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【ドル円がついにレンジを下抜け!今後の展開は?】2020年7月29日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(7月22日~28日)

米中対立の深刻化をきっかけにドル売りとリスク回避の円買いが強まり、ドル円は6月中旬以来続いていた106-108円レンジをついに下抜け。

28日には105円台も割り込み、本稿執筆時点(29日19時)で104.80円まで下落し、3月以来の安値圏で推移しています。

過去2週間のドル円 出所:NetDania

米中対立は新たな段階に

米国政府は先週、ヒューストンにある中国総領事館について、「知的財産と個人情報を保護するため」として閉鎖を命じました。

領事館が中国のスパイ活動の拠点であり、知的財産の搾取活動をしていたというのです。これに対抗して中国政府も成都にある米領事館を閉鎖。

米国の外交官とその家族はすでに中国を離れた模様です。二大国がお互いの領事館を閉鎖するというのは、まるで開戦前夜であり、控えめに言っても異常事態です。

ポンペオ国務長官は23日のスピーチで、「習氏は破綻した全体主義のイデオロギーの信奉者で共産主義に基づく覇権への野望を持っている」と発言。

歴代政権の中国関与政策(つまり経済的発展を支援すれば中国の民主化を促せるとするもの)は失敗したと断定しました。

そして「自由社会が共産主義の中国を変えなければ、中国がわれわれを変えるだろう。民主主義諸国の新たな同盟を構築する時だ」と述べています。

米国はついに中国共産党に対して強権路線の修正を迫る方針を公に打ち出したと受け取れます。中国共産党そのものの打倒を狙っていると言ってもよいかもしれません。

かくして米中の対立は貿易摩擦という経済的問題にとどまらず、イデオロギーや覇権を賭けた新たな段階に突入したのです。

場合によっては、南シナ海や南沙諸島で限定的な軍事衝突もありうる、そのくらい深刻な事態です。

米中対立の深刻化が市場に及ぼす影響は微妙で読みづらいですが、少なくともテールリスクが意識される今の状態は株式市場にとってマイナスでしょう。

米国株式市場は今後不安定化し、リスク回避ムードが強まると予想できます。リスク回避は時に基軸通貨であるドル高に作用することもありますが、今回に関してはその可能性はないでしょう。

米国は新たな冷戦の当事者国であり、ドルはもはや安全通貨とは言えないからです。先々週までは株高を背景としたマイルドなリスクオンの中、ドル安と円安が同時進行し、結果的にドル円は107円前後で安定していましたが、先週からは状況ががらりと変わりました。

市場のセンチメントはリスクオンからリスクオフへ、そして相場付きは「ドル安・円安」から「ドル独歩安」に遷移しつつあります。

金とビットコインの上昇が示唆すること

ドルの総合的な強さを表す「ドルインデックス」は今月に入って軟調な動きとなっていましたが、今週は93ポイント台まで下落し、約2年ぶりの安値を更新しています。

ドルインデックス 出所:NetDania

対照的に急上昇しているのが(ゴールド)です。金相場は今週一時2000ドル台に乗せ、史上最高値を一気に更新しました。

金相場(ドル建て) 出所:NetDania

金相場上昇の要因は何か。地政学リスクが高まる中で、有事に強い金が買われているのは言うまでもありませんが、今回の金相場の上昇は、ドルの価値希薄化懸念を反映したものでもあります。

コロナ対策で莫大な財政支出が行われ、それを事実上中央銀行がマネタイズ(借金の貨幣化。簡単に言えば紙幣の大増刷)することで、通貨の価値が薄まってしまうという懸念です。

ここにきてビットコインなど暗号資産が急騰しているのも同じ理屈です。

ドルの信認、ひいては法定通貨(政府が発行する通貨)に対する信認が低下し、無政府通貨であり、ドルの代替資産である金や暗号通貨が暴騰している現在、少なくともドルを積極的に買う戦略は取れません。

ビットコイン(ドル建て) 出所:NetDania

8月のアノマリー

最後にもう一つ。8月はドル安・円高になりやすいという有名なアノマリーがあります。アノマリーというのは、理論的に説明できないが、経験的に観測できる市場の規則性のことです。

要因は諸説ありますが、「例年8月は米国債の償還・利払いにからむドル売り・円買いが膨らむ」、「日本の輸出企業がお盆休み前にドル売りを増やす」といったものが定説です。

実際、昨年までの過去20年間で見ると、8月ドル安・円高になったのは14回で、乱暴に言えば「8月にドル円を売ると勝率は7割」ということになります。

8月にドル円を売るのは優位性があるかといわれると微妙ですが、このアノマリーを意識してドルを売る参加者が増えれば本当にドル円は下落してしまいます。

8月は夏休みで市場も薄くなりますので、一方向に動きやすくなるということもあります。

結論:ドル売り

  • ① コロナ感染第二波による米景気懸念
  • ② 新たな段階に入った米中冷戦
  • ③ 財政ファイナンスによるドルの価値希薄化懸念
  • ④ 8月のドル安円高アノマリー

以上を踏まえると、少なくとも「ドル高・円安」の展開は考えにくく、ドル円は売り場探しのスタンスが適切となるでしょう。

またドル全面安の中で、消去法的なユーロ高、ドルの代替としての金相場上昇、産金国通貨である豪ドル高も続く見通しです。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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