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【FOMCとGDPはドル下落再開のきっかけに】2021年1月27日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(1月20日~26日)

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、株式市場は神経質な展開。

NYダウは20日に31188.38ドルと終値ベースで最高値を更新したものの、その後は伸び悩み、一時30600ドル付近まで反落する場面もありました。

ドル円は104円に近づくと戻り売りが出てくる一方、103円台前半では買い戻しが入り、結局は103円台でのレンジ取引が続きました。

コロナ終息期待はまだ早い

世界のコロナ感染者は累計で1億人に達し、いまだピークアウトの兆しは見えません。

死者数は210万人を突破し、一日あたりでは今も右肩上がりで増え続けています。

日経新聞1月26日

米国の一日あたり新規感染者数は、一時の30万人からは減速したものの、依然20万人近い水準で推移しており、収束には程遠い状況。

ワクチンの供給は当初予想より遅れていて、26日までに1回目の接種を受けた人はおよそ2千万人にとどまっています。

バイデン大統領は、夏までに約3億人の米国民全員にワクチンを供給する目標を発表しましたが、メーカーの供給能力に限界があるうえ、変異種に対する効果に懸念が生じており、集団免疫の獲得へのハードルは高いようです。

株式市場の調整に注意

株式市場はワクチン接種開始によるコロナ制圧をずいぶん先取りして上昇していますので、ワクチンの普及やその効果の前提が崩れるようだと、短期的には調整局面入りのリスクが生じます。

もちろん中長期的に見れば、コロナ禍はいつか終息しますし、経済もいずれはコロナ以前の水準へ戻るでしょうが、短期的にはいつガス抜き調整があってもおかしくないと思っていた方がいいでしょう。

またバイデン新政権が発足したことで、これまで株価を押し上げてきた政策の期待が一旦出尽くしとなることも想定しておかねばなりません。

株式市場に先行して上昇していた暗号資産(ビットコインなど)が一足早く調整局面に入っているのも気になるところです。

ビットコインは調整局面 出所:NetDania

株価が下落した場合、ドル円への影響はどうなるでしょうか。

軽度のリスクオフであれば、ドルと円が並行して買われることにより動きが相殺されることが多いですが、リスクオフの度合いが強くなるほど、より安全な円の方が買われ、ドル安・円高に振れる可能性が高くなるでしょう。

FOMCはテーパリング観測を打ち消しへ

さて、昨日から今年最初のFOMCが開催されており、結果は日本時間で明日午前4時ごろに判明します。4時半ごろからはパウエル議長の記者会見も行われます。

今回は主要な金融政策は現状維持の公算で、「最大雇用と物価安定の目標に向けてさらに著しい進展が見られるまで、少なくとも月に1200億ドルの債券買い入れ(量的緩和)を継続する」とするフォワードガイダンスも据え置かれる見通しです。

前回12月のFOMC声明はこちら

先週の当コラムでも述べましたが、FRBは1月上旬に一部メンバーを通じてテーパリングの観測気球を上げてみたものの、市場が予想以上に反応(長期金利が上昇)してしまったため、ブレイナード理事やパウエル議長が慌てて火消しに回ったという一幕がありました。

今回のFOMCでは、テーパリングに関して何らかの示唆があるでしょうか。

筆者は、パウエル議長が記者会見でテーパリングなど出口戦略は「時期尚早」と明確に否定してくると予想しています。

前回12月に公表されたFOMCの付属資料によれば、失業率がコロナ以前の水準に低下し、インフレ率(コアPCE)が目標の2%に達するのは2023年と予想されています。

目標に向けて「著しい進展」が見られないなかで債券買い入れを減額するのは、フォワードガイダンスに反します。

実際、市場もテーパリング警戒を解きつつあり、年明けにいきなり1.19%まで急上昇した10年債利回りも、今週は1.03%台まで低下しています。

米10年債利回りは上昇を帳消しに

声明や議長会見で早期のテーパリング開始に否定的な姿勢が示されれば、利回りは急上昇前の水準、すなわち1%割れへ低下していくでしょう。

米国債利回りの動向はドル円にダイレクトな影響を及ぼします。

利回りが1%割れなら、ドル円も上昇前の水準である102円台へ下落していくと見るのが整合的です。

GDPは上振れ・下振れいずれもあり得るが・・・

今週のもう一つの注目イベントは、28日に発表される米国10-12月期のGDP速報値です。

昨年のGDP成長率は、コロナの影響で4-6月期に-31.7%(前期比年率・以下同)と歴史的な落ち込みを記録した後、7-9月期に+33.1%とV字型の回復を果たしました。

今回の10-12月期の市場予想コンセンサスは+4.4%となっていますが、アトランタ連銀GDPNowの最新予想では+7.5%と高めになっています。

プラスマイナス30%もの幅で経済が乱高下した後だけに、今回の数字は読みにくく、予想から大幅に上振れもしくは下振れしても不思議はありません。

直後の反応は当然、上振れなら金利上昇・ドル上昇、下振れなら金利低下・ドル下落となるでしょう。

ただし、もしもGDPが上振れしたとしても、しょせんは過去の数字であり、長期的なドル安トレンドを転換させるとは思えません。

また10-12月が良くても、次の1-3月は厳しいとの見方から、手放しで喜ぶことはできません。

10-12月の前半は経済再開で明るいムードでしたが、後半は変異種の出現で世相が再び暗くなりました。個人的には大幅な下振れの可能性も十分あると思います。

その場合はテーパリング観測が完全に胡散霧消し、利回り1%台割れ、ドル円の下落トレンド再開のきっかけとなるでしょう。

アップサイドのリスクは限定的ですが、ダウンサイドのリスクは予想がつきません。戻り売りスタンスを継続し、かつ下値警戒を高めておくべきと考えます。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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