これまで「NYボックス」「2trendy」と、アメリカのカリスマトレーダーであるロブ・ブッカー氏のトレードスタイルを紹介してきましたが、ここに第3弾として「アリゾナルール」というトレードスタイルを紹介してみたいと思います。
「アリゾナルール」で絶対に必要となるテクニカル・インディケータが「移動平均線」です。ご存じの通り、インディケータの基本中の基本で、多くのトレーダーが愛用しています。
移動平均線とローソク足の見方は非常にシンプルで、ローソク足が移動平均線より上にある時の相場は強き相場で、ローソク足が移動平均線よりも下にあるときは弱気相場です。
また、移動平均線が右肩あがりなら上昇トレンド、右肩下がりなら下降トレンド、移動平均線に傾きが見られなかったら、レンジ相場ということになります。
移動平均線はパラメータという数値によって、短期移動平均線、中期移動平均線、長期移動平均線というふうに分類できますが、数字がこの数字だから長期移動平均線、あの数字だから短期移動平均線と決まっているわけではありません。
人によっては、50日移動平均線を長期移動平均線といったり、中期移動平均線といったりしています。アリゾナルールで使用する移動平均線は3本です。
長期からいうと、800SMA、200SMA、67EMAの3本です。ちなみに、SMAとはSimple Moving Average、つまり、単純移動平均線のことです。
EMAは、Exponential Moving Average、つまり、指数平滑移動平均線のことです。なぜこの3本を選んだのかといえば、ロブ・ブッカー氏が検証に検証を重ねた末に、この3本が組み合わせとしては、もっともいいからです。
なかでも、800SMAと62EMAが重要です。800SMAとは、ふだんあまり使わない移動平均線だと思いますが、1年を200日と換算すると、約4年分のデータの平均ということになります。
相当に長期にわたるラインです。一方、62EMAは、フィボナッチリトレースメントと強い関係があります。
たとえば、フィボナッチリトレースメントのなかには61.8という数字がありますが、これがいわゆる黄金比率の数字です。この数字を四捨五入すると62になります。
そのため、62EMAをアリゾナルールでは使います。なぜかといいますが、上昇していたローソク足が62EMAにあたって跳ね返されたり、その逆に62EMAで頭打ちしたりと、不思議と、節目になることが多いわけです。
この二つの移動平均線、800SMAと62EMAで相場の動きを説明することができます。ロブ・ブッカー氏の検証によると、相場はトレンドが起きたり、収束したりと繰り返す性質がありますが、為替レートは必ず800SMAに帰ってくることが多いです。
トレンドが発生すると62EMAへと向かいますが、トレンドが終わると同時に再び800SMAにどもっているといいます。
つまり、為替レートの動きは、800SMAと62EMAのどう動いているのか、それに200SMAがどう絡んでくるかをみることによって、為替レートの動きはすべて説明がつくと、ロブ・ブッカー氏は断言しています。
それによって、アリゾナルールでは、3本の移動平均線がどう絡むかによって、為替レートの状態を4つに分類しています。
アリゾナルールの大きな要素として移動平均線が欠かせませんが、さらに必要なインディケータがあります。それは、「MACD」と「スローストキャスティクス」です。
ふだん、FXトレードを行っているトレーダーにはすでにおなじみのテクニカル指標ですから、詳しい説明はいらないと思いますが、念のためいっておきますと、MACDは「短期EMA-長期EMA」で計算し、それを一本のラインにしたものです。
つまり、短期EMAと長期EMAを比較すると、為替レートの動きに敏感に反応するのは短期EMAのほうです。
ですから、上昇トレンドのときは、短期EMAがローソク足の側にして、長期EMAがそれよりも下にいるはずです。
そのときに、MACDを計算すると、短期EMAのほうが上にいる=大きくなるはずですから、ゼロよりも大きくなります。
一方、下降トレンドのときには、MACDはゼロよりも下になるはずですから、そうするとMACDがゼロよりも下だと下降の力が強いことになり、MACDがゼロよりも上になっていると上昇する力が強いということになります。
それが、MACDを見るときの基本的な考え方となります。そこで、たとえば、MT4などでMACDを表示させると、棒グラフ表示されたり、ラインで表示されたりしますが、棒グラフであれ、ラインであれMACDの見方は変わりません。
そして、MACDにはもう一本、「シグナル」を呼ばれるラインがあります。そこで、MACDを長期のライン、シグナルを短期のラインと考えると、2本のラインのクロスをみるという考え方もあります。
つまり、ゴールデンクロスは短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に突き抜けたときに上昇トレンドに転じるサインとなりますし、デッドクロスは短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に突き抜けたときに下降のサインになります。
ですから、MACDとシグナルのラインの交差をみて、上昇トレンドに転じているか、下降トレンドに転じているかを判断できる、というわけです。
では、もう一つのスローストキャスティクスですが、こちらは値頃感を現すテクニカル指標となります。
オシレータ系のテクニカル指標ですが、買われすぎ、売られすぎを読み解くのが特徴です。スローストキャスティクスを使うときは、パラメータを設定する必要があります。
一般的には「5」を使います。ということは、過去5本のなかで高値と安値の幅に対して、現在のレートがどこにあるかを計算してくれるというわけです。
%Kで表示をされるのですが、%Kが80を超えていると買われすぎ、%Kが20を割っていると売られすぎと判断するのが一般的です。なかには70と30で判断することもあります。
さらに、スローストキャスティクスには、%Kを移動平均したものに、「%D」があります。
%Dは%Kに遅れてついていくもので、この2本を長期と短期のラインと考えることができるので、二つのラインのクロスをみることで、ゴールデンクロス、デッドクロスを判断し、為替レートが上昇トレンドに転じているのか、下降トレンドに転じているのかを判断することができます。
以上がアリゾナルールに必要なテクニカル指標です。そこで、テクニカル指標を有効化するにはパラメータを設定する必要があります。
アリゾナルールの移動平均線のパラメータは前述したように、800SMA、200SMA、62EMAというように、800、200、62がパラメータとなります。
MACDは、短期の長期のEMAのパラメータと、シグナルのパラメータの3つを設定する必要があります。アリゾナルールではそのパラメータを、30、65、23に設定します。
つまり、30EMAと62EMAでMACDを計算し、その移動平均を23で計算するということになります。スローストキャスティクスでは、%Kを30、%Dを10に設定します。
以上がアリゾナルールに必要なパラメータとなります。
アリゾナルールはチャートがどのような状態にあるかを判断してトレードの役に立てようというものですが、アリゾナルールが診断し、規定するチャートのパターンは4つに分類されます。
4つのフェイズと称していますが、それぞれ名称がついていて、「トゥーソンフェイズ」「フラッグスタッフフェイズ」「ユマフェイズ」「フェニックスフィエズ」と、ロブ・ブッカー氏は命名しています。
まず、800SMAとローソク足の関係をみるわけですが、ローソク足が800SMAにタッチしていたら、それは、トレンドが一段落して落ち着いている状態で、レンジ相場となります。
これを「トゥーソンフェイズ」と称します。なぜなら、下降した上昇したりするレートは、いつかは必ず800SMAにかえってくるという性質を考えると、そういうことがいえるのではないでしょうか。
次に、ローソク足が800SMAにタッチしていても、62EMAが800SMAとクロスしていたら、話は違ってきます。
そのときに、200SMAをみて、800SMAと200SMAがクロスしていなければ、そのときは「フラッグスタッフフェイズ」となります。
「フラッグスタッフフェイズ」は、トレンドが発生する目前状態であり、これから何が起こるかわくわくさせてくれるのが、フラッグスタッフフェイズとなります。
そして、フラッグスタッフフェイズのあとにやってくるのが、順調にいけばトレンドが発生することになりますが、62EMAに続き、200SMAも800SMAとクロスし、チャートには上から順番に800SMA、200SMA、62EMAが表示されたら下降トレンド、あるいは上から順に62EMA、200SMA、800SMAと表示されたら上昇トレンドが発生していることになります。
そのような状態になたときは「フェニックスフェイズ」となります。やがてトレンドは終わりを告げます。
そのときの状態を「ユマフェイズ」と称していますが、62EMAが800SMAへと戻りだして、200SMAとクロスし、さらに、800SMAにローソク足がタッチしていない状態になったら、トレンドが終焉していることを示しており、方向感も非常に乏しくなって、トレードで利益を上げるのが難しい状態になります。
以上がアリゾナルールにおいて、3本の移動平均線からみるレートの状態です。ですから、最初に画面を開いて3本の移動平均線を表示してみて、最初に800SMAとローソク足の関係をみてください。
もし、ローソク足が800SMAとぶつかっていて、62EMAが800SMAとクロスしていたらフラッグスタッフフェイズであり、トレンドが発生するシグナルとなります。
それ以外では、方向感のない相場を判断できます。さらに800SMAとローソク足がぶつかっていない場合には、移動平均線の並び方をみます。
3本の移動平均線が上から順番に長期移動平均線から短期移動平均線、あるいは短期移動平均線から長期移動平均線へときれいに並んでいる場合には、トレンドが発生していると判断します。
3本の移動平均線が揃って並んでいなければ、トレンドは終焉していると判断します。では、ここで再度、アリゾナルールの4つのフェイズについてまとめておきましょう。
「トゥーソンフィエズ」とは、ローソク足が800SMAにタッチしており、62EMAと800SMAがクロスしていない状態のことです。レンジ相場となります。
「フラッグスタッフフェイズ」とは、ローソク足が800SMAにタッチしており、62EMAと800SMAがクロスしており、200SMAと800SMAがクロスしていない状態のことです。
トレンドが発生するシグナルとなります。「ユマフェイズ」とは、ローソク足が800SMAに近づいてはいますが、届かないで、62EMAが200SMAと800EMAの間に挟まれている状態のことで、トレンドの終焉を意味しています。
そして最後に「フェニックスフェイズ」ですが、これは、上から62EMA、200SMA、800SMAが順番に並んでいると上昇トレンドが発生している状態、上から順番に800SMA、200SMA、62EMAが並んでいると短期トレンドが発生している状態となります。
つまり、トレンドが発生していることを意味しています。これだけをみても、為替レートの状態が判断できることから、どんなポジションをもてばいいのか、判断できるはずです。
まずは、アリゾナルールでの移動平均線をみて、チャートがどんな状態にあるのかを一目で判断できるようにしておきましょう。
次回は、アリゾナルールを使って実際の取引のテクニックを紹介してみようと思っています。
辻秀雄氏プロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから