- トレードに役に立つ格言
- 「テクニカル分析は、科学的な外見を装ってはいるが、実は占星術と同類である」
- 「百尺竿頭(ひゃくしゃくかんとう)一歩を進む」
- 「相場を語るなかれ」
- 「相場高下の議論はすべからず」
- 「生き馬の目を抜く」
- 「判断を誤ることは正常なことだ。それを修正しないのが異常である」
- 「最良の予言者は過去なり」
- 「買うのと買わされるのとは別物である」
- 「初心者にとって一番悪い教師は、少しばかり相場を知っている人である」
- 「金のなる木は水では生きぬ、汗をやらねば枯れていく」
- 「株に一攫千金はない」
- 「世の中には、頭が悪いために投資でしくじる者も多いが、頭が良すぎて失敗する者も劣らず多い」
- 「人は転ぶと、まず石のせいにする。石がなければ、坂のせいにする。そして、坂がなければ、はいている靴のせいにする。人はなかなか自分のせいにはしない」
- 「勝つことのみを知りて負くることを知らざれば、害その身に至る」
- 「いのち金には手をつけるな」
- 「腹立ち売り、腹立ち買い、決してすべからず」
- 「売るべし、買うべし、休むべし」
- 「気の落ち着かぬ時の商いは、10度が10度損なりと察すべき」
- 「事業で借金をするのは当たり前だが、株をやるための借金は、簡単にできるだけにとても危険」
- 「メンツにこだわると、」メンツと財差を同時に失う」
- 辻秀雄氏プロフィール
トレードに役に立つ格言
これまで2回にわたってトレードに参考になる格言を消化してきましたが、ここで三度、格言を紹介してみたいと思います。
トレードで悩んでいるときやトレードで迷ったときなどに格言に接することによって、新たな気持ちになることもできるし、気分もリフレッシュできる可能性も高くなります。
トレードにおいて先人が経験に基づいて培ってきた言葉だけに、きっと参考になるはずです。
「テクニカル分析は、科学的な外見を装ってはいるが、実は占星術と同類である」
むやみにテクニカル分析や占星術を信用しないほうがいいという教えです。
バートン・マルキールという人が書いた『ウォール街のランダム・ウォーク』という本のなかに出てくる言葉です。
テクニカル分析は過去のいろいろなパターンを分析して、こうしたパターンが出てくると相場はこのようになるという仮定をたて、将来を予測するものですが、その予測は当たることもあれば、はずれることもあります。
したがって、科学的であるとするなら、100回予測した者は100回ともあたらなければ、それは科学といえないということです。
「百尺竿頭(ひゃくしゃくかんとう)一歩を進む」
相場の世界は奥が深いから、あるレベルに達しても常に研究は怠ってはならないという教えです。
『五灯会元』に出てくる言葉です。
元の意味は、100尺(約30メートル)の竿の先まで上り詰めても、さらにその先に一歩進めようとすることから、たとえば、頂上をきわめてもそれに満足することなく、さらに進歩のための努力をすることです。
「相場を語るなかれ」
相場があたったからといって、天狗になってはならない、という戒めの言葉です。
相場があたってしまうと得になって、他人に吹聴したくなるものですが、本当に相場を知っている人は、ただ黙々と相場に打ち込むだけです。
よく「能ある鷹は爪を隠す」といいますが、相場のなんたるかを知っている人は、他人に相場のことは語りたがらないものです。
相場はいつ何が起こるかわからない怖いものだと知っているからこそ、むやみに相場のことは語りません。
まして、相場はこうなると周囲に語って、相場が違った方向に行ったら、それを信じた人には恨まれるでしょうし、自分自身がその相場感に呪縛されて、臨機応変に対応ができなくなる可能性も高くなります。
「相場高下の議論はすべからず」
相場について議論したり、意見をするのは意味がないという教えです。
『宗久翁秘録』に書かれている言葉です。
相場の見方は十人十色で、個人によっていろいろな見方がありますし、相場は理屈通りには動いてくれません。
「生き馬の目を抜く」
『鴉鷺合戦物語』に出てくる言葉です。
その意味は、生きている馬の目を抜くほどすばしこくて、油断がならない、ということです。
投資の世界には人を出し抜いて、自分だけ儲かればいいと思っている人が蠢いています。
人一倍儲けようと思ったら、どんな世界でも例外はなく、ずるさ、世知辛さ、すばしっこそがあるだけで、それだけ覚悟をして相場の世界に参入すべきである、ということです。
「判断を誤ることは正常なことだ。それを修正しないのが異常である」
ウォール街でささやかれている相場の格言です。
相場の見通しを的確に読みとることは難しいことです。
それは不可能に近いといっていいかもしれません。
どんなすぐれたコンピュータ技術を使ったとしても、相場の見通しを毎回、毎回、パーフェクトに当てることは不可能です。
ですから、投資家自身は相場見通しの判断を間違えることは当たり前です。
それは何ら恥ずべきことではありません。
問題は、相場見通しの判断を間違えてしまったときの対応の仕方です。
自分のメンツにこだわり、相場見通しが間違っているにもかかわらず、意地を通してしまうと、誤った方向にトレードをしてしまい、大きな損失を被ってしまう可能性が高くなります。
相場見通しが間違ったと判断したら、素直に間違いを認めて、どこが間違っていたのか、なぜ間違ったのかを反省したうえで、自分の相場見通しの修正することです。素直さが一番大切です。
「最良の予言者は過去なり」
イギリスの詩人であるバイロンがいった言葉です。
相場の世界では、過去の動きを見ていると、いま現時点から将来にわたって何が起こる可能性が高いのかがある程度、推測できることがあります。
つまり、歴史は繰り返す、といわれるように、相場の世界も同じことが当てはまることが多々あります。
ですから、過去の値動きを分析して、こういう状況になったときは同じ値動きをするのではないか、とある程度は、将来の動きが予測できる、というわけです。
そういう意味で、過去は将来の予言者である、ということになります。
「買うのと買わされるのとは別物である」
『ウォール街の魔術師』に出てくる言葉です。
買う、というのは自らの意思で買うことですが、買わされるというのは最終的には自らの意思ですが、その過程では他に大きく影響を受けていることになります。
投資をする場合には、汗水垂らして稼いだお金をつぎ込むわけですから、買わされてはいけません。
あくまでも自分の意志で買うことが大事で、他人の言動に左右されて買ってしまうことほど、あとで悔やむ結果になっても、悔やみ切れません。
「初心者にとって一番悪い教師は、少しばかり相場を知っている人である」
ウォール街でささやかれている格言です。
トレードを始めてから少しわかってきたような気になってしまうと、人にやたらと教えたがる人がいます。
そんな相場は簡単なものではないのですが、そのあたりをわきまえずに、やたらめったら教え魔になる人がいます。
そんな人のいうことを聞いてトレードをしてしまうと、誤った方法を身につけてしまい、後々のためになりません。
とくに、初心者はそんな人のいうことでもまともに本気で受け取ってしまいがちですから、始末が悪くなります。
トレードのやり方は個々人で違いますから、その人のやり方が基本にかなっているかどうかは判断できません。トレードで失敗をすると財産をすべて失ってしまうリスクがあります。
ですから、とくに初心者がプロといわれる人の教えを請うか、自分で入門書などを探して自分で勉強をするほかに、トレードが上達する道はありません。
気軽に他人がいうことを信じてトレードをするのは厳禁です。
「金のなる木は水では生きぬ、汗をやらねば枯れていく」
日本で古くからいわれている相場の格言。
お金を儲けるためには、他人と同じようなことをやっていてはだめである。
人一倍努力することが必要で、他人の言いなりになっていたのでは、けっしてお金を儲けることはできない。
「株に一攫千金はない」
株を為替あるいはFXに変えても通用する格言です。
株式をはじめ、FXでも一攫千金を夢見て取引に参加される方が少なくありません。
とくに、FXは少ない資金で取引ができ、さらに、口座開設も簡単で、すぐに取引ができることから人気が衰えない金融商品です。
そこで、簡単に儲かるのではないかという方も多いと聞きます。
しかし、FXのトレードで利益をあげるのは簡単ではありません。
しっかり、準備をしてのぞまないと、あっというまに資金は底をついてしまい、市場から退場を余儀なくされます。
FXの書籍で、月に100万円儲かるとか、1億円を儲けたというようなものが発刊されていますが、それがたとえば事実だったとしても、その後、儲けた資産を失ってしまったりという話はよく聞きます。
ですから、一攫千金などを狙わないで、地道に努力を積み重ねていくことがFXのトレードではもっとも大事なことです。
一攫千金といったうまい話は投資の世界にはありません。
「世の中には、頭が悪いために投資でしくじる者も多いが、頭が良すぎて失敗する者も劣らず多い」
ジョン・トレインが著した『新ファンド・マネジャー』のなかで出てくる格言です。
頭が悪くて投資に失敗する人は、ろく基礎的なことをなどを勉強しないで、他人の言動に左右されて、自己流で投資をするから失敗することが多い。
一方、頭の良すぎる人は考えすぎて失敗するケースが多い。
ジョン・トレインは同書で次のように述べている。
「知的な人々は、複雑な派生商品のような見事に構築された抽象的概念に惹かれやすく、その結果、単純明快でより基本的な真理からつい目を遠ざけてしまう」
投資の世界は、上がるか、下がるかを予測することで、勝負が決する。
きわめて単純明快なものである。
それだけに、頭の良い人は迷うに迷ってしまうのだろう。
「人は転ぶと、まず石のせいにする。石がなければ、坂のせいにする。そして、坂がなければ、はいている靴のせいにする。人はなかなか自分のせいにはしない」
ユダヤの格言である。
人の本質を現して考えさせられますし、人間の弱点をずばり言い当てています。
投資家のなかにはこのような傾向があるのは否定できません。
トレードで失敗したときに口をついて出るのが、相場が悪かった、〇〇〇さんがこういっていたから誤った、ある人のブログにこんなことが書いてあったがその通りにしたら失敗した、運がなかった、等々です。
しかし、どんなトレードをしようが、そうしようと決めたのは自分自身であることを忘れてはいけません。
失敗は失敗として認め、ではなぜ失敗したのかをふり返って反省し、再び、同じ失敗をしないためにどうしたらいいのかを考えるのが投資家としてのあるべき姿です。
他人のせいにしては、トレードは上達をしません。
「勝つことのみを知りて負くることを知らざれば、害その身に至る」
徳川幕府を築いた徳川家康の言葉です。
連戦連勝で勝ち続けて、負けを知らなければ、自信過剰になり、ついつい油断をしてしまって、いつか大負けをする危険性が高まっていきます。
本能寺で明智光秀に討たれた織田信長がいい例です。
もし、織田信長が負けることを知っていたら、本能寺で討たれる異はなかったかもしれません。
負けることを知っている人は、負けたときの惨めさ、怖さをしっていることから、負けないためにどうしたらいいかを常に考えて行動します。
トレードも同じです。
トレードで負けることを味わった人間は、負けないためにはどうしたらいいか、相場を徹底的に研究を重ね、これぞと確信を持ったときにトレードにのぞんでいきます。
そうすると、失敗をするケースもぐんと少なくなってきます。
負けることは恥ではありません。
負けたことを糧にして、次にいかに備えるかが大事なことなのです。
「いのち金には手をつけるな」
FXトレードは、やり方によってはハイリスク・ハイリターンの側面をもっているのは否定できない。
投資金額が多ければ多いほど儲けが大きくなる可能性は高いが、大きな損失を被る可能性も高くなる。
そのため、上手な資金管理が求められている。
資金管理で大事なことは、投資につぎ込む資金は、生活費以外の余剰資金を使うべきである。
まして、借金をしてトレードにつぎ込むのは論外である。
個人投資家のなかには借金をしてトレードにのめり込んだり、生活資金をトレードにつぎ込む人がいるが、それは自分の首を絞めることになるので、絶対に避けるべきです。
生活のために汗水垂らして稼いだお金は有効に使ってこそ意味があります。
「腹立ち売り、腹立ち買い、決してすべからず」
『宗久翁秘録』に出てくる格言です。
トレードを行うときには、沈着冷静に淡々と行うのが鉄則です。
感情に左右されていては、狙いとおりのトレードはできません。
ですから、酒を飲んでトレードをするととんでもない失敗をしかねません。
腹が立っているときにトレードをするのも、厳禁です。
腹立ち紛れにトレードをしてしまうと、取引数量を間違えたり、ポジションをもってはいけないところでポジションを建てたり、決済の場を間違えたりと、平常時では考えられないような失敗を犯すリスクが高くなります。
そのため、腹が立っているときはいったん、気持ちが落ち着くまではパソコンの前には座らないで、気持ちを整えるようにしましょう。
ですから、「腹が立っているときはトレードをしない」と紙に貼っておくのもいいでしょう。
「売るべし、買うべし、休むべし」
日本の格言です。
トレードで成功するときというのは、買うべきときにロングポジションを建て、売るべきときにショートポジションを建て、上手に決済までもっていくことです。
トレードがしたくてうずうずしながら、むやみにポジションを建てても成功する確率は非常に低いですし、むしろ、そんな手当たりばったりのポジションメイキングでは、損失を増やすばかりです。
さらに、トレードでは休むことも必要です。
大きく損失を被ったときなどは冷静でいられません。
損失を取り返そうと躍起になって、焦ってしまいがちです。
そんなときにトレードをしても墓穴を掘るばかりです。
そんなときはいったんトレードを休んで、気持ちを落ち着けてから、再びトレードにのぞむようにしましょう。
「気の落ち着かぬ時の商いは、10度が10度損なりと察すべき」
トレードには平常心でのぞむことが大事だという教えです。
気持ちが焦っていたり、何か気になることがあるときにトレードをしても、うまくいきません。
そんなときに10回トレードをしても、10回とも失敗してしまうことになります。
腹が立っているときやイライラしているとき、損が出て焦っているとき、何か気になる異があるとき、など、平常心でトレードにのぞめないときは、トレードに集中ができず、上手なトレードができません。
ですから、そんなときはいったんパソコンの前には座らずに、気になることを片づけてから、すっきりした気持ちになったときに、トレードを再開しましょう。
「事業で借金をするのは当たり前だが、株をやるための借金は、簡単にできるだけにとても危険」
アメリカのファンド・マネージャーであるフィリップ・キャレーがいった言葉です。
株を為替あるいはFXに変えて考えてみましょう。
銀行がお金を貸すときには、事業計画が理にかなった者であり、十分に収益が見込め、貸した金を改修できるかどうかで判断をします。
バブル景気の時ならいざ知らず、銀行の財布のひもも以前とくらべるとかなりきつくなっているようです。
しかし、株式やFXなど投資につぎ込むための資金は比較的簡単に借りることができるようです。
しかし、投資は借金までして行うものではありません。
トレードがうまくいけばいいですが、失敗したときは、損失を被った上に謝金まで背負うことになり、その後の人生が悲惨なものになるリスクがあります。
投資につぎ込む資金は、自己資金でまかないましょう。
「メンツにこだわると、」メンツと財差を同時に失う」
相場は刻々変化します。
ときには、急落したり急騰したりします。
そんなとき、自分が狙っていた、あるいは考えていた通りに相場が推移しないからといって「相場が悪い」と「理論的には必ずこうなるはずだ」と自説を曲げないでいると、いつまでもたってもトレードはうまくなりません。
むしろ、失敗を繰り返す結果になってしまいます。
相場の見通しははずれたときには素直に過ちを認め、相場から撤退すべきです。
理論家ほど、あるいは自信過剰な人ほどメンツにこだわって、相場が変化しているのに、自説にこだわった取引をしている、しまいには資金を失ってしまう羽目になります。
投資で自信をもつなとはいいませんが、相場の状況を冷静に判断して、相場にあわせたトレードを行いましょう。
辻秀雄氏プロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから