FXにかかる税金と確定申告について
FXで得た利益には、他の金融商品で得た利益に税金がかかるのと同じように、税金がかかります。
FXが個人に解禁された当初から数年間は、FXで得た利益を申告しないですます人や、何億円もの脱税をしてマスコミをにぎわした主婦トレーダーが話題になったこともあります。
FXトレードという取引で得た利益は立派な所得になりますので、国民の義務である税金を納める必要があります。
ちゃんと納税をして、後ろめたい気持ちで取引をするのではなく、正々堂々と納税者の一員としてFXトレードをしたほうが楽しいのではないでしょうか。
納税は国民の義務よ!
FXの税金は申告分離課税
FXで得た利益にかかる税金は、当初は、総合課税でした。
2005年に取引所FX(くりっく365)が登場しましたが、くりっく365にかかる所得税は、初めから申告分離課税が適用されていました。
FXという同じ金融商品からあがる利益に対する税金が、かたや総合課税、かたや申告分離課税というのでは、不公平の観を免れませんでした。
当然、FXの税金については、統一すべきだという声が個人投資家を中心にわきあがり、毎年、税制改革で俎上にあがったのですが、相対取引のFXの場合、なかなか申告分離課税は認められませんでした。
やっとFXの相対取引で得た収入に申告分離課税が適用されるようになったのは、2012年からでした。
2005年から数えて、FXの税金精度が統一されるのに、7年という歳月が費やされたのでした。
申告分離課税
FXにかかる税金ですが、FXによる利益が20万円以下の場合は、確定申告する必要がありません。
20万円超の利益がある場合は、必ず申告をしなければなりません。
所得税の区分には、前述したように総合課税と申告分離課税の2種類があります。
総合課税は文字通り、得た所得を合算して、必要経費を引いた課税所得金額をランク付けにして、所得税が決められています。
総合課税になると、最大45%の税金を負担することになります。
ところが、FXで得た利益は、「先物取引に係る雑所得等」として位置づけられ、他の所得とは分離して税金を計算します。
この場合、適用される税率は20.315%です。
その内訳は以下のようになります。
- 所得税が15%
- 復興特別所得税が0.315%(所得税率15%×2.1%)
- 住民税が5%
したがって、FXで得た所得にかかる税金は、20.315%になります。
なお、復興特別所得税は2037年まで適用されます。
したがって、FXの課税所得金額が1000万円あったとします。
その場合にかかる税金は、1000万円×20.315%ですから、203万1500円となります。
これが、総合課税だったらどうでしょうか。
総合課税の場合の税率は33%-153万6000円で計算されます。
そうすると、
それに住民税の100万円(1000万円×10%)が加算されて、税額は276万4000円となります。
申告分離課税と総合課税とでは、73万2500円の差額になります。
つまり、申告分離課税のほうが納める税金が少なくてすむということです。
サラリーマンの場合
毎月、決まった月給をもらって生活するサラリーマンの場合は、給料から所得税が自動的に引かれています。
これは、源泉徴収というかたちで会社が毎月、おおよその金額を計算して、徴収し、税務署に納めています。
しかし、実際に支払わなければならない所得税は、1年がすぎてみないとわかりません。
そこでサラリーマンの場合は、年末調整というかたちできちんと納めるべき所得税を計算に、その差額を年末調整として処理するわけです。
ですから、人によっては年末にお金が戻ってくることもあります。
また、その逆に支払いを求められることもあります。
ただ、サラリーマンにとってはほとんどの場合は、何かしらの金額が戻ってくることが多いようですから、この年末調整を楽しみにしている人も多いようです。
注視しなければならないのは、FXで得た利益はこの年末調整には入っていません。
ですから、20万円超の利益をFXであげた方は、源泉徴収票をもとに、自分自身で確定申告をしなければなりません。
専業主婦、無職の人の場合
専業主婦の方でFXトレードを行っている方はかなりおられるはずです。
もし、専業主婦の人がFXで30万円の利益を得たとします。
その場合、確定申告する必要があるでしょうか。
答えは「ノー」です。
なぜなら、申告者全員には、38万円という基礎控除が適用されています。
ですから、38万円を超えない限り、確定申告をする必要はありません。
確定申告をするのは、FXで得た利益が38万円超となってからです。
その場合は、ご主人に頼らず、自分自身で確定申告を税務署に対して行わなければなりません。
年金受給者
公的年金等の金額が年間400万以下で、必要経費をひいたあとのFX等の利益が20万以下の場合は、確定申告は不要です。
FXの利益とは?
FXの利益は、1月1日から12月31日までの間に取引をして得た利益の合計と、1年間のスワップポイントの金額をあわせたものになります。
12月31日にポジションをもっていて、年を越してしまったポジションを1月に決済した場合に生じた利益は翌年度の利益として計上することになります。
税金は、FXの利益にかけられるのではありません。
得た利益から必要経費を引くと課税所得金額が決まりますから、それに対して申告分離課税が適用されることになります。
では、必要経費と認められるものにはどんなものがあるでしょうか。
- 電話
- インターネットのプロバイダー料金
- 新聞、雑誌、書籍などの情報源
- 取引に必要な機器類
- 事務用品
- セミナーなどの会場費、交通費
以上は確実に経費として認められます。
ただ、FXをやっている人立ち通しで情報交換をした時の飲食費などは、経費として認められるかどうかは微妙なところです。
もし、経費としてみとめられるかどうかわからないことがあれば、近くの税務署に相談するほうが確実です。
かりに、200万円の利益があったとします。
その場合にかかった経費が120万円だとすると、課税対象所得は、80万円になり、
となります。
他の先物取引と損益通算が可能
FXで発生した損益は、他の先物取引と損益面で通算できます。
つまり、相殺することができます。
これは2012年にFXが申告分離課税に統一されたときに決定されました。
したがって、他の先物取引商品であるくりっく365や日経225、商品先物取引、金利先物取引などと、損益を相殺できるようになったのです。
これはどんなメリットがあるでしょうか。
たとえば、FXでの利益が500万円だったとします。
これを他の先物商品の損益と通算しなかったら、払わなければならない所得税は、
となります。
ところが他の金融先物商品と損益を通算したとします。
他の先物商品の損失が300万円だったとしたら、課税される所得金額は、
となります。
これに申告分離課税を提供すると、支払わなければならない所得税は、40万6300円ですみます。
101万5750円の所得税を払わなければならなかったのが、損益を通算したおかげで、40万6300円の所得税を払えばいいことになったのです。
繰り越し控除ができる
FXで損失を出した場合は、所得税を払う必要はありませんから、当然、申告の必要もありません。
そう思って、損失をそのままの状態にしている人は意外と多いのではないでしょうか。
FXの税金には繰り越し控除という制度があります。
これは、3年間に限ってですが、これは、1年目に出した損失を2年目、3年目に繰り越しができて、損益と相殺できることなのです。
たとえば、1年目に300万円の損失を確定申告したとします。
その場合、所得税は0円です。
そして、2年目に150万円の利益を出しましたが、1年目の損失と相殺してまだ150万円の損失ですから、所得税は0円です。
さらに、3年目に150万円の利益を出しましたが、繰り越しで150万円の損失がありますから、それと相殺して課税所得金額は0円、したがって、納める所得税も0円となります。
これが繰り越し控除をしていなかったらどうなるでしょうか。
1年目は損失ですから税金はかかりません。
しかし、2年目、3年目は150万円の利益に申告分離課税が適用され、それぞれ所得税をしはらわなければなりません。
繰り越し控除をした方は、所得税が0円。
しなかった方は、2年目も3年目も所得税を払うという、くっきり明暗が分かれるかたちとなりました。
辻秀雄氏のプロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから