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【どちらが勝つかはさほど問題ではない 最悪なのは「決まらないリスク」】2020年11月4日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(昨日まで)

リスク回避のドル高・円高の中、ドル円は依然104円台で方向感を欠く動き

29日には104.03円と104円台割れを試す場面もありましたが、米国株式市場が下げ渋る動きとなると、104.95円まで買い戻されました。

ただ大統領選など重要イベントを控える中、105円に乗せることもできず、104円台半ばへ押し戻されました。

やはり世論調査は当てにならなかった

さて世界が注目の大統領選挙、本稿執筆時点(日本時間11月4日19時)では結果は明らかになっていませんが、バイデン238対トランプ213と、バイデン氏圧倒的優勢との予想に反して大変な接戦となっています。

4年前と同じで、世論調査はあてにならないことが実証されました。

 

出所:Yahoo!ニュース

流れから言えば、フロリダ、オハイオ、テキサスなど激戦州を制したトランプ大統領が優位となっており、残る大票田のペンシルベニアで勝利すれば再選の確率が高くなります。

これに対する市場の反応は、当初「番狂わせのトランプ勝利」を想起したリスク回避のドル買いで105.30円台まで急騰したものの、少しタイムラグがあって安全通貨の円も買われたため、現在は104.90円付近で小康状態となっています。

日経平均は一時上げ幅500円を超す大幅高、米株はNYダウ先物が下落する一方、ナスダック先物は上昇と今のところマチマチの反応です。

トランプ再選ならバイデントレードの巻き戻しで下落なのか、それともバイデン氏逃げ切りでリスクオンなのか、さしもの株式市場も読み切れていないようです。

米国の主要メディアはまだ当選確実を報じていません。

大統領が決まらないリスク

今回の投票は郵便など事前投票が1億票に上っており、いつどの程度開票結果に反映されるのか不透明です。

すぐに開票を始めた州もあれば、まだ投票を受け付けている州もあり、有効・無効の判断も州によってバラバラです。

集計は困難を極めると見られ、正確な得票率を得るには数日間かかるでしょう。大統領選挙はどちらかの候補が敗北宣言をした時に決着がつきます。

しかし逆に言えばどちらの陣営も敗北宣言をしなければ、最終的な得票率が確定するまで勝者が決まらないことになります。

仮にトランプ大統領が勝利した場合でも、バイデン候補が郵便投票の集計が終わるまで敗北宣言をしない可能性があります。

逆にバイデン候補が勝利した場合も、あのトランプ氏が簡単に敗北宣言をするとは思えません。

むしろ勝利宣言をしてホワイトハウスに居座り、郵便投票の結果が不当として最高裁に提訴する可能性が大です。

いずれにせよ僅差になることは確実なので、一両日中にどちらかが敗北宣言をして決着がつく可能性はむしろ小さいでしょう。

大統領がすぐに決まらない政治的空白ができることになれば、市場にとって大きな不確実性が生まれることを意味します。

それぞれの支持者が(ただ騒ぎたいだけの者も含めて)結果を不満として暴動略奪を行うリスクも想定しておかねばなりません。

もつれた場合は年越しも

今後の流れですが、12月の第2水曜日の次の月曜日(今年は12月14日)に、州に割り当てられた選挙人がいずれかの候補に投票します。

これは選挙人投票とよばれ、通常だと選挙人は11月3日の一般投票の結果通りに形ばかりの投票を行います。

しかし最終的な集計がここまでに終わらないとすると、結果が確定していない一部州の選挙人が投票できず、いずれの候補も過半数(270人)に達しないという事態になります。

こうなった場合、最後の手段として、来年1月3日に召集される新たな議会で下院が新大統領を選出することになります。

全米50州に一票ずつ割り当てられ、過半数の26票以上を獲得した候補が当選することになります。

この結果がわかるのが1月6日です。

もつれにもつれた場合、年明けまで大統領が決まらないというリスクもあるのです。

これが市場にとって最悪のシナリオとなるでしょう。

リスクオフの中での米国敬遠

大統領がすんなり決まらないと仮定すると、為替市場への影響はどうなるでしょうか。

私は、投資家はリスクを回避するとともに、一時的にせよ米国を敬遠すると思います。

リスクオフの中でドルを敬遠した資金はユーロや豪ドルには向かえませんから、円が消去法的に買われることになるでしょう。

ドル円下落、クロス円も下落です。

先週も述べましたが、長い目で見ると、ドル円は3月以降、高値・安値を切り下げる緩やかな下落トレンドが続いており、現時点でもそのパターンは崩れていません。

ドル円は引き続き弱気バイアス、戻り売りスタンスで臨むべきと考えます。

ドル円は下落トレンドのさなかにある 出所:NetDania

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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