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【米CPI上振れでも利回り低下・ドル安の理由】 2021年6月14日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(6月7日~6月11日)

ドル円は109円台の狭いレンジで一進一退の動き。

前週に発表された米国雇用統計が予想を下回ったことから米国債利回りが低下し、ドルの上値を圧迫する一方、米国株式市場や原油相場が堅調に推移したことから、下値も底堅く推移しました。

CPIは高かったが・・・

米国5月の消費者物価指数(CPI)は、ヘッドライン(総合)が前年比+5.0%、食品・エネルギーを除くコアが+3.8%と、それぞれ予想の+4.7%、+3.5%を上回りました。

一見するとインフレ警戒を示す数字ですが、市場の反応は冷静で、米国債利回りはむしろ低下。

10年債利回りは1.45%と3月以来の水準となりました。

FRBが繰り返して「インフレ上昇は一過性要因によるもの」、「ベース効果によるもの」と市場に刷り込んできたことが効いています。

ベース効果とは、1年前の物価上昇率(いわゆる発射台)が低かったため、足元の前年比物価上昇率が高くなる現象(もちろん逆もありうる)のことです。

1年前は確かにパンデミック真っ最中で、消費者物価指数はゼロ近くまで落ち込んでいましたので、現在のインフレ上振れは反動とみることもできます。

FOMCは無風か

今週(15~16日)はFOMCが開催されますが、市場は緩和的な金融政策はもちろん据え置きで、声明内容やメンバーの金利予想も大きな変更はないと読んでいます。

テーパリング(資産買い入れの段階的減額)のヒントも、8月のジャクソンホール会議まで出てこないとの見方が多いようです。

市場のインフレ警戒が低下し、米国債利回りが低下している状況では、ドルが持続的に上昇していくシナリオも描けず、今週も110円台は近くて遠いカベとなりそうです。

株式市場は楽観続く

一方、コロナワクチンの接種が加速し、経済再開が進展する中でも、金融緩和が継続するとなれば、株式市場にとっては絶好の環境。

先週も述べた通り、恐怖指数VIXは15ポイント台とパンデミック後の最低を更新中で、市場心理が楽観に大きく振れていることを示しています。

VIX指数週足

VIX指数週足

米国株式市場は最高値手前で足踏みが続いていますが、今週のFOMCでハト派スタンスが確認されれば、再び高値を更新していくのも時間の問題となるでしょう。

NYダウ日足

NYダウ日足

ただし、株高・リスクオンの局面では安全通貨の円も売られやすくなるため、全体的なドル安の中でもドル円は比較的底堅い、つまり先週と同じような高止まりの状態が続く可能性が高くなります。

今週も109円台を中心としたレンジ相場を想定しておくのが賢明でしょう。

カナダドル推し

先週はFOMCに先立ってカナダ中銀の金融政策会合が開催され、政策金利である翌日物金利の誘導目標は予想通り0.25%に据え置きが決定されました。

国債の買い入れ目標はすでに前回4月の会合で週40億カナダドルから30億カナダドルに縮小されています。

すでにテーパリングは始まっており、カナダ中銀はG7の中で最も早く出口戦略に着手した中銀ということになります。(注:英中銀も5月にテーパリングを決定)

またカナダ中銀は「経済のスラック(弛み)が吸収されるまで政策金利を実効的な下限に維持する」とのフォワードガイダンスを示していますが、同時に「2022年後半にスラックが吸収される」との予測を示しており、来年中にも利上げがあることを示唆しています。

下のグラフに示した通り、カナダはワクチン接種率で世界トップを走っており、経済再開が最も早く期待されることはもちろんのこと、株高や住宅価格高騰でインフレやバブルも警戒されています。

ワクチンを1回接種した人

日米欧と比べて金融政策の正常化に最も近いカナダが、為替市場でもアウトパフォームするのは自然な流れと言えるでしょう。

また原油高は資源国であるカナダを利し、輸入国である日本にとって負担となるため、カナダ円の買いは合理的な戦略です。

カナダ円と原油先物・日足

カナダ円と原油先物・日足 ドルカナダは節目の1.2000を前にいったん下げ止まっていますが、この水準を割り込めば、一気にドル安・カナダドル高が加速していく可能性が高く、カナダドル推しのスタンスを継続します。

ドルカナダ長期 長期的ダブルトップ&ネックライン

ドルカナダ長期 長期的ダブルトップ&ネックライン

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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