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【FOMC後の相場展望】 2021年6月21日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(6月14日~18日)

ドル円はFOMCを前に出口戦略に関する期待が強まり110円を突破。

FOMCは予想通り金融政策の据え置きを決定しましたが、メンバーの金利見通しとパウエル議長の会見が「予想よりタカ派的」との見方が広がり、一時110.72円まで急騰する場面がありました。

その後は年初来高値(3月31日110.97円)を意識した戻り売りが入り上値が抑えられるとともに、金利上昇を嫌って米国株式市場が下落したことから円買いも強まり、109.94円まで反落したものの、引けでは大台を維持し110.20円付近で週の取引を終えました。

前回の当コラムでは、FOMCは無風通過とみて「109円台を中心としたレンジ相場を想定」としましたが、やや予想外の展開となりました。

先週のドル円相場

先週のドル円相場

FOMC声明は明るさを増す

  • FOMC声明(原文・右クリックで日本語訳)
  • FOMC声明(日本語訳・ロイター)

FOMC声明は主にコロナに関する評価が大きく前進したのが特色です。

第2パラグラフではコロナ禍について述べていますが、前回4月28日の声明では「米国および世界中で多大な人的および経済的苦難をもたらしている」だったのが、今回は「ワクチン接種の進展により、米国での新型コロナウイルスのまん延は減少した」、「この進展と強力な政策支援の中、経済活動と雇用の指標は強まった」など大きく評価を引き上げています。

第3パラグラフ以降は前回と同じ文言が踏襲されました。

最大雇用と2%のインフレを達成するまで現行の緩和政策を続けるというスタンスに変わりはありません。

ドットプロットチャートは大きな変化

メンバーの金利予想・ドットプロットチャートは大きな変化がありました。

まずは前回3月のドットプロットチャート。

3月のドットプロットチャート

3月のドットプロットチャート

メンバー18人中11人が2023年末まで利上げなしが適切と回答していました。

それが今回、2023年まで利上げなしとの回答は5人まで減少。

2022年中に利上げが適切との回答も前回の4人から7人まで増えています。

ワクチンの普及による経済再開で景気や雇用が予想以上に早く回復し、インフレが一過性でなくなるリスクを気にし始めたメンバーがぐっと増えたことを示しています。

予想以上にタカ派的な結果と言えるでしょう。

今回のドットプロットチャート

今回のドットプロットチャート

パウエル議長の会見は依然慎重

FOMC後のパウエル議長の記者会見で注目された発言は以下の通り。

  • インフレ上昇は一時的な可能性が高い。
  • (テーパリングについて問われ)もっとデータをみれば話せる
  • 今回は議論することについて議論。
  • 特定の年の利上げが適切かについては協議しなかった。
  • ドット・プロットは割り引いて見るべき。

ついにというか、ようやくというか、テーパリングについて否定しなくなったのは大きな変化。

しかし市場の前のめりの期待に対して牽制するような慎重ニュアンスも含まれており、筆者には慎重スタンス維持と感じられました。

FRBとしては、利上げ時期の前倒しとテーパリング開始という観測気球を上げてみて市場の反応を見ているのでしょう。

市場が過剰に反応しないように、パウエル議長がとりなしたような印象です。

市場の反応は冷静

米国10年債利回りの動きをみると、FOMC声明とドットプロットチャートに反応して一時1.6%近くまで跳ね上がったものの、パウエル議長会見以降は尻すぼみとなり、結局FOMC前の水準を下回っています。

米国10年債利回り(過去5日間)

米国10年債利回り(過去5日間)

またFF金利先物が織り込む来年7月までの利上げ確率を見ると、FOMC前より10%強上昇しているものの、それほど劇的な変化はなかったことがわかります。

金利市場の参加者にとって、ドットプロットチャートの変化はややサプライズだったものの、これまでの想定を覆すほどのインパクトはなかったことを表しています。

FF金利先物が織り込む利上げ確率の推移

FF金利先物が織り込む利上げ確率の推移(左から現在・前日・1週間前・1か月前)

出口予想の現在地

今回のFOMCの結果から予想される出口戦略は、おそらく以下のようなものでしょう。

  • 7月FOMCでテーパリングの議論を開始。
  • 8月のジャクソンホール会議で中間報告
  • 9月FOMCでテーパリング計画を発表
  • 来年半ばに1回目の利上げ
  • 来年中に2回目の利上げの可能性

FOMC前から市場ではある程度想定されていたシナリオであり、金利の上昇は(インフレ上昇は一時的との見立てが正しければ)今後も緩やかなものにとどまるでしょう。

株式市場の調整は軽微

FOMCを受けて株式市場は最高値から反落したものの、過去の調整局面と比べてもさほど大きいとはいえず、今回も適度なガス抜き調整に終わる可能性が高いとみています。

S&P500 過去1年

S&P500 過去1年

ドルは緩やかな上昇へ

最後になってしまいましたが、では為替市場は今後どう動くか。

ドル全体でみると、金融緩和の出口が見えてきたという観点から買い戻しが入りやすく、これまで上昇を続けてきたユーロやポンド、資源国通貨・新興国通貨に対してドルが一定の反発を見せるでしょう。

ドルインデックスでみると、年初から89ポイント台で3回ボトムをつけており、当面の底打ちが感じられます。

ドルインデックスは89ポイント台で底入れ

ドルインデックスは89ポイント台で底入れ 米国金利はごく緩やかな上昇、株式市場は軽微な調整にとどまり、ドルは全般に買い戻し、となると、ドル円は少なくとも大きく下落というシナリオは描きにくい。

押し目買いスタンスで臨むのがセオリーでしょう。

チャート上も、4月以降の緩やかな上昇トレンドが継続しているとみてよく、買われ過ぎの領域にも達していないことから、年初来高値を試す可能性は十分あると見ます。

ドル円日足・一目均衡表・RSI

ドル円日足・一目均衡表・RSI

今週の予定

今週もFRB当局者の発言が目白押しとなっており、市場との対話の手腕が問われることとなりそうです。

日付 予定
21日(月)
  • NY連銀総裁、講演
  • セントルイス連銀総裁、講演
22日(火)
  • パウエルFRB議長、米下院特別小委員会で証言
  • クリーブランド連銀総裁、講演
  • サンフランシスコ連銀総裁、講演
23日(水)
  • 米製造業PMI速報値(6月)
  • ボウマンFRB理事、講演
  • ボストン連銀総裁、講演
  • アトランタ連銀総裁、講演
24日(木)
  • 米GDP確報値(第1四半期)
  • NY連銀総裁、講演
  • セントルイス連銀総裁、講演
  • アトランタ連銀総裁、フィラデルフィア連銀総裁 パネル討論会参加
25日(金)
  • 米個人所得支出(5月)
  • ボストン連銀総裁、講演
  • クリーブランド連銀総裁、講演

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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