チャートが自分の勝ちパターンになったときだけトレードをする自分の得意な時間帯を決める
ボリ平さんは、FX歴14年、株式5年、商品先物8年、バイナリーオプション11年のトレーダーさん。
好きな通貨ペアは「米ドル/円」と「ユーロ/米ドル」です。
テクニカル指標は独自に開発した「ボリ平ドラゴン式」と「一目均衡表」を使っています。
中長期トレードから短期トレードへ
――まず、ボリ平さんのプロフィールからお願いいたします。
以前、名古屋で会社に勤めていたときに、検診でガンが見つかり、手術をすることになりました。
手術後、1カ月半ほど在宅療養をしていたときに、テレビでホリエモンのTOBの事件を見て、これなら自宅でもできると思って株式投資を始めてみようと思ったわけです。
最初は資金が10万円ぐらいしかなかったので、2桁銘柄の株式を買っては1円抜きをやっていました。
それからFXを知り、株式投資と同じような感じでFXトレードを始めました。
2007年頃から勉強がてら、ブログを始めました。
当時は円安でしたので、ポジションを持っていたら上がるという感じでしたから、スワップ目的でトレードをしていました。
しかし、中長期でポジションを持っていても、資金が少ないので、思う以上に利益は出ないこともあって、短期トレードを始めたわけです。
ショート狙いの取引を確立
――短期トレードを始めてから、利益が出るようになったのですか?
スワップ狙いのトレードでもある程度の利益はありました。
オセアニア通貨から高金利通貨の南アフリカランドやトルコリラも取引をしましたからね。
短期トレードを行いながら、相場というのはゆっくり上昇し、下落するときは急落することに気がついてから、ショートを狙い始めたわけです。
ショートでの取引に夢中になって、自分なりの手法や取引ルールなどをつくり始めました。
いろいろな手法はあるのですが、私が好んで使っているのは、チャートが決まったかたちになったらエントリーするという方法です。
――そのチャートのかたちになったら、取引をするというわけですね?
自分のなかに決まったチャートパターンがあります。
チャートがそのかたちになったらエントリーし、そのかたちが崩れたら決済します。
ですから、自分が今どのぐらいの利益を得たのかとか、「ポンド/円」や「ユーロ/米ドル」がいくらなのかはわかりません。
「米ドル/円」くらいはわかりますが……。
値頃感を極力なくして、銘柄も関係なく、ショートを中心に取引をしています。
資金効率が良い金融商品なら何でも取引をしました。
CFDやバイナリーオプション、日経225先物など、いろいろな金融商品を試したという感じですね。
――自分の取引スタイルを確立するまでには、試行錯誤もあったでしょうが、どのぐらいの時間がかかりましたか?
どれぐらいですかね。
――初心者や中級者の多くは勝てないとか、自分の取引スタイルが固まらないとか、いろいろ手法とか取引ルールを探している方に参考になればと思っているのですが……。
そうですね。
半年から1年半ぐらいでしょうか。
最初は海外で話題になった「ボリ平ドラゴン式」
自分のなかにお手本とする教科書がありませんので、ブログやYouTubeでFXトレードに対する自分の考えを発表していたわけです。
そうしたら、たまたま海外のサイトで、「ボリ平というのが面白い手法でトレードをしている」と話題になっていることを知りました。
「一目トレーダーズ」というフォーラムです。
私が考案した「ボリ平ドラゴン式」です。
ボリンジャーバンドと平均足と一目均衡表の遅行スパンだけをくっつけた手法ですが、そのサイトでは、「ボリ平ドラゴン式」のバックテストなどをやって、勝手に盛り上がっているわけです。
やがて、逆輸入というかたちで、「ボリ平ドラゴン式」が海外で評判になっていることが、国内でも知れ渡るようになりました。
しかし、「ボリ平ドラゴン式」が評判になった極めつけは、2012年にザイFXのサイトで行っていた「Zai FX TV トレードライブ」に出演したことでした。
当時はまだ、名古屋で会社員をしていましたので、終業後、上京して、ニューヨーク時間から、実際にTVカメラの目の前で「ボリ平ドラゴン式」を使って、生でトレードをしたことで効果がありました。
――口だけではないぞ、というわけですね? 先ほど、逆輸入という話がありましたが、最初、国内では「ボリ平ドラゴン式」は受け入れられなかったのですか?
受け入れられませんでした。
――海外ではじめに評判になって、認められることはよくあります。
自分の勝ちパターンにはまったときだけトレードをする
たぶん、日本人というのは、教科書を求めがちです。この本を読んだらできるのではないかと思うわけです。
初級編から中級編、上級編とステップアップをして、初めて、トレードがうまくなると思っている人が多いと思います。
要は、トレードをする時間や銘柄、性格にもよりますので、それをすべて一緒くたにして、教科書として学んでも成果が上がるかわかりません。
さらに、テクニカル指標も、取引をだんだん行っていくと、ボリンジャーバンドやMACDなど、あれこれ試していくうちにきれいなチャートはできるのですが、指標が多すぎると、いろいろなシグナルが表示されてしまい、どこで投資判断すればいいかわからなくなってしまいます。
私はどちらかというと、感覚でトレードするほうが合うのかな、と思っています。
――自分のパターンにはまってきたときだけ、トレードをするということですね?
そうです。
変なところで手を出さないで。
いろいろなことにこだわらず、自分のかたちがきたらトレードすることだけにこだわって、そのスタイルをずっと続けています。
自分の得意な時間帯を決めて、トレードをする
――日本時間だとか、ロンドン時間、ニューヨーク時間だとかに、あまりこだわらない?
ボラティリティや値動きが変わりますから、多少は意識します。
――しかし、時間帯はトレードするうえでは、大きな要素ではない?
そうです。今、東京時間もけっこう動きますからね。
――そうですね。
あとは、トレードは24時間行っているわけではなくて、自分の得意な時間帯があります。
その時間帯で、トレードしたところをスクリーンショットにとって保存しています。
つまり、トレードを行った1時間か2時間のチャートのかたちを、3年間、画像でずっと保存しています。
プライシングは関係ない分、その時間帯にレートがどう動いたのかというデータは揃っています。
銘柄で言うと、「米ドル/円」と「ユーロ/米ドル」「ポンド/米ドル」です。
そうすると、その時間帯のなかで、高値や安値をつける時間が必ずあります。
市場の開始直前や経済指標が発表される時間帯です。
経済指標に関しては、発表が無い日でもその時間になると動いたりするんです。
エントリーする時も、決済するときも、マークしている時間帯を中心にトレードを組み立てます。
たとえば、東京時間だと、日経平均株価と連動するのが「米ドル/円」ですが、「9時に東京市場がスタートし、お昼を経て午後になると、流れが逆転。午後2時以降に欧州勢が入ってきて新たなトレンドが生まれる」という値動きイメージを持って取引しています。
毎日この動きになるとは限りませんが、毎日の相場動向にあわせてトレードするか、しないかを決めます。
ですからテクニカル重視でもファンダメンタルズ重視でもありません。
あくまでも自分の取引時間に必要な情報だけを入れるようにしています。
私は投資家で、アナリストではない!
私はアナリストではありませんので、利上げのタイミングや相場見通しなどを語る必要はないと思っています。
トレーダーはたとえ、相場予想が外れたとしても自分のポジションが正しければそれでいい訳です。
売りや買いの方向も長期投資か短期投資かによって逆になることもあります。
たとえ雇用統計の数字が当たっても、その時にポジションを持っていなければ何の利益にもならないのがトレーダー。
トレーダーとアナリストでは仕事の内容が違います。
私に相場見通しを聞いても参考にならないと思いますが、自分のトレードから得た経験や相場観などはどんどんお話したいと思っています。
――アナリストじゃないですからね。
損小利小でもいいから、勝ちたい
私は利益の何%になったら利食いするとかはまったく考えていません。
行くときは行け!です。
なるべく損切りもしたくありません。
その攻防で両建てしたり、ナンピンしたり、とありとあらゆることをやってきました。
そのなかで自分が考えついたのが、「ボリ平ドラゴン式」です。
このやり方が皆さんすべてに当てはまるものかどうかはわかりません。
――そうですね。
個人投資家によって性格も違うし、トレードできる時間帯も違います。
私は、自分自身のことを負けず嫌いだと思っています。
たとえば、1勝9敗で利益が100万円出る人と、9勝1敗で利益が50万円出る人がいたとして、「どっちがいいですか」と聞かれたら、私は、9勝1敗のほうを選びます。
とにかく勝ちたい。
――それはわかります。
最初に細かく損切りして9敗?
最後に、いや途中でもいいですが、100万円の利益が出るポジションを持ちます。
しかし、そのポジションは絶対に来るのかわかりませんし、1年後に来るかもしれません。
あるいは来ないかもしれません。
そういう確率にかけるのであれば、よく、損小利大と言いますが、私は、損小利小でいいと思っています。
9勝1敗で、トータルでプラスになればいいと思っています。
その1敗でコツコツドカンとやられても、その損失を9勝で得た利益が上回っていればいいわけです。
――日本人はセオリーが好きですからね。
損切りは細かく入れて、一発で大きく勝てばいいとか、あるいは、テクニカル指標を使って、初級、中級、上級とステップを踏んでトレードをしていきましょうね、そういうトレードにはまって、自分のトレードスタイルもわからず、しかも、勝てていないとなって、市場から退場していく……。
せっかくここまで頑張ってきたのに途中でFXをやめてしまうのは残念です。
しかし、勝っているトレーダーはそんなことは関係ありません。
自分のトレードスタイルでトレードをしていますからね。
ですから、最初は、誰かのトレードを真似ることから始めて、トレードを行っていくうちに、徐々に自分のトレードスタイルを確立していけば、今、日本人の9割が負けていると言われている状態を少しでも改善できるのではないかと、思っています。
FX市場が盛り上がるためには
FXが盛り上がったのは12年から13年前ぐらいですか?
――そうですね。
あれから多くの人がFX市場に参加したのですが、当時と比べると、ブームが落ち着き、相場から離れてしまったトレーダーもいます。
時代も相場も日々変わるので、これまではセオリーどおりで勝っていた取引手法があったとしても、少しずつアレンジしていかないと、徐々に通用しなくなってくる場合があります。
――そうですね。
多少、セオリーから逸脱してもいいですから、新しい感覚のトレードスタイル、面白い手法を持ったトレーダーが活躍し始めたら、FX市場もまた盛り上がるのではないかと思います。
あくまでも「売り」にこだわって取引を
先ほど、FXでは「売り」を覚えたと言いましたが、私のトレードは99%が、ショート(売り)です。
ロング(買い)のチャンスが来ても、ロングポジションはわざと持ちません。
ロングのチャンスが来たら、いったんトレードはお休みします。
私の場合、そこで売りと買いの両方をイメージしてしまうと混乱するので、定点観測であえて「売り」のポイントしか見ないようにします。
これは、逆張りでも、順張りでも同じです。
「売り」しか行わないというのは徹底しています。
――そこら辺の頑固さはかなり重要です。
そうです。
――いろいろな方に裁量トレードですか、システムトレードですかと、聞くのですが、裁量トレードと言っても、自分で確立したルールに則ってトレードを行うわけですから、実態は、ほぼ、システムトレードだと言ってもいいと思います。
利食いの場面も自分で決めています。
ただ、私の場合は数字を見ませんが、負けると、次の取引では思わずロットを増やしてしまうことがあります。
――それは、人間ですから。
負けたくないし、最後は少しでも勝って終わりたいからです。
負けトレードのあとに、理由もなくロットを増やすのは良くないと思いますが、ついついやってしまいます。
――でも、そうしたやり方をして、市場に残っているからいいと思いますが。
日々のトレードでの反省は多々あります。
しかし、決まりきったトレード・ルールを忠実に守っているだけではダメだと思うし、そんな自分は嫌なんです。
常に新しい手法にチャレンジしていきたいです。
そのために、毎日トレードしたチャート画像を保存し、検証しています。
いわゆるトレードノートというものはつけていません。
――チャート画像がトレードノートの代わりですかね?
そうです。
第一、書いている暇がありません。
このときはこうだった、あのときはそうだったと言っている間にトレードチャンスが来てしまうかもしれません。
ロット数も、その時の相場によって変わります。
ナンピンも、負けたくないものですから、意地の張り合いみたいにバンバンやっちゃうときもあります。
そういう無理なトレードをしたあとは、勝っても負けても気分のいいものではないので、皆さんにはお勧めできませんが……。
笑うことが大事!
トレードがうまくいかないときもありますが、最近は、爆笑することを覚えました。
あまりにも駄目過ぎるトレードの時、たとえば、ナンピンをバンバン行って、1週間分の利益を吹っ飛ばしてしまうようなときですが、そんなときは笑おうと、やっと笑えるようになってきました。
最初は、負けたときは自分をものすごく責めていました。
なぜ、自分が決めた銘柄や時間帯ではないところで取引をしたのか、ナンピンを止めとけば、1週間分の利益を吹き飛ばさずに、1日分の損失だけで済んだのにと。
けど、そうした取引を行ったことでわかる痛みもあるし、また、実際に損失分を取り返したこともあります。
それは悪い成功体験ですが、利益が1週間分の2倍に殖えたこともあります。
でも、そんな取引をした自分を笑ってやろうと思ってから、少し、自分自身が変わりました。
――そうなると、強いですね?
強いです。
爆笑するって、大事かなと思います。
損切りの考え方と方法
――ちなみに、損切りってどういう考えでやっていますか?
損切りは思い描いたチャート形状にならなかった時、または形状が崩れたときに動きます。
その時のポジションがプラスでもマイナスでも一度決済を考えます。
この判断が遅れたとき、迷ったときに大きな損をしてしまいます。
ですからなるべくチャートに集中して『利益、または損失が今いくらになっているか?』は気にしないようにします。
自分のかたちになったらトレードをすることも
――皆さん、勝っているトレーダーは、ずっと勝ち続けているイメージを持っていると思うのですが、けっこう負けていますし、悔しい話もされます。
負けることもあることを伝えていかなければと思います。
決められたルールでやっていても、人間だから、そのルールを破って取引をすることもあるはずです。
そうです。
そこでまた手法を見つけることもあるわけです。
ロットを下げたり、トレード時間や銘柄を変えて、トレードすることもあります。
チャートのかたちが、自分の取引しやすい形状になっていましたので、思わず、取引をしてしまいました。
ただ、スプレッドが広いため、今までのトレードの仕方を変えていかなければならないというのがあります。
なぜ、「ユーロ/豪ドル」の取引を行ったかと言えば、「ポンド/米ドル」のチャートを見ていて、「ポンド/豪ドル」となってきて、「ユーロ/豪ドル」もいけるんじゃないかと思ったわけです。
国とか、スワップポイントなどはまったく関係なく、ただ、チャートのかたちが私がエントリーするかたちになっていたから、トレードをしてみたのです。
クロス円の取引はしない
あとは、クロス円の取引はあまりしません。
――それはどうしてですか?
3つの通貨ペアを見なければならないからです。
ストレートな動きをしませんし、とくに、東京時間だとクロス円と「米ドル/円」は同じような動きをします。
そのなかに、「ユーロ/米ドル」の要素があると変な動きをします。
欧州時間だと、「ユーロ/円」と「ユーロ/米ドル」、「ポンド/米ドル」と「ポンド/円」が似たような動きをします。
だったら、ストレートをやったほうがいいと思って、クロス円のトレードはやらないようにしています。
ただ、バイナリーオプションは銘柄が少ないから、クロス円はやりますよ。
――株式投資は行っているんですか?
株式投資は行っていません。
――FXとバイナリーオプションだけですか?
金もやります。
FXトレーダーに金投資を知ってもらいたいし、金の投資家にFX市場を知ってもらえたら投資の幅が広がりますし、ヘッジにもなります。
そうやって各金融マーケットが活性化するといいなと思います。
トレードに勝つための秘訣とは?
――最後に、読者の方にトレードで勝つための秘訣などを。
トレードで勝つためには、まず、トレードを行う時間帯を決めることです。
その時間帯は1時間でも、2時間でも構いません。
チャートを前にして、ローソク足の動きを見てください。
そして、高値、安値をつけたところをメモします。
そこから、買いなのか、売りなのかを判断して日々データを取ります。
そして、トレードの作戦を考えます。
為替相場は24時間取引できる機会がありますが、全部の時間を把握することは無理です。
しかし、自分が取引可能な短い時間だけなら相場のクセがわかるかもしれません。
この時間だけは価格の動きをすべて把握できる「相場のプロ」を目指してみましょう。
まずはじっくりチャートを見てください。
チャートを見て「上がるか・下がるか?」を予想するところから始めて、自分の勝ちパターンを見つけていきましょう。
――自分のトレードスタイルを決めることですね。
経済指標も、その時間に発表されるものだけ、チェックするといいわけです。
――みんな自分のスタイルをどう決めるか、悩んでいると思います。
損切りとか、利益確定とか、FXは難しいと思います。
バイナリーオプションは時間で決まりますからね。
野球とサッカーのようなものです。
野球は9回がきても、同点で決着がつかなければ延長がありますが、サッカーは時間がきたら、同点でも試合は終了します。
ですから、うまく切り替えを行って、FXとバイナリーオプションの両方を行うのがいいと思います。
――ありがとうございました。
辻秀雄氏のプロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから