最初はアフィリエイト目当てで口座を開設
のりたまさんがFXをはじめたのは2009年のことで、それまで投資にはまったく興味がありませんでした。
お金を増やそうと思ってFXを始めたのではなく、当時はアフィリエイトの報酬も良かったので、FX会社に口座を開いて、たとえば、1万円をもらえればいいやと思って、FX業者に口座を開いたのが、FXを始めるきっかけとなりました。
当初、6万円を入金したものの、何をどうしていのかまったくわかりませんでした。
そこで、のりたまさんのおばがニュージーランドに住んでいたのを思い出して、NZドルだったらいいかなと思って「NZドル/円」を買って(ロング)、4日間そのままの状態にして蓋を開けてみたら、8000円の利益になっていました。
「これはおもしろそうだな」と思い、そこからは毎日、トレードをするようになったといいます。
通貨ペアもテクニカルも1本に絞る
しかし、最初はチャートを見てもよくわからなかったので、レート表を見て取引をしていました。
そして、月に10万円ぐらいの利益を上げることができるようになったので、「これは勉強すればもっと勝てるようになるかも」と思い、投入資金も増やし、本格的にFXの勉強を始めたわけです。 ところが、そこから空回りが始まりました。
いろいろなテクニカルを試したり、商材を買ったり、通貨ペアもあれもこれもとトレードしたので、しまいには頭が混乱して真っ白になってしまいました。
それまで、月に40万円ぐらいの利益を上げていたのですが、その利益が取れなくなり、東日本大震災のときにロングを持ったままにしていたので、目の前で相場がはじけ飛んでしまいました。
その時に、FXを止めようか、続けようかと大いに悩みました。
そして、ふとトレードが上手くいっていたときのことを思い出したら、負けている原因が見えてきたといいます。
それは、いろいろな通貨ペアやテクニカル指標を試していたことが原因だったことがわかったのです。
そこで、通貨ペアもテクニカル指標も一本に絞って取引を再開したら、うまくいくようになりました。
男女の脳の差
――ビギナーズラックではないが、最初は勝てても、よしっと思ったときから、いろいろなものを見過ぎるのか、勝てなくなってしまう。
そうなんです。そういう人が多くて、暗い道を長い間、さまよってしまう人も多い。そういう人たちは、あちこちに転がっているおいしい話しに飛びついてしまう傾向があります。
――それは男女も年齢も問わずに?
男性のほうがその傾向が強いのではないでしょうか。男性のほうがFXに求めるお金がけっこう大きい。
女性は日々のランチ代というふうに考えている人が多く、男性のほうは脱サラをしたいとか、FXのトレードだけで食べて生きたいとか、専業トレーダーになりたいといったイメージを持たれている人が多く、大きなリターンを求めている人が多い。
そういう意味では、男女の脳の差があると思っています。
メディアの責任
――FXは男性の世界と言われますが、女性でもFXをやりたい人はけっこういるはずです。しかし、セミナーでは男性がいっぱいで、女性は参加しにくいという声をよく聞きます。
女性はもともと投資をしないものという風潮が強いのではないでしょうか。FXのセミナーに参加することが自体がダメだと思っている女性も多いかもしれません。
――政府も投資は勧めていますが、投資といえば真っ先に浮かぶのが株式投資です。FXもその一端に加えて、分散投資というかたちで、みんながFXに目を向けてくれると良い。
メディアも、FXについては悪いイメージをつくりあげているような気がしていますが、そこが払拭できればいいのではないでしょうか。
――メディアも自分たちの都合によって、取材したものを取り上げたり、取り下げたりする。だから、情報は自分で取りにいかなければ、本当のことは見えてこない。
でも、そういう人は少ない。メディアを鵜呑みにしてしまう人が多い。テレビの言うことはすべて本当だと思っている。
――そうだ。
FXの腕が上達?
FXも2008年当時のリーマンショックやサブプライムローンの時代に比べると、損切りなどを意識するようになり、トレードもうまくなってきている。
だから、大きな損失を出すことも少ない。逆に言うと、FX会社が儲けにくくなっている。
――欧米のブローカーは、日本人トレーダーは洗練されているという。それは一度損失を出し、そこからFXを学んでいるからだ。
そうだと思う。
ルールは変えない
――そうはいっても、自分は負けているという人にはどんな注意を?
いま勝てていなくても、FXをまだ続けている人は、一度は勝ったことがあるはずだ。だから、トレードがうまくいったときのルールやパターンを知っている。
しかし、ルールが通用しなくなり、負けがこんでくると、本人はその要因は相場が変わったからだということに気がつかないことが多い。自信を失ってしまう。
不安になっても、話す相手がいない。自分のやり方が間違っていると思って、せっかく整えたルールを捨て、他の手法を模索する。
そして、また勝てるようになるが、相場つきが変わるとまた負けてしまう。他の手法をも策する。その悪循環に陥る。
一回勝てたときのパターンやルールがしっかりできたのであれば、それを軸に、勝っても負けてもルールを変えないで、トレードを続けることがすごく大事だ。
そこでルールを微調整したり、つくりかえてしまうと、相場でいま、何が起こっているのかわからなくなる。
――同じことを毎日やっていると、変化があったときに気づきやすい。トレードで資産を殖やしている人は、同じルールで毎日、コツコツとやっている。
ルールをつくるうえで、FXは毎日そんなに儲からない、ということを知ることが大事。
FX会社選びの要点
――最近は、FX会社も違いがなくなり、横並びの状態だ。ではどうやって自分にあったFX会社を選んだらいいのか?
まず、証券会社として成り立っていること。取引画面が華美でないところ。あとは、コールセンターがしっかり対応してくれるところ。
一度は電話をしてその対応を確かめたほうがいい。
株価のチェックは必ず行う
――インターネットの普及で、いろいろな情報が錯綜している。FXトレードにとって、どんな情報を選択し、トレードに活かしたらいいのか?
FXを始めた時、経済の勉強が必要だと思ったことがある。そこで経済ニュースを読むのだが、これをどうFXトレードに反映していいのかわからなかった。
私がいま思うのは、株価のチェックは必ずすること。日経平均やダウの値動きは要注意だ。その株価の動きをみて、リスクオンかリスクオフのどちらの傾向かを判断する。
さらに、重要なキーワードは検索をして、確認をする癖をつける。ロイターやブルームバーグ、日経などのニュースにへばりつくことはしない。
――情報があふれかえっている。
どの情報を選択するかは難しい。ただ、ニュースを見るのは欧州時間までだ。
ニューヨーク時間はスキャルピング
――東京時間、ロンドン時間、ニューヨーク時間では相場の動きが異なるが、それはどうとらえたらいいのか?
主婦は東京時間がトレードできるので、ダウなどの株価を見て、トレードに反映させることができる。
欧州時間は入り口が好きだが、16時から17時は仕事が終わる時間で、専業トレーダー以外は、ゆっくりチャートを見ることができない。
だから、欧州時間はトレードをしないほうが楽だ。ニューヨーク時間は取引量が最大になるので、スキャルピングのトレードを勧めている。
初心者はなれるまではひとつの通貨ペアでよい
――通貨ペアの数は?
FXトレードになれるまでは、一通貨ペア、それも「米ドル/円」だけでいい。私の場合、もともとトレードをしていたのは「豪ドル/円」。
「豪ドル/円」はリスク傾向が顕著にでるので、その特徴をとらえて、東京時間でのトレードを勧めている。
クロス円なので、日本時間はきれいに動くが、欧州時間やニューヨーク時間は、米ドルや円に引っ張られてしまう。
夜に豪ドルをトレードするなら、「豪ドル/米ドル」がいい。だから、私がトレードをするのは、「米ドル/円」と「豪ドル/円」の3つの通貨ペア。
――時間軸は?
10分足でロングの偏りをみて、1分足、5分足でトレードをする。誰々が「ユーロ/円」のブログを書いているから、「ユーロ/円」で取引をするという人が凄く多い。
「ポンド/円」もそうだが、確かに、これらの通貨ペアは、動くときは大きく動く。魅力的な通貨ペアだが、大きく動くということは損失も大きくなる。
そのことを意識しないで安易にこれらの通貨ペアに手を出す人が多い。だから、私は、「ユーロ/米ドル」「ポンド/米ドル」を勧める。
クロス円は、円がついているから簡単だと思われがちだが、簡単にトレードできる通貨ペアではない。
大きなイベントはトレードを控える
――相場では、予想外のことが起きる。そんなときはどう対処するのか?
前もって大きなイベントがわかっているときは、トレードは控える。トレードをせずに、お金をなくさないようにするのも立派なトレードだ。
大きなイベントがあるときは、FX会社から注意を促すメールが届く。そんなメールが届くのに、なぜトレードをするのだろうか?
私は、相場と闘っているのではなく、FX業者と闘っていると思っている。
だから、FX会社も必死で、大きなイベントのときにFX業者が負けてしまうと、FX業者が大変なことになる。
大きなイベントがあるときに、相場に入らないで我慢するのはつらいが、我慢をして、相場がまともになるまで待つことも大事だ。
相場の乱高下でやれることほどもったいないことはない。
FXは地味だから、コツコツ続けてほしい
――お勧めの本は?
オリバー・ペレスの『デイトレード』がお勧めだ。トレードの考え方やメンタル的なことが書かれているので、参考になる、素晴らしい本だ。
さらに、鳥居万友美さんの『月100万円儲ける私のFXノート』はすごく勉強になった。モチベーションが非常に高まった。
――長く勝ち続けるための秘訣というか、読者へメッセージを。
1億円稼ぐとか、毎月100万円儲かるとかが踊っているFX業界のなかで、本当に自分が欲しいお金やその目的は何かを一度、しっかり自分に問いただすこと。
そのあとで、お金がいくら欲しいとはっきりしたら、ちゃんとトレードのルールをつくってトレードをすればいい。世間の風評に踊らされてはダメだ。
それから、FXは地味だ。華々しくではなく、地味にコツコツとトレードを続けてほしい。
辻秀雄氏プロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから