20年近い為替ディーラー暦を持つFX業界の指南役!地道な努力が利益を積み重ねていく
相場を予想することと稼ぐことは違います。
予想が当たっても損をすることもあり、反対に外しても稼ぐことができます。もちろん相場予想を行わずに、取引はできません。
予想し、損切りと利食いをどこに設定するかといったこと、タイミングが損益を大きく左右することになります。
相場には短期・中期・長期の三つの流れがあり、それぞれがテーマを持って動きます。そのテーマが終わるときが流れの変わり目になります。
それをいち早く察知することが損失回避と同時に大きな利益に繋がります。
個人トレーダーは「地道が一番」
――それではまず、プロフィールからご紹介いただけますでしょうか。
アムロ銀行(現ABNアムロ銀行)で、アービトラージ・ディーラーとしてスタートし、マネーやフォワード・ディーラーを経て、外為スポットディーラーに。
その後、RBC(カナダロイヤル銀行)資金為替部長、ウエストパック銀行のシニア為替ディーラーとして、3年間のロンドン支店勤務を含めて約10年間勤務。
次に、インドスエズ銀行(現カリヨン銀行)にチーフ・カスタマーディーラーとして入行し、自動車や石油会社などのメーカーや、生損保、商社などの大手顧客へ為替のアドバイスを行ったのち、1998年に個人のデイトレーダーとして独立しました。
ちょうどインターネットが流行り始めていた頃で、証券会社もネット取引を始めたばかりの頃でした。
2000年の後半まで個人トレーダーをやって、1999年1月にユーロが登場。「ユーロって面白そうだな」と思ってトレードしたら、最初は儲かったんですが、その後、けっこうやられました。
そんなときに、FX会社を立ち上げてほしいという話がヘッドハンターから持ち込まれて、二つ返事でOKしました。
2001年頃からセミナーをやり始めて、本格的にFX業界に私自身が身を置くことになったのですが、以来、10数年間、FXの世界にいて思うのは、個人トレーダーにとっては「地道が一番」ということです。
よく、数カ月で1億円儲けたという話を聞くことがありますが、そういう人は数カ月で2億円はやられる可能性が高いと思います。
個人トレーダーには、一発勝負的なトレードは向いていません。FXは博打じゃないので、できるだけリスクを抑えて取引を行うのが本筋です。
エントリーは凄く大事
私が今、どんなトレードを行っているかと言えば、基本はファンダメンタルズですが、トレードの主体はテクニカル分析を基にしています。
テクニカル分析の役割は、相場の流れの転換点を見つけることです。その日の相場や一週間、一カ月の相場の流れの変わり目を見つけて、ぎりぎりのところでエントリーしていく。
ほとんどの方は、中途半端な入り方をして、予想が外れてみんなやられてしまう。それってギャンブルなんですよ。
――おっしゃる通りだと思います。
そういうことをやらずに、じっと我慢することです。エントリーって凄く大事で、中途半端な入り方をすると、損切りの幅も大きくなってしまう。
ぎりぎりのところで入っていけば、損切りも違ってきます。
――エントリーのタイミングは、自分の得意なパターンあるいは必勝パターンがくるまでじっと待つことが大事だということですね。
そうです。しかも、チャートも1日中見る必要はありません。見ていると、気持ちが変わったりして、けっこうやられちゃうんですよ。
たとえば、ここで買おうと思うんだけど、下がりきれないので、今すぐ買っちゃおうと思って買うんですね。
そうすると下がってしまって、「ああ、待っていればよかった」となるわけですよ。 だから、チャートをずっと見続けていると、自分の心がよけいに揺れてしまう。損切りもそうです。
ここで損切りをしようと思うんだけど、ぎりぎりまであと3銭となると、10銭ぐらいずらしてしまおうかなとなってしまうんです。それをやると切りがありません。
――そうですね。
ドスンと大きくやられるのは、テクニカル分析を勉強していないから
損切りというのは、最初に決めたところで、必ずそれを守らなければいけないものです。逆に、利食いは変えていい。1円取れるところを30銭で終わってもいいわけです。
たとえば、1日平均で30銭勝って、20日間で6円の儲けです。100万ドル持っていたら、600万円です。10万ドルで60万円。
ですから、30銭やられて、60銭勝って、また30銭やられて、1円勝ってという、大きな取引ではなく、細かい取引をやっていくと、けっこう利益が積み重なっていくわけです。
個人でやられる人というのは、コツコツ稼いで、ドスンと大きくやられるケースが多いんですが、ドスンと大きくやられるのは、損切りをちゃんと出していないからですよ。
――勝てていない人は恐らく、損切りの重要性は頭では理解していると思うんですね。ただ、損切りをどこで入れていいのか、どのぐらいの幅で入れたらいいのか、がわかっていない方がほとんどなのかなという印象を受けているんですが。
それはテクニカル分析をちゃんと勉強していないからですよ。
――なるほど。損切りのポイントは、テクニカル分析を基に設定するということですか?
もちろんです。
あとはどこかでファンダメンタルズというか、相場の流れをつかんでいく。
相場のテーマというか、たとえば、アメリカの大統領選挙だとか、FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策だと、どういう流れでそこまでいくのかをある程度想定して、あとはシンプルなテクニカル分析を使って、売られすぎ、買われすぎを見ていく。
もうひとつは確率です。過去にこういうパターンの時に、3回やって1回は抜けているけど、2回は戻されているとなったら、そこで買うほうがいいですよ。
確率的にここで止まるということであれば、その手前で買いを入れて、損切りの底を抜けたら止めると、30銭ぐらいの損失で済むわけですよ。
そこからレートが上がるとなったら、値幅を自分である程度欲をかかずに、腹6分か7分ぐらいで利食いを入れておく。
それを繰り返す。それで要は簡単な通貨を選んでやるということですね。
見やすい通貨ペアを選ぶ
――メジャー通貨ということですか?
当たり前ですけど、難しくない通貨を選ぶことです。
今日の「米ドル/円」は、円の動きを読むのは難しそうだなと思ったら、たとえば、円と絡んでいない「豪ドル/米ドル」だったら、読みやすいぞと。
見やすい通貨ペアを選んでいくということですね。 個人トレーダーのなかには、「米ドル/円」だけしかトレードしないという人がいますが、そういうのはもったいないですよね。
遊んでいる訳じゃないんだから。金を稼ぐためにFXをやっているのだからね。FXは、パチンコや競馬とは違う。
――確かにそうですね。
本気で勝ちにいくんだったら、そういう努力は必要ですね。
通貨の動きはそれぞれ比較してみていく
――トレードされる通貨は何かに固定されているということではないんですね。
自分の見る通貨はだいたい決まっています。
ユーロ、ポンド、豪ドル、「米ドル/円」ですね。他にカナダドルとか、メジャー通貨が一番いいですよ。流動性がありますからね。
一番怖いのはプライスがなくなってしまうことです。
――そうですね。
「豪ドル/円」の動きというのは、「米ドル/円」と「豪ドル/米ドル」「豪ドル/円」と、この3つを見ていかないとわからないですよ。
「豪ドル/円」だけ見ていてもわからない。そういう意味では、常に比較しながら見ていくことが重要です。
通貨というのは、ベンゼン環のように、いろいろな手と足がたくさん出ていて、それが引っ張ったり、押したりして、動いています。
けっして、米ドルと円だけで動いているわけではなくて、そこに、「ユーロ/米ドル」と「ユーロ/円」、「ポンド/米ドル」と「ポンド/円」といろいろな通貨が繋がり合って動いている。そのへんをよく見ていかないと、相場観はわかりません。
初心者が下手なのが利食い
初心者の方がやられてしまうというのは、損切りも下手なんですが、もっと下手なのが利食いなんですよ。
――そうなんですね。
全然チャンスがなかったと言う人が多いんですが、10回やって1回もチャンスがなかったということはあり得ません。
最後は、利食いのタイミングを逸して、損切りが先についてしまっているんですよ。利食いというのは、最初にここだと決めていても、まずいなと思ったら変えてもいいが、損切りだけは変えない。
ただし、相場がいい方向に動いているときは、損切りの位置を変えることはあります。 たとえば、100円で買って、102円で売るつもりの時に、相場が101円になったとします。
その時に損切りは、99円50銭においていました。
レートが1円上がって、次のサポートレベルが、たとえば、100円50銭でかたくなったので、利食いはそのままにしておいて、損切りの位置をその価格の下に置いて、ある程度の利益を確定していくわけです。
トレール注文のようにですね。 そういうふうにこまめにやっていって、できる限りロスを少なくして、利益を増やしていくことをやっていれば、そんなにやられることはないです。
ボラティリティが高いときはエントリーは慎重に
――1日の取引時間はどのぐらいですか?
日中は忙しいのでチャートを見ていられないので、朝9時過ぎぐらいにIFD-OCOで2つか3つの注文を出して終わりですよ。
取引時間って、ほとんどありません。
――朝、オーダーを出して、お仕事をされて……。
そうですね。
だから、時間をかけてチャートを見ていれば勝てるというものでもありません。むしろ、チャートを見続けないで、ぱっと見たら、利食っている、でいいんですよ。
ただし、ボラティリティが高いときは、チャートをよく見て、自分で考えてエントリーしたほうがいいですよ。
だから、私のやり方は、ボラティリティが高いときは、やられはしませんが、なかなか勝つのが難しいですね。
ローソク足と移動平均線、パターン分析
――トレードをしていると、テクニカル分析を学ぼうという方が増えてくると思うんですね。ただ、テクニカル分析といっても多種多様にあります。初級・中級者にとっては、どのテクニカル分析から学べばいいでしょうか?
テクニカル分析とは、自分でも判断するためのものですが、みんながどういうふうに判断するかを見るためのものです。ということは、オーソドックスなものでないとダメなんですよ。
――なるほど。
だから、基本的なローソク足と移動平均線、それとパターン分析で、それぐらいなんですよ。私は、オシレータ系はほとんど見ません。
――その理由とは?
オシレータ系を見なくても、相場を毎日見ていると売られすぎ、買われすぎがわかるからです。オシレータ系を使うのは、相場を見ていないからです。
――短い時間でも相場を見続けることは重要ですよね。
画面にくっついて見るのではなく、全体像が見えるかたちで眺めていると、相場観が養われていきます。
最初からやられる覚悟を持て
――今までトレード失敗したな、というのはどんな時ですか?
個人で、ですか?
――ええ、そうです。
トレードを始めたばかりの頃は、損切りをちょっと遠くにしたりとか、同じことをやるんです。それを繰り返してはダメです、反省が必要です。
大きな失敗はないですが、2回、中ぐらいの失敗をやると、3回目が続かなくなるんですよ。
2回、失敗すると、失った損失を取り戻そうとして、もっと大きな金額をつぎ込んで、損切りを遠くにおいて、結局、ドスンと大きくやられるんですね。
――相場で失敗する人のよくある話ですよね。
1回目で失敗したところで冷静になって、もう一度、自分の立場を見直して、次はどうやって攻めるかを練り直してみるべきなんですよ。
相場は24時間動いていますから、チャンスはいくらでもあります。 そこで利食いが20ポイントや30ポインとで終わってしまっても、もう一回、新たにスタートする。
あとを引いてはダメなんですよ。 それは自分の訓練なんですね。最初からやられるという覚悟でもって取引をすると、けっこう上手くいくんですよ。
天井で売って、大底で買おうと考えていたら、たいていやられてしまいます。
塩漬けは絶対にダメ!
――岡安さんは、精神のコントロールというか、精神面がすごくお強いと思いますね。
それは、過去に鍛えたからですよ。
――そうですよね。
身体でやられた痛さがわかれば、やっぱりダメだとわかります。夜中に相場をどうしてもチェックをしたくなるというのは、ポジションを持ちすぎるからです。
自分の甲羅の大きさで取引をしないといけないですよ。 自分の甲良の大きさを考えずに、もっとでかいのでやろうとするから、なんか気になっちゃって、30銭か40銭、反対に動いただけでびくびくしてしまって、最後はやられてしまう。
もっと最悪なのは、長いことびくびくしていると、びくびくしなくなってしまうことです。これを塩漬けというのですが。
もうこのポジションはいいやと思って、新たに別のポジションを建てようと考えるわけです。
たとえば、30銭から40銭離れていてもこわかったのが、2円や3円離れていてもいいやとなってしまって、そのポジションに対して感覚がおかしくなってしまう。
塩漬けは絶対にダメです。相場観も狂ってしまう。もし塩漬けの人がいたら、すぐに切れ! と言います。
――塩漬けになってしまうと、痛みを忘れてしまいますよね。
それはダメですね。だから、損切りだけは最初に決めたところで必ず切ることです。
あと、精神的に疲れてくると、「もうやだ、やっぱり向いていないか」となって、FXができなくなります。
お金よりも、精神的なものが大きいですね。そうなってしまうと、取り戻すも何もありません。FXを止めてしまいます。
基本的に、最初の3カ月でみんな20万円から30万円やられてしまい、3年続く人はほとんどいないと言いますが、それは資金管理が甘いからです。
それで勝てないというのであれば、勝てない理由がちゃんとあるはずです。自分でその理由がわからなければ、誰かのセミナーに行って確認するのもいいでしょう。
自動売買で儲かるはずがない!
――ところで、自動売買についてはどうですか?
自動売買はいっさいやりません。それで儲かるのだったら、ヘッジファンドはみんな儲かりますよ。ヘッジファンドだってやられているのに、自動売買で儲かるはずがない。
いろいろ優秀な人の考えを組み込んで自動売買プログラムがつくられていると思うが、相場が変わったときにどう対処できるのか。
それも組み込んでつくっているという人もいますが、そんなのだったらみんな勝っていますよ。
――AI搭載のEAも出始めていますが。
そんなものをやるのだったら、誰かに運用を任せたほうがいいと思います。
それが面白いのだったらやってもいいが、面白いのと勝てるというのは違う。
――そうですね。
為替っていうのは、ある程度本気で勉強して取り組まないと勝てるようにはなりません。
システムトレードもいいんですが、それだったら、システムトレードを徹底的に勉強して、自分でソフトをつくってトレードをするとか、そのぐらいの気持ちを持たないとダメだと思いますね。
それでも勝てるとは思わないけどね。それにはデイトレのちゃんとした基礎を持っていないと無理ですね。
――システムトレードはある一定期間、もしかしたら勝てるかもしれません。それが、改良なしに、3年、5年、10年勝ち続けることはあり得ない。
システムトレードで勝てたときにぱっと止めて、また勝てたときのパターンがきたときに、再びシステムトレードで取引をするのはいいでしょうが、そういう人たちはずっとシステムトレードをやっているんじゃないですかね。
しっかりしたFX会社を選ぶ
――FX業者についてもかなり淘汰されてきたし、各社のサービスも似たり寄ったりになってきていると思います。そこでお聞きしたいのですが、FXの業者選びはどこを見て選べばいいでしょうか?
私は3社ぐらい使っていますが、情報がしっかりしているところ、プライスがめちゃくちゃいいところ、あまりスリッページがないところ、逃げないところがいいですね。
実際、そうしたFX会社を使っています。2社は同じものを使っています。万が一、1社がシステムダウンしても大丈夫なように、です。
もう1社は、情報がしっかりしているところを使っています。
――やはり、情報は大事ですからね。あと、自分のトレードスタイルに合わせてFX会社を選んでみるとか……。
そうですね、やはり、しっかりしたFX会社がいいですね。
FXは余裕資金でやること
――最後に、読者の皆さんに長く勝ち続けるための秘訣、コツみたいなものをいただけますでしょうか。
年がら年中FXをやりたい気持ちはわかりますが……。
――ポジポジ病ですか?
FXを本業にしている方だとずっとFXをやり続けなければなりませんが、私はできたら、みなさんにFXを本業としてやって欲しくないと思います。
最低限、どこか他から収入が入ってきたほうがいいと思っています。
それから、FXは余裕資金でやるものです。
たとえば、ここに100万円がありますが、これは生活資金として必要なお金ではなく、なくなってもいいんだというお金だからということで始めることです。
それから、天井と大底は最初からそののりしろは捨てる、これは取れなくてもいいんだ、と最初から覚悟を決めていくと、楽なんですよ。
結局、FXは我慢比べみたいなところがあって、ここまできたら買ってみようとか、引きつけてつかなかったらつかなくてもいいよ、という余裕を持ってやったほうがいいですね。
年がら年中ポジションを持っているとやられてしまう。
それから、ポジションは小さくして、資金管理はきちんと行うこと。そして、けっして、無理はしないでください。
辻秀雄氏プロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから