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【今夜のFOMCはここに注目】2020年9月16日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(9月9日~15日)

米国株式市場が小康状態となったことを受けて、ドル円も安堵感から106.30円と小反発。

しかし週明けはFOMCを控えて金利先安観が強まったことから、106円台を割り込み105円台前半までじり安の展開となりました。

10日に行われたECB理事会は、大方の予想通り金融政策の据え置きを決定しました。

ユーロ相場に関してラガルド総裁は「注意深く監視」と述べたものの、「ECBは為替レートをターゲットとせず」と言明。

ユーロ高牽制を予想していた市場にとっては肩透かしとなり、ユーロドルは一時1.1917ドルまで上昇しました。

前回の当レポートでは、米国株の売り一巡感とユーロの下落予想をもとに、ドル高を予想しましたが、結果は明確ではありませんでした。

なお自民党総裁選は予想通り菅官房長官が勝利し、今夜にも菅内閣が発足することになりましたが、株式市場でのご祝儀買いもほとんど見られず、為替相場への影響はありませんでした。

FOMCは利上げを事実上封印

さて今週の注目イベントは、昨日から行われているFOMC

結果は本日(日本時間明日未明)に判明します。

実は先月27日に臨時のFOMC会合が開催され、前年比2%のインフレターゲットを期間平均で目指すという重要な方針変更を決定しています。

この新しい方針は、パウエル議長が同じ日に開催されたジャクソンホール講演でわざわざ発表済みですので、今回の定例会合では新たな決定や発表はないと考えていいでしょう。

期間平均で2%を目指すということは、インフレが2%を超える期間(オーバーシュート期間)を相当長い間容認しなければならないということです。

なぜかというと、これまで2年にわたってインフレが2%を下回っているためです。

指標となるPCEコアデフレータはコロナ禍で大きく低下し、直近7月で前年比+1.3%でした。

どのくらいの期間かは今のところ不明ですが、期間平均で2%を達成するのがどれだけ大変か(例えば2.5%のインフレが2年続くとか)、下のグラフを見ればお分かりいただけるでしょう。

米コアPCEデフレータ(前年比) 現在FRBが掲げるフォワードガイダンスは、「経済が最大雇用とインフレ率2%達成に向け軌道に乗るまでは金利をゼロ近辺にとどめる」というものです。

つまり平均でインフレ2%を達成できる確信が持てるまでFRBは利上げできないのです。

FRBは利上げに関して自らに相当高いハードルを設定したと言えるでしょう。

ドットプロットチャートに注目

FOMCは年4回(3、6、9、12月)、メンバーの金利見通し一覧を発表します。

メンバーが適切と考える金利水準を年ごとに点(ドット)で示したもので、通称「ドットプロットチャート」と呼ばれています。

これを見れば、FOMCメンバーがいつ頃どのくらい利上げ(または利下げ)したいのか、またタカ派とハト派の勢力関係はどうなっているかが一目でわかるのです。

FOMCの付属資料に掲載されており、ここからダウンロードすることができます。

発表の翌日には必ずダウンロードしてチェックし、前回と比べる習慣をつけましょう。

では前回6月のドットの分布を見てみましょう。

6月のドットプロットチャート 来年末までは、全員がゼロ金利維持が適切と回答。

2年先の2022年末に関しても、17人中15人がゼロ金利が適切との見通しが示されました。

一番右のドットは長期的に見て適切な水準で、2%~3%にドットが集まっています。

現在の水準がいかに異例であることがお分かりいただけるでしょう。

そして今回から新たに2023年末の見通しが加わります。

コロナ禍の終息が見通せない中、ゼロ金利を続けるべしとの意見がおそらく多数派となるでしょう。

さらにそれが2022年までのように圧倒的コンセンサスとなるようなら、利上げ観測は地平線のかなたに消え去り、長期金利が一段と低下し、ドルにとって一定の売り圧力となるでしょう。

金利面でドルと競合するユーロや豪ドルにとってはサポート材料となりそうです。

ドル円の下落余地は限られる

一方、株式市場にとってゼロ金利長期化は追い風であり、1週間あまり続いた株価下落に一服感をもたらす可能性があります。

株式市場が持ち直せば、安全通貨の円がドルと並行して売られることにより、ドル円は幾分持ち直していくでしょう。

またドットプロットチャートが予想通り2023年までゼロ金利継続を示唆すれば、当面の材料出尽くしとなり、ドル円も買い戻される可能性があります。

FOMCのハト派的結果を受けて、ユーロドルや豪ドル・ドルは再び高値をうかがう一方、ドル円は意外に下がっても戻ってくると予想します。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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