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FXトレーダーだから知っておきたい国際金融の知識

FX実践レポート FX実践

なぜFXに国債金融の知識が必要なのか?

現在のようにFXが個人の間に大きく浸透をし始めたのは、金融を取り巻く環境が激変したことと密接な関係があります。

思い起こせば、その発端となったのは、1977年の山一証券や北海道拓殖銀行の倒産が引き金となったのです。

それまで、日本の銀行は大蔵省(現財務省)が護送船団方式といって、金融機関を手厚く保護する政策をとっていました。

国としては銀行は一つとして潰してはならないと特別に扱っていたからです。そのことが国際的に批判を浴びてもいました。

ところが、そんな油断で金融行政にほころびが見えてきたのが、先の二つの金融機関の破綻です。国は金融機関を保護する政策を一転し、国際金融基準に則ったかたちの政策に舵をきったのでした。

これが俗に言う金融ビッグバンです。金融ビッグバンによって、日本の金融市場は海外へ門戸が開かれるようになり、多くの大手外資系金融機関が日本に上陸をしはじめました。

そして、日本の金融機関の買収にも乗り出したのです。さらに、海外の金融機関では証券業務と銀行業務の兼業が許されていましたが、日本ではそれは分かれていました。

しかし、金融機関の自由化によって、日本の金融機関でも銀行業務と証券業務の垣根が取っ払われてしまいました。

さらに、銀行の預金者に対するペイオフが導入され、個人の預金は無制限に補償されるのではなく、1000万円を上限として補償されることになったのです。

しかも、1999年(平成11年)2月、日本銀行は短期金利の指標である無担保コール翌日物金利を史上最低の0.15 %に誘導することを決定しました。

この時、当時の速水優日本銀行総裁が「ゼロでも良い」と発言したことから、ゼロ金利政策と呼ばれるようになりました。

ゼロ金利政策ですから、国内の預金金利はゼロに近いですから、金融機関にお金を預けても増える見込みがありません。

ですから、預金者、一般消費者は他の金融商品へ目を向けました。外貨預金もあったのでしょうが、もっとも一般消費者が飛びつきやすかったのが、FXだったのです。

小額資金で大きな取引ができるとあって、個人投資家はいっぺんにその魅力にはまってしまい、FXは大ブームとなりました。しかし、好事魔多しとはこのことです。

何の知識も持たないまま取引をはじめた人が多かったので、最初はビギナーズラックもあって利益を上げた人もありましたが、次第に多くの人が市場から退場を余儀なくされるようになりました。当たり前です。

手軽にできるといっても、FXは国際的な金融商品です。国際金融の基本的な知識は最低限必要です。

さくら
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内外の金利のことや国際収支、景気判断、金融情勢などが織り込まれている為替レートの水準を考慮しながら取引をするわけですから、国際金融の知識はある程度、必要ですね!

金融の世界とは

今さらいうまでもありませんが、金融の世界は二つに大きくわけることができます。国内金融国際金融です。

為替に関係するのは国際金融ですが、まずは、国内金融について簡単に解説をしておきましょう。

国内金融とは、日本国内で行われる金融に関するすべての行為を国内金融であると分類します。国内金融のなかで最大のものは、金融機関同士のお金のやりとりとなります。

つまり、お金の決済が行われる訳ですが、その決済が行われる市場をインターバンク市場といいます。

ほとんどの銀行が参画している、金融機関の関係者なら誰も知っている市場です。そこで金融機関同士の決済が行われるわけですが、それは日本銀行の当座預金を通じて行われています。

日本の金融機関は、日銀に法定準備金を積み立てることが義務づけられていることから、金融機関は日銀にそれぞれの金融機関が当座預金口座を開設しています。

当座預金を通して金融機関の投資の決済が行われるわけですから、当然、日本銀行は金融機関同士の決済のやりとりがスムーズに行われるよう、常に取引の監視をしています。

さらに、取引の単位は金融機関の取引よりも小さくなるかもしれませんが、企業と金融機関、個人と金融機関あるいは企業同士、個人同士と、お金にまつわるやりとりはすべて国内金融に含まれます。

個人が銀行に口座を設けて、お金を預けたり、引き出したりすることもそうですし、個人同士でお金のやりとりをすることも国内金融といいます。

その対局にあるのが、国際金融です。国内と海外とのお金のやりとりのことを国際金融といいます。

国内の企業が海外の企業と取引をしてお金のやりとりをしたり、国内の人が海外へ送金する場合も国際金融に含まれます。

国際金融が国内金融と大きく違うところは、外国為替取引となることです。というのは、それぞれの国には独自で発行している通貨があります。

つまり、違う通貨同士のやりとりをするわけですから、これを外国為替取引といいます。

外国為替とは、通貨を異にする国際間の貸借関係を、現金を直接輸送することなく、為替手形や送金小切手などの信用手段によって決済する方法のことをいいます。

違う通貨同士の交換となるわけですから、そこには通貨の金利差やレートが大きく関係をしてきます。それに密接に関係してくるのが二国間同士の通貨のレートです。

よく耳にする円高、円安ということです。日本は輸出大国ですから、海外に物を売って儲けをだします。そのときに問題になるのが為替レートです。

海外のとのやりとりは基軸通貨である米ドルで行われることがほとんどです。ですから、そのときの米ドルのレートの高い、低いで、業績に影響をしてきます。

もう一つ、国内金融との違いは、日銀のような中央銀行がそこには存在をしていない、ということです。

国内であれば、何か問題が起こりそうなとき、起こったときには、金融機関をコントロールして対策をとることができますが、国際金融の場では、たとえば、資金が不足しても、それぞれの国で対応するしかありません。

そのため、各国は外貨準備金といって、万が一のためのお金をある程度、貯めています。さらに、海外の経済情報や政治の情報に影響を受けやすいということです。

資金は有利な投資先や安いモノやサービスを求めて動く傾向にありますので、少しでも有益な情報を得たら、他に先んじて素早く行動することで、多くの利益を得ようとするわけです。

FX取引と関係するのは国際金融です。

さくら
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つまり、FXトレードを国際金融の中に含まれる行為で、大きな舞台でトレーダーのみなさんは闘っていることを、もう一度、肝に銘じてください。

マネー経済と物質(実物)経済とは

金融の世界は説明したように、国内金融と国際金融に分かれますが、では、そのやりとりはといえば、何によって行われているでしょうか。

一つは、お金の流れです。

端的に言えば、投資ということです。日本の個人投資家がアメリカの株式を購入すれば、お金はアメリカに流れます。

その逆に、アメリカの個人投資家が日本の株式を購入すれば、お金はアメリカから日本に流れてきます。こうした金融商品に投資することを「証券投資」といいます。

証券とは、一定の財産法上の権利・義務に関する記載がされた文書のことをさしています。

その法的な効力に応じて証拠証券と有価証券に分類されますが、ふつう、証券といえば、有価証券のこと指していることがほとんどです。

証券は、単に一定の事実を証明する証拠証券と、その証券の譲渡・保有を証券が表章する財産権の移転・行使に結びついている有価証券とに大別されます。

証拠証券はどんなものがあるかといえば、たとえば、ホテルのクロークの預り券やクリーニング屋の預り証などがそれにあたります。

これらは品物を預っている事実を証明する証拠となりますが、その引き取りにおいて絶対に必要不可欠とされるものではありません。

万一、証拠証券、引換券を紛失しても、受付において、担当者が引換券を紛失した顧客の説明に納得すれば、品物は引き渡してくれます。

このほか、証拠証券には、借用証や運送状、保険証券などがあります 一方、有価証券にはどんなものがあるかといえば、株券をはじめ、社債券、手形、小切手などが含まれます。

有価証券はその所持人が正式な権利の保有者と推定されていますし、それが表す財産権の行使にはこの有価証券の保有が不可欠です。

資金の流れとして、もう一つ、「直接投資」があります。

たとえば、日本のメーカーがイギリスに工場を進出するために、その建設資金をイギリスに移動したり、あるいは、アメリカのメーカーが日本に販売支社を設立するために、資金を日本に移動させたりすることです。

このように、国際間のやりとりがモノやサービスではなく、お金で行われることをマネー経済といいます。

1970年代までは、国際金融は、モノやサービスのやりとりが活発な実物経済が中心でしたが、80年代以降は金融のビッグバンもあって、国際金融取引の90%はマネー経済が占めるようになっています。

では、いまでてきた、実物経済とはどういったことを意味しているのでしょうか。

貿易での取引のことを実物経済といっても過言ではありません。海外にモノやサービスを売る(輸出)することによって、海外からお金が日本にはいってきます。

逆に、資源の乏しい日本は原油などの資源を輸入に頼っていますが、そうした原材料を購入すれば、日本のお金は海外に流れていきます。

つまり、モノやサービスの移動に伴う資金の流れを実物経済といいます。モノやサービスといった実体が伴うお金のやりとりになりますので、「実需」といってもいいかもしれません。

外国為替取引では、実需は圧倒的に少なく、投資・投機マネーが90%以上を占めるようになっています。

重要な国際収支

みなさんは、国際収支と聞くと何か難しそうというイメージを抱きませんか。多くの人は堅苦しい話題だといって避けて通りたくなるかもしれません。

では、「家庭の家計簿」と聞くとどうでしょうか。何だ家計簿か、と軽く思ってしまわれる方がおおいのではないでしょうか。

さくら
さくら

国際収支はいってみれば、国の家計簿のことです!

家計簿は、主婦がペンを片手に、いや最近はパソコンやスマホで会計ソフトを使って家計簿をつけている方も多いと思います。

毎月の光熱費や食費、外食費、レジャー費などの項目にわけて、一月単位ごとに収入と支出を計算し、「今月は外食が多かったから、来月は外食は控えよう」とか、「今月は遊びすぎたから、来月は自粛しなければ」とか、「今月は電気代が1.5倍になったから、節約をしなければ」と、いろいろなことを考えて行動することになります。

つまり、家計簿は、その人の行動や行為の源泉となっているといってもいいかもしれません。これを国に当てはめたのが、国際収支となります。

一般の家計簿が家庭から外にでていくお金と、はいってくるお金(収入)の流れを計算して、その人の家庭の経済状態を把握できますが、国際収支は、日本から海外にでていったお金(輸入代金など)と海外から日本に入ってきたお金(輸出代金など)の流れをまとめて、国の経済がどうなっているかを把握するためのツールといえます。

したがって、国際収支には、モノやサービス、資金の流れのすべてが記載されたものになっています。

これを見れば、どの項目が赤字であり、黒字であるかが一目瞭然とわかります。

ですから、為政者がいろいろな政策を考えるときに国際収支を基本に考えたり、資金運用担当者が金融市場の現況と今後の流れを把握し、予想するのにも国際収支を基準として考えます。

それほど、国のいろいろな政策を運営する面で、基盤となっているのが国際収支、すなわち国の家計簿なのです。

国際収支には、ちょっと難しくなりますが、経常収支と資本収支、外貨準備高増減の3つの項目がそれぞれ分類されています。

後に詳述しますが、経常収支が黒字なら、資本収支は赤字になりますし、経常収支が赤字なら、資本収支は黒字になります。

つまり、経常収支と資本収支は表裏一体の関係にあるのです。

経常収支とは何か

国際収支の中心となっているのが経常収支といわれるものです。経常収支には「貿易収支・サービス収支」と「所得収支」「経常収支移転」の3つがあります。

経常収支が黒字ということは、収入が支出を上回っている状態ですので、収入の範囲内で生活ができていることになります。

家庭でいえば、健全な経済生活を送っていることになります。

一方、経常収支が赤字ということは、収入よりも支出が上回っていることになりますから、経済的に健全な生活をおくっているとはいえません。

足りない部分はどこかから借金をしているか、あるいは支払いを繰り延べしてもらうなどをして、何とか生活をしている状態ということになります。

どちらが望ましいか、いわなくてもわかります。

貿易収支とサービス収支

では、「貿易収支・サービス収支」とは、何でしょうか。世界の国と国では輸出や輸入など貿易を主体にして生活が営まれています。

貿易には、モノを売ったり買ったりする「貿易」と、サービスを売ったり買ったりする「貿易」の2種類があります。

モノが伴うことで発生する資金の流れを「貿易収支」といい、サービスで発生する資金の流れを「サービス収支」といいます。

貿易収支にはどんなものがあるかといえば、代表的なモノは自動車でしょう。

日本の自動車メーカーが欧米など各国に自動車を輸出して、購入資金を受け取るわけですが、そううると、貿易収支としてはプラスとして計上されます。

逆に、資源のない日本は原油の輸入を中東諸国に頼っていますし、牛肉や豚肉などの食品、野菜なども海外から安く仕入れています。

その仕入れの代償として購入資金を海外に支払います。ですから、輸入によって支払った代金はマイナスとして計上されます。

ですから、貿易収支は輸出代金と輸入代金を相殺すると、現状では、輸出が上回っていることが多く、貿易収支は黒字だといっていいでしょう。

では、サービス収支とはどんなものがあるでしょうか。代表的なものは、旅行です。日本人が海外へ旅行するのに、日本のお金は海外で使えませんから、海外のお金と両替をします。

たとえば、アメリカに旅行する場合には、日本円を米ドルと交換する必要があります。

ということは、日本円を支出して、米ドルを購入するわけですから、お金が海外に出ていくことになります。また、現地伝買い物やレジャーなどにもお金を使います。

それらのお金はすべて海外へ流れていきます。一方、その逆出に、海外からの観光客などは、日本にお金を落としてくれます。

大きく見れば、日本の収入になるわけです。ですから、海外旅行で出費したお金は、マイナスに計上し、海外からの観光客が落とした金はプラスに計上されます。

政府は、海外からの訪日人数の拡大政策をとっていますが、依然、海外へ出かける人数が多く、さらに、今回の新型コロナウィルスのパンデミック騒動で、海外からの入国人数は、通常の2000分の1に減っており、サービス収支は赤字となっています。

所得収支とは?

国際収支の経常収支のなかの所得収支とは、海外から支払われた利子や配当金、賃金と、海外へ支払った配当金や利子、賃金などの差額を現したものです。

所得収支には投資収益と雇用者報酬の2項目が設けられています。所得収支の99%以上を占めていうのは投資収益となります。

投資収益は、海外の株式や債券へ投資したことで得られる配当金や利子、海外の子会社や支店であげた収益などが計上されます。

たとえば、日本の企業が海外の企業の株式に投資をしたとしますと、その投資から得られる利子や配当金は、投資収益としてプラスに計上されます。

逆に、日本企業の株式を海外の企業や個人が購入して、彼らに利子や配当金を支払ったときには、投資収益はマイナスとして計上されます。

投資収益には、直接投資収益と証券投資収益、その他の投資収益の3つに分類されています。ただ、海外の株式や債券を売却して得た利益は、投資収益には計上されず、これは資本収支に計上されることになっています。

雇用者報酬とは、文字通り、働いた人へ支払う賃金報酬のことです。日本企業が非居住者(日本に住んでいない人たち)に支払った賃金などは、雇用者報酬としてマイナスに計上されます。

船会社など外国人船員を多く雇っている企業などがその対象となります。ただ、外国人であっても、日本に居住して受け取っている報酬は雇用者報酬には計上されません。

また、日本人であっても、海外の会社で働いていて報酬を受け取っていたら、それは、雇用者報酬として、プラスで計上されます。

経常収支移転とは?

難しい言葉がでてきましたが、これは対価を伴わない援助や無償の資金提供のことです。

国際社会はそれぞれが貿易を通して、経済的な生活の基盤をお互いに築いていますが、資金援助も大きな国際関係の役割を果たしています。

日本は国際社会の一員として、貧しい国々や災害に見舞われた国などへの無償の資金援助などを行っています。

そうした無償の資金援助のことを経常収支移転といいます。

日本の無償の資金援助、資金協力としては、古くは湾岸戦争のときの多国籍軍への資金協力や、テロや海賊撲滅支援のためのテロ対策等治安無償資金などがあります。

また、阪神淡路大震災や東日本大震災のときに海外からいろいろな資金協力や援助がありましたが、これらも経常収支移転として計上されます。

さらに、海外の留学生へ親が仕送りをする費用や、外国人労働者が働いて得た賃金を海外の親元などへ送金する資金も経常収支移転として計上されています。

このように、海外から、あるいは日本から資金の協力や援助を行うことで流れる資金のことを経常収支移転と称しています。

日本は経済大国ですから、いろいろな国へ資金協力や援助を行っていますので、経常収支移転は赤字といっていいでしょう。

資本収支とは

国際収支を構成する3つのうちの2つ目の資本収支は、日本と外国のお金そのもののやりとりの差額を現したものです。

資本収支には、投資収支とその他の投資の2つの項目に分類されます。お金が日本から海外にでていったり、はいってきたりする差額を資本収支として現しています。

たとえば、日本から海外の銀行に口座を設けて、そこにお金を預けてしまうと、資本収支はマイナスとして計上されます。

なぜなら、日本から海外へお金が出ていってしまうからです。あるいはその逆に、海外からお金を借りた場合には、そのお金は資本収支としてはプラスに計上されます。

預金をしてマイナス、借金をしてプラスに計上されるのは不思議な気がすると思いますが、あくまでもお金の流れをとらえてみれば、そういうことになります。

たとえば、自分の財布の中に1万円の現金があります。ある日、銀行にいって普通口座に5000円を預けたとします。そうすると、財布の中はマイナス5000円となります。

その逆に、銀行から100万円を借りた場合には、自分の財布はプラス100万円になります。

借りる、あるいは預金するという手段は問題ではなく、お金の流れからいえば、前者は自分の財布から支出となりますから、マイナス。

後者は自分の財布に100万円がはいってきたのですから、プラスの計上となるわけです。

投資収支~直接投資

お金のやりとりを計上する資本収支には、投資収支があります。

投資収支は、居住者と非居住者(日本以外に住んでいる)の間で行われる金融資産や負債の取引を計上したものです。

投資収支には、直接投資や証券投資、その他の投資の3つに分類されています。まず、直接投資について説明をしてみましょう。

直接投資は、たとえば、日本企業がベトナムに進出を考えています。工場を設置して現地で製造をするためです。

そうすると、現地での土地の買収や工場を稼働させるための機械など、設備投資が必要です。

そのための資金を投資しなければなりません。このように海外で事業のために資金を投資することを直接投資として計上しています。

この場合、日本からベトナムにお金が出ていくわけですから、直接投資はマイナスとしての計上となります。

その逆に、海外から日本に支店を設置したいというときには、不動産の購入や賃貸、設備などの資金が必要です。

海外の企業は日本に投資をしなければならないわけです。

この場合も直接投資として分類され、海外から日本にお金が入ってくるのですから、プラスとして計上されます。

また、海外の企業への資本参加としてその企業の株式の10%以上を取得した場合でも、その投資した金額は直接投資として計上されます。

逆もしかりで、企業のM&Aなどの費用も直接投資に分類されています。この場合も、海外への投資はマイナス、海外から日本への投資はプラスとして計上することになっています。

投資収支~証券投資

証券投資は、海外の株式や債券に投資をし、配当金や利子(インカムゲイン)、値上がり益(キャピタルゲイン)を得ることを目的とした投資のことです。

個人投資家と違って、機関投資家は個人から資金を集めて、その資金を株式や債券、投資信託など、あらゆる金融商品に分散投資をして、利益を狙った投資を行っています。

当然、日本国内だけではなく、海外の株式や債券などへも投資をしています。そのうち、海外の株式や債券などへ投資した資金は、国際収支では、証券投資として分類されます。

この場合、日本から海外へ資金が流れていくわけですから、マイナスとして計上されます。

その逆に、外国の機関投資家が日本の株式や債券に投資した資金も証券投資として分類されますが、こちらは海外から日本にお金が流れ込んでくるわけですから、プラスとして計上されます。

資本移転収支

社会資本など、資本の形成に関わる資本の移転を資本収支移転として分類しています。

経常収支移転と似ていますが、経常収支移転の場合は、海外の機関や国へ無償の援助や資金協力を行うのは、資本収支と同じですが、経常収支移転の場合は、それが、寄付であったり、贈与であったり、国際機関の分担金であったり、かたちとしては残らないものへの資金の移転となります。

一方、資本収支移転は、道路や橋、病院や学校など、将来的にかたちとして残るもの、その国の社会資本として形成されるものへの資金の流れを、資本移転収支といっています。

日本は経済大国ですから、発展途上国に対して資本収支移転などを行っており、この場合、海外へ資金が流れていくわけですから、資本収支移転としては、マイナスの計上となります。

そのほかには、資本収支には「その他の資産」という項目があります。

これは、著作権や特許権、商標権などの、直接、何かを生産するというわけではなく、権利の売買をしたときには、その他の資産に分類されます。

たとえば、海外のある企業が開発した特許を日本企業が権利を買った場合、その他の資産として、マイナスに計上されます。

ただし、特許権を購入しないで、その特許を使用するという場合には、サービス収支に分類されます。

外貨準備高増減

外貨準備高というのは、日本政府や日本銀行が保有している外貨建て資産の合計のことをいいます。

なぜ外貨を準備しておくかといえば、貿易代金の支払いや、外国からの資金調達をするときに、外貨準備高が多ければ、それほど信用力がある、ということになるからです。

外貨準備高の外貨建て資産の多くは米国債で運用されています。

ですから、外貨準備高へはアメリカ国債などの有価証券からの利息収入や、有価証券の価格変動による評価損益、さらに、為替市場の介入による米ドルの購入など、で外貨準備高は増減をします。

2020年1月現在、外貨準備高がもっとも多いのは中国で、3兆2342億米ドルと群を抜いています。

2位が日本で1兆3019億米ドル、3位がスイスで7971億米ドル、4位がサウジアラビアでえ5018億米ドル、5位が台湾で4791億米ドル、6位がロシアで4456億米ドルです。

アメリカは、1178億米ドルと、世界の国のなかでは少ないほうから数えたほうが早いです。

外貨準備高では、米ドル建てがもっとも多く、60%が米ドル建てです。続いて多いのがユーロ建てです。そして、円建てと続きます。

外貨準備高がもっとも増えるのは、為替介入を行ったときです。

たとえば、日本は輸出大国ですから、極端な円高になることは、輸出企業の業績が落ちこみ、貿易収支が悪化することになります。

それを防ぐために、日本銀行は為替介入を過去に実施してきました。円売り米ドル買いによって、円高局面から円安局面への転換を狙ったわけです。

為替介入によって、米ドルを多く購入することになったため、外貨準備高が増えることになりました。

では、外貨準備高が多いからといって、日本は大金持ちの国といえるでしょうか。いいえ、そうともいえないのです。

なぜなら、為替介入の資金を捻出するために、政府短期証券(FB)を発行しているからです。これは、借金です。

償還期間は2カ月、3カ月、6カ月、1年と4種類あります。

さらに、外貨準備高はアメリカ国債の暴落、極端な円高などによって、損失に見舞われるリスクも抱えていますので、外貨準備高が多ければ多いほどお金持ちである、というわけでもないようです。

国と国の決済の方法

では、国と国の決済はどのように行われるのでしょうか。まず、経常収支に含まれる貿易収支のケースで説明をしましょう。

日本はサウジアラビアから石油会社を通して原油を輸入しています。この原油の輸入代金の流れはどういう流れになるのでしょうか。

まず、石油輸入会社は、原油の代金を貿易手形を使って支払うことにします。決済銀行として使っている日本の銀行に貿易手形を振り込みます。

貿易取引ですから、外国為替が絡んできますので、銀行と石油輸入会社の間で1米ドルいくらと決めます。これは市場のディーリングレートに準じています。

決済銀行は受け取った貿易手形を現金化(円に替えて)し、さらに米ドルに換算して、サウジアラビアの石油会社が提携しているアメリカの銀行に、原油輸入代金を支払います。

これで取引が完了します。日本の決済銀行は次に、原油輸入代金がいくらになったかを日銀に報告します。

これが貿易収支のマイナスとして計上されるのです。簡単ですが、以上、国際収支について述べてみました。経済指標を見るときの参考になったら幸いです。

辻秀雄氏プロフィール

辻秀雄氏
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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