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中国の紙幣を考える~人民元と香港ドル

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FXのトレードで中国の人民元香港ドルをトレードしている人はそんな多くいないと思いますが、取引通貨としての魅力がないわけではありません。

中国の法定通貨である紙幣、人民元は、国際通貨として認められています。しかし、実際のところ、中国国内で紙幣として人民元を利用している人はほとんどいません。

人々が利用しているのは紙幣ではなく、キャッシュレスが当たり前の世界になっており、スマホ決済が浸透しています。

人々はショッピングの支払いなどの決済では、WeChatやAlipayなどのキャッシュレス決済アプリを使っているのが実情です。

そして、人民元をめぐる現在の最大の話題は、人民元のデジタル通貨の実験です。つい最近、中国ではデジタル人民元の大規模な実験が深圳でスタートしました。

中国国内では4つの都市でそうした実験を行う予定なっています。2020年10月の第2週に、深圳市は総額1000万元(約1億5700万円)のデジタル通貨を抽選で5万人の市民に配布すると発表しました。

深圳市当局の話によると、深圳に在住している市民のなかで、約200万人近い市民がこのデジタル通貨の抽選に申し込んだそうです。

当選した人は、デジタル人民元公式アプリ内の赤い封筒で、一人当たり200元(約3100円)を受け取ることができます。

そして、このデジタル人民元は、深圳市内の約3000店以上の小売店で使うことができるのです。 中央政府によると、今後の方針としては、深圳市で公式のデジタル通貨研究所を通じて「フィンテックイノベーションプラットフォーム」を始動するとしています。

先端技術の発展を促すために、海外から投資を集めるなど、今後5年という時間をかけて、深圳では開発計画が実施されるとしています。

深圳市は、中国本土のなかで、デジタル人民元の研究開発や利用、国際協力の促進にも大きな役割を果たすものと期待を一身に集めています。

さらに、深圳市では2020年4月、デジタル通貨研究所がモバイルアプリアーキテクトやAndroid開発者など技術職の募集を開始しました。

深圳市は、1980年に中国初の経済特区に指定され、現在はTencent、Huawei、DJI、HAXやTrouble Makerなどのイノベーションハブの本拠地として注目を浴びています。

中国の例をみるまでもなく、世界中の中央銀行では今、デジタル通貨の研究が行われています。日銀も特別チームをつくって、日本円のデジタル通貨の研究を行っていますし、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)もデジタルドルに取り組んでいます。

つまり、世界の通貨は今、デジタル化へと進んでいます。この流れを仮想通貨(暗号資産)と同一視するむきもありますが、デジタル通貨と仮想通貨は似て非なるものといってもいいでしょう。

仮想通貨は中央銀行が発行するものではありません。しかし、デジタル通貨は法定通貨の範疇です。

デジタル通貨としての研究は、中国が一歩抜きんでていますが、中央銀行である中国人民銀行が発行・管理し、中国の法定的、物理的な通貨のデジタル版として機能するものです。

それゆえ、中国政府は、通貨の流通を自分たちで把握することができるというわけです。そんな中国の人民元ですが、FXトレードで取り引きする通貨としての魅力を多く備えています

まず、人民元には二つの市場があります。CNY、つまり、オンショア人民元の市場と、CHN、つまり、オフショア人民元の市場です。

この二つは、人民元という共通紙幣を扱ってはいますが、取引内容については大きな違いがあります。オンショア市場の人民元を取引できるのは、中国本土に居住している者に限られます。

そして、中国当局の売買規制があり、日中の変動幅には制限があります。その制限幅は基準値±2%といわれています。さらに、金利差から生じるスワップポイントがつきません。

一方、オフショア市場の人民元は、中国本土以外の居住者が参加できる市場です。中国当局の規制はありませんし、変動幅にも制限がありません。

さらに、こちらはスワップポイントがつきます。 現在(10月28日時点)での「人民元/円」のレートは、15.59円です。

たとえば、人民元を1000通貨取引しようと思ったら、証拠金は、レバレッジなしだと15.59円×1000通貨=1万5590円ですみます(手数料は計算に入れていません)。

さらに、1万通貨の取引だと、15.59円×1万通貨=15万5900円ですが、レバレッジを25倍効かせると、最低でも6236円の証拠金があれば、1万通貨の人民元が取引できます。

例えば、「米ドル/円」が10月28日時点で104.50円ですが、これを1万通貨取引するためには、レバレッジなしだと、104万5000円が必要ですが、レバレッジ25倍を効かせば、4万1800円の証拠金ですみます。

しかし、人民元と米ドルの取引では、4万1800円-6236円で、3万5000円以上も資金が少なくてすみます。

このように、まさにFXの本質である「少ない資金で取引できる」通貨として、人民元はもってこいの通貨といっても過言ではありません。

さらに、人民元は金利が高いことから、スワップポイントがかなり期待できます。中国の政策金利は3.85%です。日本円の政策金利はマイナス金利です。

-0.10%ですから、人民元と円の金利差は、3.95%です。中国の人民元を取引するうえで、中国当局が発表する経済指標は無視することができません。

そこで、人民元を取引するためにぜひともチェックをしておきたい主な経済指標は、GDP成長率や消費者物価指数、貿易収支などです。

なかでも、人民元は、GDPの比率が各国に比べて高い「製造業」の伸び率に過敏に反応するのが特徴です。さらに、注目すべきは、土地の価格です。

1988年以前は、中国では個人や企業が土地を自由に所有したり、売買したりはできませんでした。それは、土地の私有が認められておらず、土地はすべて公有制になっていたため、そのような土地利用・私有制限が存在していました。

しかし、1988年に法律が改正されて、土地の売買ができるようになりました。なかでも、都市に在住している住民は、安い価格で土地の使用権を取得することが可能になりました。

さらに、国有企業は広大な土地を所有していたため、その敷地を開発したり、譲渡したり、賃貸にまわすことで大きな利益を生み出すことができました。

中国に土地成金が現れたのも、このころの話です。土地改革によって、中国の不動産業界は大きく発展することになりました。

そうした背景をもつ中国ですが、おさえておきたい経済指標として挙げられるのは、まず、物価関連指標である消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)です。

消費者物価指数は、インフレの動向をみる指標でもあり、政策金利とも敏感に反応します。中国の金融政策を推し量るうえでも重要な指標といえます。

生産者物価指数は、同じくインフレ動向をみる指標ですが、消費者物価指数ほどの重きはありません。

次に、景気諸費指標として挙げられるのが、小売売上高と不動産開発投資です。小売売上高は、文字通り小売業やサービス業の売り上げを示すものですが、経済の成長力を見るうえでは重要な指標となります。

また、不動産開発投資は、為替への影響はそれほど大きくありませんが、バブル景気の引き金にもなりますので、注意深くチェックすることが必要です。

さらに重要な指標が、GDP、国内総生産です。中国の経済指標としてはもっとも重要な指標といえます。

国内総生産は、中国経済の成長率を見るうえでは欠かせませんし、その良し悪しは為替に大きく影響をしてきます。

ところで、人民元は、かつては米ドルとの固定相場を採用していましたが、2005年7月に「人民元改革」が実施されたことをきっかけにして、為替制度を変更しました。

その時には、通貨バスケット制を参考にした管理変動相場制へと移行したわけです。さらに、中国政府にとってはうれしいニュースがありました。

それは、2016年に、国際通貨基金(IMF)が人民元を「特別引き出し権(SDR)」構成通貨に採用したことです。

これによって、人民元は、世界貿易の基軸通貨である米ドルやユーロ、日本円、イギリス・ポンド、スイスフランとならんで、国際金融のなかでの主要通貨に位置付けられたのです。

しかし、人民元が完全に国際化したとはまだまだ言えませんが、今後は、人民元が国際貿易面でも決済通貨として多くの国々で採用される可能性が高くなっており、それだけ期待もされているということになります。

以上述べたように、人民元には2つの市場が存在しています。そして現在、市場規模を拡大させているのは、中国本土以外の人たち向けのCHN(オフショア)です。

ところで、中国の通貨である人民元をめぐっては、アメリカがしきりに人民元の切り上げを求めたことがありました。

みなさんの記憶に新しいところだと思いますが、なぜ執拗にアメリカは人民元の切り上げを中国当局に要請したのでしょうか。

それは、アメリカが抱える対中貿易が生み出している貿易赤字や雇用など大いに関係しています。

その理由ですが、アメリカの言い分を借りれば、中国が不当に人民元を安くしているので、中国からアメリカに安い製品が大量に流入してくることによって、アメリカの製品が売れなくなるといった、貿易上の反発である。

さらにそれがアメリカの雇用を奪っていると、アメリカは主張しているのです。しかし、アメリカの消費者にしてみたら、安い製品は歓迎すべきことです。

アメリカが執拗に人民元の切り上げを求めている理由は、貿易面の理由からだけではありません。国際社会のなかで、中国の金融市場を外にもっと開放させたい、という狙いがあるからです。

現実的に、海外の資金を中国国内の国債や株式に投入するのは、かなり難しいという現実があります。中国政府も国際社会の一員として、金融政策を開放しつつあります。

たとえば、上海市場や香港市場では人民元での資産の取引が可能になっています。しかし、現実に、上海や香港以外では、中国の金融市場は閉鎖的です。

だからこそ、中国政府は人民元を思いのままに管理ができるともいえます。中国政府としては、人民元は国際貿易の決済通貨あるいは米ドルにとってかわる基軸通貨として国際舞台の主役として躍り出たいとは思っているはずなのですが、拙速に事を進めたくない、というのが見て取れます。

一刻も早く、人民元の自由化を進める方向で政策を展開していくはずなのですが、それには慎重論が根強く、アメリカが求めるような金融政策や金融市場の自由化にはまだまだ長い時間がかかるものと思われます

では次に、香港ドルをみていきましょう。10月28日時点での「香港ドル/円」のレートは、13.48円です。人民元よりも少ない資金でFXのトレードができます。

ご存じのように、香港はかつてイギリス領でした。1997年にイギリスから中国に返還されました。

それ以降、香港は中国のなかで特別行政地区として、「一国二制度」に基づいて、高度な自治が保証されてきました。また、言論の自由や独自通貨の発行も認められてきました。

さらに、今や香港市場は東京市場をしのぐほどになっており、シンガーポールと並んで、アジアの国際金融拠点として脚光を浴びており、中国企業の重要な外貨調達拠点としての重要な位置づけにあります。

中国の通貨は人民元ですが、管理通貨であり、「人民元(CNY)」の外貨取引は規制が厳しいため、取引規制のない「香港ドル(HKD)」が海外の投資家には好まれています。

しかし、その香港にも中国からの脅威が押し寄せています。そのいい例が、「香港国家安全法」の導入・施行です。

この法律が施行されたことによって、香港の独立性が損なわれるリスクがあり、アメリカのトランプ大統領が香港の優遇措置を停止する方針を表明しました。

今後、ますます中国政府当局からの圧力が香港には加わっていくことが予測されていますが、香港ドルはいったいどうなっていくのでしょうか。

香港では、香港ドルが流通していますが、香港には紙幣を発行する民間の銀行が3つもあります。それぞれ独自の香港ドルを発行しているのが特徴です。

その民間銀行とは、香港上海銀行とスタンダードチャータード銀行、中国銀行の3行です。 香港には中央銀行がありません。

ですから、民間が銀行は香港ドルを発券する際には、発行額に相当する米ドルを香港政府の外貨準備に差し入れる必要があります。

このような金融制度を「カレンシーボード制」と称しています。これによって、香港ドルは米ドルに裏づけられているといっていいかもしれません。

さらに、金融監督庁である香港金融管理局(HKMA)は、香港ドルの米ドルに対するペッグ制を維持するためには、為替介入を時に応じて行います。

この「ドルペッグ制」を取り入れているため、1米ドルは7.75~7.85 香港ドルのレンジのなかで推移しています。

したがって、香港ドルの政策金利は、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)のそれにできるだけ近づけるなど、アメリカの金融政策によって影響を受けます。

そのため、香港独自の金融政策は存在しません。つまり、「香港ドル/円」を取引しようと思ったら、「米ドル/円」の動向をチェックする必要があります

以上簡単ですが、中国の人民元と香港ドルの取引についてみてきました。人民元と香港ドルは、少ない証拠金で取引できる通貨でありますので、ぜひともチャレンジされてはいかがでしょうか。

辻秀雄氏プロフィール

辻秀雄氏
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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