【大統領選をめぐる不透明感とコロナ第二波警戒】2020年9月30日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

週間のハイライト(9月23日~29日)

株価軟調でリスク回避ムードが強い中、安全通貨のドルが欧州通貨や資源国通貨に対して買われたことから、ドル円も105円台で底堅い動きとなりました。

月末・四半期末にからんだドル需要もあり、一時105.70円台まで上昇しています。

NYダウは、コロナ感染拡大や米国大統領選挙をにらんだ不透明感から、一時26500ドル台まで下落。

ユーロドルは一時1.1612ドル、豪ドルは0.70ドル割れ寸前まで売り込まれました。

米国株安はドル高材料?

為替市場は主体的に動くことはあまりなく、常にほかの市場の影響を受けながら動いています。

現在為替市場に最も強い影響を与えているのは言うまでもなく株式市場

今週は名実ともに新四半期に入ることもあり、これまで以上に株式市場の動向を注視する局面が続きそうです。

現在のゲームのルールでは、株式市場とドルは負の相関関係。

つまり、株安ならリスクオフでドル高、反対に株高ならリスクオンでドル安となります。

大まかに言えば、コロナショック後の3月から8月までは一方的なリスクオン局面で、株式市場は上昇し、欧州通貨や資源国通貨がドルに対して上昇しました。

9月に入ってからはその逆で、株式市場が調整局面に入り、欧州通貨や資源国通貨もドルに対して大幅に下落しました。

これらの関係はチャートを並べてみれば一目瞭然です。 ドルがそれほど安全通貨かと言われると正直微妙ですが、市場がそういうルールで動いている以上、当面は従うほかありません。

NYダウ

ユーロドル

豪ドル

米国大統領選挙は混沌へ

本稿執筆時点(30日午後7時)でも、米株価指数が時間外で大幅安となっており、警戒ムードが強まっています。

注目されていた米大統領選討論会の終了後に米CBSが行った世論調査によると、バイデン前副大統領が48%、トランプ大統領が41%と、バイデン氏が優勢となり、約1か月後に迫った大統領選挙に向けて不確実性が漂います。

株式市場はトランプ大統領再選を望んでいる、というより、劇的な変化を嫌う傾向がありますから、バイデン優位となると不安に駆られるのはやむを得ません。

さらに面倒なことに、今回はコロナウイルスの感染拡大のため郵便投票の利用がこれまでより大幅に増える見通しであり、結果判明が大幅に遅れる恐れがあるのです。

また劣勢となったトランプ陣営が「郵便投票が不正に操作されている!」と騒いだ場合、下手をすれば法廷闘争となり、決着に何か月もかかる(年明けまで政治空白となる?)恐れもあります。

トランプ大統領が、空席となっている最高裁判事の指名(自らに有利な保守派のバレット判事)を急いだのは、トランプ氏がすでに法廷闘争まで視野に入れているからという見方もあります。

株式市場の参加者にとってこれから少なくとも1か月、場合によっては3か月は、最高に不透明な局面が続くということになります。

欧米ではコロナ第二波襲来

もう一つ懸念すべき問題は欧米のコロナ第二波です。

欧州では感染抑え込みに成功したように見えましたが、9月に入って感染が再び急拡大しており、例えばフランスでは1日当たりの感染者数が先週一時1万6千人を超え、英国でも新規感染者が直近で1日7千人超となっています。

すでにレストランやバーは営業を制限されていますが、このまま事態が悪化すれば再びロックダウンに踏み切らざるを得なくなる恐れも出てきます。

米国でも7月に感染者数がピークを付けて終息に向かうと見られていましたが、ここにきて再び増勢に転じています。

年内には実用化されると期待されていたワクチンも決定的な朗報がなく、唯一承認されたロシアのワクチンも安全性が疑問視されている状況です。

コロナの克服には、長い間かけて多くの人が感染することにより、集団免疫を獲得するしかないとの悲観的な見方も現実味を帯びてきました。

米国景気の回復も思わしくない

今週は米国の重要経済指標が目白押しとなりますが、特に金曜日に発表される9月の雇用統計に注目が集まります。

非農業部門雇用者数(NFP)は+85.0万人と前回の+137.1万人から減速する見込みで、予想通りならコロナショック以降初めて増加が100万人を下回ります。

失業率も8.2%と前回から0.2%の低下にとどまり、改善ペースがガクッと落ちるイメージです。

4月の劇的な落ち込みからの反動による急速な回復期はどうやら一巡し、ここからの雇用回復は緩やかになるとの見方がもっぱらです。

いろいろな意味でウィズコロナ・アフターコロナに対して楽観的過ぎた株式市場が、その修正を迫られるきっかけとなるかもしれません。

結論:ドル高・円高だが、ドル円はわずかに弱気バイアス

今週から10月、新四半期に入りますが、しばらくは株式市場の高値更新は期待できず、むしろこれまでの過度の楽観が修正される局面が続くと見るのが賢明でしょう。

当面は米国株軟調、リスク回避、ドル高、欧州通貨安、資源国通貨安を想定しておきます。

ただしドル円に関しては、簡単にドル高になるとは思えません。

ドルと円が安全通貨として並行して動くためです。

また長い目で見ると、円のほうがドルよりわずかに安全であるというのが衆目の一致するところ。

事実、ユーロ円や豪ドル円などクロスで見ると、今月に入って大幅に円高が進んでいますし、ドル円もコロナ直後から長い目で見れば緩やかな下落トレンドが続いています。

したがって、欧州通貨や資源国通貨に対するドル高につられてドル円が上昇する局面は、戻り売りの好機と見ています。

前回高値の106.50円付近をめどに売り上がるスタンスで臨むのがいいでしょう。

ドル円は長い目で見れば下落トレンドが続いている

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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