投機と投資とは
よく耳にすることがですが、「投機」と「投資」の違いっていったい何でしょうか。トレーダーのみなさんなら一度や二度は考えたことがあるのではないでしょうか。
自分なりの結論は出ましたか?たとえば、「ポンド/円」などの価格変動が激しい通貨に資金を投入するのが投機、大幅に動くことはないが、そこそこに安定して動く米ドルや円に資金を投入するのが投資でしょうか。
あるいは変動の少ない債券に資金を注入するのか投資で、株式など変動の多い銘柄に資金を投入するのが投機でしょうか。
古来の書物によると、投機とはたとえば、債券に資金を投入したとします。
その場合、償還まで何もせずに満期を待ってから資金をうけとるのを投資といい、償還前に売買をして利益を得る行為を投機という、とあります。
個人によっていろいろ考え方は違うでしょうが、投資にしろ、投機にしろ、もっとも大きな課題や問題は、いかに損失を減らして、効率よく利益を上げること、それをトレーダーのみなさんは望んでいるはずです。
そのために、トレードテクニックと称されるトレード手法を見つけるのに懸命になったり、いろいろ情報収集にもお金と時間を費やしています。
そこでトレーダーの前に大きく立ちはだかってくるのが、価格変動のリスクです。トレードで成功しようと思ったら、この価格変動のリスクをいかに最小限に抑えるかが、決めてとなります。
もちろんそれがすべてはありませんが、かなりの部分でトレードに影響を与えるのは間違いありません。
利益確定は早く、損失確定はずるずると
ではここで質問です。あなたは以下の二つの選択肢のうち、どちらを選ぶでしょうか。2問あります。
まず、弟一問目です。
A.いますぐならば60万円もらえる。
B.1カ月待てば、7割の確率で120万円がもらえるが、3割の確率で何ももらえない。
第二問目は、
A.いますぐ売ってしまうと確実に200万円損をしてしまう。
B.2カ月待てば、7割の確率で損失は7割増えるが、3割の確率で損失は回復できる。
です。
さあ、弟一問目、第二問目ともあなたはどう答えますか?
これが私たちふつうの人間の行動心理を解き明かすには絶好の問題だといえます。
この質問を不特定多数の人にしてみると、弟一問ではAを選ぶ人が多く、第二問ではBを選ぶ人が多いという結果が出ています。 では、弟一問から解き明かしてみましょう。
弟一問でAは確実に60万円×100%=60万円を手にすることができます。
Bは、120万円×70%+0万円×30%=84万円を手にすることができます。理論的収益計算ではこのようになり、Bのほうが24万円も多く得られることになります。
しかし、多くの人はBよりももらえる金額が少ないAを選んでいます。それにはこんな理由が考えられます。
一つは、人は目先の利益を優先するということです。
この場合は2カ月先の利益よりも、今すぐ手に入る利益を優先したわけです。もう一つは、不確実なことを嫌うからです。3割の確率で「何ももらえない」という部分に抵抗を感じてしまって、冷静に計算をすればBのほうが儲かるのに、Aを選んでしまうわけです。
第二問は、理論的損失は以下のようになります。
Aは、200万円×100%=200万円。
Bは、340万円×70%+0万円×30%=238万円。
BのほうがAよりも38万円損が大きくなりますが、Bを選ぶ人が多いのも事実です。
どうしてでしょうか。 考えられることは、Aを選ぶとまるっきりトレードに失敗して損失を被ってしまうのは嫌だ、という気持ちになるのでしょう。
その点、Bですが、損失は増えるかもしれませんが、回復できるチャンスがあると思うことで、何とか損失を挽回できるのではないかという希望的な思いが心を占めるのではないでしょうか。
この二つの質問の事例から、次のことが指摘できるのではないでしょうか。
一つは、人間は、いやトレーダーは、近い未来に得る利益よりも、目先の利益に目を奪われやすいということです。
ですから、長期トレードを好まず、スキャルピングやデイトレードなどの短期トレードを好む傾向が強いといえます。
もう一つは、損失を被るのは嫌だといって、損失が膨らんでも先延ばしにする可能性が高い、ということです。
ですから、損切りを嫌ってなかなか損失確定に踏ん切りがつかず、含み損を抱えたまま悶々とする日々を過ごさなくてはならないことになるのです。
この傾向は、トレードの初心者だからそうなるというものではなく、何年もFXトレードを行っているベテラントレーダーでも陥る陥穽だといえます。
そういった行動の特性がトレードにも頻繁に影響を与えることは珍しいことではありません。
なぜなら、そうした行動特性と価格の動きの性質によってトレーダーは大きく儲け損ねたり、損失を被ってしまったりするからです。
上昇はゆっくり、下降は急速に
というのはこういうことです。ローソク足は上昇したり、下降したり、あるいは横ばいで推移したりと、3つの動きしかしません。
そして、上昇するときにはゆっくりと上昇しますが、下降するときは一気に下落することが多いのです。
そうした価格の性質を知っているのと知らないのとでは、トレードに雲泥の差がつくことになります。
なぜなら、目先の利益を追い求める度合いが強すぎると、レートが上昇したらすぐに決済をしてしまい、わずかな利益を得て満足するわけですが、もっと待っていれば、上昇が続いて、大きな利益を手にできたかもしれません。
上昇するときは価格はゆっくり動きますので、早く少しでも利益を得たいと思う気持ちが強ければ、心がせいてしまって、焦って決済をしてしまうのです。
もう一つは、下降トレンドは上昇トレンドよりも価格が下がるスピードが速いですから、損切りをもたついている間にあっという間に損失が膨らんで、結果的に大きな損失を抱えてしまうことも珍しくはありません。
価格が下がり続けていると不安になるのですが、その一方で、どこかで下落が止まり、上昇トレンドに転換するのではないか、という根拠のない希望を抱いてしまうものです。
自分が損をするのが嫌だし、怖いと思う心がそう思わせてしまうからです。
ですから、陰線が1本出ただけでは下落するかどうかわかりませんが、それが2本、3本と続いたとすると8割ぐらいの確率で価格は下落していきます。
さらに、5本続いて陰線が出現してしまったら、それはもう確実に下落トレンドと判断して間違いがありません。
そんなときは、もし買いポジションを建てていたら、迷わずに損切りを行って損失を確定させ、いったん相場から離れて、心を落ち着かせるのがいいのではないでしょうか。
儲からない人はどんな人か?
FXトレードを行うのは、何らかの利益を得るために行う人がほとんどです。
給料だけでは生活費が少々足りないからとか、家計を助けるため、海外旅行の費用を貯めたいとか、学費の補助にとか、もう少し贅沢な暮らしをしたいとか、トレードをする理由はいろいろあると思います。
人によってそれぞれ違うでしょう。
いろいろな思いを胸にFXトレードに入り込むわけですが、FX取引を初めてかなり時間が経つのに、どうしても上手に利益を上げることができない人たちがいます。
トレードがうまくいかないのには、そこには何かの共通の理由や原因があるのでしょうか。それは後述するとして、FXトレードを何度も行っていると、市場にだまされたと感じるときがあるかと思います。
しかし、市場がトレーダーのみなさんをだますなんてことは絶対にありません。では、どんなときにだまされたと感じてしまうのでしょうか。
たとえば、ロングポジションを持っていて、価格が下がり続けています。しかし、ぎりぎりまで粘ってみようと思い、損切り決済をせずに、過ごしていました。
しかし、相場はいっこうに上昇に切り替わる様子をみせません。もう我慢の限界だと思い、損切り決済しました。
ところが、損切り決済をした瞬間に、ローソク足の陽線が1本だけではなく、2本、3本と連続して出現して、価格は下落トレンドから上昇トレンドに切り替わっていきました。
まるで、自分が損切りするのを待っていたかのような相場の動きです。トレーダーは「えっ、何でそうなるの?」と、一瞬、「だまされた!」と思うに違いありません。
しかし、こういうことはよく起こります。これを冷徹にいってのければ、「巡り合わせが悪かった」ということになります。そして、後悔します。
「あともう少し我慢をしていれば、利益を得ることができたのに、残念!」と、くよくよしてしまいます。さらに、なんぜこんなことが起きるのかと、自分自身が混乱してしまうでしょう。
もう一つ例をあげます。それは、こんなケースです。AさんはFX歴5年ですから、歴史の新しいFXの世界ではベテラントレーダーのうちにはいります。
そんなベテランのAさんでも失敗をすることがあります。
Aさんはロングでポジションを持っていました。テクニカル分析でローソク足を分析していたら、上昇トレンドが続くことがわかりました。
価格が上昇しているうちは何も不安に思わず、ローソク足を眺めていたのですが、徐々にローソク足の実体が小さくなっていき、小さな陰線も出現したので、トレンドが終了するだろと思い、ここはロングポジションを売り決済して、利益を確定することにしました。
Aさんは、相場はこれ以上は上がらないで、下落トレンドに移行するだろうと読んでいました。ところが、相場は下落するどころか、さらに上昇を始めたのです。
「えっ、何で?」とAさんは狐に包まれたように、驚きました。目の前に起こっている現象をなかなか自分のなかに受け入れることができません。
相場にいったい何がおこったのでしょうか。では、Aさんが利益確定の決済をする前のローソク足の値動きをみてみましょう。
Aさんがロングポジションを建てたときには、ローソク足のはふつうの陽線で、上昇していました。そして、だんだん小さな陽線に変わっていきました。
そうなると、誰もがトレンドの終焉だと思ってしまいます。そして、決済までのローソク足の動きをみると、4本の小さな陽線が続き、その次に小さな陰線が続き、さらに小さな陽線が出現しています。
Aさんはこれをみて、次の陽線が現れたところで決済をしてしまいました。ところが、相場は下落するどころか上昇してしまったわけです。それは当然かもしれません。
ですが、一目均衡表をよく知っているトレーダーだったら、これは、「一陰介在五陽連」といって、小さな陽線が5つ続いているなかに小さな陰線があると、それはこれから相場が上昇していくサインを現しているのです。
それを知らなかったAさんは、もっと利益を積み上げることができたはずなのに、決済をしてしまったために、儲け損なったといえます。
そこで、思うわけです。「相場にだまされた!」と。
しかし、これらの説明でわかるように、相場は誰もだましてはいません。トレーダーのみなさんが、勝手にだまされた、と思う、感じる、だけなのです。
市場は市場参加者の心理が反映している場
市場には多くの人が参加をしています。
別な言葉でいえば、市場は参加者の心理状態を反映し、参加者の心理によってローソク足は動くと言っても過言ではありません。
それだけに、人と違うことをすれば大きな利益を得るとも言われていますが、トレーダーの心理は不思議なもので、大多数が同じように考え、同じように行動することが大にしてあります。
ポジションを建てるなら節目となる数値を好むとか、損切り決済は何ピップス下に入れておくとか、だいたい多くのトレーダーが同じように考えてトレードをしがちです。
ですから、ときにはロスカットハンターに狙われることがあります。
たとえば、下げ続けていたローソク足の陰線がトレンドラインで跳ね返されて陽線に変わって、上昇するかにみえました。
トレンドラインに跳ね返されたところのレートは99円70銭です。次に出た陽線が100円のレートをつけたときに、多くのトレーダーがロングポジションを建てたため、ローソク足は大陽線が1本出現しました。
それをみたまた多くの別のトレーダーが上昇すると見込んで、ロングポジションを建てます。またまた大陽線が出現しました。
トレーダーたちはこれから上昇トレンドが続いていき、利益確定のチャンスがやってくると確信しています。それはトレーダーなら誰だってそう思います。
しかし、この瞬間をまっていたのが、はげたかヘッジファンドの連中です。
彼らは個人投資家と違って莫大な投資資金を抱えています、そして、ここぞというときにはその莫大な資金をつぎ込んで、禿げたかのように利益をかっさらっていきます。
このときもそうです。価格が103円になったときに、ヘッジファンドが大量の売りポジションを建ててきました。そうすると価格は一気に下落し、「米ドル/円」は95円まで下落しました。
100円でロングポジションをもっていたトレーダーはロスカットでやられる者が続出し、さらに、我慢をしてロングポジションをもっていたトレーダーは、ガマンしきれずに売り決済を余儀なくされ、「米ドル/円」はさらに下落し、90円をつけました。
そうすると、それを待っていたかのように、ヘッジファンドが反対売買の買い決済を行い、利益を確定していきました。
大量の買い決済がはいったことによって、「米ドル/円」の価格は上昇し、その上昇トレンドをみて、新たなトレーダーがロングポジションを建ててきたため、「米ドル/円」はさらに、価格を伸ばしていきました。
こうしたケースは、トレードをやっているとけっこう出てきます。そんなとき、トレーダーも「市場にだまされた」と思うのでしょうが、実際は市場はだましてはいません。
ヘッジファンドの戦略に多くのトレーダーが手玉にとられたにすぎません。つまり、市場にはいろいろな人が参加しています。
個人投資家はもちろん、銀行や生命保険会社などの金融機関、ヘッジファンなどの投資専門機関、公的年金などの公的団体など、ありとあらゆる存在がひしめき合って、虎視眈々と、利益を得ようとうごめいています。
個人投資家はこんな人たちと勝負をしていかなければなりません。半端な精神ではやっていけないのがFX取引の世界なのです。あるベテラン投資はこう述べています。
「結局、利食いをだす人と損切りをだす人の為替レベルは同じようなところになりやすく、そのため、そのせめぎ合いから市場では最終的に損切りを先にツケさせられることが多くなってしまいます。それは、人の恐怖心の動きが大きく影響するためです」。
だから、そのメカニズムをしっかり認識して、相場の心理を読むことができれば、そんなにだまされると感じてしまうことは、少なくなってくるはずです。
恐怖心と欲望
市場と言うのは不思議なもので、欲望が強すぎたり、恐怖心が強すぎたりすると、トレードはあまりうまくいかないことが多いといえるかもしれません。
たとえば、恐怖心が強いばかりに、損失を恐れてすぐに損切りを行ったり、ちょっと利益が膨らんだと思ったら、後先かまわずに利益確定の決済をして、自分の恐怖から逃れようとします。
相場では恐怖心が強い人のほうが長続きして、生き残るといわれますが、恐怖心が強すぎると、コツコツドカンと、恐怖心と闘いながら貯めた利益をいっぺんにはき出してしまう危険性があります。
一方、欲望の強い人は、己の欲望が強すぎるあまり、決済のポイントを見誤ったり、含み損を膨らませて、ポジションを塩漬けにしてしまうリスクを抱えています。
たとえば、上昇トレンドで、レートが順調に上がっているとします。欲望の強い人は多くの利益を得ることに気持ちが固まってしまっており、相場はまだまだ上がると思いがちです。
そして、相場が上昇してきた、大陽線が1本、2本、3本と続けて出現したのを見て、これはまだまだ上昇するぞと思って、さらにポジションを買い増し、してしまいました。
ところが、相場は3本目の大陽線をつけたあと反転して、次に大陰線が出現して急落していきました。
「えっ、何で、大陽線が続けて出現したのに、相場はどうして反転するんや」
と、愕然としてしまい、慌てて、売り決済をいれて、損失を抑えようとしました。
こういうローソク足のパターンが出現したときに相場はどうなるかを知っておけば、かなりの利益を得ることができたのでしょうが、欲望が強すぎたために、ローソク足のパターンが意味することを失念してしまっていたのでしょう。
トレンドが終わるときには、上昇トレンドの場合は大陽線が、下落トレンドの場合には大陰線が続けて出現することがあります。
それさえ知っておれば、トレードに熱くならずに、冷静に取引ができて、慌てて決済をする必要もなかったはずです。
このように、強すぎる恐怖心や欲望は、トレードの邪魔になりますが、まったく欲望や恐怖心がなくなってしまうと、今度は、それこそ無謀な取引をしがちになります。
要はバランスの問題で、うまく恐怖心と欲望をコントロールしながらトレードを行えるようになると、市場にだまされたとか、失敗するケースはなくなってくるはずです。
相場で利益を得るためには、ときには大胆なトレードを行うこともあります。しかし、だんだんトレード体験を積むに従って、相場から教えられることがあります。
「もうそろそろ引け時ですよ、決済をして、ポジションを手仕舞うタイミングですよ」
と。いわゆるトレードのコツが身についてきます。
そのコツを身につけるには、個人差はあるでしょうが、すぐにとはいかず、一朝一夕にはできません。
ローソク足を見ながら、何度も何度もトレードを繰り返すことによって、市場心理や相場のくせが自然と身についてくるもので、これは言葉でどういおうと、得られるものではありません。
ですから、相場は面白いのです。怖いものではありません。なぜなら、市場には大金がうなっているからです。
それを得るのも失うのも、トレーダー自身の心構え一つで決まってしまう、大変スリリングに飛んだ世界、それがFXトレードの世界なのです。
どうしても勝てない人の共通パターンとは
さて、後述するといっていた命題に戻ります。FXトレードを長いことやっているけれど、なかなか上手に勝てない人がいます。
そういう人は本質的にトレードに向いていないのかもしれません。
ただ、そういってしまうと、身も蓋もありませんが、1年間トレードをやって勝てないようであれば、あと1年、2年と続けてトレードをおこなったところで勝てるとは限りません。
そういう人はけがが大きくなる前にトレードの世界から退場したほうがいいのかもしれません。
真剣に取り組まない人は勝てない
FXは自分で汗水垂らして稼いだお金をつぎ込んで勝つか、負けるかの勝負を行う世界です。人によってはFXはギャンブルだ、といいきる人がいます。
FXはギャンブルかどうかはさておき、日本にはギャンブル好きな人が意外と多くいます。パチンコや、公営ギャンブルである競馬、競輪、競艇などは盛況です。
どこからやってくるのかと思うぐらい、たくさんお人がギャンブルの場に集まってきます。また、麻雀好きな人は影に隠れて賭け麻雀をやっている人も少なくありません。
なかには反社会的集団がやっている賭場やカジノなどに出入りする、危ない人もいるでしょう。
しかし、これらのギャンブルで本当に儲けている人は数が少ないのではないでしょうか。なぜなら、これらのギャンブルは胴元が儲かる仕組みになっているからです。
もう一つは、楽しみながらギャンブルをやっているうちは、あまり勝てないのではないでしょうか。
自分が汗水垂らして稼いだお金をつぎ込んでいるからには、ギャンブルであろうと、真剣に取り組んでいかなければ、なかなか勝てるものではありません。FXトレードもそうです。
遊び感覚でやっていては、どんなにFX本を読もうが、セミナーに参加して人の話を聞こうが、自分自身が真剣に取り組まなければ、勝つことはかないません。
さらにいえば、プライドが高い人は損をします。市場にはいろいろなバックグラウンドを持った人が参加しますが、どんな人が参加をしていようと、市場の中では誰もが平等です。
学歴の高い人が優遇されるわけではありませんし、声の大きな人が得をするわけではありません。何びともローソク足の前では、横一線のスタートとなります。
ですから、
「俺は東大を出ているんだから負けるはずがない」
とか、
「仕事をばりばりやって成功させている自分だから、小さな取引はできない」
とか、FXトレードにとってまったく無用な意識やプライドは取っ払ってしまいましょう。
相場の世界では学歴や仕事歴、家柄など、何の意味も持ちません。世間の悪しき慣習にとらわれていては、FXトレードで利益をあげることはむずかしいのではないでしょうか。
感情をコントロールできない人は勝てない
ローソク足の動きやトレードの結果に一喜一憂をして大騒ぎをしたり、その逆に落ち込んでしまう人は、トレードで好成績を残すのは難しいのではないでしょうか。
たとえば、運がよく、たまたま大勝ちをしてしまって、
「自分はトレードの天才だ!」
と思ってしまい、やたらめったら大きな取引を繰り返すようになったりすると、それまで積み上げてきた利益をいっぺんに失ってしまうことになりかねません。
人間、大きな勝ちを得ると舞い上がってしまい、周囲の状況が見えなくなってしまいがちです。
気持ちが大きくなってしまい、
「1万通貨取引なんてばかばかしくてやっていられない!!」
と、いきなりこれまでやったことのないような大口取引を、それもレバレッジをめいっぱい効かせてやりたがるようになるケースは少なくありません。
これまで地道に1万通貨の取引をしていて、それ以上といっても2万通貨とか3万通貨しか取引をしたことがない人がいきないり、50万通貨とか100万通貨をやりだしたらどうなるでしょうか。
もし家族がそれを知ったらきっと止めに入ることでしょう。しかし、一度舞い上がった気持ちや高揚感は、なかなか収まるものではありません。
そうなってくると、家族の反対を押し切って、我を通そうとします。反対されればされるほど、まずます意固地になって、かたくなに自分の主張を繰り返し、半ばやけくそでトレードをしてしまうこともあるでしょう。
一度、舞い上がった人間は周囲が何を言おうと言うことを聞きません。そして、大口の取引を仕掛けて、成功すればいいのですが、たいていこういう場合は失敗をします。
そして初めて気がつくのです。
「俺は相場の天才ではなかった」
と。次に、お酒の好きな方は要注意です。なぜなら、お酒を飲んでFXトレードをするのは危険だからです。
よくあるのですが、お酒を飲んだあと、すぐ家が近くだから車を運転して帰るという人がいます。
周囲が止めて、なれているから大丈夫だと言って、結局、飲酒運転をして警察のやっかいになったり、あるいは起こさなくてもいい事故を起こして、人生を台無しにしてしまったり、そんなそれこそ危ないギャンブルをする人がいます。
酔っぱらっていると、ふだんよりも気が大きくなって、ふだんは考えもしないトレードをやってしまうことがあります。
もっとも多いのは、単位を間違えることです。
1万通貨を取り引きしたつもりが100万通貨を取り引きしていたり、買いポジションを建てるところを売りポジションを建ててしまったり、アルコールがはいってくると、とんでもない失敗をしやすくなります。
ことにふだんから酒を飲みつけている人は、お酒を飲みつけているだけに、「自分は大丈夫だ」と思いがちです。
自分のやっていることは正しいと思ってしまって、あとからとんでもないことをしてしまった、そんなはずではなかったと後悔をする羽目になります。
ですから絶対にお酒を飲んだ日は、パソコンにさわっても、トレードだけは絶対にしないでください。
さらに、トレードで失敗をしたときに、ひどく落ちこむ方がありますが、落ちこんでいてはまともなトレードができません。
気持ちの切り替えが重要になってきます。ですから、気持ちが落ちこんでしまったときには、トレードから離れていったん冷静になるように、気持ちを整えることにしましょう。
そして、平常心に戻ってから、トレードを再開しましょう。
損切りをその都度変えてしまう人は儲からない
誰でも損失を被るのは嫌なことです。
ですから、自分は損切りは絶対にしない、というトレーダーがいます。トレーダーとしていろいろな考えがあるのはけっこうですし、損切りをしないというのがその人のポリシーであれば、それはそれで認めるほかはありません。
損切りをしない人は傍らにおいとくとして、問題は損切りを入れても、レートによって損切りのレベルを変えていく人がいることです。
たとえば、レートが100円のときに、買いポジションを建てるとします。損切りを95円のところに設定しました。
レートが最初、順調に101円、102円と上昇していきましたが、途中からトレンドが切り替わり、下落トレンドに突入して、レートが97円、96円と下がってきました。
そうしたローソク足の動きをみていたトレーダーAさんは、このままでは95円で損切りを食らってしまうと思い、損切りのレベルを92円に下げてしまい、損切りを避けることにしました。
しかし、レートは下落をし続け、92円に到達するのも時間の問題となりました。焦ったAさんは損切りを90円のレベルにさげることにしました。
しかし、ここで問題が置きました。そのレベルまで下がると、強制ロスカットの対象になることです。
結局、Aさんは強制ロスカットにあってしまい、被らなくてもいい損失を被る羽目になってしまいました。
損切りを最初のレベルで損切っておけば損失は少なくてすんだのですが、欲をかいたのが災いとなって、気がついたときには損失を膨らませてしまいました。
後から考えてみると、まったくばかげたトレードだったといえます。
また、損失を嫌うあまりに。損切りレベルを変える人は、利食いも早くなり、儲かるべき利益をのがしてしまう傾向にあります。
損切りを心配するあまりに、利益が出てしまったらすぐに利食いをして、安心を得たいのでしょう。これも粗末なトレードだといっていいかもしれません。
非情に徹することができない人はトレードに向いていない
非情という言葉を聞くと、何か恐ろしいこと、冷徹なことを思い浮かべてしまいますが、けっしてそんなことはありません。
FXトレードは株式トレードとは違います。株式トレードは景気がよくなってくると株価は上昇しますが、景気が落ちこんでしまうと株価は極端に冷え切ってしまい、ボラティリティも小さくなってきます。
ところが、為替のトレードは景気、不景気にまったく関係がありません。インフレ、デフレとも無縁です。
そういう意味では、どんな環境にも影響されない、唯一無二の金融商品だといっても過言ではありません。しかしなかにはこんな考えをする人がいます。
たとえば、2001年の9月11日に米国で起きた同時テロ、さらに、2011年3月に発生した東日本大震災など、大惨事や大災害が起きたときに、為替相場で儲けるなんて、不謹慎ではないか、と思う人です。
人が不幸な目に遭っているときに金儲けをするなんて言語道断だと、トレードをしている人を非難する人もいます。まるでFXを悪者のようにいう人がいます。
しかし、FXトレーダーなら、そんな周囲の雑音に惑わされてはだめです。ただ、淡々とトレードをしていくのがFXのトレーダーです。
さらに、財務省や日銀が中心となって円安に誘導するために、米ドル買い円売りの為替介入をしているときに、逆の売買をするのは国益に反するのではないかと、まるで愛国者のような気持ちを抱いてしまう人がいます。
日本は輸出主導型の国家ですから、貿易面では円安のほうが貿易収支は黒字になります。1米ドル100円と120円とでは、1米ドル120円のほうが円計算をしたときに、利益が多くなります。
そのため、国としては為替介入をして、円安に誘導することがあるのですが、そうしたときに、逆に円買い米ドル売りを仕掛けるのは、国の施策に違反するという理屈です。
そんなことをトレーダーがいちいち気にかける必要はありません。FXトレードを行う目的は、あくまでもお金を儲けるためです。
お金を儲けるために、汗水垂らして働いて得た資金を投入しているわけです。どんな天変地異が訪れようと、FXトレードを行うことにやましい点は何一つありません。
そんなことはまったく気にする必要はないのです。
もっと儲けてやろうとなかなか利食わない人は儲からない
欲を出しすぎると、トレードではあまり儲からないことが多いようです。
たとえば、ロングポジションをもっていて、レートを見ながらまだまだ上がると思って、なかなか決済をしない人がいますが、こういう人は結局、得られる利益を失ってしまいがちになることがおおにしてあります。
相場が上昇トレンドの場合に、まだまだ上がるのではないかと欲の皮が突っ張ってしまって、なかなか利食わないで、そのままにしていると、いつのまにかトレンドが終了し、気がついたら下落トレンドに突入してしまい、結果としてほんの些細な利益しかとれなかったというのは、よくある話です。
ご存じのように、上昇トレンドの場合はレートはゆったりと上昇していきますが、下落するときは上昇するときの早さの何倍もの早さで下落していきます。
気がついたときには、「しまった!」と思うことが少なくありません。
まして、土曜日の早朝にニューヨーク市場が閉じたときに、ポジションを手仕舞うことをしないでえ、翌週にポジションを持ち越すのは、あまりにもリスクが高すぎます。
思ったように含み益がふくれていないから、次週の相場にかけてみようなどとは決して思わないでください。
土、日の2日間にどんな政治的、経済的イベントが起きて、相場が急変するかわかりません。
わからないことには手を出すべきではありません。
しかし、欲望が強すぎてしまうと、リスクは関係なく、無茶なトレードを行ってしまう可能性が高くなるのは間違いありません。そこそこの利益を狙うことから始めてみましょう。
相場は逃げない
人は利益を目の前にすると、小さな利益でも早く利益を確定しようとします。そして、損失を目の前にしてしまうと、できるだけ損失は先延ばしにしてしまう傾向があります。
それは、冒頭で述べたテストの結果からも明らかです。しかし、トレードは一回だけではないはずです。何度も何度もトレードを行い、トレーダーは利益をあげようとします。
しかし、どうでしょうか。
いつもいつも早く利食ってしまってばかりいて、それでいて損失は先送りにして損切りを遅らせてしまっていては、最後には、小さく儲けた資金を結果として、放出しなければいけなくなってしまいます。
なぜなら、先送りにした損失が膨らんできて、利益を圧迫するからです。ですから、欲張り過ぎてもいけませんが、早く利食うのも問題です。
そこはバランスよく、トレードを行っていくことです。できたら、一度決めた損切りのポイントは変えないようにして、損切りは授業料だと思いましょう。
また、上昇トレンドが続くとみたら、損切りのレベルをあげていくことによって確実に利益をものにすることができます。
いわゆるトレール注文を使うわけです。
損をしないためには、勝つ確率が高いほうに資金を投入し、負ける確率が高いほうを避ける必要があります。
そのためには、利益確定は焦らずに行い、損切りは早めにやることが鉄則となります。ではどこで利益を確定し、損切り決済を早めにしたらいいのでしょうか。
それを知らせてくれるのが、いろいろなテクニカル分析指標です。
たとえば、ボリンジャーバンドはトレンドの終焉を知らせてくれる唯一のテクニカル分析指標ですし、ほかにも移動平均線やトレンドライン、一目均衡表など、有益なテクニカル分析指標はいくらでもあります。
それらを駆使して、豊かで失敗のないトレードに勤しんでください。
無知はリスク
FXが1998年に個人に解禁となってから2020年で22年目を迎えています。金融商品のなかでは新しい部類ですが、常に言われ続けていることがあります。
それは、「9割のトレーダーが負けている」です。FXトレードは、価格が上昇するか、下落するかの確率でいけば、勝率は50%と理論上はいえます。
しかし現実は、負けている人が9割を超えているというのです。とても不思議な世界です。FXトレードの世界はゼロサムの世界ですから、誰かが儲かっていれば、そのぶんだけ誰かが損失を被っていることになります。
どうして9割の人がいつも負け続けているのでしょうか。
一つは、FXトレードに参入するのが非常に簡単で、ふつうの生活を送っている人であれば、何の無理もなくFX会社に口座を開設することができます。
最近でこそ、テレビコマーシャルでFX会社の宣伝を視る機会は減ってきましたが、FXは誰でも簡単にできると、好奇心をあおっていた記憶があります。
確かにFX参入のハードルは非常に低く、口座を開設した次の瞬間からトレードに乗り出すことができます。
FX会社も心得たもので、証拠金を入金して口座を開いたら簡単にすぐにトレードができるといったイメージを初心者に与えているようです。
しかし、FXはグローバルな金融商品で、世界でもっとも巨大な金融市場であり、そう簡単に知ろうとが利益をだすことができる世界ではありません。
もし、初心者で利益を上げている人がいたら、間違いなく、「ビギナーズラック」といわれるやつです。
ラッキーと思って何もしないで、トレードを続けていると、やがてビギナーズラックにも見放されて、負けが込んできて損失が膨らみ、市場から退場を余儀なくされることになってしまいます。
そうしたときに自分をふり返って反省し、FXトレードをいちから真摯に勉強するか、いったんは退場するがまたお金が貯まってからやってみようと、そのまま何もしないか、で今後のトレード人生が変わってきます。
トレーダーとして成功している人を見ると、そこで反省して、一から勉強をし直していく人が、トレーダーとして市場に長く残っているといえます。
トレーとにとって、リスクを被ることが一番嫌なことですが、「無知=何も知らないこと」は、最大のリスクです。
日々、精進しましょう。
辻秀雄氏プロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから