株式投資から始めて、投資スクールを開校するまでに
――まずはじめに、松下さんのプロフィールからお伺いしたいのですが?
もともと私は個人投資家で、株式投資を始めたのが2001年です。当時は、会社員でした。いろいろ投資の勉強をしているつもりだったのですが、資金がどんどんなくなっていきました。
株式投資を始めて10カ月ぐらい経ってから、お金がなくなってきたこともあって、起死回生を狙って、商品先物取引を始めました。市場を広げるという意図もありました。
以来、株式投資と商品先物取引の両方を行っていたのですが、気がつくと、1年半ぐらいは失敗し続けていました。その結果、1500万円ほど失ってしまいました。
しかし、いつまでも負けている訳にはいきませんから、ものすごく投資の勉強を始めて、株式投資でも商品先物投資でも徐々に勝てるようになりました。
そこから、商品先物取引を集中的に行いました。そうしたところ、商品先物取引でも、株式投資でも勝てるようになってきました。それが、2002年から2003年頃でした。
その当時、個人でも情報発信ができる環境が整ってきていましたので、私もメールマガジンを配信するようになりました。
また、自分の仲間たちで株式投資や不動産投資のなどの勉強会を開いて、そこで私は、株式投資の講師を務め、次第に株式投資セミナーなどで講師を務めるようになりました。
そのうちに、商品先物の会社からセミナーの講師を依頼されたり、雑誌から記事寄稿を依頼されたりするようになりましたので、自分で会社を設立し、同時に、投資スクールを始めました。2005年のことです。
自分自身が損失から利益を上げるようになったのは、継続的に投資の勉強をしたからで、体系化した投資理論を学ばなければ、なかなか利益にはならないと気づきましたので、法人化して、投資スクールを開いたわけです。
――株式投資を始められたのは、多くの方がたどる道と同じということですね?
ええ、しかも、私の場合は株式投資を始めた理由はすごく単純で、ロバート・キヨサキの『金持ち父さん、貧乏父さん』を読んで、始めたわけです。
――きっかけは何であれ、継続的に学んでいかれて、成功されたわけですからね。
自分が投資に向いていたのだと思います。
いろいろな投資の本を読んで、投資の世界を極めようと思ったことと、日本では、投資について、本当の意味で、投資を教える人が少ないと思っています。
ビジネスで投資を教えている人はたくさんいますが、本当に投資を教えてくれているなと思った人にはまだ、私は出会ったことがありません。
ですから、私が投資を教えるものとして第一人者になってやろうという気概で、投資スクールを開講し、教えているわけです。
投資スタイルはいたってシンプル
――株式がメインで、FXは……。
私の場合はテクニカルトレーダーなので、テクニカルであれば何でも同じというスタンスで対応していますので、私のやり方は、基本、株式投資でも、FXでも、商品先物でも何でもいけます。
あとは、特性の問題ですね。市場特性であったり、トレードの特性であったり、必要に応じて使いわけるのがベストかなと思っています。
――なるほど。松下さんが築き上げた投資スタイルはどの金融商品でも使えるし……。
成功された投資家はたくさんおられますし、いろいろな特殊なトレード方法があるかも知れませんが、私のトレードスタイルは単純です。
単純だからこそ、どの市場でも通用するわけです。それがいちばんいいのではないかと思っています。ある市場だけにしか使えないトレードスタイルだと、強みもありますが、その分、弱点もあります。
システマティックな裁量トレード
――そうですね。松下さんは、裁量トレードですか?
システムトレードと裁量トレードで言えば、裁量トレードです。
ただ、トレードルールを厳密につくりますから、そういう意味では、裁量トレードのなかでも、極めてシステムトレードに近いです。
――自分のなかで固まってるので……。
ロジックをきちんとつくって、過去の取引を検証して、数字の裏づけを取ってからトレードを行っています。
それでも、トレードルールのなかに裁量トレードの判断が含まれるとか、実際にトレードするなかで裁量トレードの余地が残っているので、完全なシステムトレードとは言えませんが、システマティックな裁量トレードですね。
投資の心構えと資金管理は勝つための大原則
――スクールにやってくる生徒さんには、テクニカル分析から教えるのですか、それとも、投資の心構えのようなものから教えるのですか?
最初に教えるのは、心構えのようなものです。もうひとつは、資金管理です。一般の投資家は勝つための大切なものが欠落しています。
投資家の心構えとは、その人が投資を行ったそもそもの目的や、投資にはリスクがある以上、必ず資金が増えるとは限らず、損失に対する具体的な準備をすることなどを教えます。
また、誰もが楽をして儲けたいと思うものですが、残念ながら本当に投資で利益を上げていくことは、決して楽ではなく、一生懸命努力して、たくさんの作業を行い、そしていつも怖いと思いながら、勇気を持ってトライすることなどを教えます。
――勝つための大原則ですね。
そうです。個人投資家がFXや株式投資の勉強をしようとすると、ネットで検索して情報を得るか、書籍を購入して読むかです。
そうすると、ほとんどの情報が、「まず、テクニカルありき、手法ありき」となっています。しかし、手法やテクニカル分析を使うためには、投資に対する心構えが必要なのに、テクニカル分析や手法にばかり目を向ける人が多いのです。
心構えがしっかりしないままテクニカル分析や手法を使うため、失敗してしまう、その繰り返しを行っているわけです。
それを生徒さんに指摘するわけですが、大事なことは、資金管理や心構えと呼ばれるメンタルのコントロール、投資家に起こりえる感情の動きなどを教えることです。
――それは、トレードをするうえで、もっとも大事な部分ですね。
でも、その大事な部分を皆さん、気づきません。
――初心者やあまり勝てていない人は、書籍やネット上で書かれていたテクニックを使ったのに、どうして勝てないのだろうと思ってしまうわけです。表面上のテクニックになっているわけですね。
テクニックはいいのですが、資金管理については、丁寧に解説されたものがほとんどありません。
資金管理は解説するのが難しいカテゴリーではありますが、それが課題かなと思います。ですから私はいつも、「損切りしよう」と言い続けています。
――そのあたりに気づかれたのは、投資を始めてからどれぐらい経ってからですか?
1年か、もう少しかかっていますね。
トレード記録を余すところなくノートにつける地道な作業が好結果につながる
――投資をされていて、エントリーや決済のポイントなどは事細かにノートなどにつけておられたのですか?
株式投資の場合は、いっさい記録を残していなくて、1000万円損をしました。しかし、商品先物取引を始めてからは、すべての取引記録をつけるようにしましたら、何が悪いのかなどが、すべてわかるようになりました。
だから、生徒には、勝てるようなるまで、すべての取引記録をつけるように、口を酸っぱくして言っています。そうしないと、何がいいのか悪いのかがわかりません。
トレード記録をつけて、できたらチャートを印刷して、自分のチャートポイントを記録して、それでいいのかどうかを検証すると、自分のトレードがどういうものかがわかります。
――なぜ負けたのかを振り返るべきですね。
そうしないと、なぜ負けたのかがまったくわかりません。
記録をつけていないと、どういう投資をしたのか記憶に残っていません。
――勝てないトレーダーさんは、心構えとか、なぜこのポイントで売買したのかなどを……。
心構えというのは、言葉では伝わりにくい。実際に何をしなければいけないのかを作業ベースで言うとわかりやすいです。
例えば、今の例で言うと、取引の内容をすべて記録する。これはとても面倒臭い作業です。短期トレードの場合は、年間、すぐに100回から200回のトレードは行うと思います。
そんな回数の取引内容を記録するのは本当に面倒臭いのですが、それを行えということです。あるいは、記録をつけるのが面倒臭いのであれば、取引回数を減らせ、という話です。
これだと、この作業をやったかどうかが一目瞭然です。 トレード記録をつける前に、日記をつけるのがやりやすいので、「まず、日記をつけてください」と言って、それから「トレード記録をつけて下さい」と言うようにしています。
そこから、ちゃんとふり返って考えて下さいとか、古典的ですが、FXの本を読んで下さいと、指導しています。そうすると、少しずつ作業ベースに落ちていくので、生徒は「あ、そうなんだ」と気づくことが多くなってきます。
――地道な作業がその人の結果に繋がっていくわけですね?
みんなそうなんです。利益を上げた人で、突然利益を上げた人はいません。勝っている人は、すごく勉強して、努力をして、ふり返って、痛い思いをしています。
だから、それと同じことをやりなさい、ということです。
――トレードで勝っている人は、皆さん、そういう体験をしておられます。
そうですね。ごく希に、そんな体験をせずに勝っている人はいるでしょうが。
――それは、短期でやって勝てたということだと思います。
この世界は退場していく方が多いですから、10年後を見据えて話をしないといけません。
――一時的に稼いだという方はいると思いますが、3年、5年、10年のスパンで見ると、残っている人はほとんどいません。
いないですね。
――そうした人たちがなぜ負けたのかなと思うと、確立されたものを持っていないからです。残っている方は自分自身で確かなルールや心構えを持っている方だと思います。
順張りか逆張りのどちらかを選択させる
――最初はどういったテクニカル指標を教えられるのでしょうか?
FXトレードには順張りか逆張りしかないので、まず、この2つをきちんと理解してもらいます。順張りはトレンドに乗って行く、逆張りはトレンドの転換点で入る。
サヤ取りでなければ、この二つしかありませんが、「どちらもやりたいと言うな」と言います。「最初はどちらかしか身につかないので、どちらかをやりなさい」と念を押します。
で、どちらかを選ぶことが技術的に最初に教えることです。 逆張りについてはいろいろな解釈やアプローチがありますが、基本、順張りが利益を上げやすい。
順張りは期間のなかでいろいろな攻め方があるので、いくつかのパターンをわけてあげて、本当にトレンドの最初から最後まで乗るような長いもの、あるいはスキャルピングに近いようなかたちで、二つのスタイルをきちっと区別させて、どちらを選ぶかを決めてもらう。
そのうえで今度は、逆張りをやるのであれば、オシレータ系の指標が転換点を示してくれるので、そうしたテクニカル指標を解説し、順張りであれば、トレンド系のテクニカル分析である移動平均線やボリンジャーバンド、MACDなどを解説します。
私の場合は、ターゲットにものすごくこだわっています。「自分が具体的な値動きを狙う意識をもちなさい」と指導します。
今でいうと、順張りか、逆張りかをどちらかを狙いなさいと。
順張りか逆張りかも、3日で勝負するのと、1カ月で勝負するのとではまったく違いますから、どちらの期間で勝負するのかを決めてもらうという、個人個人にターゲットを持たせる教え方をしています。
目標やターゲットが見つかるまでは、トレードをするな!
――松下さんのトレードスタイルを押し付けるのではなく、その人がどうしたいかを尊重した、いわゆるテーラーメイドな感じの教え方ですね?
私が教えても、私の言うことをまったく聞かないことが、この10年やってきて嫌というほどわかりましたので、「あなたは何がしたいか」あるいは「あなたが何をしたいのか答えが出なければ、勝てません。その間はトレ―ドをしないで下さい」と言います。
自分の狙いが見えないとか、私が利益を上げる方法を教えてくれるだろうと思っている人は、利益を上げることができないから、「トレードはやるな」と、言います。
目標やターゲットを探すのもヒントがないと無理ですから、ある程度は、ヒントはあげます。
たとえば、これと、これと、これのスパンがありますが、どれを選びますか、と言う具合に誘導をしていきます。
――生徒さんの投資経験は?
みんなそれぞれバラバラです。
まったく投資経験のない人から、投資歴10年の人まで、バラエティに富んでいます。
――投資経験が長い方は自分なりの投資スタイルを持っておられると思いますが?
私の投資スクールに来る方は、どちらかというと、取引スタイルが固まっていない方が多いと思います。
――じゃあ、ルールも何も決まっていない方が?
ダラダラやっている方とか、あるいは、途中、いいときがあって、悪いときがあって、それほど負けていない方とか。
大損をしてしまうと皆さん、市場から退場しますからね。ですから、続けているということは、大損はしていないけれども、かといって利益も上がっていない方が、比較的多いのかなと思います。
経験年数はさまざまですね。
相手の悩みや問題点を解決する
――講師を始められたときは自分のトレードスタイルをそのまま教えてみたのですか?
そうですね。そんな感じですね。
――そうしたら、生徒さんがその通りにやらないと?
ひな形といいますか、お手本になることは教えますが、10年教えていますと、私自身が教えることが上手になります。
投資スクールだと20人ぐらいでこじんまりと授業を行うのですが、セミナーだと50人ぐらい対象にしています。
セミナーで話をする以上は、相手に利益を上げもらうという意識で話しますので、どうしたら50人全員に利益を上げてもらえるかを考えると、あまり自分のトレードスタイルのことを話しても、参加者のなかには私とまったくトレードスタイルの違う人もいますから、そういう人には私の話は響かないです。
ですから、相手が悩んでいること、私に聞いてみたいことを引き出して、解決する、提案を与えるという感じです。それが、10年講師を続けてきて、気づいたことです。
資金管理は比率で考える
――資金管理ですが、生徒さんの自己資金はそれぞれで、差があります。
はい、差があります。
――自己資金が少ない方と、多い方では、トレードの取組み方は変えていくべきでしょうか?
私は、一律に資金管理を教えます。私は投資資金に対する比率で話をしますので、これ以下の比率に損失を限定して取引をしなさいと教えています。
たとえ、10万円しか資金がない人でも、そう言いますし、10万円を真剣に扱いなさいと言います。
資金に対する比率でいかないと、こちらが10万円なりの取引をアレンジしてしまうと、その人の資金が100万円になったときに、どうやってトレードをしたらいいのかわからなくなってしまいます。
それが、比率で行っていると、100万円になろうが、1000万円になろうが、どれほど資金が増えてもも、比率計算はできます。
自分が2倍、3倍と増やしたければ、自分がそういうリスクを取ることもできますし、もっと安全に取引をしたければ、半分あるいは3分の1にすればいいと教えます。
そこで、リスクのコントロールという概念を教えることになります。
――なるほど。それはある意味、理想的な教え方ですね?
そうでないと生き残れません。成功したトレーダーが何年もすると市場からいなくなってしまうと言われましたが、良いときも悪いときもやってきます。
調子が良い時は、悪くなるとは思えないのですが、でも、悪くなるんです。いかに私たちでも、損失を出すときは出します。
ですから、資金に対する損失の比率は踏み外せません。踏み外した途端に負けてしまいます。 それは、皆さん、トレードデビューしてから2年から3年の時に踏み外してしまうことはありますから、そこで生き残れない方はいなくなります。
そこで生き残って、資金管理のやり方を身体に染み込ませてトレードをし続けたら、10年経っても生き残っている方が3%から4%ぐらいになるのではないでしょうか。
――勝ち続けてくると、どうしても「俺は天才だ、勝ち組だ」と思って、どうしても資金管理の比率を踏み外してしまいます。
ど~んと踏み外します。金額が大きくなってきてからそれをやってしまうと、ダメージが大きくなってしまいます。
たいていそこで立ち直れなくなります。
――ネット上で有名なったトレーダ―でも、いつの間にかサラリーマンに戻っていたという方は何人もいますからね。
プロといわれる人たちでさえ負けていくことが、いろいろな読み物にも書いてあるわけですから、それは当然のことです。
――そうならないためのセーフティネット?
そうです。セーフティネットですね。
――それを教えておられるということですね?
はい、そうです。それは私のオリジナルではありません。『マーケットの魔術師』という有名な本などを読めば、そういうことなんだとわかります。
個人投資家にとって有益な本3冊
――今、本の話が出ましたので、個人投資家にとって有益な本を3冊挙げるとすれが、どういった本になりますでしょうか?
FXですか?
――FXでも、株式投資でも、商品先物でも、投資に関する本では?
最近読んだ本で、『FXトレーディング』(パンローリング)は良かったです。著者は、キャシー・リーエンという方で、私はメルマガで絶対に読むべき本だと書きました。
――具体的にどんなところが良かったのですか?
FXは為替市場の取引ですが、実際のところ、日本の個人投資家で為替の取引のことをわかっている人はほとんどいません。
銀行のディーラーはわかっていると思いますが、彼らはプロです。為替の何たるかは非常にわかりにくいです。この本は、為替市場や通貨についてわかりやすく書かれています。
いい本です。 「FXについて参考になる本はありませんか?」と生徒から必ず質問を受けるのですが、正直言って、今まで、生徒に勧めたいと思った本は皆無でした。
ですから、まずこの『FXトレーディング』を読んで欲しいと思います。
ただ、初心者の方にとってみれば、何が書いてあるのかわからないと思いますので、彼らには、この本に書いてある内容がわからないと利益を上げることができませんから、内容がわかるまで熟読して欲しいと言っています。
この本にはトレードのことはあまり書いてありません。為替市場や通貨のことについては懇切丁寧に書いてあります。
トレードについては別の本で学んでもらいたいと思います。ただ、為替市場や通貨について理解していないと、FXトレードはできないので、そういう意味では、為替市場や通貨が非常にわかりやすいです。
――なるほど。ほかには?
FXの方だと、手前味噌ですが、私が最初に書いた『一番売れてる当紙の雑誌ZAiが作った低リスクでカンタンなFXトレード練習帳』(ダイヤモンド社)が、資金管理や心構えについて非常に平易に書いてありますので、この2つの本をセットでお勧めします。
キャシー・リーエンの本で為替市場や通貨について学んで、私の本では、資金管理や心構えのほかにトレードのことも書いていますから、2つの本をセットで読むといいと思います。
テクニック的なことを学びたいのであれば、これだな、という本はないのですが、『FXチャートリーディング マスターブック』(ダイヤモンド社)が、テクニカル本の入門編としては、すごく丁寧に解説してあるので、いいかなと思います。
投資家はもっと本を読んでほしい
――新しく出版された投資の本は目にされているのですか?
自分の興味がわいたテーマについて書かれた本を、その都度、読んでいく感じですね。新しく出版された本で、評判のいいものはチェックしています。
――生徒さんたちはけっこう本は読まれているのですか?
素直な方は、私が勧める本はすぐに買って、読んでいるようです。
素直というのが成功の秘訣ですから、素直が一番です。素直な方は、この本を読みなさいといったらすぐに読みますし、投資日記をつけなさいといったらすぐにつけます。
――巷には投資関連の書籍は溢れています。ものによっては、投資の本はけっこう高価ですよね。
そうですね。ただし、トレードでいくら稼げるかということを考えれば、本が高いと言ってはいけません。
――そうですね。
この本一冊でいくら損をせずに済むか、を考えると、投資家にとって本はメチャクチャ安いと思います。
――変な教材を買うよりは……。
もちろんです。私は初心者の方に、困ったときに頼れる本が何冊か見つかるまでは、利益を上げることができないと、言います。
私自身も『マーケットの魔術師』は40回以上は読んでいます。「よ~し、やるぞ」と初心に返るといいますか、モチベーションを高めることにも繋がります。
本というのはそういった存在です。投資家は本を読んで欲しいと思います。
必ず学ぶべきは移動平均線注目のテクニカル指標はADX
――先ほど、テクニカル指標の話が出ましたが、この3つだけは必ず学ぶべきだというものはありますか?
テクニカル指標としては、必ず学ぶべきものは移動平均線です。オシレータ系は何でも、好きなものでいいです。
RCIにするか、RSIにするか、CCIにするかは自分で決めてください。もうひとつは、最近注目しているテクニカル指標はADXです。
――どうして興味を惹かれているんですか?
これはすごく力強い指標だなと最近、思っています。これまでADXは複雑な指標であるため使ってはいませんでした。
まだ、その正体はつかんではいないのですが、7年から8年程度、ずっとADXを検証しています。『FXトレーディング』もADXを推奨しています。
なかなかADXを推奨する人はいませんが、今の私は正直、ADXにすごく惹かれています。 ADXは、トレンドの強度を測る指標ですから、トレンドフォローが攻めやすい。
トレンドフォローのなかでも、強いところのほうが勝ちやすいですから、使いようによっては、ADXで強いところがわかるのでいいと思います。
ただ、欠点もものすごく多いので、メジャーなテクニカル指標にはなれないのだろうと思っています。
――欠点も把握しながら、使わないといけないわけですね?
個人投資家や、負けている人は、欠点を気にしすぎです。欠点は、ある程度うまく凌いであげて、強みをめいっぱい引出してあげれば、十分勝てます。
ADXでいうと感度が鈍いとか、カウンター気味のトレンドは把握できないなどを欠点としてあげるのですが、それは、取るところだけをしっかり取ってあげれば、十分に補えます。
いずれのテクニカル指標も欠点はありますから、要は、強みと弱みを秤にかけて、強みで利益をだすことができればいいのです。
そういう意味では、扱いづらい指標ですが、ADXは面白いテクニカル指標だと思っています。
値動きを狙って勝つという考え方を身につける
――FXは勝てない方が90%ぐらいと言われていますが、そうした方たちに対してのメッセージをお願いいたします。
値動きを狙って勝つということを考えてもらいたいと思います。
ネットの読者の方たちは、カリスマといわれるトレーダーたちがいたら、彼らは腕がいい、勘が優れていると思っておられるかも知れませんが、それらは、ターゲットがあってはじめて成り立つわけです。
腕とか勘なんてものは、いつか、使えなくなる可能性があります。 FXも株式投資も同じですが、きちんと狙って勝つことが大事です。
どこから利益を取るかがわからないと勝てないのですが、それは人それぞれで違います。
せめて、自分がどこを狙って勝つかイメージ出来たり、ここが勝つポイントかなと思えるようになって欲しいと思います。
――明確なビジョンをもって、トレードに臨むということですね?
最近は、目標を持って下さい、狙って下さいと、常に言っていますね。
――わかりました。ありがとうございました。
辻秀雄氏プロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから