【楽観と悲観のはざまで】2020年4月15日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(4月8日~4月15日)

ニューヨーク州の新型コロナウイルス感染による死亡者数が過去最高になったことや、米新規失業保険申請件数が660.6万件と予想の550.0万件を上回ったことから、ドル売りが強まりました。

110円台に届かなかった失望感もあり、イースター休暇をはさんだ薄商いの中、一時106.98円と3月18日以来の安値をつけています。

悲観か楽観か

引き続き新型コロナウイルスをめぐる報道に一喜一憂する展開が続いています。

イタリアやフランスではロックダウンが5月まで延長される一方、感染者の増加カーブがフラット化しているなど、好材料と悪材料が混在。米国も同様の状態で、市場心理は悲観と楽観の間で揺れ動いています。

また悲観と楽観の度合いは市場によって温度差が現れています。

株式市場は楽観的

まず株式市場は楽観的になりつつあります。

NYダウは一時2万4千ドル台に乗せ、すでにコロナショック後の下落幅の半値戻しを達成しています。

株式市場の不安感を反映するVIX指数も40ポイントを割り込み、ピークの半分以下まで低下しました。

市場を覆っていた先行き不安が後退し、参加者が冷静さを取り戻しつつあることがうかがえます。

前回も述べましたが、株式市場は6~9か月先の景気を先読みするといわれています。

中国武漢がウイルスの封じ込めに成功した先例を参考とすれば、NY、ロンドンなど欧米大都市の感染ピークアウトまで早ければ1~2週間。

もし3か月で終息宣言が出るとすれば、6~9か月先には景気がV字型に回復し始めるという楽観的なシナリオが描けます。

ワクチンや特効薬が開発されるか、その観測が高まれば、楽観の度合いはさらに強まるでしょう。

NYダウは半値戻しを達成 出所:NetDania

商品市場は悲観

一方で、とことん悲観的な市場もあります。

それは商品市場です。

一時は29ドル台まで回復していた原油相場は現在20ドル台と、コロナショック発生後の安値圏で推移しています。

石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は、産油量を日量970万バレル削減することで合意しましたが、ほとんどサポートとはなっていません。

この程度の減産では厳しい景気後退による需要減を補えないと見ているようです。

原油先物は20ドル割れ 出所:NetDania

逆に金相場は1700ドルを突破し2012年以来の高値をつけています。

3月には現金化の動きで急落していましたが、それを一気に取り返して高値を更新しているのだからすごい買われ方です。

これは、先行き不安や景気後退懸念を背景に、有事に強いとされる金が逃避資金の受け皿となっていると解釈できます。

つまり金市場も事態を悲観的に見ていることになります。

有事の金買い 出所:NetDania

金利市場も悲観

金利市場も悲観的です。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)では、米国の政策金利であるFF金利の先物が取引されており、その価格から市場が予想する将来のFF金利がわかります。

FF金利はゼロ%(正確にはゼロ~0.25%のレンジ)まで引き下げられましたが、市場は来年3月までゼロ金利据え置きが100%確実と予想しています。

筆者は長らくFF金利先物をウォッチしていますが、これほど市場が確信しているのを見るのは初めてです。それだけ景気見通しが厳しいということになります。

今後1~2か月米国では見たことのないほど悪い景気指標が次々と出てきます。

パンデミックが発生して以来3週間で、新規の失業保険申請者数は約1700万人にのぼりました。

先日発表された3月の雇用統計は非農業部門雇用者数が70.1万人のマイナスと記録的な悪化となりましたが、これはほんの序の口で、4月は数百万人のマイナスが出てもおかしくありません。

失業率が10%を超えるのも時間の問題でしょう。

今年一年の米国のGDPは3~4%のマイナスになるとの予想も出ています。

確かに利上げは1年以上先になりそうな雲行きです。

現時点ではFRBがこれ以上利下げする(マイナス金利を採用する)可能性は低いと言われていますが、上記のような数字が現実となれば、マイナス金利を織り込みに行く動きも出てくるでしょう。

為替市場は方向感失うか

では為替市場はどうでしょうか。為替市場のセンチメントは移ろいやすく、視点は短期的です。

また為替市場は常にほかの市場を見ながら動いており、独自の動きをすることはあまりありません。

前述の通り、ほかの市場のセンチメントがまちまちであることを考えると、為替市場はしばらく「先行き期待」と「目先悲観」の間に挟まれることになりそうです。

目先悲観的な材料が出てきても、株式市場が中長期的な景気回復期待で上昇している限り、一方的な円高にはなりにくい。

逆に株式市場がいくら上昇しても、これから出てくる悲惨な景気指標を思うと、積極的にリスクテイクする気にもなれず、円安にもなりにくい。

また市場があまりにも激しく動いた後は、参加者が疲れ果ててしまい、相場がレンジの中段で方向感を失うのはよくあることです。

3月に上下10円と激しく動いたため、市場参加者もいわば虚脱状態に陥っており、今はあまり動きたくないかもしれません。

101-111円台のレンジの中間が106-107円程度なので、今後しばらくは、現状レベルを中心に徐々に振れ幅が小さくなっていくような展開になるのではないでしょうか。

この先どんな悪材料が飛び出してくるかわからないので、バイアスとしては円強気(ドル円弱気)を維持しますが、当面は一方向に動きづらい局面と見ます。

あまり深追いをせず、小刻みな売買に徹するのが賢明です。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。
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