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【株高でクロス円に買い妙味あり】 2020年12月9日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(12月2日~8日)

コロナ感染拡大に対する懸念とワクチン期待がぶつかり合う中、ドル円は方向感がつかみづらく、104.00円をはさんで売買交錯となりました。

先週金曜日に発表された米国11月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が+24.5万人と予想の+46万人を大きく下回り、雇用改善ペースの鈍化が鮮明となりましたが、ドル円の反応は限定的でした。

一方米国株式市場は上値を追う展開となり、NYダウは30200ドル台へ大幅上昇。

S&P500、ナスダックも史上最高値を更新しました。

米国株式市場の上昇は続きそう

米国株式市場は絶好調を維持。

株式市場の参加者は、コロナ感染拡大が続くなかでも、「ワクチンがまもなく投入されるから買い」、あるいは景気の先行きに再び懸念が広がる中でも、「追加経済対策が出てくるから買い」と、都合の良い解釈をしながら株を買っています。

米国雇用統計も予想を大きく下回りましたが、それもFRBの追加緩和につながるとの見方で逆に株買いにつながりました。

まったく「いいとこ取り」もいいところですね。

では株式市場はバブルかと問われれば、そうでもないと思います。

カネ余りというバブル的な要素は確かにあるものの、株式市場は半年から1年先を見据えて動くもの。

来年は「ポストコロナ」という立派なテーマがあります。

また、いいとこ取りをしているということは、それだけセンチメントがいい=今は厳しいがこれからよくなる、という確たる希望があるということであり、「上がるから買う・買うから上がる」というバブルとは様相が異なります。

バブルを何度か経験した者の実感からすると、市場はまだ冷静であり過熱からは程遠いと思います。

リスクオンのドル売り

現在の「ゲームのルール」では、株高はまずリスクオンを通じて安全通貨売り=ドル売りにつながります。

ドルの総合的な価値を示すドルインデックスは先週90.50ポイント付近まで下落し、2018年4月以来の安値を示現しました。

チャートで見ると10年ぶりに上昇トレンドラインを割り込んできており、長期的なドル安トレンドに入った可能性も小さくありません。

次の重要サポートは2018年2月ごろの安値88.30ポイント近辺となります。

ドルインデックスは超長期のトレンドラインを割り込む 出所:NetDania

ドルインデックスで88.30ポイントと言われてもピンと来ないかもしれませんが、ユーロドルでいえば2018年2月の水準である1.25ドル近辺、豪ドルなら0.81ドル近辺に相当します。

このまま株高・ドル安という流れが続くとすれば、ユーロドル(現在1.21ドル台)は300-400ポイント、豪ドル(同0.74ドル台)なら600-700ポイント上昇があってもおかしくないことになります(ちょっと強引なロジックかもしれませんが)。

ドル円の下落余地は小さい?

ではドル円の下落余地はいかほどでしょうか。

同じく2018年2月のドル円の水準は105円程度で、実は現状とあまり変わりません。

つまりドル全体との対比でいえば、ドル円は現状で割高ではなく、下落余地は限られるという予想が成り立ちます。

株高・リスクオンという局面では、ドルと同じ安全通貨に分類される円も並行して売られるため、ドル円は綱引きとなって動きづらいという事情もあります。

ドル安にベットする(賭ける)なら、ドル円を売るよりユーロドルや豪ドルを買った方が理にかなっていると言えます。

また株高でドル安・円安となった場合はクロス円が上昇することになりますので、ユーロ円や豪ドル円の買いも有望ということになります。

来週はFOMC

来週火・水曜日には今年最後のFOMCが開催されます。

米国ではコロナ第三波による景気失速を回避するため、民主・共和両党が追加経済対策に関して激しい議論を交わしていますが、今週末までに合意が得られなければ、代わりにFRBによる追加緩和への期待が否応なく高まるでしょう。

当然これも株高・ドル安要因となります。

明日はECB理事会

追加緩和ならECBも考えられるではないか、と思われるかもしれません。

ECBは明日10日に定例理事会を開催しますが、ここで当然追加緩和が議題となります。

しかし今回はパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の期間延長と規模拡大、TLTRO(長期リファイナンスオペ)の導入といった緩和拡大がすでに確実視されている一方、マイナス金利の深掘りは見送られる見通しとなっています。

追加策が市場の予想を下回る場合はむしろユーロ買い・ドル売りに拍車をかける可能性があり、内容をよく見極める必要があります。

またユーロ高(一応2年半ぶりの高値)に対して懸念が示されるのではないかとの予想がありますが、今時口先で牽制球を投げたとしても効果はあまりありませんし、逆に口先介入すらなければユーロ高容認と受け止められ、一段のユーロ高を招くことになるでしょう。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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