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【中期予想:コロナ変異種と米実質金利低下でドル下落へ】 2021年1月6日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

一週間のハイライト(12月30日~1月5日)

正月休み明け4日の東京市場では、「菅首相が週内にも緊急事態宣言発令検討」との報道を受けてリスク回避の円買いが強まり103円台を割り込む展開。

5日には一時102.61円まで下落しました。

もちろんこれは去年3月以来の安値です。

株式市場では、NYダウが一時3万ドル台を割り込むなど軟調な滑り出し。

日経平均も昨年末から3日続落とさえない展開でした。

コロナ感染拡大が国内外で続いていることや、米国ジョージア州の上院選2議席の決選投票を控えていることから、やや慎重ムードが漂っています。

変異種の出現で株式市場は調整へ?

コロナワクチンの接種開始を受けて楽観ムードが強まっていた株式市場ですが、感染力が70%強いといわれる変異種の出現をきっかけに、様相が変わりつつあります。

イギリスのコロナ感染拡大は、ハンコック保健相の言葉を借りれば「Out of control=制御不能」。

現在一日あたり新規感染者数が5万人超に上っており、ジョンソン首相はイングランド全域で3度目の全面ロックダウンに突入することを決定。

ドイツでも瞬間風速で一日5万人近い新規感染が出ており、ドイツ全域のロックダウンが延長されました。

日本も日々過去最大の新規感染者数を更新しており、7日にも緊急事態宣言が発令される見通しです。

一時減少傾向にあった米国の新規感染者数も、直近では再び増加傾向となり、一日あたりの新規感染者は30万人に迫っています。

すでに変異種が蔓延していると見たほうがいいでしょう。

コロナ禍はこれまで大方の予想のはるか上を行く被害をもたらしてきましたが、これからもさらに想定以上のパンデミックとなる恐れがあります。

これまで開発されたワクチンが変異種に対して有効でない懸念も指摘されています。

コロナ終息は再び地平線のかなたに遠ざかったと思われ、楽観=リスクオンに振れていた市場心理が再び悲観=リスクオフに引き戻されることを覚悟しておく必要があるでしょう。

3月のようなクラッシュは予想していませんが、米国株式市場が様々な「いいとこ取り」をしながら高値を買い上がったことは否めず、近いうちに中規模の調整局面が訪れてもおかしくありません。

ドル安予想が支配的

では近々株式市場が調整局面を迎えるとすると、為替市場の反応はどうなるでしょうか。

最近の傾向から言えば、株高でリスクオンだとドル売り・円売り、株安でリスクオフだとドル買い・円買いでした。

いずれのケースでもドルと円が並行して動くため、結果的にドル円はあまり動きませんでした。

しかし、現在市場参加者の圧倒的多数がドル安を予想しはじめており、リスクオフでもドルはあまり買われず、円だけが買われる、つまりドル円が下落する可能性が高まっています。

米国の実質金利低下

市場参加者が今年ドル安を予想しているのはなぜでしょうか。

最近になって市場がにわかに気にし始めたドル安材料は、ずばり「米国の実質金利の低下」です。

実質金利の低下は、二つの要因で発生します。

一つはゼロ金利の長期化です。

FRBは物価上昇率や労働市場が正常に戻ると確信できるまで、ゼロ金利を継続する意向をフォワードガイダンスとして示しており、政策金利は向こう2~3年は上がらないと考えられています。

今週金曜日には12月の米国雇用統計が発表されますが、非農業部門雇用者数は+5万人と前回の+24.5万人から大幅に減速すると予想されており、下振れして再びマイナスとなる可能性もあり得ます。

失業率も6.7%から6.8%へ悪化が見込まれており、労働市場にも「第二波」が襲ってくる気配なのです。

そうなると米国の長短金利は再び低下し、ゼロ金利長期化観測は一段と強まるでしょう。

もう一つの要因はインフレ懸念です。

現在の金融市場は、FRBによる巨額の資産買い入れを受けて、ドルがあふれかえっている状態。

資産買い入れとはとどのつまりドル紙幣の大増刷であり、お金の価値は希薄化します。最近の暗号資産(ビットコインなど)の価格急騰はこれが影響していると思われます。

加えて、大規模な経済対策で米国2020年会計年度の財政赤字は3.1兆ドル、名目GDPの15%と戦時中並みとなりました。

2021年度は9000億ドル規模の追加経済対策でさらに悪化が不可避です。量的緩和でお金の価値が薄まるとともに財政支出で膨大な需要が作られるわけですから、インフレにならない方がおかしい。

実際、市場の予想インフレ率は上昇しています。市場の予想インフレ率は、米国10年債と物価連動債の利回りの差である「ブレークイーブンインフレ率」で測ることができますが、これが直近で2.0%を突破し2018年以来の高水準となりました。

「実質金利=名目金利-予想インフレ率」ですから、予想インフレ率が上昇すれば当然実質金利は低下し、米国の場合マイナス幅が拡大していくことになります。

日本やユーロ圏も米国同様ゼロ金利ですが、インフレ懸念がないため実質金利は米国より高くなります。

巨額の双子の赤字のファイナンスを他国からの投資資金流入に頼る米国の実質金利が他国より低くては、ドルが持続的に上昇するシナリオは描けません。

むしろ海外投資家が買ってもいいと思う水準までドルが下落すると考えるのが自然です。

株価調整・ドル安を警戒

というわけでまとめると、

  1. コロナ変異種の蔓延で株式市場が調整局面に入るリスク
  2. 雇用統計が下振れし、ゼロ金利がさらに長期化するリスク
  3. 米国のインフレ懸念が高まり実質金利が低下するリスク

これらを踏まえると、当面ドルは下落余地を探る展開を想定しておくのが賢明でしょう。

ユーロドルは1.25ドル、ドル円は100円をターゲットに、ドル売りスタンスで臨みたい局面です。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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