相場がどう動くかを知ることはとても重要ですが、それを知る術を見つけるのはたやすくありません。
そこで、相場の世界では、古くから投資行動について、言われ続け、引き継がれてきた格言があります。
格言なんて、投資行動の何の役に立つのかという疑問を持っている方もいるでしょうが、先陣が紡いできた言葉には、きっと深い意味があるはずです。
そこで今回は、数ある格言のなかから代表的なものを選んで、その意味するところを解説してみたいと思います。
相場の格言
頭と尻尾はくれてやれ
この格言は、安全な投資を行うにはどうしたらいいかを指摘しているものです。投資の世界での理想的な売買は、価格が一番安いところで買い、一番高いところ、つまり価格があがりきったところで売ることです。
そうすると思わぬ利益を得ることができます。しかし、そんなことは、万に一つあるかないかという非常に難しいやり方です。
相場は、上昇トレンドが続いているので、買ってみたら、すぐに反転して下降トレンドになったり、その逆も往々にしてあります。
相場のトレンドは非常に読みにくいのが現実です。そこで、価格が下がりきって反転に転じたところで買ったり、価格が上昇しきって反転に転じたときに売ったりするという方法をとれば、高い利益を得ることはできませんが、そこそこの利益を得ることはできます。
この格言は、価格が一番安いところで買うことや、一番高いところで売ることはあきらめると、より安全な投資ができますよ、という警告の格言でもあります。
備えあれば憂いなし
これは投資の世界だけでなく、どんな世界についてもいえる格言です。そのなかでも、投資の世界でこそ、こうした格言はしっかり守られなければ、損をしてしまう羽目になります。
相場の世界では、ある時、突拍子もないことが起きる可能性を秘めています。たとえば、リーマンショックやスイスフランショックなど、相場が突然、動くことがあります。
そうでなくても、大きな政治的、経済的イベントがあるときは、前もって相場に対して冷静に対応できる心構えが必要です。
現在、まだ議論が続いているイギリスのEU離脱問題、いわゆるBrexitの時には、FX会社は投資家に対して「相場が大きく変動するおそれがあるから、投資行動には十分注意をしましょ」と、一斉によびかけました。
これも、投資家に対して、相場の世界で急激な価格変動が起きても、冷静でいられるような心構えを促したものです。
相場の世界では、あらかじめ何が起きても慌てない心づもりをしておけば、相場がどう動こうが冷静な、平常心をもって対応することができます。
つまり、相場に対しては常に悪い状態が起きることを想定して、損失はいくらになるかを推計しておくことが必要だということです。
また、後からでもいいですから、なぜこのような価格の動きになったのか、その原因を探ることも、後々の投資にきっと役に立ちますので、相場変動の原因を追及することも忘れてはなりません。
天まで届く相場はない
相場は上がりっぱなしになることはない、という格言です。つまり、「上昇した相場は必ず下がり、下降した相場は必ず下がる」ということを教えています。
お金儲けばかりを考えて投資をしている人は、相場が上昇し続けると、なぜか強気になる傾向があります。もちろん、投資をするのはお金を儲けること、手持ちの資産を増やすことが大きな第一目標です。
しかし、そうした思いが強すぎると時には仇となって自分に返ってくることがあります。
上昇相場が続いていると、もっと相場は上がるに違いないと信じ込んで、買いポジションを持ち続けた結果、ある時点で急に相場が反転して、こんなはずではなかったと臍を噛むことも少なくありません。
そうしたことを防ぐために、この相場では、〇〇ピップス利益がでたら手じまいとするといった、自分なりの資金管理をすることが、大きな損失を防ぐことになります。
いつまでも上昇し続けたり、下降し続けたりする相場はあり得ませんから、相場の原則=上昇した者は必ず下がる、下がったものは必ず上がる、を常に肝に銘じて投資に臨みましょう。
山高ければ谷深し
相場の動きは、ゴムひもの動きに似ています。どういうことかと言えば、ゴムひもは長く伸ばせば伸ばすほど、はじけたときの反動は大きくなります。
相場の動きもこれに似ているということです。
つまり、価格が上昇すればするほど、反転して下落相場になったときには、下げ幅も非常に大きくなる、ということです。この格言をそのことを述べています。
相場が短期間に上昇を続けているから、買いポジションを持っているので大きく儲かっていると思い、ポジションを適当なところで手仕舞いで眠ってしまい、朝目が覚めてチャートをみたら、大きく価格が下がって、思わぬ損をした経験は誰にもあるはずです。
つまり、短期間に急上昇した相場は、短期間にまた大きく下降するリスクを備えていることを忘れてはならないと、戒めている格言です。
明日は明日の風が吹く
相場では、勝つこともあれば、負けることもあります。勝ち続けることは誰にもできません。だから、負けたからと言って、いつまでも悩んだり、くよくよしていないで、気持ちを切り替えることが重要になってくる、という格言です。
「明日は明日の風が吹く」というと、一見、無責任で投げやりのように聞こえますが、相場の世界ではこれがとても重要です。つまり、気持ちの切り替えが相場に大きく影響するわけです。
今日は負けたけど、明日はきっと勝つことができる、きっといいことがあると、前向きな気持ちになることが重要です。
「休むも相場」という格言もあります。相場の状態によっては利益を得るのが難しい相場、あるいは自分の投資行動のリズムがおかしいと感じたときは、いったん頭を休めて、相場から離れることも重要です。
投資はやり続ければいいというものではありません。重要なことは、自分のペースで投資を行うことです。負けたからと、損を取り戻そうと焦っても、いい結果を得られるはずがありません。
気持ちの切り替えが、相場には重要な要素となるのです。
卵は一つの篭に盛るな
この格言は、「分散投資」を勧めるものです。
自分が汗水垂らして稼いだ資金をもとに投資をするわけですから、投資資金は自分にとってとても大切なものです。
その資金をすべてFX投資につぎ込むのは、非常にリスクが高いわけです。まして、生活費までもすべてFX投資につぎ込むのは、自殺行為と同じです。
投資をする際には、手持ちの資金をできるだけ分散することでヘッジとなり、自分の資金を減少を防ぐことが大事です。
投資では、市場から退場してしまっては元もこうもありません。長く投資を続けるためには、効率よく資金をつぎ込むことが重要になってきます。
ですから、一度に投資する金額をあらかじめ決めておいて、その決めたルールに従って、投資をすることが重要となります。一回のFX投資に手持ち資金のすべてをつぎ込むことは絶対にやめましょう。
投資はマラソンのようなもの
これは、投資に対する心構えを表した格言です。
マラソンは、42.195キロを走りきる勝負です。その長距離を離脱せずに完走するためには、走るペース配分が重要になってきます。たとえば、30キロすぎまでは、先頭集団から離されていても、自分のペースを守って最後の力を温存し、35キロをすぎた付近から徐々にペースをあげていって、最終的には先頭でゴールテープを切る、といった戦略が必要です。
相場もマラソンと同じです。
FX投資に関する書籍やネットでは、未だに、一ヶ月で何百万稼いだ、何千万稼いだ、あるいは一年で一億円を儲けた、という話が横行しています。
個人にFX投資が解禁されたのが1998年です。すでに21年を迎えていますが、いまだにこのような話は尽きることがありません。
個人投資家のなかには、それを見聞きして、「自分で大きく儲けることができる」と思って、無理な投資をしてしまい、大きな損失を出してしまったという人も少なくないはずです。
人は人、誰がなんと言おうと、惑わされずに、自分の投資スタイルを守って投資をすることが大事です。投資は、長い間をかけて、安定的に資金を増やしていくことが重要です。そのことが結局、自分の資産を増やすことにつながっていくのです。
以上、主な投資の格言を紹介しましたが、投資の格言にはこれ以外にもさまざまな格言があります。どれもこれも経験から導き出されたものですから、投資の参考にきっとなるはずです。一度、投資格言をじっくり向き合って、研究してみてはどうでしょうか。
辻秀雄氏のプロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから