【感染はピークアウトでも厳しい景気後退が待っている】2020年4月8日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(4月2日~4月8日)

3月期末・四半期末を通過してドル需要が一巡し、一時106.92円まで反落していたドル円ですが、新型コロナウイルスの感染拡大のピークアウトへの期待感が浮上してくると、米国株の上昇とともにリスクオンの円売りが優勢となり109円台を回復。

週明け6日には一時109.38円まで上昇しました。

NYダウは21000ドル前後から一時23600ドル付近まで急騰しています。

なお3日に発表された米国3月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が70.1万人減少(前回+27.5万人)し、失業率も4.4%(前回3.5%)に跳ね上がりましたが、市場も相当の下振れを覚悟していたことから、反応は限定的でした。

ドル円(右目盛り)とNYダウ(赤線・左目盛) 出所:NetDania

ピークアウトへの期待感

新型コロナウイルスに関しては、市場も徐々に冷静さを取り戻し始めています。

すでに感染が終息した中国は8日に武漢の封鎖を解除し、経済活動が正常化に向かって動き始めました。

欧州で死者が最も多いイタリアやスペインでも、感染者数の増加ペースが明らかに鈍化しており、ピークアウトの期待が高まっています。

このまま数週間外出禁止を続ければ、感染者数・死者数とも減少に向かう可能性が高いと見られています。

米国で感染者数最悪となっているニューヨーク州でも、クオモ知事が日曜日の会見で「1日の死者数が初めて前日よりも減り、新たな入院患者も前日と比べて半減した」と述べたことで、ピークアウトへの期待感が浮上しています。

このように、いち早くパンデミックとなった地域から順に、感染拡大のピークアウトが認められています。

ともかく最も効果が高いのは外出禁止であり、「封じ込めまであと数週間の辛抱」と、トンネルの先に光を見出しているようです。

株式市場は戻り歩調

新型コロナウイルスによる景気後退に立ち向かうため、米国は2.2兆ドル(GDPの10%)の財政出動を決定。

財政規律にうるさいドイツですら今回は財政1560億ユ-ロ、金融6000億ユーロ、合計7560億ユーロ(同20%)のパッケージを打ち出しています。

株式市場は6~9か月先の景気を先読みすると言われており、今後は強力な財政・金融政策を背景としたコロナ後の景気回復を先取りし始める可能性が出てきました。

市場の不安材料だった原油暴落に歯止めがかかったことも追い風です。

極端なリスクオフから脱却

「恐怖指数」として知られるVIX指数も、直近で45程度とピークの半分近くまで低下しています。

もちろん平常時の水準にはまだ程遠いですが、市場を覆っていた恐怖や不安が終息し始めたことを示しています。

極端な恐怖によるリスクオフ局面が一段落すれば、安全通貨である円に向かっていた買い圧力も後退します。

VIX指数 出所:StockCharts.com

コロナショック前にしばらくもみ合っていた水準が108-110円レンジだったことを考えると、現在の109円前後はそれなりに居心地が良い水準かもしれません。

短期的には同レンジでの小康状態となる可能性が高そうです。

その先は再び悲観へ?

ではその先、1か月程度の中期ではどう見ればよいでしょうか。

筆者は、4-6月の厳しい景気データに直面し、市場心理が再び悲観、つまりドル安・円高に振れる可能性が高いと考えています。

米国では、今後は都市封鎖の影響が本格的に反映され、これまで見たことのないほど壊滅的なデータが次々と出てきます。

3月の雇用統計悪化には反応薄でしたが、4月から数か月は、非農業部門雇用者数が数百万人単位で減少し、失業率も10%に達するでしょう。

4-6月のGDPは激しく落ち込むことは避けられず、年率換算でマイナス30%となるとの予想も出ています。

米国の景気後退は織り込み済みとの見方もありますが、そこまでの数字を見せつけられれば果たして冷静でいられるかどうか。

米国株式市場も一旦は底入れしたかに見えますが、今後企業倒産が激増し失業率が跳ね上がる中で、二番底をつけに行く動きを想定しておかねばなりません。

新型コロナウイルスの感染拡大が終息したとしても、以前のようにヒト・モノ・カネが国境を越えて自由に行き来することはできず、グローバリズムの時代はある意味終焉を迎えるでしょう。

もちろん米国だけではなく、今後世界全体が景気後退に陥るわけですが、その中で最も売られやすい通貨はどれかといえば、おそらくドルでしょう。

コロナショック前にグローバリズムで一人勝ちだった米国が最も失うものが大きいと見られるからです。

110円に向けて戻り売り

目先は株式市場の持ち直し傾向が続き、ドル円も底堅い動きが続くと見ていますが、3月末のドル不足のどさくさでつけた111円台はおそらくオーバーシュートであり、突破していく勢いはないでしょう。

中期的観点から、ドル円は戻り売りスタンスで臨むべきと考えます。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。
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