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【ドルの買い戻しは一巡、再び下落へ】2021年2月10日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(2月3日~9日)

米国景気回復への期待が高まる中、米株高・米国債利回り上昇・ドル買いの展開が続き、ドル円は一時105.77円と昨年10月以来の高値を示現しました。

ワクチンの接種が進み、コロナ制圧期待が高まっていることや、バイデン政権の経済支援法案が早期に成立することへの期待が高まっていることが背景にあります。

しかし5日に発表された米国1月の雇用統計(非農業部門雇用者数)が予想を大きく下回ったことがきっかけとなり、ドルは全般的に反落

ドル円は9日には105円台を割り込み104.50円まで下落しました。

前回の当コラムでは、ドルを取り巻く弱気材料に変わりはなく、105円台は絶好の売り場と指摘しましたが、おおむねそのような展開となりました。

ドル安シナリオに変化なし

先週も述べましたが、相場は短期的にはファンダメンタルズに反したりオーバーシュートしたりするものの、中長期的にはファンダメンタルズに従って動きます。

筆者はドル安シナリオに変化はなく、遠からず年初の安値102.59円を割り込んでいくと予想しています。

ではドル安シナリオの根拠を検証していきましょう。

① 株高・リスクオン・ドル安の流れが再開

先々週の米国株式市場は、NYダウが一時3万ドル割れとなるなど大きな下落に見舞われましたが、先週はV字型に回復。

NYダウ、S&P500、ナスダック総合指数の三指数ともそろって最高値を更新しました。

ワクチン普及によるコロナ鎮静化期待、財政・金融両面での政策期待に加えて、企業業績好調の追い風が吹いています。

リスクオン局面においては安全通貨であるドルと円が並行して売られ、ドルと円ではドルのほうが少し弱い(ドル円は緩やかに下落)、というのがお約束。

当面はこのまま株高・リスクオンが続くと仮定すれば、ドルが全体的に下落し、ドル円も下落基調に戻ると見るのが自然です。

② 米国実質金利は低位安定

米国10年債利回りは一時1.20%近くと年初来高値を更新し、1週間で10bp(0.1%)あまりの上昇。

これがドル円の105円台までの上昇の一因となりました。

しかし期待インフレ率(ブレークイーブン・インフレ率、10年債利回りからインフレ連動債の利回りを引いたもの)も2.10%から2.20%へ10bp上昇しているため、実質金利は全く上昇していません(マイナス1%程度)。

利回りが上昇しても、その原因がインフレ懸念の高まりであれば強気材料とは言えず、(短期的にはともかく)中長期的にドルをサポートすることはできません。

③ ドルの価値希薄化

今週のマーケットで最も注目を集めたのは何と言っても暗号資産でしょう。

ビットコインはこの1週間で3万6千ドル台から4万8千ドル台までなんと30%以上暴騰。

もちろん過去最高値更新です。

直接のきっかけとなったのは、米電気自動車最大手テスラがビットコインに15億ドル投資したと報じられたことですが、もっと根底にあるのはドルの価値希薄化懸念であることは疑いようがありません。

最近は個人投資家だけでなく、機関投資家が暗号通貨の購入に動いているのはこのリスクを分散するためです。

今後もバイデン政権が巨額の財政出動を行い、膨大な額の米国債が増発され、それをFRBが事実上引き受けることにより、ドルの供給が爆発的に増える、つまりドルの価値が薄まることは確実です。

そこで法定通貨ではないビットコインや金(今は人気が下火ですが)に代替ニーズが生じるわけです。

ビットコインの急騰はドルの信認低下を暗示していると言えます。

④ イエレン財務長官

米国の為替政策は伝統的に「強いドルが国益にかなう」です。

これは1995年からクリントン政権下で財務長官を務めたルービン氏が「強いドルを支持する」と言い始めて以来、(本気かどうかはともかく)先代のムニューシン氏まで一貫していました。

しかし新財務長官のイエレン氏からはまだ「強いドル」発言は出ていません。

1月19日に行われた上院財政委員会の指名承認公聴会で、イエレン氏は強いドル政策を信奉するかとの質問に対し、「市場で決定された為替レート」を信じるとし、米国として「通貨安を追求しない」と答えました。

「強いドル」のフレーズをあえて使わず、「ドル安もドル高も目指さず、市場に委ねる」というわけです。

米国が積極的にドル高を志向していたと考える人はいないでしょうが、建前とはいえこれまで呪文のように唱え続けていた「強いドル」政策を取り下げるとしたら、それだけで十分ドル売り圧力につながると思います。

⑤ テクニカルにもトレンド転換には不十分

昨年11月に付けた戻り高値105.68円が弱気トレンド継続のための最後の砦と考えていましたが、今のところ完全に上抜けたとは言えず(高値105.77円)、その後1円以上反落するという微妙な状態となっています。

またテクニカル指標RSIは「買われ過ぎ」を示す70以上を付けた後反落に転じており、上昇エネルギーがピークアウトした感があります。

ドル円日足・一目均衡表とRSI

ドル円日足・一目均衡表とRSI

結論:戻り売り継続

ファンダメンタルズ的見地からも、テクニカル面からも、ドル安トレンドが終わったとはまだ判断できず、弱気スタンス、戻り売りスタンスを維持するべきと考えます。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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