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【米国のリスク高まり円が再び安全通貨に】2020年4月1日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(3月26日~4月1日)

パニック的な株安連鎖にひとまず歯止めがかかったことから、流動性危機に備えたドル需要も一服し、ドル円は110円台を割り込む展開。

木曜日に発表された米失業保険申請件数が過去最悪となったことや、米国内の新型コロナウイルスの感染者数が中国を抜いて世界最多になったことからドルを手放す動きが強まり、107.12円まで下落しました。

日本でも首都圏で外出自粛要請が出たことから警戒感が強まり、リスク回避による円買いも同時に進行しました。

現金化によるドル需要は一巡

世界の株式市場を揺るがしたコロナショックはひとまず一服。

NYダウ平均は底値の18185ドルから一時22600ドル近辺まで急反発し、別名「恐怖指数」のVIX指数は高値85ポイントから50ポイント台まで低下しました。

NYダウ平均は投げ売り一服 出所:NetDania

VIX指数はピークアウト 出所:StockCharts.com

FRBの金融緩和や2兆ドル規模の経済対策が矢継ぎ早に打ち出されたことで、市場も幾分冷静さを取り戻しつつあります。

あらゆる資産を投げ売りし現金化する動きはひとまず一服する一方、割安となった株を物色する動きも入ってきています。

株式市場の嵐は過ぎたと安堵するのはまだ早いと思いますが、パニック的な投げ売りの連鎖にとりあえず歯止めがかかったとすれば、為替市場におけるドル独歩高も一段落と見るのが妥当でしょう。

また3月期末、四半期末を通過したことで、現金化や流動性確保によるドル需要も緩和していくと見られます。

米国の危機

一方、新型コロナウイルスの感染は特に米国で爆発的に拡大しており、感染者数は3月31日の時点で18万人を突破、死者数も4千人を超えました。

トランプ政権は、今後死者が10万人から24万人にのぼる可能性があると警鐘を鳴らしています。

大都市のロックダウンも解除の見通しが立たず、経済は控えめに言っても麻痺状態。

先週発表された新規失業保険申請件数は328.3万件と記録的な悪化となり、過去最大だった1982年の69.5万件の5倍近くに達しました。

今週金曜日に発表される3月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数は10万人のマイナスが予想されていますが、これはまだ序の口で、今後はこれまで見たことがないほど壊滅的なデータが次々と出てくることを覚悟しなくてはなりません。

もちろん経済が打撃を受けるのは世界中どこも同じですが、中国がいち早く感染の封じ込めに成功したと見られることから、市場の関心はどうしても米国に集中してしまいます。

コロナショック前の米国経済は堅調だっただけに、落差もまた大きいのです。

世界最悪の感染国であり、今後景気の急激な落ち込みが確実な米国、そしてその通貨であるドルはもはや安全な逃避先ではありません。

日本が再び逃避先に?

米国はこのように危機的状態にありますが、かといって欧州(英国・スイスを含む)も同じような状況ですし、資源国や新興国も逃避先としては論外です。

となると、市場参加者の目には、感染が広がっているとはいえ2千人程度に過ぎない日本が比較的安全と映るのではないでしょうか。

つまり円が「一周回って」安全通貨として消去法的に買われる可能性が浮上してきたのです。

金利差が消失

しかも、現在は世界中の金利が一斉に低下した結果、キャリートレード、つまり低金利通貨を売って高金利通貨を買うことにより金利差を稼ぐということが難しくなってしまいました。

多少の金利差があったとしても、そもそも為替市場のボラティリティーが高いため、金利差相当分など簡単に吹っ飛んでしまいます。

キャリートレードが下火となると、低金利通貨の代表格である円に対する売り圧力は小さくなります。

また内外金利差がほとんどないため、日本の機関投資家にとっても、円を売って外債などに投資するメリットはなくなってしまいます。

ドル円は下落局面へ

前回の当コラムでは、「現金需要によるドル独歩高は長続きしない」と述べましたが、すでに情勢は変わりつつあり、ドル円は再び下落局面に入った可能性が高いと見ています。

テクニカルにも、コロナショック直前高値の112.23円を抜け切れず反落したのは弱気のサイン。

激しくもみ合っていた110円台以上へ戻ることは難しいと見られ、戻り売りスタンスで臨むべきと考えます。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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