スプレッドは気にしないで、最初はローリスク・ローリターンの取引から、シストレから始めるのも悪くはない!!
FX歴11年になる駒沢幸彦さん(仮名)は、10万円の元手を半年のトレードで200万円までに増やしたという、トレーダーさんです。
そんな駒沢さんにFXとの出合いやFXの魅力などについて話を聞いてみました。
2008年頃からFXを始める
――はじめに駒沢さんのプロフィールから紹介していただけないでしょうか?
2008年か2009年ぐらいからFXを始めて、最初はスキャルピングを中心に短いスパンでトレードをしていました。
最近は、資金に少し余裕が出てきましたので、長めのトレードを行ったりと、ときには、システムトレードも行って、コツコツと利益をあげています。
――最初からFXをやられたのですか?それとも株式投資をやっていたとか?
そうですね。
金融系の投資はFXが始めてです。
それまでは、不動産を購入しては修繕をしたりしていました。
損失を出してから本格的にFXを勉強
――FXを始められたきっかけは?
ネットでFXトレードがあることを知って、その当時は、リアルトレード・グランプリをやっていて、車などがもらえるというものでした。
そのグランプリに参加して、けっこうトレードがうまくいったので、そこからFXを本格的に始めました。
半年ぐらいで300万円ぐらい増やしたのですが、また、100万円単位で負けたりしました。
そこで、このままでは駄目なということで、勉強を始めて、ブログ運営もやりながら、徐々に勝てるようになりました。
――現在の活動は何がメインでしょうか?
日々の相場の分析や、自分のブログを書いたり、依頼されれば専門誌などに記事を書いたりしています。
――いま、使っているメディアとしては、ブログやツイッターとか?
ブログやツイッタ-、そして、メルマガですね。
使うテクニカル分析は3つのみ
――主に使っておられるテクニカル分析は何でしょうか?
一目均衡表や移動平均線、ボリンジャーバンドの3つです。
――ベーシックなものですね?
ベーシックだからこそ、大勢の方が使っておられて、エントリーや決済のポイントも、多くの方がそのポイントを狙ってトレードされているので、参考になると思っています。
――テクニカル分析はたくさんあって、とくに初心者の方はいろんな方がいろんなことを言われるので、わからなくってくるんでは?
私自身も最初は、ありとあらゆるテクニカル分析を試してみました。しかし、それはあまり意味がないと思いましたので、先に挙げた3つでことが足りると思っています。
本当に短期のトレードなら、RSIやMACDが必要になってくるかもしれませんが、1時間から2時間以上のトレードになってくると、それらは必要がないという印象を抱いています。
――いろいろテクニカル分析を試された結果、自分のスタイルにはベーシックの一目均衡表や移動平均線、ボリンジャーバンドがあればよくて、RSIとかMACDなどは要らないなという感じになってきたわけですね。
そうですね。
昔は、10種類以上のテクニカル分析は見ていました。
いまはその3つですね。
私はファンダメンタルズ派
――よくテクニカル派、ファンダメンタルズ派といわれますが、駒沢さんはどちらですか?
ファンダメンタルズ派になってしまうと思います。
ファンダメンタルズでは分析できないという声もありますが、大まかな相場の流れはつかめると思っていますので、ファンダメンタルズで流れをみながら、テクニカル分析でエントリーや決済のポイントを決めていくかたちですね。
――相場の流れをファンダメンタルズでつかんで、エントリーと決済のポイントをテクニカル分析でつかむという感じですかね?
そうですね。
取引通貨ペアは「ユーロ/米ドル」と「米ドル/円」
――トレードされる時間帯とか通貨ペアは決まったものがありますか?
通貨ペアでいえば、「ユーロ/米ドル」と「米ドル/円」ですね。
――なるほど。超メジャーな通貨ペアですね。
そうですね。
――それは何か理由があるのですか?
それらの通貨ペアは情報が得られやすいのがもっと大きな理由です。
オーストラリアなどは情報がつかみにくいですからね。
ユーロとか米ドルは速報にしてもすぐにつかむことができます。
オーストラリアは日本に居る限り情報が入ってきにくいので、オセアニア通貨はトレードはしていません。
すごく長期で外貨預金的な感じで「トルコリラ/円」をロングで持っていますが、いまのところ、マイナスです。
ただ、スワップ金利が毎月入ってきますので、あと1年も持っておけば、プラスになるのかなと思っています。
――超長期ですね。
「トルコリラ/円」については、2年~3年というスパンで考えています。
ューヨークタイムに集中トレード
――取引する時間帯はどうですか?
ニューヨークタイムが多いですね。
――それは動きが……?
そうですね。動きがあるからですね。
――取引時間はとくに決まっているわけではなく、ニューヨーク時間が多いかな、という感じですか?
そうですね。でも、イベントによって取引時間も変わってきます。
たとえば、日銀の発表があるときには、東京時間を注目します。
結局、経済指標でも発表が多いのはニューヨーク時間ですから、どうしてもニューヨーク時間に取引することが多くなります。
最初はスキャルピングでもうまくいく場合が
――FXを始められる方はまず、兼業から始められると思うのですが、そういう方はどういうスタイルでFXトレードに取り組んでいったらいいでしょうか?
最初は、スキャルピングでも勝てるのではないかと思います。
感覚的にトレードをやっていても、相場と相性が良い人はけっこううまくいく方もいると思います。
しかし、トレードに躓いてしまったら、トレードの周期を1週間単位で考えるとか、1カ月単位で考えるなどしてほしいですね。
損切りポイントはあらかじめ目処をつけておく
――兼業トレーダーの方は損切りポイントがわからない方が多いのですが、ロスカットについてはどんなふうに考えていけばいいでしょうか?
そうですね。
損切りという面では、移動平均線などのテクニカル分析を見ながら、損切りをするポイントの目処をつけておくようにしています。
初心者の方も、トレードをしているときに、ここまできたら損切りをしようという目処を持って欲しいと思います。
そうしないと、ズルズルトレードをして、何もできないまま悲惨な状況に陥ってしまって、強制ロスカットにあってしまいます。
ですから、トレードをする前に、ここまできたら損切りをするとか、自分自身でその根拠を持ってほしいですね。
――ここに損切りポイントを置け、というような秘策、あるいは伝授できるものってありますか?
秘策……、難しい質問ですね……。
相場の状況で違ってきますので、何ともいえないのですが、100円ラインとか、105円とか、相場にはその時々で節目(切りのいい数字)がありますので、それは大事にしてほしいです。
防衛ラインを割ったら当然、トレードはすっぱり止めるとか、秘策ではないですが、初心者の方はそこで止めるということを選択肢として考えておいて欲しいと思います。
――損失が少しずつ増えていったりすると、なかなかトレードを止めにくくなります。また、相場が戻るのではないかという期待を持ったりしがちです。
そうなんですね。
マーケットもそこまでは許容することがあると思います。
そこを割れたらマーケット事態がどうなるかわからない領域に入ってきますので、個人投資家が市場すらどうなるかわからないという状況になったときに、どうトレードしたらいいかの判断ができなくなると思うので、そこまできたらポジションは手仕舞うことが大事だと思います。
――エントリーする時に、損切りポイントや利確ポイントは入れておられますか?
確実に入れる場合もありますが、目処として必ず、ここまで相場がきたら切ろうという目安は決めています。
損切りと思っているポイントにレートがきたら、トレードは止める、それが私の基本的なポリシーというか、考え方にしています。
――初心者が利少損大に陥らないためには、自分のポリシーを徹底することなんですかね?
たぶん、そうだと思います。
ルールが守れなくなってくると、ほとんどのトレードは崩れてきます。
――そうです。
個人でトレードしていると、決めるのは自分しかいません。
これが証券会社だと、上司から「ここで切れよ」と指示があるのですが、個人ですと自分しかいませんから、ルールを緩めていくとどこまでも緩んでいくので、それは避けて欲しいと思います。
損失は次のトレードへの投資と考える
――ルールを徹底せよとはよく言われるのですが、それは頭ではわかっていても、できない方がほとんどです。しかも、自分しかいない環境で、人は自分に甘えてしまいがちです。そこらあたりをどうしたらいいでしょうか?
そこは、次への投資といいますか、あまり損をしたと考えなくていいと思います。
最初からうまくトレードを行う人もいますが、たいていの人はどこかで大きな失敗をします。
それは仕方がないことです。
それは、トレードをレベルアップするための避けられない損だと思いますので、損したと考えるよりは、反省点が見つかって、少し、トレードのレベルが上がったというとらえ方でいいと思います。
兼業トレーダーは無理にトレードする必要はない
――常にポジションを持っておられますか?
そんなことはありません。
1カ月ぐらいトレードをしないときもあります。
1週間ぐらいポジションを持つこともあります。
――ギャンブルが好きな人とか、トレードが好きな人は常にポジションを持ちたがります。いわゆるポジポジ病です。ポジポジ病についてはどんな対処をしたらいいでしょうか? 駒沢さんはそんなポジポジ病ではありませんが。
そうですね。ポジションを持たない期間が1カ月ぐらい続くこともあります。
――自分が狙っているエントリーポイントがきたら、エントリーするという感じですか?
ええ。逆に言うと、兼業トレーダーなので、いくらでも待てるはずです。
――確かに。
兼業トレーダーの方は多くが会社に勤めておられますので、毎日稼がなくてもいいわけです。
無理にトレードする必要はありません。
9割がた勝てるという確かなポイントを狙って、年に2回~3回、トレードするだけでけっこう利益を上げることができるはずなので、そういうイメージで割り切ったほうがいいのではないでしょうか。
――その辺の割り切りですね。
専業トレーダーでない限り、兼業トレーダーは別に毎日トレードする必要はありません。株式投資で億単位で取引をしている人を見ると、時期というのはかなり重要です。
たとえば、今は遊ぶ時期と割り切って、株式投資で稼いだお金でめいっぱい遊ぶ。それで、半年ぐらい経ってから、相場が大きく動いたときに、再び株式投資の世界に戻ってくる。
そして、2カ月か3カ月稼いでまた、いなくなってしまう。
本当に個人でトレードしている人は、毎日トレードする必要はないので、相場を見ることは必要ですが、そういう意識でFXに取り組んでいただきたいと思います。
――それが長くFXを行っていく秘訣でもありますね。
そうです。
はじめはローリスク・ローリターンの取引を
――9割の人が負けている状況をもう少し改善できるのではないかなと思います。
たぶん、改善できると思います。
結局、資金管理ができないから負けてしまうんですね。
選択型のシストレがありますが、設定をローリスク・ローリターンの設定にしていけば、そんなに負けようがありません。
そのあたりを初心者の方は、FXのスタートにしてもいいのではないかと思います。
そこで、こんな感じでトレードをするんだ、エントリーのポイントはこうなんだ、という感覚が養われればいいのではないでしょうか。
シストレでも、長いものでは1カ月単位で取引をしますし、短いものであれば、1日単位でポコポコ取引をしますので、そういうことから、初心者の方はシストレから始めるのもありかなと、思います。
――シストレのエントリーやイグジットのポイントを見て、トレードを学ぶんですね?
そうです。
――シストレも、考えてつくられていますからね。
システムトレードの割合が増える
――シストレですが、駒沢さんのトレードで、裁量トレードとシステクトレードの割合はどのぐらいですか?
半々ぐらいです。けっこうシストレの割合が増えてきて、シストレは一定のルールでトレードをしているので、大損することがあまりありません。
選択型も、自分で設定するのもそうです。
セーフティも入れますので、大敗しません。
1週間に一度の割合で、ストラテジーを入れ替えたりして、けっこう、ほっといても大丈夫です。
――自分の思ったとおりの設定にしておられると思いますが、EAについては、自分でプログラムを書かれるのですか、それともストラテジーを選択して……?
自分でプログラムを書くことはできません。
インヴァスト証券の「シストレ24」のミラートレーダーを使ったり、マネースクエアの「トラリピ」の両方を使って、システムトレードを行っています。
ミラートレーダーは調子のいいものを選択して使い、調子が悪くなったらストラテジーを入れ替えるだけです。意外と勝てるなと思っています。
――初心者だと、選択型のシストレと言っても、自分の取引スタイルが固まっていないので、どのストラテジーを選べばいいか迷ってしまうと思うのですが?ストラテジーを選ぶコツってありますか?
たとえば、インヴァスト証券の「シストレ24」だと、ストラテジーの状態を示すアイコンがいろいろついています。
そのなかからポジティブなアイコンがついているストラテジーを選ぶと、けっこういいトレードができます。それがひとつ。
もうひとつは、ストラテジーの取引履歴を見て、リスクリターンの割合とかドローダウンとかの数字を見て選ぶという方法があります。大負けしないでけっこう稼いでくれます。
――そうですか。自分でプログラムを書いたりとかは?
それは全然、できません。
――自動売買の比率が高まっているように思います。AIを搭載した自動売買のEAも登場しています。自動売買の比率は今後、どんどん上がっていくと思いますか?
そうですね。けっこう増えていくと思います。
ふつうの人間は24時間、相場を見続けることができません。
そういう意味では、優秀なストラテジーのプログラムが増えていくことになるとは思います。
――自分でプログラムを書ける人は、自分の思い描いているトレードをそのまま機械に置き換えることになると思うのですが、トレーダーさんというのは、自分のトレードスタイルに確固たるものを持っているようなイメージなのですが、人がつくったストラテジーは選びづらいのかなと思ったのですが、とくに、そんなことはありませんか?
そんなことはありません。
選択型は選択型で割り切っています。
トラリピやトライオートだと、自分でこの値段でエントリーしてというように決められますので、それはそういうスタイルでやっています。
逆に、自分にないものを補うという面では、選択型のシストレはいいのかなと思います。
――なるほど。FXのひとつのポートフォリオという感じですね。
そうです。
先ほど、通貨ペアは、「米ドル/円」と「ユーロ/米ドル」しか取引しないと言いましたが、選択型のシストレでは勝手にトレードしてくれますので、「ポンド/円」なども選びます。
裁量トレードだと、「ポンド/円」は一気に2円から3円動くことがありますので、怖すぎてできません。
しかし、シストレだと、ストラテジーが勝手にトレードをしてくれます。
「ポンド/円」も駄目なときも、いいときもありますが、そこそこの成績をあげていますので、それはそれでいいのかなと思っています。
いろいろ使ってみて、自分と相性のいいものを選んでいけばいいと思います。
FX会社の選び方~まずは使ってみる
――メインで利用されているFX会社はどこでしょうか?
裁量トレードだとGMOクリック証券と、外為どっとコム、DMM.com証券です。
自動売買だと、「トラリピ」のマネースクエア、「シストレ24」のインヴァスト証券です。
――駒沢さんがFXを始められた頃は、FX会社も乱立していて、キャンペーンもすごいことになっていました。レートやスプレッドもFX業者間でかなり差がありました。しかし、現在は金融庁の規制も浸透していて、FX業界は安定してきて、FX業者間での差異があまりなくなってきています。これからFX取引を始めたいと思っている方は、何を基準にFX会社を選んだらいいでしょうか?
長期投資を考えている方は、FX業者によってスワップポイントはけっこう差がありますので、スワップポイントは必ずチェックしてほしいです。
それがひとつと、あとは取引ツールの差かなと思います。
チャートの見やすさとか、テクニカル分析はどんなものが用意されているかといったところがポイントでしょうね。
あとは使ってみて、どのFX業者が自分に合うかを判断するしかありません。
フィーリングといいますか。あとは、ミラートレーダーやトラリピ、トラップリピート・イフダンが提供されているか、といったところですかね。
――そのあたりの有無で選べばいいのでは、ということですね。
そうですね。
スプレッドはトレードの成績とは無関係
――スプレッドはどういうふうに考えておられますか?
コストだと認識しています。
――スプレッドはかなりタイトになってきていますが、FX業者の本音としては、スプレッドは彼らの収入ですし、スキャルパーに利益を持って行かれたくないという思惑もあって、現状のスプレッドよりも開きたいと思っているはずです。たとえば、「米ドル/円」が現在、0.3銭が最狭ですが、これが、0.6銭とか、1.0銭となっても、手数料を除いた成績は変わりがないと思われますか?
トレードの成績にはあまり関係ないと個人的には思っています。
高頻度で取引をされる方だとそれはかなり影響を受けると思います。
たとえば、1日100回ぐらいトレードする方とかですね。
しかし、ふつうのトレードを行っている人であれば、そんなに影響は受けないと思います。
――エントリーポイントと決済ポイントがしっかりしていれば……。
そうですね。私自身、1週間にトレードする回数は10回もやりません。
ほとんどスプレッドの影響はないですね。
――なるほど。
スプレッドが100円、200円上がっても、トレードには影響ありません。
――まだ投資家の間では低スプレッド信仰が強いかなと思ったりしています。FX業者が低スプレッドを謳う弊害もあるのかなと思います。私も、高速スキャルパー以外は関係がないと思っています。しかも、高速スキャルパーというのは、ある種の特殊能力を持っている人たちです。ほとんどの人は高速スキャルピングは真似をすることができません。そうすると、一般のとくに、兼業トレーダーにとってスプレッドの狭さ、広さは関係ないと思っています。
そうだと思います。
――マネースクエアやインヴァスト証券のように、FXトレードに付加価値をつけているFX業者は少しずつ増えています。
そういう方向もひとつかなと思います。
――もしかしたら、自分の裁量トレードのほかに、いろいろな会社の商品をポートフォリオ的に持って、取引をするのもいいのかもしれません。
そうですね。けっこう違った視点でトレードをとらえられるようになると思います。
――学びの側面があるということですね。
そうですね。
――わかりました。本日はありがとうございました。
辻秀雄氏プロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから