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【日米欧の金融緩和レース、勝者はだれ?】 2020年4月29日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(4月23日~4月29日)

今月中旬以来107円台で方向感を欠く動きが続いていたドル円相場ですが、今週に入ってドル売りがジワリと強まり、106.50円と3月17日以来の安値をつけました。

日銀金融政策決定会合で追加金融緩和策が打ち出されたものの、予想通りの内容だったことから材料出尽くしの円買い・ドル売りが出ています。

また今月2回サポートされた106.90円レベルを割り込んだことで、ストップロスのドル売りも見られました。

日米欧中銀会合ウィーク

さて今週はG3(日米欧)の中央銀行が一斉に金融政策会合を開き、コロナ不況に立ち向かうための金融緩和策を協議します。

その結果が市場にどう受け止められるかによって、円・ドル・ユーロの力関係が大きく変わる可能性があります。

今回のコメントはやや難解な表現があるかもしれませんが、現在および今後の金融政策を理解するため非常に重要ですので、どうか我慢して最後まで読んでください。

日銀は国債を無制限買入れへ

トップバッターの日銀は、今週月曜日に金融政策決定会合を開き、当面の金融政策を発表しました。

今回新たに決定した緩和策は、

緩和策

  • ①CP・社債等の買い入れ増額(上限4兆円から20兆円へ)による企業の資金調達支援
  • ②新型コロナ対応金融支援特別オペの対象担保範囲の拡大(8兆円から23兆円へ)
  • ③国債のさらなる積極的な買入れ(年80兆円の上限を撤廃)

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)は短期マイナス0.1%、10年ゼロ%程度で据え置き。

ETFおよびJ-REITの買い入れ方針(それぞれ年12兆円、1800億円)も据え置きでした。

これらの詳細については日銀のホームページから声明文をダウンロードして確認してください。

国債の購入額を無制限とするのは日経新聞などがリークした通りで、市場も織り込み済み。

また日銀はこれまでも巨額の国債買い入れを行っており、利回りもゼロ%となっているため、新たな緩和効果も限定されます。

マイナス金利のこれ以上の深掘りも、金融機関の経営への影響を考えると難しく、いよいよ日銀は今後緩和策で手詰まりとなってきました。

FRBはフォワードガイダンス導入か

米国の中央銀行に相当するFRBは28・29日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、現地時間29日午後(日本時間30日未明)に声明を発表します。

FOMCのスケジュールとこれまでの声明はFRBのウェブサイトで確認してください。

政策金利であるFF金利誘導目標はすでに3月15日の緊急会合において事実上ゼロ%まで引き下げられています。

また3月23日の会合で米国債とMBS(モーゲージ担保証券)の買い入れを必要なだけ、つまり無制限に行うと表明しています。

コロナショック後の危機対応において、FRBは極めて迅速でした。

一見、これ以上できることがないように見えますが、ここからは「時間軸を示す」という手段があります。

現在行っている金融緩和策を、何がどうなるまで継続するのかを「フォワードガイダンス」として声明に盛り込むことにより、市場を安心させるのです。

この手法は実際リーマンショック時の金融緩和にも導入されました。

フォワードガイダンスは、失業率とインフレ率を対象とする可能性が高いでしょう。

失業率は今月10%を優に超え、20%に達した可能性も浮上しています。

インフレ率は目標の2%を下回っており、今後は一段の低下が避けられません。

例えば、失業率が4%まで低下し、インフレ率が2%に達するまで、金融緩和をやめないと約束すれば、強力なアナウンス効果が期待できます。

ECBは今回据え置きも

ECBは30日木曜日に理事会を電話会議で開催します。先月開始したパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の規模拡大(現行の7500億ユーロから1兆~1.25兆ユーロ)を協議すると見られるほか、投機的格付けの社債購入やマイナス金利の深掘りを検討する可能性があります。

ただし、現在株式市場などが比較的落ち着いていることや、現行のPEPPの上限に達するのが夏ごろと見られていることから、今回は追加策を見送って6月に温存との見方もあります。

周回遅れの円が買われる展開へ

FOMCとECB理事会の結果次第ではありますが、金融緩和の積極性とスピードにおいて米国が一歩抜きんでていることと、日本が周回遅れでいよいよ後がなくなってきたということは明白です。

為替市場ではドル売り・円買いが一段と進行すると予想します。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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