ヘッジファンドと呼ばれる集団が使う取引手法って何ですか?
ヘッジファンドがFX相場に与える影響や対策も知りたいわ!
こんなお悩みをお持ちではありませんか。
FXを始めたばかりの頃は、買ったら下がり売ったら上がるという現象が起き、まるで誰かにポジションが見られているかのような感覚に陥ることがあります。
そういった現象は、ヘッジファンドと呼ばれる投資集団が関わっているかもしれません。
そこで本記事では、
- そもそもヘッジファンドとは
- ヘッジファンドがFX相場に与える影響や対策
- ヘッジファンドが使う8つの取引手法
という流れで、ヘッジファンドについて詳しく紹介します。
本記事を読んで理解すれば、ヘッジファンドとの向き合い方が分かり、トレードに関する考え方が大きく変わるきっかけとなるでしょう。
FXでなかなか利益を得れずお悩みの方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
ヘッジファンドとは?
ヘッジファンドを一言でわかりやすく言うと、「様々な取引手法を駆使し、絶対的な利益を追求するファンド」です。
つまり、顧客から資金を集めて運用し、そこで得た利益を顧客に分配する組織です。
「ヘッジ(hedge)」は、リスクヘッジなどという言葉でも使われるように「避ける」という意味で、資産の運用においてリスクを可能な限り回避し、多様な取引手法を用いて、相場の下落などの局面においても安定した利益の獲得を追求します。
従って、ヘッジファンドとは、顧客の資金を元に取引を行い、そこで得た利益を顧客に分配していく投資のプロ集団です。
投資信託との違い
ヘッジファンドも投資信託はどちらも、プロにお金を預けて運用を委託するという資産運用であるという意味では共通していますが、それ以外の部分では異なる点が数多くあります。
ここでは、ヘッジファンドと投資信託の違いを比較しながらまとめて紹介していきます。
資金の調達方法
投資信託が公募であるのに対して、ヘッジファンドは私募です。
誰でも少額から始めることができる投資信託とは違い、ヘッジファンドは一般的に数千万単とまとまった大きな資金を用意できる機関投資家や資産家を対象としています。
私募投資信託の一種であるヘッジファンドは、金融商品取引法による規制が少ないため、投資の手法の制約を受けずに、あらゆる手法を用いてあらゆる投資を行うことができます。
収益目標
「相対収益」を目標とする投資信託とは異なり、ヘッジファンドは「絶対収益」を目標としています。
絶対収益というのは、景気の良し悪しや株価や債券価格の上昇下落にかかわらず、どんな状況下にあっても常に利益を狙うということです。
つまり、どれほどの下落相場であっても、収益を得ることを目標としているのです。
投資信託は、あらかじめ設定されたベンチマークを上回れば良いとされる相対利益を目標としています。
その多くは金融動向に沿った運用をするため、金融市場の相場に影響を受けやすく、したがって収益目標も日経平均やTOPIXなど、一般的な経済指標に準ずるものとなります。
相場全体が値下がりして損失が出ていても、基準としているベンチマークを上回っていればよしとされます。
運用方法
ヘッジファンドは、運用の自由度が高いため様々な投資戦略を取ることが可能です。
例えば、先物取引やショート(空売り)などの比較的リスクが高いとされる手法を駆使したり、レバレッジをかけたりして運用を行います。
一方で投資信託は、ハイリスクとされている運用には制限があります。
株式や債券など の伝統的資産を投資の対象とし、基本的にはロングでの運用を行います。
投資信託よりもヘッジファンドのほうがリスクをとれるため、大きなリターンを見込むことができるのです。
手数料、コスト
投資信託は購入時に3%程度の購入手数料、保有している間に3%ほどの信託報酬がかかります。
また、解約時に信託財産留保額がかかる場合もあります。
ヘッジファンドの場合は、成功報酬という形をとっており、利益を上げた場合にのみ、その利益から手数料が徴収されます。
俗に「2:20」モデルと言われますが、運用残高から2%を資産管理手数料として、利益から20%を成功報酬として取られるのが一般的です。
ヘッジファンドがFX相場に与える2つの影響と対策
ヘッジファンドは、その莫大な資金を用いて投資を行うことから、FX相場にも大きく影響を与えます。
相場の乱高下を加速させる要因になることもあり、これによって、個人の投資家が損失を被るということもあるのです。
ここでは、ヘッジファンドがFXの相場に与える2つの影響、またそれに対する対策についてまとめていきます。
ストップ狩り
ストップ狩りとは、「ストップロスの注文を狩る」ことで、ヘッジファンドが利益を出すために意図的に他の投資家たちのストップロス注文を制約させることです。
FX取引におけるリスクマネージメントの一つとして、ポジションを持つ際には同時にストップロス注文を入れることが一般的です。
そして、多くの場合、直近の高値・安値付近、あるいは100円、110円などといったキリのいい数字にストップロス注文を入れますが、ヘッジファンドはそこを狙ってストップ狩りとなる注文を仕掛けます。
仮に、ドル円が100円から105円の間を行ったり来たりするボックス相場で、現在のレートが100.20円だったとしましょう。
ヘッジファンドは、100円付近にたくさんのストップ注文が入っていると予測し、大量の売り注文を仕掛けて、100円を割るレートまで相場を下落させます。
すると、大量にかかっていたストップロス注文を巻き込み、さらにレートの下落は加速します。
レートが急落したところで、ヘッジファンドは売っていたドルを買い戻し、利益を確定させるのです。
このようにヘッジファンドの仕掛けによって、個人投資家たちのストップ注文が狩られることをストップ狩りと言います。
対策:新規注文と同時にストップ注文も必ず発注する
FX取引をする上でリスクを抑えるためには必須のことですが、新規注文を入れる際には、必ずストップ注文も同時に入れるというのは、ストップ狩りのことを考慮した上でも絶対に行うようにしましょう。
結論から言うと、ストップ狩りに対する絶対的な対策はありません。
ですので、まずは自分のトレードをする上でのリスク管理を第一に考え、ストップ注文を入れるようにしましょう。
ストップ狩りに合わないようにと、ストップ注文を入れなかったり、逆指値を大きくとったりすると、逆に損失を大きくしてしまう可能性があります。
それに、ストップ注文を入れたもの全てがストップ狩りの標的になってしまうというわけでは決してありません。
時にストップ狩りに遭うことも覚悟の上で、新規注文の際には、同時にストップ注文も発注することが必要なのです。
HFT(高頻度取引)による急騰急落
HFTとは、過去の値動きを統計的に解析し、1秒間に数千回といった取引をコンピュータによって自動的に繰り返す超高速取引のことです。
1000分の1秒以下での取引を大量に行うシステムですので、人間が行うスキャルピングは比にならないほどの頻度での取引が、大量に行われます。
大量の買い注文(または売り注文)といった相場の動きに瞬時に反応し、莫大な数量の買い(もしくは売り)取引を行い、それがさらに相場の過剰な暴騰暴落を引き起こすのです。
「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれるような瞬間的に値が飛ぶような大暴落は、HFTによる相場の急落がしばしば起因となりますが、2019年1月3日に起こったフラッシュ・クラッシュもその一例として考えられます。
年明け直後で小幅な動きだったドル円が、108円台半ばから104円台まで瞬く間に4円近くも下落したのです。
これはアップル社の売り上げ見通しの下方修正が一因とされていますが、そこにHFTによる売りが重なったことで、急落をさらに加速させたと見られています。
コンピュータのシステムにより、人間には不可能なレベルでの瞬間的な判断と高い頻度で大量に取引が行われることによって、相場の動きをさらに加速させることにつながるのです。
対策:市場の流動性が低い時間帯での取引を行わない
HFTによる相場の急騰急落を回避するためには、市場の流動性の低い時間には取引を行わないことです。
ヘッジファンドの資金力がいくら潤沢であるとは言え、多くのトレーダーが参加する流動性の高い時間帯であれば、レートの急騰急落は起こりづらいといえます。
ですので、流動性の高い時間帯での取引が安全と言えます。
先述した2019年年明け直後の例も、正月休みという取引参加者の少ない流動性が極めて低い中であったことが、相場の下落を加速させ、瞬間的な大暴落を招いたのです。
この一例からもわかるように、HFTによる相場の急騰急落の影響を避けるためには、流動性の低い時間帯での取引は避けるのが賢明であると言えるでしょう。
ヘッジファンドが使う8つの取引手法
ヘッジファンドが使う主な8つの取引手法を詳しくご紹介していきます。
- ロングショート
- マルチストラテジー
- マネージド・フューチャー
- イベント・ドリブン
- フィックスト・インカム
- グローバル・マクロ
- レラティブ・バリュー
- ディストレス戦略
ロングショート
相場用語で「買い」を意味するロングと、「売り」を意味するショート、この両方のポジションを同時に取る手法で、最も基本的であり伝統的なヘッジファンドの戦略です。
値上がりが期待できる割安な銘柄を買うと同時に、値下がりが予想される割高な銘柄を売ることによって、市場の動向に左右されずに利益を狙います。
ヘッジファンドの運用残高の3分の1を占めると言われる最も代表的な運用手法です。
マルチストラテジー
複数の投資戦略を組み合わせて分散投資し、収益の最大化を図る手法です。
例えば、ロングショートとイベント・ドリブンなど複数の運用を一つのファンドで組み合わせることを言い、複数を組み合わせることで、リスクを分散しながら投資を行います。
マネージド・フューチャー
先物取引で利益を追求する手法です。
株式や債券などの金融先物から、金、原油、穀物などのコモディティなどを手がけます。
売りと買い、両方のポジションを取って運用するため、相場が下がっても上がっても利益を得ることができます。
多くのファンドは、コンピュータによるアルゴリズム取引(システム売買)を活用して運用します。
イベント・ドリブン
イベント・ドリブンとは、企業のM&A(合併・買収)や業務提携など、企業の経営に大きく影響を与えるイベントを利用し、収益を得る戦略です。
例えば、買収されることが予測される企業に対して、成功が見込まれれば買い、失敗が見込まれれば売りのポジションを取ります。
フィックスト・インカム
債券や金利先物など金利系の資産に特化し、割高な銘柄を売り、割安な銘柄を買います。
両者の価格が正常になったところで同時に決済し、利益を確定させる手法です。
グローバル・マクロ
グローバル・マクロとは、世界全体の経済状況を把握してそこから将来の金融市場の動向を予測し、その上で様々な金融商品に投資する手法のことです。
1992年に英ポンドを大量に売り、「イギリス銀行を破綻させた男」として知られる著名投資家のジョージ・ソロスのファンドもこの手法を用いていました。
レラティブ・バリュー
レラティブ・バリューは「相対価値」を意味し、相対的に割高、割安になっている銘柄を買ったり売ったりする手法です。
これは、マーケットは合理的であり、いずれ適正価格に戻るという考えに基づいており、その適正価格に戻った時に収益を上げることができる仕組みです。
ディストレス戦略
業績悪化や経営不振に陥っている企業の株式や債券を安く買い、価格が回復した際に売却して利益を得る手法です。
経営危機に陥っている企業にヘッジファンド自らが関与して、立て直すということもあります。
以上がヘッジファンドの取引手法となります。
取引手法に関しては、下記の記事も参考にしてください。
まとめ:個人投資家はヘッジファンドには勝てない
本記事では、ヘッジファンドが使う代表的な手法や、FX相場に与える影響とそれに対する対処法についてまとめてご紹介しましたが、結論から言うと、個人投資家がヘッジファンドに勝つことは簡単なことではありません。
ヘッジファンドは莫大な資金量と、精度の高いアルゴリズムトレードや自動取引に対して、個人では太刀打ちができないと言うのが実情と言えます。
しかし、ヘッジファンドがどういうものかを知っておくことで、それに対する心構えや対策をあらかじめ持ってFXに挑むことは可能です。