一週間のハイライト(6月18日~6月24日)
ドル円は107.00円をはさんだ狭いレンジでもみ合っていましたが、コロナ感染第二波に対する警戒感から、上値が徐々に重くなりました。
ナバロ大統領補佐官が「中国との通商交渉は終わった」と発言したと報じられたこと(のちに否定)や、米6月の製造業PMIが予想を下回ったことを受けて、一時106.07円まで下落。
本邦企業による米株売却にともなうドル売り・円買いのフローもうわさされていました。
楽観的過ぎる株式市場
米国株式市場では経済活動再開に対する期待感が強く、ハイテク銘柄が中心のナスダック指数は1万ポイントを再び突破し史上最高値を更新しています。
いわゆるオールドエコノミーの銘柄が多いNYダウが2万6千ドル近辺とイマイチな値動きであることから、株式市場はコロナ禍をきっかけにプレーヤーの新旧交代が起こることを予期しているのでしょう。
確かにコロナ禍がなければ進まなかったような構造改革やリストラが一気に進むことにより、経済のスピードやダイナミズムが加速する面はあるでしょう。
ただし勝ち組もいれば負け組もいるのがアフターコロナ、ウィズコロナの経済ですから、経済活動が再開されても全部がいっぺんに回復するわけではありません。
これまで以上にセクターや銘柄選択が重要になります。
リセッションの全容も明らかでない中、株式市場全体に対して過度に楽観するのは間違いです。
すでに来ているコロナ第二波
新型コロナウイルス感染第二波に対する警戒感も捨てきれません。
米国では、フロリダ州やカリフォルニア州での感染が再び拡大し、死亡者数は12万人を突破しました。
今も一日3万人前後の感染が確認されており、6月に入って増勢は再び加速しているように見えます。
世界の新たな感染者数の増加も一日15万人を超えて過去最大となるなど、世界的に見ればパンデミックは終息が見えないどころか、ここにきてむしろ深刻化しているのです。
市場心理の振り子は常に楽観と悲観の間を揺れ動いています。
今後は「経済活動再開」に対する過度の期待が剥落するとともに、「コロナ第二波警戒」が改めて意識され、振り子が悲観の方に振り切れる可能性もあるのです。
アクセル全開で全面的にリスクオンに乗るのは危険すぎます。
半身の体勢で、いつでも逃げられるように徐行運転を心掛けるべきです。
ソフトバンクグループのドル売り・円買いについて
ソフトバンクグループは本日、保有する米携帯電話サービス大手TモバイルUS株の売却総額は最大201億1500万ドルになると発表しました。
ソフトバンクは借入金の返済や自社株買いに充てるため、当然ドルを売って円に替えるでしょう。
加えて、ソフトバンクは手元に残る約1億株を、Tモバイルの筆頭株主であるドイツテレコムに売却する可能性があります。
1兆円規模のユーロ売り・円買いの思惑につながりそうです。
外国為替市場の規模は巨大で、参加者も無数に存在するため、通常は一参加者の取引が相場にインパクトを与えることはありません。
しかし規模が兆円単位になると、一時的にせよある程度の影響が出ることもあり注意が必要です。
現在の相場のセンチメントというか行きたい方向にマッチしているフローの場合なおさらです。
通常こうした巨額のディール案件が発生した場合、注文は非常に少数の銀行が市場にショックを与えないよう少しずつゆっくり捌いていきます。
このためドカンと大きな値動きが来ることはあまりありませんが、トータルすれば大きな金額ですから、冷酒のように徐々に効いてきます。
もちろんいつどこで執行されたかは当事者しか知りえませんが、私はすでにドル売り・円買いのフローが出始めているか、もうまもなく始まると見ています。
この資産売却は過剰な負債を減らす財務リストラのためであり、一刻を争うと思われるからです。
結論:ドル売り
というわけで、当面のドル円のスタンスです。
買いか売りか、それとも様子を見るか。
私は売りと考えます。
2月・3月の乱高下後の安値である106.00円近辺(5月6日安値105.99円)を割り込むようなら、一気に下落が加速する可能性もあり警戒が必要です。
雨夜恒一郎氏のプロフィール
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから