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【トレーダー紹介】緒方準さん

FX実践レポート FX実践

FXトレードは心技体が整わないとうまくいかない!睡眠不足はトレードの敵!

さくら
さくら

緒方さんは、株式投資は約20年、FX歴は約37年になるというFXトレーダーとしてはベテランの部類にはいります。

好きな通貨ペアは、「米ドル/円」「ユーロ/米ドル」「ユーロ/円」で、使っているテクニカル分析指標、ローソク足と移動平均線、ボリンジャーバンドなどです。

邦銀時代は大暴れ

――緒方さんが活躍されていた80年代のマーケットは、マーケットにおける邦銀の立ち位置はどんなのだったでしょうか?

手前味噌で言ってしまうと、邦銀に勤めていたときはかなり派手にトレードをやりました。

当時、世界のなかで投機的な動きをする銀行として有名だったのは、アメリカのバンカーズトラストという銀行でした。その銀行は後にドイツ銀行と合併しました。

私たちのチームは、バンカーズトラスト銀行に近いような暴れ方をしていたことを今でも鮮明に覚えています。

でっかい玉を頻繁に取引をしていましたので、結果、かなりのボリュームが毎日、市場で飛び交っていたはずです。

――あのころは、日本のトレーダーたちは凄い玉をやっていたという話を聞いたことがあります。日本国内にいると、あまりそういう話は聞きません。

失礼かもしれませんが、そういうディーリングをしているイメージがありません。「そうなんだ」という驚きはかなりあったんですけどね。

銀行の立ち位置もありました。当時、都市銀行は13行ぐらいありました。そのうちのトップといわれる銀行は5行ぐらいでした。

ただ、私がいた銀行は資産規模が小さい分だけ、リスクを負って儲けようという思想があって、他の銀行とはカラーが違っていました

昔は自由度が高かった

――そのころのディーラーに与えられているリスク許容度は、自由度が高かったということですか?

自由度は高かったですね。

――恐らく、今だとガチガチに縛りがあって、リスクが取れないじゃないですか。

リスクを取れない。

――個人の裁量ではないですが、そういうのが大きかったのですか?

個人の裁量というか、枠は当然、銀行が決めてきます。為替のスポットというよりFXで、チーム全体で、10億ドルぐらいですか。

――当時ですよね。

ポジションシートを毎日つくるわけですが、10億ドルが近づくと絶対にこれは危ないというレッドカードが出て、みんなポジションを閉じていくわけです。

――今の規制の時代と比べると、とても華やかに見えてしまうかもしれません。

きついのは、きついですね。

デリバティブ商品は嫌い

――そうですね。そのころの時代から、リーマンショックのときは、デリバティブが凄く流行ったと思いますが、そういう金融派生商品に対する印象はどうでしょうか?

私は嫌いですね。商品には2種類あって、非常にシンプルな為替と、デリバティブに代表される仕組み商品があって、仕組み商品はどうやってサヤを抜いてお客さんに渡すのかが商売ですね。

最初からいくら抜けるのかがわかっている商売なので、トレーディングをうまくやって儲けるのとは違うんですね。

――そうですね。

だから、そういう意味では、仕組み商品は見てくれの良い商品ですね。それはどうしてもダメでしたね。

――なるほど。まさに、有名なサブプライムローンはそれですね。格付けを取るために組成されていましたからね。

相場の心得は「よく寝ること」

――次に、FXのトレードに臨むに当たって、初級・中級者は自分のトレードのスタイルが固まっていないので、悩みながら、いろいろな人の情報を見ながらトレードをやっていると思いますが、長い間にわたって、トレードで収益をあげるためには、どういうことが重要でしょうか?

私が好きな言葉で言えば、「投機をなす者、楽悲を戒む」(日本証券新聞社編『酒田五法は風林火山』より)がありますが、勝ってはしゃいで、負けてはふさぎ込むという意味ですが、これじゃあ、全然成長はありません。

トレードは淡々とやるしかありません。昔の株の相場師で有名な是川銀蔵さんという方がいますが、彼は勝敗にまったく動じないし、相場の心得として言っているのが、「よく寝ること」です。

――凄いですね。

為替のディーラーにとってこの言葉はさらに重要で、1日24時間のうちで、どこで寝るかが大きな課題になってきます。それをできないで、睡眠不足で、自分で粋がって、三十何時間トレードをやったとしても、とても儲からないです。

儲けるためには、心技体がしっかりしていないと、駄目ですね。

――最初はメインの仕事を持っていて、そこにプラスとしてトレードもしようとなると、恐らく、トレードをするのはロンドン時間からニューヨーク時間にかけてだと思います。ですが、仕事を終えて、また、トレードに集中するのは難しいと思います。しかし、集中できる時間が3時間でもあればいい、ということですね?

仕事もトレードも両方集中してやることは難しいですよ。

余裕資金でトレードすることが大事

――皆さん、働きながら資金を貯めてトレードをする、あるいは貯金を崩しながらトレードをしていると思いますが、そこから一歩前に踏み出すのは難しいのではないかと思っているのですが……。

トレーダーとして独立して、安定しているかと言えば、そうではないですからね。勝ち負けがある世界ですから、勝ってる時はいいですが、負けている時は精神的にも追い込まれてしまいます。

そういう意味では大変な世界なので、よほど大きく証拠金を積んでトレードをするか、自分がプレッシャーを持たないでトレードをしないと、できないですね。

――いわゆる、余裕資金でトレードをするということですね。

カツカツの資金でトレードするのはかなり難しいと思います。

――いまレバレッジは25倍ですが、初心者や中級者はレバレッジを目一杯かけてトレードをしがちだと思います。レバレッジは何倍ぐらいをかけたらいいでしょうか?

相場状況によって当然、数値は異なると思うのですが。

具体的な数字は言えませんが、証拠金を気にしないでトレードできるポジション、あるいは、証拠金の大きさを考えてトレードするのが大事ですね。

私は全然、証拠金のことは気にしません。それぐらいでないとトレードはできません。

――かつかつの証拠金でトレードしていたら、あとどれぐらいでロスカットにあうか、いちいち気になってしまいますからね。

程々の儲けでよいと

――あと、よく質問があるのが、ストップロスプロフィットテイクをどういうふうに設定したらいいのか、ということですが……。

それの話をまずしておいたほうがいいと思うのは、これは上がるぞとか、下がるぞといった、相場に対するひらめきがあると思います。

このひらめきと、それが本当に現実化するまでの期間は、自分が考えているよりもずっと長いです。ただ、みんなどうしてもひらめいてしまうと、すぐ飛び込んでいってしまう。

なおかつ、同じようなひらめきをみんながするので、いっぺんにポジションが偏ってしまう。そうすると、相場が自律反転的に戻ってしまって、やられてしまうのが多いですね。

相場がこうなると見えてきたときこそ、じっくりとチャンスを狙う。

それも、こんなところまで戻るのかというところまで、相場というのは戻りますから、そこまでじっと待つ、ということが大事です。

それができるようになると、プロフィットテイクのタイミングがわかってきます。

逆に、プロフィットテイクのほうはどうかと言えば、目で見て、良いレートだなと思ったら、その段階で利食っちゃっていいです。

自分の五感に素直になる、ということですね。

逆にね、ここは自分が目標にしているレベルにまだ足りないと、そこで変に固執してしまうと、せっかく儲けることができたのに儲からなくなることがあるので、固執するのは止めたほうがいい

その代わり、止めてから相場はもっといってしまうかもしれないが、その時は悔しいですから、もう相場は見ないことにします。一応、利食ったら離れたほうがいい。

よくあることなんですね。

たとえば、目標50万円の利益のところを、49万円まで稼いで、あと1万円を稼ぐと50万円になるという時点で、その1万円のために、やられてしまうことがあります。

それも全額ですよ。そういうことがあるので、きっちし儲けるということではなくて、程々のつもりでいたほうがいい。

自動売買システムは構造的に単純

――トレードには、裁量トレードと自動売買がありますが、皆さん、最初は裁量トレードから入ると思いますが、自動売買についてどうお考えですか?

実は、あるFX会社から依頼されて見ている自動売買があるのですが、構造的に非常に単純で、こんなものでいいのかなと思っています。

ただ、なんか儲かるようです。1カ月トレードをして、年利で言うと10%ぐらいの利回りです。

単純に上がったら売って、下がったら買って。レンジの相場だから儲かるのだと思いますが、これが上がりっぱなしの相場だったら、儲からないと思いますよ。

――人工知能搭載自動売買については、どう思われますか?

やってみていいんじゃないですかね。

――流行ったら、流行ったで、クラッシュを引き起こしてしまうのかな、と思うんですが。

任せたくなる気持ちもわかりますが、売りから入るのか、買いから入るのか、そこがすごく大事なところで、それをうまく決めてやれば、儲かるようにできていると思います。

「値動き分析」でリアルタイムのポジションがわかる

――よく出る話ですが、「ファンダメンタルズ」か「テクニカル」か、ということですが。

「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」「値動き分析」の3つを、総合的に使うことが大事ですね。

とくに、「値動き分析」がわかると、リアルタイムで世界のポジションがわかります。それがわかれば、トレードにとってかなり大きい。

ファンダメンタルズのポイントは、今の相場のテーマはファンダメンタルズで決まることです。

だから、米の利上げの問題もそうかもしれませんし、ドイツ銀行の話とか、そういうテーマがあって、どれに対してマーケットが飛びついてくるのか、どれにみんなが注目しているかを見るのが、ファンダメンタルズです。

それは推理するわけですが、推理することは、トレーディングをやっていくうえでは重要です。

テクニカルは、基本的に一番入りやすいけれど、単体で使うのではなく、組み合わせて使うことが重要です。

――それぞれのメリット、デメリットがあるということですね。

そうですね。テクニカルの欠点で言えば、オシレータ系のストキャスティクスは、相場が急落した時は使いものにならない。

移動平均線とローソク足

――ところで、初心者が見るべきテクニカル指標を3つ挙げるとした、何と何ですかね?

ブログでも紹介していますが、良いと思っているのは、「酒田五法」なんです。

酒田五法」というローソク足のチャートなんですが、けっこう役に立ちますよ。私は、テクニカルに関する書籍は読んだことがないんですよ。

そのなかで、唯一、読んだのが、酒田五法の本で、『酒田五法は風林火山』というタイトルでした。

それを一冊だけ読んで、自分の書棚に置いているのですが、たまに読みます。あと、テクニカル以前の問題かもしれませんが、好きなのは移動平均線。

皆さん、チャートを見るときに、ラインを引くじゃないですか。ラインというのは、自然じゃないんですよ。

本当は波なんですよ。波のなかで見ていかないと、わからないはずなんですよ。

――そうです。

だから、そういう意味では、移動平均線はいいと思います。移動平均線とローソク足と……そんなところですね。

相場は生きもの

――あとは相場観とか、経験によってくるものが多いのですかね?

もちろん、それも重要ですよ。たとえば、「値動き分析」を自分で確立していくなかで、よくわかったことは、相場を見ていて、「この相場は違う」とか、「この相場はおかしい」と思うこと自体がもう、おかしいんです。

逆に見ていかなければならないんです。こっちの間違いをどう直していくのかが大事です。

――なるほど。

だから、よく書くんですが、「相場は生きもの」だと。「相場は生きもの」だから、どんどん変化していく。

ですから、その変化に自分が合わせていかなければならない、ということをよく書いていますけど。

――得てして、自分のストラテジーが固まっている方に限って……。

そうそう、そうそう。

――自分は間違ってはいないという言い方をされている方もおられると思ったので。相場は常に正しい、ということですよね。

発想を変えてみると、逆に、相場が見えてくるんですよ。向こうに対して文句を言っている間は全然見えないのが、自分が間違っていたと気づいた瞬間に相場が見え始める、ということはありますよね。

――「相場は生きもの」という話ですが、70年代、80年代、90年代と時代を経るに従って、動きもそうですが、方向性やパターンもかなり変わってきたと思うのですが。そこを生き抜いてきたコツというのは、「相場は生きもの」と認めて、自分の方向性を修正してきたからなんですかね?

軌道修正は大きいと思いますね。当然、最初のうちは相当、痛い目に合いましたけどね。その痛さを忘れない、ということが大事だと思うんですね。

――どうしても自分のパターンをつくりたくて、成功体験から離れられないというのは出てきちゃうかなと思うんですが。

たとえば、少し、古い話なのですが、1985年に「プラザ合意」があって、円が超円高に持っていかれたことがあるんですね。

240円から80円まで、160円も円高になって。あの時に、マーケット中に発生したのは、円高派の人たちが大量に発生したんですね。

10年間かかって、160円も円高になると、もう頭が回らないんですよ。

右を向いても、左を向いても、みんな円高しか言えなくなってしまっているから、そうなると、円高の相場でなくなってからは、彼らは生きていけないですよね。

だから、もの凄い大量の人たちが相場から撤退していきました。

――そこら辺をくみ取っていくのは、相場を見ているのと同時に、正しい情報を取得するのが大事なのでしょうか?

情報を取ることは大事だけど、まず、自分に素直であることが大事なんじゃないですかね。やってみて、何かおかしい、何かおかしい、と感じることはあるはずなんですよ。

何かおかしい、を過小評価すると、結局、うまくはいかない。

そのためには、自分の感じたことを過小評価せず、おかしいと思ったら、何かあると思って、相場を注意深く見るとか、自分のやっていることを見直すことなどが大事でしょうね。

そうしないと、マーケットでは生き残っていけない。

FX会社を選ぶなら使い勝手がいいところを

――FX会社選びのコツってありますか?

規制以前は、レバレッジにしろ、スプレッドにしろ、各社でいろいろ異なっていましたが、最近では、どこも似通った状態だと思うんですね。 使い勝手ですよね。

今、私が使っているところは、使い勝手が非常に悪いんですよね。

――とりあえず使ってみて、使い勝手が良いものを選べばいいかもしれませんね。

そうだと思いますよ。スプレッド重視の人とかいろいろいるでしょうが、総じて言えば、使い勝手だと思いますね。

ポジションはよく持って2日

――あとトレーディングの時間の幅といいますか、スキャルピングなのか、中長期のトレーディングなのか、よく言いますが。

ポジションを持っている時間のことですね。それはその人、それぞれの好みなので何とも言えませんが、私はポジションをよく持っても、2日ですよ。

――2日ですか。

ええ。だいたいオーバーナイトしてしまうと、次は止めちゃいますね。

――それには何か理由がありますか?

ポジションを持っている時間が長くなればなるほど、リスクが高くなります。できるだけリスクは最小限に抑えたいので、ポジションはそんなに長くは持ちたくないですね。

――取引量は、通貨ペアごとに決まっているのですか? それとも、どの通貨ペアでも一定の量なのですか?

そうですね。

取引するのは主要通貨に限る

――通貨ペアによっても変わりはないのですか?

ええ、そうですね。ポンド系は、でかいポジションは持ちたいとは思わないですね。

――取引をされる通貨は決まっているのですか?

本音を言いますと、3通貨ペアに特化しています。3通貨ペアとは、主要通貨の3つで、「米ドル/円」「ユーロ/米ドル」「ユーロ/円」です。

何か起きた時に、流動性が確保されるのは、この3つの通貨ペアしかありませんからね。

休みが取れないほど忙しい毎日

――緒方さんはメールマガジンもやっておられますか?

やっています。朝の6時から始めて、その日の終わり、つまり夜の12時までやっています。

――ものすごい長丁場ですね。

朝の6時に配信するものは、前日のマーケットのまとめです。あとは、相場に関する話を盛り込みます。

朝の9時ぐらいに配信するものは、東京市場のオープンの話と、トレードの方針とかを書きます。トレードの方針は朝の9時と、午後2時ぐらいに配信するものにも掲載します。

そうしているうちに、ロンドン市場が始まりますから、午後3時半ぐらいから、値動き分析を元に、ロンドン時間で相場がどう動くかをまとめて配信します。

そこで、何本か配信します。そして、午後の8時半ぐらいになると、ニューヨークのマーケットがどうなるか、明日のマーケットがどうなるかをまとめて配信します。

そして、1日の終わりである12時に、ニューヨーク時間の終わりから、ウェリントン市場やシドニー市場の始まりの相場がどうなるのかの予測を配信して、1日を終えます。

――かなり凝縮された情報が毎日配信されるわけですね。

けっこう忙しいです。

――休まれるときはないのですか?

それが一番の悩みですよね。

――恐らく、心技体ではないですが、身体もしっかり保っていないとできないじゃないですか?

正直言って、今、家で仕事をしていますが、家でやるのは凄く気に入っています。

健康のためにウォーキングを1日、1時間半やったりとか、月に2回、一泊旅行ですが、温泉にいってマッサージを受けるとか、長い旅行は行けませんが、そんなことをしています。

――定期的に身体と心のリラックスも入れて、ということですね。

そこが秘訣でもありますね。

――わかりました。最後に読者へのメッセージをお願いします。トレードの心得などを。

私の人生というのは、28歳の時に為替の世界に入って、最初は、本当にど突かれ、小突かれながら、トレードをやって、そのうち、今度は、「お前は独り立ちしていいよ」と言われて、独り立ちした時に、半年ぐらいでしたが、その時に、初めて相場を前向きに見た時に、楽しくてしょうがなくなっちゃって、さっそくこれを一生の仕事にしようと決めたんですよ。

そうなると、人間、強くなるんですよね。

どんな苦しいことがあっても、楽しいから耐えられるんですよ。

ただ、相場をやっていくうえで必要なのは、楽しむことですね。

――ありがとうございました。

辻秀雄氏プロフィール

辻秀雄氏
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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