通貨って色々あるけど、何が違うの?
それぞれ特徴とかってあるんですかね。
通貨の特徴を知っておけば、取引する時にきっと役立つはずよ。
FXのトレードをしていると、よく聞くのがメジャー通貨だとか、マイナー通貨という言葉です。
しかし、厳密に言えば、メジャー通貨はどういった通貨で、マイナー通貨はどういう特徴をもっているかなどの、明確な定義はありません。
したがって、メジャー通貨とマイナー通貨の分類は、単に取引量の多さでそう呼ぼれているのが実情です。
メジャー通貨は、米ドルや円、ユーロ、英ポンド、フラン、オーストラリアドル、カナダドルなどです。それ以外の通貨はマイナー通貨と呼ばれています。
マイナー通貨はメジャー通貨と比べると取引量も少なく、スプレッドも広い。
さらに、その国の金融政策次第で取引ができなくなるリスクもはらんでいます。
ですから、FXを始めようと思っている、あるいは始めたばかりの初心者はまず、メジャー通貨から取引をするのがベターです。
では、それぞれの通貨の特徴をみていきましょう。
世界の基軸通貨「米ドル」
国際貿易などの決済通貨として活用されている、世界の基軸通貨です。
為替の世界ではユーロに次ぐ2番目の取引量を誇っています。
日本のFXトレーダーがもっとも多く取引をしているのが「米ドル/円」です。
なぜなら、円は自国の通貨だし、米ドルについての情報も手に入れやすいですから、取っつきやすい通貨だといえます。
それに、米ドルは貿易の決済通貨だということから、企業の業績や私たちの生活に大きな影響を与える通貨です。
例えば、よく為替のニュースで聞くのが円高、円安という言葉です。これには、とくに輸出企業は神経をとがらせています。
なぜなら、米ドルのレート次第で企業の業績が変わってくるからです。
国際貿易は米ドルで決済しますので、企業は最終的には米ドルを円に替えて給料などの支払いに充てなければなりません。
そのため、1米ドル100円の場合と102円の場合では入ってくる収入に大きな差ができてしまいます。輸出企業としては円安を歓迎します。
米ドルに影響を与えるのは、なんといってもアメリカの経済指標です。
雇用統計をはじめ、住宅着工件数など、重要な経済指標発表時には米ドルの動向には注意を払う必要があります。
さらに、アメリカの金融政策と雇用を司る連坊準備制度理事会(FRB)議長など、要人の発言にも気をつけておかなければなりません。
次に、米ドルは「有事のドル買い」といわれるように、いったん有事が起こると変われる傾向になります。
なぜなら銀行などの金融機関が手元の流動性を確保するために、米ドル買いに走るからです。
そのため、混乱時には米ドルが上昇するという傾向が生まれます。
2008年のリー万ショックの時にも、豪ドルなどは円に対して45%も下落しましたが、米ドルは20%にとどまりました。
これをみても、米ドルは経済危機や金融ショックが起こっても価格の下落はわずかで、安定した通貨だといえます。
したがって、「米ドル/円」は、大幅な変動がないかわりに、安定していますので、FX初心者でも安心して投資対象の通貨ペアであり、トレードにもっとも入りやすい通貨ペアだといえます。
初心者はまずは米ドル円から取引するのが良いだろう。
値動きがわかりやすい「ユーロ」
1999年1月1日発足したのが欧州統一通貨の「ユーロ」です。いまや基軸通貨である米ドルを脅かす存在ともいえます。
なぜなら、国際貿易決済通貨をユーロに切り替える企業や国が出現しているからです。
また、ユーロは、米ドルについて日本人に人気のある通貨です。
ですから、「米ドル/円」についで、「ユーロ/円」の取引がおおくなってきています。
「ユーロ/円」の特長は、「米ドル/円」などと比べると、比較的にトレンドが読みやすいといえます。チャートも非常にきれいです。
その点は、初心者向けの通貨ペアだともいえます。
ユーロに影響を与えるのはもちろんユーロ圏の各国の経済状況です。
現在、ユーロに加盟している国々は28カ国にのぼりますが、ユーロを法定通貨と使用している国は現在19カ国(2019年3月現在)です。
イギリスやスイスは欧州連合に加盟していますが、独自の通貨であるポンドやフランを法定通貨として使っています。ユーロ圏の経済状況の特徴はギリシャやイタリア、スペインなど南部の地域と、ドイツやフランスなど北部地域との経済角だが大きいことです。
なかでもギリシャショックはユーロ経済に大きな影響を与え、ユーロの下落要因ともなりました。しかし、もっぱらユーロに影響を与えているのは、ドイツやフランスなどの経済動向です。
さらに、ユーロの通貨政策を一手に引き受けているのが欧州中央銀行(ECB)です。ECBの金融政策やドラギ総裁の発言などもユーロの価格に大きな影響を及ぼしますので、「ユーロ/円」や「ユーロ/米ドル」を取引しているトレーダーは、それらの動向には注意を払うべきでしょう。
値動きが荒い「英ポンド」
第一次世界大戦までは、英ポンドが世界の基軸通貨でした。
しかし、その後、アメリカ経済力がイギリスを上回るようになって、第二次世界大戦が集結することには、英ポンドに替わって米ドルが基軸通貨となりました。
英ポンドにはそういう背景があるので、いまでも由緒ある通貨として評価をする人も少なくありません。
英ポンドの正式名称は、「ポンド・スターリング」です。
為替関係者のなかには英ポンドのことをスターリングと呼ぶ人も多くいます。
また、ケーブルと呼ぶ人もすくなくありません。
英ポンドにまつわる有名な出来事に、1992年に起きたポンド危機があります。
きっかけは1990年の東西ドイツの統一です。東側諸国の共産党体制が崩壊し、旧西ドイツから東ドイツの融資をはじめ、東欧諸国への融資が活発に行われたため、当時のヨーロッパ各国の通貨の金利が上昇しました。
英ポンドも例外ではありません。
高金利となった英ポンドに目をつけたのが世界の投資家であるジョージ・ソロスです。
ソロスは1992年9月、英ポンド売りを徹底して仕掛けました。
これに対してイングランド銀行(BOE)は対抗策を講じましたが、最後は力尽きて、英ポンドは暴落。ソロスは大儲けをしたという「事件」です。
英ポンドの特徴は、値動きが荒いことです。
これは、英ポンドの取引高に比べて市場参加者が少ないのが原因です。
つまり、流動性が下がるので、ひとたび大口の取引を行うプレーヤーが出現すると、たちまち価格は乱高下するわけです。
また、イギリスは北海に海底油田を擁したり、天然ガスの生産国です。英ポンドは原油先物価格にも影響を受けやすい通貨です。
かりに原油高になると、投資家はインフレを懸念して米ドル売り/ユーロ買いと並行して、米ドル売り/英ポンド買いに走る傾向があります。
したがって、英ポンドを取引する場合には、商品先物価格にも注意をはらわなければなりません。
初心者の間は、リアルマネーで「英ポンド/円」を取引する間に、デモトレードを十分行った上で、英ポンドの取引に自身が芽生えたらリアルマネーで取引をするようにしましょう。
避難通貨の「スイスフラン」
スイスは、1815年のウィーン会議で永世中立国であることが承認されました。今でも、永世中立国の姿勢は変わっていません。
スイスは欧州連合(EU)に加盟していますが、通貨はユーロではなく、フランを法定通貨として採用しています。
スイスフランの特徴は、長い間、避難通貨として扱われてきたことです。
テロや戦争など非常事態になると、投資家は資産を安全なものに変えたり、安全な場所に避難させようとしまう。
非常事態になるとスイスフランが買われることが多かったのです。
最近では、日本円が避難通貨としてスイスフランに取って代わっているようですが、以前、フランは避難通貨として扱われています。
スイスフランで記憶に残る事件は、いまだに記憶に新しい「スイスフランショック」です。
2015年1月15日、スイス中央銀行は突然、「ユーロ/スイスフラン」の相場を1.2000に保つために永続的に介入を行ってきたのですが、この日突如、永続介入集結を宣言しました。
その結果、「ユーロ/スイスフラン」は暴落し、スイスフラン高が急激に進むことになりました。
「ユーロ/スイスフラン」は、暴落後、わずか20分間で41%も暴落、「ユーロ/米ドル」や「米ドル/円」に大きな影響を与えることとなりました。
「スイスフラン/円」や「ユーロ/スイスフラン」は、平常時ではそんなに活発に動く通貨ではありません。
ただ、有事の際や、スイス中央銀行の金融政策の変更があったときには、かなり変動が激しくなる通貨だということを覚えておきましょう。
かつては高金利通貨と呼ばれた資源国通貨「豪ドル」「NZドル」
豪ドル(オーストラリアドル)は別名「オージー」とも呼ばれます。
NZドル(ニュージーランドドル)は別名「キウイ」というニックネームがあります。
オーストラリアは鉄鉱石や石炭などの資源を輸出しているので、豪ドルは「コモディティ通貨」「資源国通貨」とも呼ばれています。
ニュージーランドの輸出品は乳製品や食品ですが、オーストラリアとの貿易が多いので、豪ドルとNZドルは似たような動きを示すことが多いようです。
豪ドルに大きな影響を与えるのは、中国の経済動向です。
なぜなら、オーストラリアにとって、中国はナンバーワンの輸出相手国だからです。
中国ではいまだにインフラ整備が活発に行われており、石炭や鉄鉱石の需要は高いです。
資源国通貨といわれる豪ドルは、中国の資源需要に大きな影響を受けやすい通貨です。
さらに、リーマンショック前までは、高金利通貨として、日本人トレーダーの間では人気が高い通貨でした。
何しろ2008年夏前までは、オーストラリアの政策金利は7.25%、ニュージーランドは8.25%でした。
ですから、「豪ドル/円」や「NZ/円」の買いポジションを持っているだけで、他の主要通貨ペアよりも多いスワップ金利を得ることができました。
しかし、現在は豪ドルの政策金利は0.75%、NZドルは1.0%まで下落し、高金利通貨としての魅力はなくなりましたが、いまだに日本人FXトレーダーにとっては人気の高い通貨です。
豪ドルやNZドルの傾向としは、リスクオンやリスクオフに影響されることです。
リスクオンとは、景気や企業業績の拡大が見込まれるようになったり、地政学的なリスクが減退したときに、投資家が株式や新興国通貨など値動きの大きな金融商品を購入する動きのことです。
リスクオフはその反対で、値動きの大きな金融商品を手放して、国債などの手堅い金融商品を購入する動きです。豪ドルやNZドルはまさにその対象となっている通貨です。
さらに、オーストラリアの中央銀行であるRBA(オーストラリア準備銀行)の主要政策がインフレと雇用情勢の影響を受けます。
したがって、豪ドルやNZドルを取引する場合には、為替市場で投資家が市場に対してどのような心理状況にあるのかを把握すること。
もう一つは、オーストラリアのインフレ率や雇用情勢にも注意を払うことです。
豪ドルやNZドルは、主要通貨のなかでも英ポンドと同様に、取引高や市場参加者が少ないので、値動きが荒くなることがありますので、慎重に取引をする必要があります。
高金利が魅力の新興国通貨
買いポジションを持っているだけで金利の収入が入ってくるスワップ取引を希望する人には、新興国通貨は狙い目です。
たとえば、南ア・ランドの政策金利は6.50%、トルコ・リラは16.50%、ロシア・ルーブルは7.0%、中国・人民元は4.35%、そして、最近取り扱われるようになったメキシコ・ペソは7.75%です。
これらの新興国通貨は取引参加者が少ないことから、流動性も主要通貨に比べると低いですから、値動きが極端に荒っぽくなることがあります。
しかし、実際に取引はしないで、政策金利の低い主要通貨との通貨ペアを買って持っているだけで、スワップ金利が入ってきます。
初心者にはあまりおすすめしませんが、どうしてもこれらの新興国通貨の取引をしたい方は、しばらくチャートのローソク足の動きを見て、どんな特徴があるのかある程度把握してから、実取引に臨んだほうがいいでしょう。
辻秀雄氏のプロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから