけ巨額となると、投資家が買いたいと思う額を上回り、赤字ファイナンスに支障が生じてしまう恐れがあります。

となると、投資家が追加でドルを買ってもよいと考える水準までドル安が進行せざるを得なくなるのです。

双子の赤字は最近あまり問題視されてきませんでしたが、コロナをきっかけにその悪化ぶりが改めて注目され始めたのです。

イエレン財務長官

二つ目はイエレン元FRB議長の財務長官就任です。

バイデン次期大統領は今週正式にイエレン氏を次期財務長官に指名しました。

イエレン氏は民主・共和両党から高く評価されており、上院議会で問題なく承認される見通しです。

初の女性財務長官の誕生はほぼ確実となりました。

イエレン氏はFRB議長時代ハト派で知られた人物であり、今回のコロナ禍による経済危機に対処するため、積極的な財政政策を実行するとともに、FRBと協調して金融緩和政策の長期化を演出すると見られます。

FRBはすでに2~3年先まで利上げしない時間軸を示していますが、今月15~16日のFOMC会合では、さらなるフォワードガイダンスの強化や量的緩和の拡充などの追加緩和も視野に入れています

ドル下落トレンドは継続へ

今後数年間、米国はイエレン財務長官と、イエレン氏のかつての腹心であったパウエルFRB議長のもと、強力な財政出動金融緩和にまい進するでしょう。

双子の赤字拡大と超低金利長期化という逆風下でドルが持続的に上昇するシナリオは描きにくく、来年はドルインデックスで10%以上の下落、ドル円では100円割れまであってもおかしくないと見ています。

年内はレンジ取引が続くかもしれませんが、下値警戒だけは怠らない方がよさそうです。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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