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経済指標の基本的な読み方とは

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注目度がもっとも高いのはアメリカ

一国の強さを判断する材料の一つに経済指標があります。

その国の経済状況がどんな状態かを、基本的には数値で示すことによって表そうとしたものです。

経済的な強さや弱さは、ひいては国際社会での政治的な強さや弱さとも連動してきます。

それだけの力を持っているのが経済指標といっても過言ではありません。

また、経済指標は為替市場を含む金融市場に対しても影響を与えますし、その市場関係者へも影響を与えます。

たとえば、トレーダーであれば、トレードの手法をはじめとするその行動様式に、アナリストであれば、市場分析や経済分析の材料として有効的に利用できるわけです。

数ある経済指標のなかで、金融市場やそこに集う投資家、アナリスト等にもっとも影響を及ぼすのが、世界一の経済大国、アメリカ合衆国の経済指標です。

毎月第一金曜日に労働省が発表する雇用統計はいまさら説明する必要がないほど、市場関係者にとってはなじみが深い経済指標です。

このほか、景気の善し悪しを判断する材料になる経済指標としては、消費者物価指数(CPI)や住宅関連の指標が注目すべき指標といえます。

さらに、購買担当者景況指数(あるいは景気指数ともいう、PMI)は、各産業の業績の善し悪しを判断する材料として、投資家やアナリストが注視すべき経済指標となります。

その指数が50を超えていれば、業績や業態がよく、50を下回っていれば業績や業態が芳しくないと判断できます。

アメリカ合衆国の経済指標に続いて、市場に影響を当たるのが、ユーロ圏の経済指標です。

とくに、ユーロ経済の牽引車であるドイツの経済指標は、他のユーロ諸国の経済指標よりも注目度が高いです。

ドイツには有名な経済研究所があり、彼らが発表する景況指数は景気を判断する上で重要です。

次に、オセアニア諸国、なかでもオーストラリアの経済指標も注目すべきものがあります。

主要通貨のなかでは高金利通貨の類にはいる豪ドルですが、資源国通貨の側面も持っており、とくに中国の景気に左右されるという特徴を持っています。

最近では、アメリカ合衆国の雇用統計ほどではありませんが、オーストラリアの雇用統計も投資家が注目するようになっています。

アジア諸国のなかでは、なんといって経済成長率が毎年、6%から7%をはじき出している中国の経済指標が注目されはじめています。

とくに、購買担当者景況指数は、中国の景気の善し悪しを判断する重要な経済指標となっています。

日本の経済指標はどうかといえば、投資家にとっては注目すべき経済指標はあまりありません。

為替市場に影響を与える指標はほとんどといってありません、これまでは。

ところが、2013年3月20日に黒田東彦氏が日銀総裁に選ばれてから、日銀の金融政策が投資家の注目を浴びるようになりました。

さくら
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それは、通称、黒田バズーカといわれるほどの大胆な金融政策を実行したからです。

日銀の金融政策がとくに「米ドル/円」に影響を与えたことから、俄然、黒田氏の言動は投資家の間で注目を浴びるようになりました。

市場のテーマによって注目度が違ってくる

最近では中国がいい例ですが、これまで中国の経済指標は投資家の間では注目されませんでした。

しかし、中国の人民元が国際貿易の決済通貨として認められてきたあたりから、中国の指標にも注目が集まり始めました。

とくに、中国と貿易の面で関係の深いオーストラリアの豪ドルは、中国の景気の良し悪しに左右されることが多い通貨です。

豪ドルを取り引きしている投資家にしれみれば、中国の経済指標は欠かせないものとなっています。

さらに、経済指標についての見方も変化しています。

たとえば、アメリカ労働省が発表する雇用統計ですが、以前だと、非農業部門の雇用者数の変化と失業率に金融市場は注目をしていました。

雇用者数や失業率が減ったり、増えたりすることで、通貨ペアのレートも上下していました。

しかし、最近では雇用者数や失業率だけではなく、労働参加率や平均賃金(時間給)の増減を気にする投資家も現れてきています。

雇用統計の発表と同時にリリースされる雇用統計の内容を書いたデータには、労働参加率や人種別の失業率など、雇用に関するいろいろな項目の調査結果が詳細に述べられていますので、興味のある方は読んでおくといいでしょう。

結構、面白いですよ。

経済指標発表時間と予想は必ずチェック

経済指標の発表時間と発表頻度はあらかじめ決まっています。

欧米諸国やオセアニアでは、夏時間と冬時間を採用しているため、発表時間も夏時間と冬時間では1時間の違いがあります。

ちなみに、欧米諸国とオセアニア諸国の夏時間は以下のように決められています。

  • アメリカ合衆国、カナダ 3月第2日曜日午前2時〜11月第1日曜日午前2時(現地時間)
  • ヨーロッパ各国(欧州連合加盟国及び非加盟国含む) 3月最終日曜日午前1時~10月最終日曜日午前1時(協定世界時=UTC)
  • オーストラリア 10月第1日曜日午前2時~翌年4月第1日曜日午前3時(現地時間)
  • ニュージーランド(一部除く) 9最終日曜日午前2~翌年4第1曜日午前3(現地時間)

それ以外は冬時間となります。

アメリカの経済指標が発表されるのは、夏時間だと21時30分(日本時間、以下同)、冬時間だと22時30分になります。

FOMC(連邦公開市場委員会)の議事録や議長の記者会見は深夜0時~3時ぐらいの間で発表されることが多いようです。

ユーロ圏の経済指標は、主に15時台から18時台を中心に発表されます。

オーストラリアの経済指標は9時台から10時台に、ニュージーランドの経済指標は6時台から8時台に発表されます。

中国の経済指標は10時台から11時台に、日本の経済指標は8時50分に発表されることが多いです。

これらの時間帯を覚えておき、重要な経済指標発表時にレートが大きく変化するのを逃すことなく、ポジションを建て、決済して利益を得るように心がけましょう。

そして、経済指標を見る際には、予想値をしっかり確認しておくことです。

相場は予想値と結果の乖離が大きければ大きいほど値動きが激しくなるからです。

ボラティリティが高くなるほど、利益を得るチャンスが増してきます。

発表される経済指標は、アメリカの労働省の雇用統計のように、前月の調査結果を今月の5日後に発表されるものもあれば、一月後、二月後に発表されるもの、あるいは四半期ごと、1年ごとに発表されるものなど、発表の時期はまちまちです。

たとえば、二月後に発表された経済指標をみてトレードをする人はあまりいません。

相場もそう大きく動くわけではありません。

だいたい、経済指標によって相場が動くのは、長く見積もっても一月後に発表される経済指標だといっていいでしょう。

アメリカの新規失業保険申請件数のように、毎週のように発表される経済指標については、相場もそれなりの反応をみせるため、トレードチャンスが広がります。

経済指標の特徴

経済指標には、3つの見方があります。

  • 「一致指数」
  • 「先行指標」
  • 「遅行指標」

まず、一致指数ですが、この指数は、現在の景気の状態とほぼ同時に反応し、変化する指数のことです。

非農業部門雇用者数や個人所得、鉱工業生産性指数などがそれにあたります。

求職者が増えるということはそれだけ企業の業績が良いことの証明となりますし、個人所得が増えることは消費が増えて、物価も上昇していることを示します。

なかでも、非農業部門雇用者数は、FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策に大きな影響を及ぼします。

次に、先行指標です。

先行指数とは、新規失業保険申請件数や新規住宅着工許可件数、ミシガン大学消費者信頼感指数などが代表的です、景気の動きに先立って反応する指数のことです。

市場関係者は誰よりも先に新しい動きを知り、そこに優位性を見いだして誰よりも先に取引を行い、利益を得ようとするものです。

そこで彼らが注目するのが、景気に先だって反応を示す先行指数です。

この先行指数の結果によって、中央銀行が金融政策を変更することは考えられませんが、市場関係者がもっとも注目している経済指標には違いありません。

たとえば、先行指数が3カ月連続でプラスを記録することがあれば、景気はよくなっていると判断します。

逆にマイナスを計上するようであれば、景気は悪くなると判断できます。

これが、先行指標の標準的な見方です。先行指数は経済、株価、業績の予測に用いられます。

3つ目は遅行指数です。

この指数は、実際の景気の動向より少し遅れて反応する、変化する指数です。

景気がどうなっているかを表す指標として、FOMC(連邦公開市場委員会)や中央銀行など、金融政策にかかわる機関にとっては注目すべき指標となっています。

遅行指数の代表的なものといえば、消費者物価指数や失業率、法人税収入などがあります。

たとえば、消費者物価指数は商品の物価の状態を示す指標ですが、景気が良くなって消費者の消費が増えれば、物価も上昇する可能性が高くなるため、遅効性指数といえます。

また、失業率が低下していることは、企業や官庁などの法人で働く人が増えていることですから、法人の業績が増えて、景気が回復あるいは向上していることがいえるのですから、失業率は遅効性指数といえます。

景気がどうなっているかを確認できる重要な指標ですので、注目しておくべきでしょう。

「織り込み済み」という言葉の意味

FXトレードや株式売買など、投資の世界に身をおいていると、「この相場は織り込み済みだ」という声をよく耳にすることがあります。

「織り込み済み」っていったい何を意味しているのでしょうか。

経済指標が発表される前から、結果を予想してあらかじめポジションを建てておくことを意味します。

アメリカ労働省の雇用統計を例にとって説明しましょう。

たとえば、前月の雇用統計の雇用者数が15万人だったとします。

今月発表の雇用統計の予想が20万人だったとします。

前月と比べて明らかに雇用者が増える見込みなので、雇用統計が発表されると「米ドル/円」はきっと買いが多くなるに違いないと、当人は思います。

そこで、「米ドル/円」の値上がりを見込んで、雇用統計発表の1日前に「米ドル/円」の買い注文を行うことにしました。

そして雇用統計発表の当日を迎えました。

結果は、予想通り、21万人の増加でした。

そうなるとさぞかし「米ドル/円」が上昇するだろうと期待をしていたにも関わらず、「米ドル/円」はわずか20銭の上昇に終わりました。

かなり多額の利益を狙っていただけに、ショックです。

ではなぜ、予想の20万人を超えて雇用者が増えたのに、「米ドル/円」の価格は上がらなかったのでしょうか。

それは、市場がすでに「米ドル/円」が上昇するだろうと買いポジションを仕込んでいたため、価格の上昇が抑えられたわけです。

市場とは言うまでもなく、取引に参加しているトレーダーのことです。

たとえば、市場には1000人のトレーダーがそのときに参加をしていて、900人がすでに買いポジションを建てて、発表を待っていたとします。

そのため、「米ドル/円」の価格は発表前に値を上げています。

そして、発表の結果を見てからポジションを決めたいと思っているトレーダーが100人いるわけですが、彼らがすべて買いポジションを建てるかどうかわかりません。

なかには、様子見のトレーダーもいる可能性もあります。

そうすると、わずか100人が雇用統計発表後に「米ドル/円」の買いポジションを建てても、価格はそんなに大きくは動きません。

発表前の「米ドル/円」の価格にちょっとだけ上乗せされたにすぎません。

つまり、発表後に多くのトレーダーが買いポジションを建てなければ、「米ドル/円」の相場は大きく動きません。

動かないと見たトレーダーの多くは売り決済をして、いち早く利益を確定しようとします。

そうすると、一気に「米ドル/円」の価格は下落し、その流れに乗り遅れたら、損失を被るリスクが生まれてきます。

雇用統計の結果が良かったにもかかわらず、「米ドル/円」の価格が上昇しなかったのは、すでに買いポジションが仕込まれていたから、価格が上昇する余地がなかったのです。

さくら
さくら

これを称して「織り込み済み」というわけです。

しかし、これはあくまで結果論ですから、相場が「織り込み済み」であろうがなかろうが、事前にトレーダーが「織り込み済みかどうか」を知る方法はありません。

あくまでも、「米ドル/円」のレートの状況をみて、アナリストが後付でそう表現しているに過ぎないことです。

トレーダーにとって大切なことは、値動きについていって利益を上げることです。

ただ、「織り込み済み」という言葉を耳にしたら、そういう意味なんだと覚えておけばいいだけの話です。

そのほか、「サプライズ」という言葉もよく聞くことがあるかもしれません。

これは、その言葉が意味する通り、予想もしなかった出来事が金融関連で起きたときに使う言葉です。

例えば、FRBが金利を下げることはないと市場関係者の誰もが思っていたにもかかわらず、FRBが利下げをしたときに、相場はサプライズをして、思わぬ動きをする、という状態を表したものです。

物価関連の経済指標

一般的にいって、私たちの日常生活になじみのある経済指標といえば、物価関連の経済指標でしょう。

消費者物価指数(CPI)

アメリカ社会のインフレ動向を知るうえでもっとも重要な指標が消費者物価指数です。

毎月中旬に労働省から発表されます。

この指数は、一般の家庭が購入する商品やサービスの総合的な価格を指数化したもので、前月比、前年同月比のデータが発表されます。

調査の対象となるのは、全米75都市部の6000世帯と約2万2000種類の小売業です。

消費者物価指数には、コア消費者物価指数とコアがつかない消費者物価指数の2種類があります。

コア消費者物価指数とは、価格変動が激しい食品やエネルギー関連の製品およびサービスの価格を除いたものを指数として算出しているものです。

どちらの指数も市場関係者にとっては注目すべき指数です。

一般に、消費者物価指数が前月よりも数字が良ければ、米ドル買い(円安)、悪ければ米ドル売り(円高)になります。

インフレについて言えば、中長期的な視点では、インフレは米ドル売り(円高)の条件となります。

個人消費支出(PCE)デフレーター

毎月月末にアメリカの商務省が発表する経済指標です。

個人消費支出(PCE)デフレーターは、米国経済分析局(BEA)によって収集された国内総生産(GDP)の消費の構成要素をなす統計です。

世帯の実際の支出と帰属支出で構成され、耐久財および非耐久財、サービスに関するデータが含まれています。

基本的に、個人を対象とし、個人が消費する商品とサービスの尺度です。

PCEデフレーター、PCE価格デフレーター、または個人消費支出の暗黙的価格デフレーター(PCEのIPD)とも呼ばれるPCE価格指数(PCEPI)、および連邦公開市場委員会(FOMC)による個人消費支出のチェーン型価格指数(CTPIPCE)は、すべてのアメリカ国内全体の個人消費価格の平均な上昇を表す指標です。

基準は2009年を100として算出しています。

アメリカの消費者物価指数や生産者物価指数の価格など、さまざまなデータを使用して、商務省の国民所得および個人消費支出から導き出されます。

個人消費支出デフレーターから、価格変動が激しい食品とエネルギーを除いたものを「PCEコアデフレーター」と称し、FRBがもっとも重視している物価指標で、半年に一度、インフレ見通しとして発表されています。

生産者物価指数

企業が生産し、市場に出荷した原材料を含む製品の販売価格の変動を調査し、算出した経済指標です。アメリカの労働省が毎月中旬に発表しています。

また、「卸売物価指数」という名称で公表している国もあります。

「Producer Price Index」の頭文字をとって「PPI」と呼ばれています。

調査の対象となるのは、アメリカ国内の製造業者が製造し、販売した約1万品目の販売価格です。

それを毎月、調査し、集計し、指数として公表しています。

生産者物価指数はいろいろな分類がなされています。

すべての製品の価格動向を示す「総合指数」以外に、原材料や中間財、最終財を対象とした製造段階別指数、品目別指数、産業別指数などがあります。

生産者物価指数は、インフレ動向をみるうえで非常に重要な経済指標として、位置づけられています。

CB消費者信頼感指数

消費者信頼感指数(Consumer Confidence Index)は、全国の約3000世帯の月次調査をもとに算出した指数で、自分の国の経済の安定性に対する消費者の信頼レベルを示したものです。

この指数はまた、消費者の財務状況や購買力・購買意欲、市場や経済に対する信頼性の評価につながります。

毎月、全米産業審議会が調査結果をまとめたものを発表しています。

調査項目には5つの質問が含まれています。

現在の経済状況(雇用など)、今後半年のビジネスの状況や、雇用及び家計収入の変化などについての質問です。

これらの質問の回答の選択肢は3つで、良い、悪い、普通のいずれかで評価します。

消費者信頼感の高まりは、通貨市場を急激に押し上げる可能性を秘めています。

消費者はより多くを消費し、大規模の購入(たとえば、車や家)をすることを示唆しています。

これは経済活動の増加と消費支出の増加につながります。

また、消費支出が向上するとインフレ率が高まる可能性が出てきます。

そのため、消費者信頼感指数は通常、プロの経済学者が厳重に監視をしています。

ところが、消費者の経済に対する信頼感は、そのときの気分によって左右される、きわめて主観的なものです。

そのため、プロの経済学者によって、少なくとも3カ月から半年は、アンケート結果を精査し、間違いなく消費者の信頼感が増しているか、減少しているかを確実に判断できたときに、結果を発表するかたちをとっています。

アナリストの予想を上回る結果が出たときには、米ドルは買われる傾向(円安)が強くなります。

産業分野の景気動向をはかる経済指標

ISM製造業購買担当者景況指数

毎月第一営業日に供給管理者協会(ISM)が公表する、アメリカ国内の製造業の景気動向を示す経済指標です。

300以上の製造会社の購買マネージャーに対する調査に基づいて、企業活動の好不調の度合いを指数化したものです。

調査項目は、新規注文、生産、雇用、サプライヤー配送、在庫、顧客の在庫、商品価格、受注残、新規輸出注文、輸入の状況と多岐にわたります。

業種としては、化学製品、コンピュータ、電子製品、輸送機器などの17の産業部門に分類されています。

前月と比較して、この指数が50を超えると製造部門は拡大傾向にあるとみなします。

ちょうど50の場は合、変化がないことを示しています。

さらに、50未満の場合には、製造部門の縮小を示唆しています。

毎月発表されるISM製造業購買担当者景況指数は、個人投資家や機関投資家の投資行動に大きな影響を与えます。

それは、この指数の調査対象が、企業のサプライチェーンの最前線にいる購買管理者とサプライ管理エグゼクティブに対する調査だからです。

購買管理者は、ビジネス状況が拡大しているか、縮小しているかを知るために、最適な立場にあります。

製造業者は、需要の変化に迅速に対応し、最終製品の需要を見込んで、使用する材料の購入を拡大または縮小する必要があります。

ISM製造業購買担当者景況指数を注意深く見ることによって、投資家は国の経済動向と状況をよりよく理解できます。

指数が上昇しているとき、投資家は企業収益が上昇していると判断し、強気の相場を予想します。

その反対が債券市場です。

インフレに対する債券の感応性のために、ISM製造業購買担当者者景況指数が上昇すると、債券相場は下落する可能性があります。

ISM非製造業購買担当者景況指数

毎月弟3営業日に供給管理者協会(ISM)から発表されるのがISM非製造業購買担当者景況指数です。

この分野の調査対象となっているのは、金融業務、健康サービス、交通手段、コミュニケーション、行政などです。

ISM非製造業購買担当者景況指数の開始を検討したのは1996年からで、1997年の春先にパイロット版を発表して、一応の評価をえることができたことから、1997年7月から本格的にISM非製造業購買担当者景況指数として、定期的にデータを収集し、まとめた結果を公表することになったのです。

指数は、全国の非製造業で働いている350人の購買担当幹部に送られた月次調査からまとめられたデータに基づいています。

ISM非製造業購買担当者景況指数のレポートのプロセスやコンテンツ、および形式は、わずかな違いを除いてISM製造業購買担当者景況指数のレポートのプロセス、内容、および形式に似ています。

為替相場との関係でいえば、ISM製造業購買担当者景況指数もISM非製造購買担当者業景況指数とも、前月との比較で数字が上昇していれば、米ドル買い(円売り)、数字が悪ければ米ドル売り(円買い)となります。

シカゴ購買担当者景況指数(Chicago PMI)

ISM-Chicago.Incが発表しているシカゴ購買担当者景況指数は、アメリカのイリノイ州をはじめインディアナ州、ミシガン州の企業の経済活動状況を指数としてあらわしたものです。

この指数は、ビジネストレンドの指標であり、ISM製造業購買担当者景況指数と相互に関連しています。

アメリカの全体的な経済状況を示すために広く使用されています。

指数が50を超えていれば米ドル買い(円売り)で、50を下回る結果は米ドル売り(円買い)となります。

Caixin製造業景況指数

Caixin製造業購買担当者景気指数(PMI)は、中国の製造業の企業活動の状況を指数化したものです。

対象としているのは、500社を超える大企業の購買担当者で、その調査結果に基づいて指数を算出しています。

調査対象として選ばれている企業は、標準産業分類に従って、中国の国内総生産(GDP)への貢献度が大きいものから選出されています。

この指標は、中国のメディアグループであるCaixinと国際的なMarkit社との協力のもとで成り立っています。

新規注文指数(30%)、製造(25%)、雇用(20%)、仕入先納品(15%)、在庫(10%)という内容で構成されている、複合指数となります。

購買担当者は、過去1カ月間に上記の5つの調査項目が改善されたか、悪化したか、または変わらなかったかを評価します。

製造部門のアンケートには、生産、新規受注(国内市場と輸出)、未受注、納入受注、仕入先納品、在庫、在庫、雇用、近い将来の生産見通しに関する質問が含まれています。

前月と比較して指数が50を超えると、製造業の活動は伸びていることを示し、50を下回る指数だと、製造業の活動の下落を示します。

この指数は、中国の製造業が発展しているか、そうでないかを如実に表していることになりますので、人民元や豪ドルに対して影響を与える可能性があります。

住宅関連の経済指標

住宅関連の経済指標も消費者と密着しているものが多く、景気判断の材料となります。

住宅着工許可件数

建築許可は、新しい建物または既存の建物の建築等が合法的に行われる前に、政府または他の規制機関による建築許可の承認が必要です。

米国国勢調査局は、毎月18営業日に最終的な月ごとの建築許可の数字を発表しています。

毎月の建築許可件数報告書は、エコノミストと投資家の両方から注目されています。

建物の建築に関連するすべての関連要因は重要な経済活動(たとえば、資金調達や雇用)であるため、建築許可レポートは近い将来の経済状況に関する重要なヒントを与えることになります。

発行される建築許可の種類は、経済活動の成長や停滞を把握するための指標でもあります。

たとえば、商業建築許可の急増は、多くの場合、ビジネスの拡大、または新しい会社の設立を示しています。

より多くの倉庫の建築許可の増加がある場合、今後数年間で商業が増加する兆候である可能性があります。

住宅建築許可の承認は、消費者の信頼と支払能力のバロメーターになります。

米国国勢調査局は、毎月、毎年、および年初来の間隔で利用可能なデータを使用して、新しい住宅ユニットの建築許可の調査を実施しています。

調査は全国を対象とし、地域、州、大都市圏、および郡ごとに分けられています。

新しい住宅の建築許可は、多世帯ユニットから一戸建ての建設まですべての範囲をカバーしています。

建築許可件数の増加は、より多くの家の必要性を示しています。

とくに、一戸建て住宅の建築許可の増加は、より多くの市民が住宅を購入するのに十分な資金を蓄積していることを示しています。

建築許可を取得するプロセスは、政府が建築基準に基づいて実施されます。

開発者または不動産所有者が新しい建物を構築したり、既存の建物を改築したりする場合、適切な建築計画書を規制当局などへ提出する必要があります。

建築設計者は通常、建築計画を承認してもらうために、設計図を起草して提出します。

予想される建築材料と一緒に提案された構造設計は、建築基準に準拠していることを確認するために、当局によって審査されます。

計画を精査するときには、提案された建物の耐久性と安定性が評価されます。

結果として生じる建築に影響を与える可能性のある外部要因により、市町村は厳しい建築基準を有する場合があります。

たとえば、地震が発生しやすい地域では、すべての建築物が一定量の地殻変動に耐えられる必要があります。

竜巻が発生することが知られている地域の建物も同様に、強風に対して承認された材料のみを建築に使用することを命じることができます。

規制当局が計画に満足したら、建築許可を発行して建築を開始することができます。

新築住宅販売件数

アメリカの国勢調査局が毎月発表している新築住宅販売件数は、新築住宅の販売を測定する経済指標です。

この指標は、不動産市場の需要の遅効性を示す指標であり、住宅ローンの金利に影響を与える要因と見なされているため、注目されています。

また、家計収入や失業率、金利などの要因にも左右されます。

米国国勢調査局は、天気などの季節要因を調整する季節調整済み数値と未調整数値を発表しています。

調整後の数値は年間合計として表示され、調整前の数値は月次合計として表示されます。

この指標の変化は、景気後退の開始や景気回復の開始など、経済の広範な動きを予測できるため、市場参加者は新しい住宅販売データを注意深く監視します。

新築住宅販売件数のデータは、住宅建設業者とのインタビューを実施し、米国国勢調査局の建設調査(SOC)のデータを調べ、編集をしています。

具体的には、新しい建築プロジェクトに対して発行された建築許可に関するデータを使用します。

季節調整された数値は、季節の天候や全体的な景気循環などの要因の影響を取り除くことを目的としています。

季節調整の背後にある考え方は、市場参加者に、経済に影響を与える他の要因とは無関係に、新しい住宅に対する潜在的な需要をより明確に認識させることにあります。

データの質を維持するために、新しいデータが利用可能になると継続的な改訂が行われ、公開されます。

住宅着工件数

住宅着工件数は、毎月17日前後に米国商務省によって発表されます。

この指標には、建築許可、住宅着工、および住宅完成データが含まれています。

これらはすべて、全国の住宅建築業者の調査からまとめられたものです。

住宅関連は米国経済の動向を知るための重要な要素であり、銀行、住宅ローン、原材料、雇用、建設、製造、不動産などの関連産業に影響を及ぼします。

好景気になると、新しい家を購入する可能性は高くなります。

逆に、不況になると、新しい家を購入する可能性が低くなります。

この指標でいう住宅とは、 一戸建て住宅やタウンホームとコンドミニアム、アパートなどの5ユニット以上の集合住宅のことです。

集合住宅のユニットについては、各ユニットは単一のものとして見なされるため、たとえば、25ユニットの建物は25の異なる住宅として計算されます。

投資家とアナリストは、毎月の住宅着工件数をチェックし、過去数カ月および数年のデータと比較します。

住宅着工は天候の影響を大きく受ける可能性があるため、数値は季節ごとに調整され、最新の評価を反映するためにしばしば改訂されます。

中古住宅販売件数

既存住宅販売データは、国全体の既存の一戸建て住宅の販売と価格を測定し、国の西部、中西部、南部、および北東部での内訳を示します。

米国中古住宅販売件数(Existing Home Sales)は、ひと月の中古住宅販売額を反映しています。

対象となるのは、既存の一戸建て住宅、マンション、コンドミニアム及び共同組合の売却取引された住宅が含まれます。

この指標は、米国国立不動産協会によって発表されます。

詳細版には、販売数の絶対数と金額ベースの評価(地域別の平均販売価格)が含まれます。

この指数は全国をカバーしていますので、件数が膨大な数字になります。

戸建て住宅に加えてアパートに関する情報も盛り込まれていますので、住宅市場を客観的に評価するデータとして、アナリストなどが注目をしています。

そして、住宅市場の強さと総需要を特徴づけています。

さらに、住宅保険や家財道具などの関連商品の販売動向を間接的に見通すことができます。

中古住宅販売件数が伸びれば、米ドル買いの流れになり、円安が進むことになります。

小売売上高

米国の小売売上高は、小売業界の月次の状況をまとめたものです。

米国国勢調査局が発表しています。

毎月、小売業界のデータを収集するために、約4900社を調査しています。

調査レポートには、前月の総売上が表示されます。

経済指標として公表される小売売上高は、対前月度と比較した伸び率、過去12カ月間の前年比売上の変化率が示されています。

小売売上高は、消費者支出の傾向を予測するために使用され、経済が健全かどうかを判断するための測定値にもなります。

そして、主要な休日の小売売上高も調査します。

たとえば、ハロウィーンの支出に関するレポートは、ホリデーショッピングシーズンの消費傾向がどうなるかを判断する手がかりとなります。

全米小売業協会(NRF)は、バレンタインデー、母の日、父の日、新学期の小売販売についても報告しています。

鉱工業生産指数

鉱工業生産指数(IPI)は、製造業や鉱業、電気、ガス産業の実質生産量を基準年と比較して測定する月ごとの経済指標です。

連邦準備制度理事会(FRB)は、毎月​​中旬に鉱工業生産指数(IPI)を公表し、以前の推定値の修正は、毎年3月末に発表されます。

IPIは、製造部門、鉱業(石油およびガス田掘削サービスを含む)、および電気、ガスのユーティリティによる生産レベルを測定します。

鉱工業生産と生産能力のレベルは、基準年(現在は2012年)に対する指標レベルとして公表しています。

言い換えると、絶対的な生産量や値ではなく、2012年に対する生産の変化率を表しているということです。

鉄のトンなどの物理的な入出力を含む指標の算出の基になるデータはさまざまです。FRBは、業界団体や政府機関からこれらのデータを取得し、指数としてまとめます。

IPI全体には、住宅用ガスの販売、アイスクリームと冷凍デザート、カーペット、ばねとワイヤー製品、オーディオとビデオなど、非常に具体的な産業の生産物を詳細に示す多数のサブインデックスがあります。

産業レベルのデータは、特定の業種の管理者や投資家にとって有用ですが、複合指数は経済学者や投資家にとって重要なマクロ経済指標です。

産業部門内の変動は、全体的な経済成長の変動の大部分を占めているため、毎月の測定基準は、投資家が生産高の変化を認識し続けるのに役立ちます。

同時に、IPIは経済的生産のもっとも一般的な指標である国内総生産(GDP)とは異なります。

GDPはエンドユーザーが支払う価格を測定するため、小売部門での付加価値を含みますが、IPIはそれを指数の基データに加えることはありません。

また、産業部門は米国経済のなかでは低いシェアを占めており、2016年時点でGDPの20%未満であるという事実を記憶しておいてください。

たとえば、設備稼働率は、需要の強さを判断する基になるデータです。

低い稼働率=過剰容量であれば、需要の弱さを示していることになります。

このような数字がでたときは、政策立案者は、財政や金融を刺激する施策が必要だということを認識するわけです。

投資家は、鉱工業生産指数が低ければ、景気後退の兆候としてとらえ、または政府やFRBが景気刺激策を敷くのではないかといった読みをします。

一方、設備稼働率の高さは、経済が過熱しているという警告として機能し、価格上昇と資産バブルのリスクを示唆していることになります。

政策立案者は、金利の上昇や財政緊縮でこれらの脅威に対応するかどうかを決めますが、その政策の内容によっては、景気を進行させる可能性や景気後退につながる可能性もあります。

このように、鉱工業生産指数は、企業経営者はいうまでもなく、金融政策にも大きな影響を与える経済指標なのです。

以下の表は各国の主要経済指標を掲載したものです。

アメリカの主要経済指標

指標名 発表機関 発表時期 評価
非農業部門雇用者数(雇用統計) 労働省 毎月第一金曜日 A
失業率(雇用統計) 労働省 毎月第一金曜日 A
GDP(国内総生産) 商務省 毎月25日前後 A
生産者物価指数(PPI) 労働省 毎月15日前後 A
消費者物価指数(CPI) 労働省 毎月15日前後 A
個人消費支出(PCE)デフレーター FRB 毎月下旬 A
住宅着工件数/住宅許可件数 商務省 毎月弟3週 B
新築住宅販売件数 商務省 毎月下旬 B
中古住宅販売件数 全米不動産協会 毎月下旬 B
S&Pケースシラー住宅価格 S&P社 毎月最終火曜日 B
耐久財受注 商務省 毎月25日前後 B
ISM製造業購買担当者景況指数 全米供給管理協会 毎月第一営業日 A
ISM非製造業購買担当者景況指数 全米供給管理協会 毎月第3営業日 A
小売売上高 商務省 毎月第2週 B
ADP雇用統計 ADP社 毎月第一水曜日 A
製造業購買担当者景況指数 Markit社 毎月第3週 A
CB消費者信頼感指数 コンファレンス・ボード 毎月最終火曜日 B

中国の主要経済指標

指標名 発表機関 発表時期 評価
Caixin製造業景況指数 Markit社 毎月第一営業日 A
製造業購買担当者景況指数 中国物流・購買連合会 毎月最終日 A
非製造業購買担当者景況指数 中国物流・購買連合会 毎月最終日 A

EUの主要経済指標

指標名 発表機関 発表時期 評価
独国内総生産(GDP) 統計局 四半期終了45日前後 A
独ZEW景況感指数 欧州経済研究センター 毎月第2or3木曜日 A
仏サービス業購買担当者景況指数 Markit社 毎月第3週 A
独製造業購買担当者景況指数 Markit社 毎月第3週 A
独サービス業購買担当者景況指数 Markit社 毎月第3週 A
独Ifo景況感指数 Ifo経済研究所 毎月第3週 A

イギリスの主要経済指標

指標名 発表機関 発表時期 評価
国内総生産(GDP) 統計局 四半期終了40日前後 A
消費者物価指数(CPI) 統計局 毎月15日前後 A
小売売上高 統計局 毎月20日前後 A
サービス業購買担当者景況指数 Markit社 毎月第3週 A
製造業購買担当者景況指数 Markit社 毎月第3週 A

オーストラリア/ニュージーランドの主要経済指標 カナダの主要経済指標

指標名 発表機関 発表時期 評価
豪政策金利発表 オーストラリア準備銀行 毎月第一火曜日(1月を除く) A
NZ雇用統計 ニュージーランド準備銀行 四半期終了35日前後 A
豪小売売上高 統計局 毎月5日前後 A
豪貿易収支 統計局 毎月5日前後 A
NZインフレ期待値 ニュージーランド準備銀行 四半期終了50日前後 A
NZ政策金利発表 ニュージーランド準備銀行 年7回 A
豪金融政策会議議事録 オーストラリア準備銀行 毎月第3火曜日 A
豪賃金指数 オーストラリア準備銀行 四半期終了45日前後 A
NZ小売売上高 統計局 四半期終了45日前後 A
ANZ景況感 オーストラリア・ニュージーランド銀行 毎月最終日前後 A
豪民間企業設備投資 統計局 四半期終了55日前後 A

カナダの主要経済指標

指標名 発表機関 発表時期 評価
消費者物価指数(CPI) 統計局 毎月20日前後 A
コア小売売上高 統計局 毎月20日前後 A
国内総生産(GDP) 統計局 毎月最終日前後 A

以上、主な経済指標をみてきましたが、トレードをするうえでは経済指標の数字だけに頼るのではなく、テクニカル分析指標と併用して、確かなトレードを実行するように心がけてください。

辻秀雄氏のプロフィール

辻秀雄氏
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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