外国為替レートの仕組み
「対顧客市場」という言葉を聞いたことがありませんか?
なんだそれ。
対顧客市場とは、FXでいえば、FX会社と機関投資家や個人投資家との間で外国為替取引が実行される市場のことです。
つまり、FXトレーダーの皆さんが日々、チャートを見ながら相場と戦っている市場です。
そこで、FX会社から提供されるレートは、スプレッドがありますが、インターバンク市場で取引されるレートそのままで売買ができます。
FX会社が提携している銀行から卸してもらったレートを、FX会社が、買いだといくら、売りだといくらというふうにして、FXトレーダーの皆さんに提供しているわけです。
つまり、外国為替市場は、対顧客市場とインターバンク市場のふたつに分かれますが、この両者の関係は、対顧客市場が小売市場、インターバンク市場が卸売市場と考えると、その関係が分かりやすいと思います。
為替レートは相対的価値の比較
その外国為替市場で中心となるのは、通貨ペアのレートです。
外国為替は、英語ではForex Exchangeと書きます。
これは、一つの通貨を別の通貨に交換することを意味しています。
その交換するときのレートが為替レートです。
為替レートは二つの価値の相対的な価値を示していることになります。
これが株式だと、ある銘柄の価値が上昇すれば、株式の価格は上昇しますし、価値が下落すると、株式価格も下落します。
ところが、外国為替の場合は、レートは相対的な価値の比較ですから、たとえば、「米ドル/円」の数字が大きくなれば、米ドルの価値が上昇していることになり、相対的に円の価値が下落していることを意味します。
通貨の強弱を知るには
どの通貨が強く、どの通貨が弱いといった通貨ペアの強弱を知ることは、FXトレーダーにとっては重要です。
なぜならそこに利益を上げるチャンスがあるからです。
通貨の強弱を知るには、複数の通貨ペアの動きをみることです。
しかし、複数の通貨ペアの値動きをみるといっても、一人ではそんなに多くの通貨ペアをチェックすることはできません。
そこで、抑えておきたいのが3つの通貨ペアです。
- 「米ドル/円」
- 「ユーロ/円」
- 「ユーロ/米ドル」
なぜなら、米ドルは世界の基軸通貨です。
もっとも取引が多い通貨です。
ユーロは、米ドルに次いで2番目に取引の多い通貨です。
第二基軸通貨とも位置づけられています。
円も米ドル、ユーロに次いで取引量の多い通貨です。
これら3つの通貨がともすれば、外国為替市場全体のトレンドをかたちづくることがあるからです。
ですから、少なくともこの3つの通貨は常にウォッチしておいたほうがいいと思います。
3つの通貨をウォッチすることで、現在の相場はどうなっているのかを把握し、次の売買のトレードを始めるには、どのニュースなどに注目したらいいかが判断できるはずです。
ビッドとオファー
ビッドとオファーについては何を意味するかは知っている方も多いでしょうが、おさらいの意味で再度確認をしておきます。
新聞やテレビなどのニュース報道で、外国為替相場について、たとえば、「米ドル/円」だと、「108.10-108.15」というふうに二つの数字が列挙されています。
なぜ二つの数字を列挙するかといえば、これが、買い値(ビッド)と売り値(オファー)だからです。
では誰に対しての買い値や売り値なのでしょうか。
それは、レートを提示している人たち(FX会社)にとっての、買い値や売り値になります。
つまり、上記の例でいえば、FX会社は個人トレーダーに対して、米ドルを108円10銭で売りますよ、108円15銭で買いますよ、というわけです。
そこで、個人トレーダーは、108円10銭で米ドルを売り、108円15銭で米ドルを買うということになるわけです。
ビッドとオファーの決まり方
では、ビッドとオファーはどういう風にして決まるのでしょうか。
あなた自身が銀行の立場に立って考えてみることにしましょう。
通貨のレートが決まるのは、銀行間取引市場、すなわちインターバンク市場です。
インターバンク市場とは、「銀行を中心とした金融機関だけが参加して、外国為替や短期金融等の取引を行っている市場」のことです。
あなたは大和撫子銀行だと仮定します。
インターバンク市場では基本的な取引単位は100万米ドル(1本と称しています)です。
現在の米ドル/円(2020年2月現在)の取引価格は約109円のため、このレートで換算すると1億900万円となります。
あなたは、米ドルを5本買いたいと思っています。
その場合は、あなたはビッドを指すか、オファーをヒットするか、どちらかの方法を選びます。
ビッドを指すとは、指値注文を意味します。
オファーをヒットするとは、見えているビッドやオファーを売買することを「たたく」、あるいは「ヒット」すると表現します。
電子ブローキングでの為替レートの表示の仕方
BID OFFER
5 108・10 108・15 3
現在の通貨ペアの状況の上記の図表に表れている状態だとします。
つまり、ベストビッドが5本、ベストオファーが3本の注文が入っているという状態です。
この場合、大和撫子銀行であるあなたは、山中銀行がビッドをおいている108円10銭と同じレートに追加で5本ビッドをおき、インターバンク市場に参加しているどこかの銀行が、その米ドルを売ってくるのを待つ方法をとります。
また、108円10銭よりも少し高い価格、108円12銭で買いますよ、と5本のビッドをおきます。
そうすると、「米ドル/円」を売りたいサンサン銀行は、より高い米ドルを売りたいわけですから、108円10銭よりも、108円12銭のほうがいいので、では「米ドル/円」を売りますよ、といって、大和撫子銀行の提示した108円12銭のビッドをヒットしてきました。
そうすると、「米ドル/円」のレートは、ビッドが108円12銭、オファーはそのままで108円15銭となりました。
これはほんの一例ですが、インターバンク市場ではこのように、ビッドとオファーのやり取りが毎日、行われています。
その結果として、秒単位で通貨ペアのレートが変化していきます。
そして、FX会社はインターバンク市場に参加している銀行から、為替レートを卸してもらっています。
FX会社が個人投資家から「米ドル/円」10万通貨の買い注文を受けたとしましょう。
個人投資家から見れば、「米ドル/円」を買ったことになりますが、FX会社からみれば、「米ドル/円」を10万通貨売ったことになります。
つまり、FX会社が10万通貨の売りポジションを持ったことになります。
FX会社としては、売りポジションの10万通貨を買い戻すという反対売買を行ってポジションを相殺する必要があります。
そこで、個人投資家から受け取った注文をインターバンク市場に流して、反対売買の取引をするわけです。
これをカバー取引と言います。
カバーしてくれる銀行のことをカバー取引先と呼んでいます。
FX会社はたいてい複数のカバー会社と契約をしています。
そこで、個人投資家から受け取ったポジションの反対売買をするために、カバー先に注文を出して、カバー取引をしています。
世界の出来事が為替レートに反映
通貨ペアのレートの構造は、その通貨ペアを買いたい人のもっと高いビッド(ベストビッド)と、その通貨ペアを売りたい人のもっと低いオファー(ベストオファー)で、為替レートが決定しています。
しかも、ビッドとオファーは世界中から殺到してきます。
インターバンク市場はどこかにかたちのある取引所があるわけではありません。
世界中の金融機関がインターネットや電話回線でつながっており、世界中のディーラーが通貨ペアの価格を見つめて、その通貨ペアのレートで取引をしています。
為替レートはさまざまな要因で動きます。
経済だけではなく、政治的なイベントやあるいは企業買収なども、為替ディーラーを通じて、為替レートの変化に影響を与えます。
つまり、世界中で現実に今、起きていることが為替レートをかたちづくっているといっても間違いではありません。
したがって、個人投資家の皆さんは、為替レートに興味を持っておられるでしょうから、その為替レートの視点から世界を眺めてみると、日々報道されるニュースの見方も変わり、自分自身の世界が広がっていくのではないでしょうか。
辻秀雄氏のプロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから