投資の心得
FXトレードをはじめ、株式にしても、CFDにしても、仮想通貨の取引にしても、投資にはメンタルがものすごく影響します。
言葉を変えれば、メンタルさえしっかり管理することができれば、投資においてある程度のパフォーマンスは上げることができるということです。
ではまず、口幅ったいようですが、投資の心得を少しばかり述べてみたいと思います。
一つは、「相場には絶対はない」ということです。
FX初心者には不思議に思われるかもしれませんが、投資で好成績を上げている人は、「相場に絶対はない」ということを十分に承知しています。
二つ目は、「トレードでは決して驕ってはいけない」ということです。
人間ですから、FXトレードで大勝ちをしたときに、つい気分が昂揚して、「自分は凄いんだ」「FXの天才じゃないか」と思ってしまうのも無理のないことです。
しかし、こうした驕りは、必ず次回のトレードの負けを誘発するもとになります。
ですから、どんなに好成績を上げたとしても、常に謙虚な気持ちや姿勢を保ち、人生は一生勉強だという気持ちをもって学ぶことを忘れないでください。
学ぶことを忘れてしまった時点から、進歩が遠のいていきます。
三つ目は、「自分に自信を持とう」ということです。
これは、ともすれば前述した驕りと紙一重なのですが、行動も源を探っていくと、その原動力となっているものの一つが、勇気です。
FXトレードをするにもやはり、勇気は必要です。
なぜなら、自分で稼いだ資金をつぎ込んで、失敗したらその資金は減ってしまうというリスクを背負っているからです。
投資は常にリスクと隣り合わせの関係ですから、リスクを背負いながら投資を行うためには、勇気がないと一歩も踏み出せません。
そういう意味で、「勇気を持とう」というわけです。
四つ目は、「わからないものはわからないと割り切ること」です。
相場は難しいときと、相場が読めるときとありますが、初心者にしてみれば、相場は難しいことが多いのではないでしょうか。
しかし、これは初心者だからわからないのではなく、誰がみてもわからない相場は、FXトレード何十年というトレーダーでもわからないのです。
それを無理やりわかったつもりでエントリーしてしまうと、損をしたり、苦労したりします。
ですから、わからない相場のときは、手を出さない、ということを徹底するようにしましょう。
相場は常に存在していますし、決して消えてなくなるものではありません。
わかる相場のときに、思い切ってトレードをすれば、好結果につながる可能性が高いのではないでしょうか。
5つ目は、「常に平常心を保つ」「冷静な自分でいる」ということです。
これって言うは易し、案外難しいことかもしれません。
常に冷静でいるって、そうとうメンタルがタフでないとできないかもしれません。
凡人を自覚している身には、常に平常心を保つこと、冷静でいることはかなりハードルが高いように思えます。
しかし、相場の動きや自分の取引にいちいち一喜一憂をしていたら、疲れてしまいます。
損失を出すと怒ったり、悲しんだり、あるいは損を取り戻そうと躍起になったり、冷静さを欠く行動をしてしまいがちですが、それは、FXトレードにとってはマイナス以外の何ものでもありません。
好成績を上げているトレーダーは例外なく、こういっています。
「冷静な精神状態でいること=最大のトレードテクニックである」と。
こうやって、投資の心得を改めて列挙してみると、投資は自分の人間性を養う場でもあるのではないでしょうか。
FXトレードをするのは、お金儲けのためです。
これが第一の目的です。
それは投資に対するまっとうな考え方です。
日本の社会には未だに「お金ことをいうのはみっともない」「下劣だ」という声が根強くありますが、投資の最大の目的はお金儲けです。
しかし、それ以外の副産物として、投資は人を鍛えます。
人をメンタル的に強くします。
だからこそ、メンタル管理が重要なのです。
メンタルとは
では、メンタルといいますが、メンタルっていったい何でしょうか。
教科書的にいえば、心理的、精神、心の状態のことを指します。
現代社会ではとくに、メンタルと組み合わせた言葉がたくさんあります。
たとえば、メンタルヘルス、メンタルケア、メンタルマネジメント、メンタルトレーニング、メンタルブロック、メンタルテストなどなどです。
そして、メンタルが強くなると、どんな状態になるのでしょうか。
ざっとあげてみると、次のようなことがいえるのではないでしょうか。
- 自分自身の考え方がぶれない。
- どんな困難な状況、極限状況に陥っても冷静でいられる、慌てない。
- 強い信念をもっている。
- 自分の力を精一杯発揮できる。
- 簡単に諦めない。
- 失敗を成功への糧とできる。
- 自分に自信があるから、ちょっとしたことで少しも驚かない。
- 冷静でいられるから、あらゆるパターンを考えることができる。
- あまり人やモノに依存しない。
- スッパリ諦めることができる。
などなどです。
逆にメンタルが弱いと、ちょっとしたことに驚いたり、心配しすぎたり、冷静でいられないから慌てて行動して失敗したりなど、マイナスの要素を積み上げてしまいがちです。
それは、トレードにも当てはまりますから、FXトレードを始めたいと思っている人、あるいはすでに始めている人でも、メンタルは大事にしたいものです。
メンタル管理の具体例
きれいに暮らす
メンタル管理のコツは、毎日の生活のなかにあります。
もう10年近くFXトレードを行っているトレーダーさんに聞いた話ですが、相場で好成績を上げているトレーダーや、自分の思い通りの暮らしを実践している人には共通のルールが存在している、というのです。
「それはなんですか」と訪ねたところ、「みなさん、きれいに暮らしている」という答えが返ってきました。
具体的にいうと、みなさん、部屋はきちんと毎日掃除をしてきれいにし、ものは散らかさないで常に整理整頓を心がけているということです。
確かに、精神的にまいっていたり、心理的に疲れていると、生活が乱れると言います。
それが如実に現れるのは住まいです。
住まいがきれいにきちんとしていないと、住んでいても気持ちのいいものではありません。
よくテレビなどで整理整頓できない人の住まいを放送して、あたかも部屋が片付けられないのを自慢している、得意に思っている光景に出くわしますが、視聴していて気持ちのいいものではありません。
部屋の汚さは自分自身のメンタルに大きく影響をしてきます。
そんな環境からはまともなトレードはできるはずがありませんし、勝てる手法など生まれるはずがありません。
メンタル管理の第一歩は、部屋をきれいに片づけて、きれいな暮らしを心がけることから始めましょう。
ゲンカツギをする
次に、運がよくなることは何でもやってみようという気持ちを持ち、実践をしてみることです。
いわゆるゲンカツギといってもいいでしょう。
成功している経営者や芸術家、タレントなどのなかには、ゲンカツギを大事にしている人も少なくありません。
そんなことは迷信だとか、ゲンカツギをするのはたまたまうまくいったからだろうとか、批判めいたことをいう方は確かにいます。
ゲンカツギをバカにしている方も少なくないでしょう。
でも、気も心です。
ゲンカツギをすることで精神的に安定する人は多いようです。
たとえば、お金に関して御利益がある神社にお参りをしたりすると、即効性はないかもしれませんが、精神的にはなにか満たされたものを感じるはずです。
自分の手元の資金が許す限りでいいですが、運気を発揮するものを買って、身につけるのもいいかもしれません。
よく「運も実力のうち」といいます。
確かに、そういう事例はいくらでもありますし、経験された方も多いのではないでしょうか。
FXトレードも、最初は運が良くて勝つかもしれません。
そのときに、たまたま運がいいから勝てたんだと、運を否定するのではなく、その運を自分のものとして、いつか実力に変えていけばいいのです。
失敗と向き合う
人間、注意をしていても失敗することがあります。失敗をしてしまうと、情けなくなったり、腹が立ったり、気持ちが落ち込んでしまって孤独感を覚えることがあります。
そんなときには現実から逃げ出したくなります。
気分転換にいろいろなことをやってみるのですが、いったん落ち込んだ気持ちはなかなか回復することが困難です。
とくに、FXトレードで失敗したら、お金が絡んでいるだけに、深刻になります。
FXで失敗をしたら、FXで取り返すのが落ち込んでしまったメンタルにもっとも効果的です。
損失を出したから次は絶対に失敗しない、取り返したいと躍起になる前に、なぜ失敗をしたのか、その原因を追及し、その原因と対峙し、どうやったら次は失敗しないですむかを考えるのが、真っ先にやることです。
冷静に、気持ちを静めて、失敗への対応策を考えるのです。
そして、再度、挑戦する勇気を持つのです。
失敗をするたびにそうした行為を繰り返していけば、やがて失敗も少なくなり、成績を残すことができるようになるはずです。
そして、そのことが自分自身に自信を与えます。
失敗はできるだけ避けたいですが、かといって、失敗を必要以上に恐れることはありません。
目標やビジョンを持つ
メンタルを鍛えるためには、具体的な目標やビジョンを掲げることも有効な方法の一つです。
しかも、目標やビジョンはできるだけ具体的であるべきです。
たとえば、今年は〇月〇日までに、FXでこれだけ稼ぎたいとか、〇〇平方メートルの家に住みたいとか、2年間の海外留学を〇歳までに実現するとか、具体的な数字を掲げた目標やビジョンづくりをすることです。
そして、毎月、目標やビジョンを見直して、気持ちを引き締めるとか、新しいビジョンや目標を追加して心を新たにするとか、それはいろいろなやり方があると思いますが、常に、目標やビジョンに向かって突き進む生活を送ることです。
たとえば、「目標ノート」か「ビジョンノート」をつくり、年の初めか、あるいは毎月一日、最初のページに具体的な目標やビジョンを書き込み、ことあるごとに目に触れて確認をしてみるのも、メンタルを強くする方法の一つです。
そして、大事なことは、いつも挑戦する心を忘れないことです。
具体的な目標をたくさん掲げているとがぜんやる気が起きます。
自分が本当に望んだものが見えてくるようになったら、FXトレードにもきっといい成績が残せるようになってくるはずです。
FXは戦いの場ではない
FXトレードに勝った、負けたというのはあります。
勝ったというのは決済をして利益を確定したときで、負けたというのは損失を出したトレードだったときです。
しかし、FXは戦いの場でしょうか。
トレーダーにとってFXは敵ですか? FXを敵、あるいは戦いの場だと思っていたら、負けたときには、その負けを取り返そうと、夜もあまり眠れないのではないでしょうか。
とくに、大きな損失をだしたときなど、自分はとんでもない世界に足を踏み入れたのではないかと、恐怖にも似た気持ちを抱くかもしれません。
ある著名なトレーダーのひとりは、「毎日が清水の舞台に立っているかのようだ」と、トレードノートに書いていたのを見せてくれました。
その人は、大きく負けたことがあって、その損失を取り戻すまでは夜もおちおち眠っていられなかったそうです。
しかし、考えてほしいのですが、FXは小さな金額で大きな利益を得る可能性がある金融商品です。
そんな金融商品を敵に回すのではなく、自分の暮らしを豊かにしてくれる味方と考えられないでしょうか。
そう考えてみると、FXとの接し方が変わってきませんか。
そうすると、毎日、トレードをしなくてもいいし、相場がトレンド相場のときだけ順張りというFXの王道で取引をすればよく、精神的にもかなりリラックスできるのではないかと思います。
FXはどこにも逃げません。
要は、自分の考え方次第で、FXは的にもなり、味方にもなります。
みなさんは、どっちが精神的に、心理的に良い状態になれると思いますか?
辻秀雄氏のプロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから