【来年もドル弱気で行きます】2020年12月23日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(12月16日~22日)

注目のFOMCは、資産購入規模の拡大や年限の長期化などの追加緩和策を見送り、声明もさほどハト派的でなかったとの受け止め方だったため、ドル円は一旦103.92円まで反発。

しかしパウエルFRB議長が会見で「政策目標の達成に強くコミット」と強調すると、ドル売りが再開し103円台割れ、一時102.88円と今年3月以来の安値をつけました。

その後はクリスマス休暇を控えてのポジション調整から買い戻しが入り103円台を回復

英国でコロナウイルスの変異種が広がっていることを懸念して、株式市場で調整ムードが広がると、リスク回避のドル買いも入り、103.89円まで反発しました。

来年もドル安を予想する理由

さて今年も残すところあと1週間あまりとなりました。

コロナに始まりコロナに明け暮れた一年でしたが、市場では意外にも株価が世界的に上昇し、為替市場ではリスク選好型のドル安が進行しました。

では来年はどんな年になるでしょうか。

筆者は、ドル安が一段と進行すると予想しています。

主な理由は、FRBの強力な金融緩和姿勢です。

今回のFOMCでは大きな政策変更はなく一見肩透かしですが、声明を前回と比べてみると、資産購入に関するフォワードガイダンスが書き換えられたことがわかります。

前回までは、「FRBは今後数カ月にわたって、米国債およびエージェンシーローン担保証券の保有を少なくとも現在のペースで増やし、それによって家計や企業への信用の流れを支援する」でした。

声明全文はこちら

今回の新たなフォワードガイダンスは、「最大雇用と物価安定の目標に向けてさらに著しい進展が見られるまで、FRBは引き続き米国債の保有を少なくとも月800億ドル、およびエージェンシーローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル増やす」です。

声明全文はこちら

前回までは資産購入は今後数か月、すなわち「時限的措置」というニュアンスだったのに対し、今回ははっきり「最大雇用と物価安定の目標」を引き合いに出しています。

FRBの「二大責務」を果たすため、フォワードガイダンスが大幅に強化かつ具体化されたのです。

「さらに著しい進展が見られる」とはどのような状態を指すのかは明確にされていません。

この点についてパウエル議長は会見で、「具体的なマーカーは示さないが、目標に相当接近する必要がある」と述べています。

最大雇用とは失業率4%前後とみられ、物価安定の目標はコアインフレ率2%ですが、今回のFOMCメンバーの予想によると、失業率が4%まで低下し、インフレ率が2%に達するのはおおむね2023年。

ということは少なくともあと3年は現状レベルかそれ以上の資産買い入れを続ける公算が大きいことになります。

FOMCメンバーの失業率予測 出所:FOMC付属資料

FOMCメンバーのインフレ率予測 出所:FOMC付属資料

またメンバーの金利予想・ドットプロットチャートも、前回9月からわずかな下方シフトにとどまったものの、依然として2023年末まで利上げなしの予想が大半を占めています。

ドットプロットチャート 出所:FOMC付属資料

莫大な双子の赤字を抱える米国の政策金利が少なくとも2023年までゼロにとどまり、かつそれまで毎月少なくとも1200億ドルもの資産購入が継続されるとなると、ドルが持続的に上昇するというシナリオを描くことは非常に困難です。

株高はドルを下落させる

すでに史上最高値を更新している米国株式市場は、コロナ禍の悪影響を驚くべき速さで消化し、あとはコロナ終息と経済の回復を待つだけという、ダウンサイドがない極めてポジティブなセンチメントにあります。

また米議会は9000億ドル規模のコロナ対策法案を可決しました(注:トランプ大統領が署名を渋っているとの報道もあり成立はまだ流動的)。

強力な金融緩和と空前規模の財政拡大、それにコロナ終結期待も加わり、来年も株式市場の見通しは明るいと思います。

バイデン新政権の経済政策はまだはっきりしませんが、デジタル化、脱炭素(新エネルギー)、脱中国サプライチェーン構築といったテーマは定まっており、株式市場が「いいとこどり」できる要素は十分あります。

現在のゲームのルールによれば、株高はリスクオンを通じて安全通貨のドルを下落させます。

ドルインデックスのチャートを見ると、ドル高時代がすでに終わりを告げつつあることが感じられますが、もしドルが下落トレンドに入ったとすれば、着地点は2014年から15年にかけてのドル高の起点である80近辺になると思います。

現在の水準から10%あまりの下落です。

ドルインデックス(長期) 出所:NetDania

ドル円は安全通貨同士で動きにくいと言われていますが、ドルが全般に下落する中では連れ安は避けられないでしょう。

来年は100円割れも想定しておくべきと考えます。

なお本稿を持ちまして年内のレポートは最終となります。3月の連載開始以来ご愛読いただき誠にありがとうございました。

新年は1月6日からスタートとなります。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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