トレーダーのみなさんは、FX関連やトレードの記事などに目を通す機会が多いと思いますが、そうしたときに、こんな記述を目にしたことがあると思います。
「債券の価格が低下して、利回りが上昇した」とか「利回りが低下して債券価格があがった」 こういった表現に接して違和感をおぼえなかったでしょうか。
なぜ、利回りが低下すると債券の価格が上昇するのか、債券の価格が低下すると利回りが上昇するのだろうか?と。
そこで利回りとは何か、金利とは何か、ここでは金利と利回りについて述べてみたいと思います。
まず、金利です。
金利とは何か
金利あるいは利率と言葉を換えてもいいのですが、これらは預貯金や債券で使われる言葉です。
資金を銀行に預けたり、銀行から借りたり、あるいは債券を購入したり、売ったりしたとき、つまり、金融市場において、資金の貸借行為に伴って発生する「貸借料」とでもいったらいいでしょうか。
端的に言えば、お金の貸し借りには必ず金利がついて回る、ということです。
預貯金や 債券などの金融商品には必ず金利がついてまわります。
そして、金利には短期金利と長期金利があります。
一般に、銀行に資金を預けて1年未満、あるいは銀行からお金を借りて1年未満で返済する場合には、短期金利がつきます。
これが1年以上の預金や貸出になると、長期金利が適用されることになります。
ちなみに、金融市場では、短期金利の代表は、 無担保コール翌日物金利ですし、代表的な長期金利は、新発10年物長期国債の利回りがあります。
金利には、単利と複利があります。
単利は、当初に預けた資金に対してのみ金利がつくスタイルです。
たとえば、ゆうちょ銀行に3年もの定期預金を100万円預けたとします。
3年物定期預金の金利は現在、0.002%です。
これに対する利息は毎年、いくらになるかといえば、100万円×0.00002=20円です。
それが3年間つづくわけですから、満期になったときの合計額は、100万60円となります。
計算式は、 単利の元利合計額( 円)=元本×(1+利率÷100)×預入期間となります。
一方、福利とは、一定期間ごとの利息を元本に足して、新しい元本に対して利息が計算される方式です。
計算は以下のようになります。
たとえば、元金が100万円で、利子率が5%の場合ですと、1年目の利息と元本の合計は、100万円×0.05=5万円となり、100万円プラス5万円で105万円となります。
2年目からは、205万円が新しい元本となって、それに対して利息が計算されてきます。
ですから、単利よりも福利のほうが得であることがわかります。
規制金利と自由性金利
ところで、金利には規制金利と自由性金利の2種類の金利があります。
金利とはお金を貸したり、借りたりすると自動的についてまわるもので、誰も金利がつくのを避けることはできません。
個人、知人同士での貸し借りに金利がつくかどうかは当事者たちの都合で決まりますが、個人が銀行からお金を借りたり、証券会社から金融商品を購入する場合には、必ず金利がつきます。
それは逆に言えば、個人が銀行や証券会社などから金融商品を購入したということは、個人が金融機関にお金を預けた(購入した)ことになり、金融機関のほうは個人からお金を借りたことになるからです。
そして、金利は本来ならば、金を貸した方と借りた方との自由な交渉によって決まるものですが、世の中はそうはなっていません。
力の強いものが力の弱いものにたいして一方的に「金利はいくら」と決めてきます。
力関係が強ければ強いほど、金利は高くなり、力関係弱ければ金利は安くなります。
さらに、借りるほうの要望が強ければ、強いほど貸すほうは強気にでることができて、金利を高く設定することができます。
つまり、借りるほうと貸すほうの需給関係で金利は高くもなり、借りやすくもなるということになります。
このような双方の需給関係によって自由に決められる金利を「自由性金利」と称しています。
その代表は、債券(既発債)の金利です。
すでに発行されている債券は、市中で自由に売買されており、その利回りは買い手と売り手の自由交渉によって決められているからです。
そして、その利回りは刻々と変化をしているのが特徴です。
こうした自由性金利とは別に、金利には、規制金利があります。
規制金利にはどんなものがあるかといえば、代表的なものは固定歩合です。
さらに、銀行が企業などに対して貸しだす貸出金利、個人が企業が銀行にお金を預けたときにつく預金金利があります。
これらの金利は、借りるほうと貸すほうの需給関係が変化しようと、そうそう変化するものではありません。
それは、これらの金利については、金融庁など金融政策当局が、経済や金融政策を有効に行うために、ある程度の計算をしつくして金利を決めているからです。
もし、預金金利がしょっちゅう変わっていたら、金融機関の現場は混乱してしまったり、それによって済がいろいろな悪影響を受けてしまいます。
そうしたことを避けるために、ある程度の基準にのっとって金利を決めて、それが厳然と守られているわけです。
規制金利が効果を発揮するのは、金融政策を実施するときです。
たとえば、景気がわるくなってきたら金利を下げたり、景気が過熱してきたらその熱をさますために金利を上げたりします。
景気が悪くなってくると、企業や個人はお金を借りるのを躊躇します。
金融機関としては、預かっているお金をそのままにしておいては商売になりませんから、預かったお金を企業などに貸し出して、その金利を稼ぐために、景気の割ると企業は金利を下げてお金を貸しやすくします。
さらに、為替市場では、円高を誘導するために金利を上げたり、円安を誘導するために金利を下げたりします。
為替市場では2国感の通貨のやりとりをしますが、その場合に、金利の高い通貨を買って、金利の低い通貨を売るのが通常の取引です。
金利の高い通貨を買っておけば、その金利の差額分がスワップ金利として毎日、手元に落ちることになります。
ですから、円高に誘導しようと思えば、円の政策金利を上げればよく、円安に誘導したいのであれば、円の政策金利を下げることを行うわけです。
このように、金利には自由性金利と規制金利がありますが、その主なもは以下の通りです。
- 規制金利(規制色が強い金利)
- 公定歩合(国の金制裁策の基本となるべき金利)
- 預貯金金利(公定歩合に連動してうごく金利)
- 長期プライムレート(もっとも規制色が強い金利)
- 短期プライムレート(公定歩合に連動して動く金利)
- コール、手形レート(基本的には政策金利の意向を反映してうごく金利)
- 自由性金利(自由度が高い金利)
- 小口MMC(CD発行金利にスライドして毎月変化する金利)
- CD、CD現先(金融機関が入手した最初の自由金利)
- 債券現先利回り(短期商品のなかでもっとも古典的な金利)
- 外国預金金利(欧米の自由金利に連動してうごく金利)
- 既発債利回り(ほぼ完全なかたちでの自由金利)
固定金利と変動金利
さらに、金利には、固定金利と変動金利があります。
本来、金利は変動するのがふつうです。
経済や金融女性によって、金利は変動するものです。
しかし、金融商品のなかには、金利が固定されたままで満期を迎えるものが少なくありません。
たとえば、銀行の預金をみてみると、普通預金の金利は変動ですが、定期預金は固定金利が主体です。
また、国の借金である国債も固定金利です。
しかし、金融商品のなかには、半年ごとに金利を見直す金融商品もあります。
さらに、住宅ローンでは、固定金利と変動金利を採用しています。
個人がお金を借りる場合に、変動金利にするか、固定金利にするか大いに悩むところです。
個人としてはお金を借りるときに、できるだけ金利を安く借りるほうが負担が少なくてすむからです。
名目金利と実質金利
金融商品の取引には金利がついてまわりますが、その金利にもいろいろな種類があります。
これまでのべてきたように、規制金利や自由性金利、あるいは変動金利や固定金利などですが、ここにもう一つ、名目金利と実質金利というものがあります。
金利の水準は判断するのに用いられているのが、名目金利と実質金利という分類の仕方です。
名目金利とは、私たちが日常茶飯事に用いている金利のことです。
金利というのは何かと言えば、本来なら、将来のお金を価値を示すものです。
そのお金の価値は何によって決まるのでしょうか。
もっともわかりやすいのが、物価の変動によってお金の価値は変わってきます。
ある日、100円で買えた卵が、次の日には110円に上昇していたとしたら、お金の価値はどうなったのでしょうか。
当然、100円で買えたのに、翌日には110円をださなければならないということで、お金の価値がさがったために、よけいな出費が必要になったといえます。
このように、物価の上下動によってお金の価値は変わってきます。
これは金利にもあてはまります。
たとえば、名目の金利が3%の場合、物価上昇率が2%であったら、実質は1%の金利ということになります。
また、物価上昇率が5%であったら、実質の金利はマイナス2%ということになります。
つまり、物価変動によって、金利は名目金利であっても、実質金利という見方をしなければ、経済の実情を反映したことにはならないのです。
そこで、名目金利のほかに、実質金利という考え方をするようになったわけです。
ですから、名目金利がいくら高くても、物価の状況でそれらは有名無実になりますので、金利の実体を押しはかるときには、実質金利に注意を向ける必要があります。
こうした名目金利、実質金利については、為替の世界でも影響を及ぼすことがあります。
たとえば、「米ドル/円」を取り引きしている場合に、今後、米ドルがどう動いていくかを判断する材料として、金利が上げられます。
アメリカの長期国債の利率が7%で、インフレ率が5%だったとします。
それに比べて日本の国債の利回りが5%で、インフレ率は1%だったとします。
そうすると、金利や利回りをみただけでは、アメリカほうが高いといえますが、実質金利では日本のほうが高いといえます。
そこで投資家はこう考えるわけです。
「米ドル/円」の値動きを考えた場合に、アメリカよりも日本の国債のほうが金利が高いので、米ドルを売って、円を買って、日本の国債を購入する動きがなるはずだから、「米ドル/円」は、円が買われて、円高に推移する」というふうに思ってしまうわけです。
ただ、実際の為替相場がそうなるとは断言できませんが、ひとつの可能性としてそういうことが、金利を考えたときにいえるということです。
ですから、名目金利よりも、実質金利を重視するほうが、為替相場を考えるにあたっても、経済情勢や金融情勢を考えるうえでも、実体にそったものになるということです。
利回りとは
「利回り」とは、元のお金(元本)に対してどれくらい増加したかを示す割合のことをいい、ふつうは、1年あたりの平均利回り(年利回り)のことを言います。
利回りは、運用の結果を計る基準だけではなく、利回りの計算方法を熟知しておくと、リスクを調べて、自分が狙う運用成績を得られる金融商品を選びやすくなります。
ただし、実際に利回り(実質利回り)の計算するときには、手数料や税金なども含めて考えなければ、失敗をすることがありますので、注意をしてください。
利回りの計算方法としては、たとえば、利率4%の債券を100万円購入し、5年間保有して1110万円で売却したとします。
その場合の利回りはどうやって計算したらいいでしょうか。
利率というのは、元本に対する、1年に発生する利子の割合のことを意味しています。
5年間の収益は30万円(利子20万円+売却額110万円-元本100万円)ですから、年平均収益は6万円(30万円÷5年)になります。
元本は100万円ですから、利回りは6%(6万円÷100万円)という計算になります。
もし、同じ利率で100万円で購入した債権を5年間保有して、95万円でしか売却できなかったとしたら、利回りはいくらいなるかといえば、5年間の収益は15万円(利子20万円+95万円-100万円)ですから、年平均の収益は3万円(15万円÷5年)です。
元本は100万円ですから、利回りは、3%(3万円÷100万円)となります。
つまり、利回りとは、金融商品の元本に対する利率の合計と、売却益の合計をあわせたもので、相互的な利益のことを指しているといってもいいでしょう。
新聞記事や経済雑誌の記事を読んでいて、ふとこんな表現に出合ったことはないでしょうか。
「利回りは上昇し、価格は低下した」とか「価格は上昇したが、利回りは低下した」
えっ、利回りが上昇すれば、価格も上昇するのではないかと素人目には思ってしまうのですが、こんな表現を読んで、不思議に思ったことは一度や、二度ではありません。
みなさんは、そんな経験はありませんか?
実際には、債権の価格が下がれば、利回りは上昇し、価格が上がれば、利回りは下落します。
債権の代表格である国債は、発行時に額面価格と年利率が決まっています。
利子が付いたうえ、満期に額面価格でお金が返ってきます。
市場で価格が下がったときに買った国債は満期に額面価格でお金が返ってくるので、差額がもうかります。
利回りは国債を買ったお金に対して、いくらもうかるかを示す比率なので、国債価格が下がれば長期金利は上昇します。
価格が下がったということは、以前よりも有利な買い物ができるということになりますから、利回りは当然、高くなったはずです。
逆に、価格が上がった場合には、以前よりも不利な状況で買い物をすることになりますから、利回りは下がるということになります。
ですから、もうこれは覚えるしかありません。
債権の価格が上昇=利回りは下がる、債権の価格が下落=利回りの上昇、というふうにです。
辻秀雄氏プロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから