デモトレードのススメ
FXトレードをまったくやっていなかった初心者がいきなり実弾、つまり、実際の資金をつぎ込んでトレードを始めるのは無謀以外の何者でもありません。
大げさに言えば、命知らず、ということになります。
FXは簡単に儲かるからといった口車に乗せられてトレードを始める人が少なくありませんが、FXは何も知らないで、知識も経験もない人が簡単に勝てたり、儲かったりするほど、安易な世界ではありません。
この為替取引の世界にはいろいろな人が参戦しています。
金融関係の元ディーラーをはじめ、機関投資家やヘッジファンドなど、いろいろな職業の個人や法人が参加しています。
何しろ、この世界は学歴や職歴、性別はいっさい関係のない世界です。
そういう意味では、誰にも平等にチャンスが与えられる世界だといっていいでしょう。
でもそうかといって、何も知らない素人がいきなり、FXの世界に飛び込んでトレードをしても、最初はビギナーズラックでうまく勝つこともあるでしょうが、大事なことは、長く市場に参加していることです。
そういう意味では、FXはギャンブルではありません。
ギャンブルですと一回ぽっきりで大儲けをたくらんで、勝ち逃げすることもあるでしょうが、FXの世界は一回ぽっきりの勝負の世界とは異なります。
常に相場は目の前にあり、いつでもどこでもトレードに参加することができます。
それだけに、いきなり最初から実弾をつぎこむのではなく、トレードの練習を行ってから、十分に準備が整ってから実際の取引に参加することが、望ましいかたちといえます。
そこで、勧めたいのが「デモトレード」です。
勝てる人ほどデモトレードを利用する
デモトレードというと、頭からバカにする人がいます。
「リアルトレードでないからつまらない」「勝っても実際にお金が儲かるわけではないからやっても無駄である」「損失をださないという安心感から本気になれない」などなど、いろいろなことをあげつらう人が少なくありません。
そういう人たちは、一刻も早く実弾を使ったトレードを行って、大きく儲けたいと考えているのでしょう。
しかし、デモトレードをバカにする人は、実弾トレードで成功するわけがありません。
FXはよほどの事情がないかぎり、誰でも手軽に口座を開設できて、入金をすませたらいつでもトレードをすることができます。
市場に参戦するのに理由はいりませんし、資格もいりません。それだけに簡単にFXトレードを行うことができます。
しかし、インターネットか、FXの教科書めいたものを読んで、トレードを始めても、最初は確かにビギナーズラックで勝てることもあります。
しかし、そのうち負けが込んでくると、自分のトレードのやり方を疑うようになってきます。
そして、また、書籍を読んだり、インターネットのブログからトレーダーの手法を学んで試して見たくなります。しかし、それでもうまくいきません。
そうこうするうちに、証拠金が底をついてしまい、市場に留まっていることができなくなります。
そんなとき、新たに証拠金をつぎ込むか、あるいは余剰資金ではなく、生活必需品として貯めておいたお金をつぎ込んでしまうか、どちらかのケースが考えられるのですが、生活資金をつぎ込むのは御法度です。
証拠金がなくなってしまうと、これ以上、傷口を広げないで、潔く退場したほうが身のためです。
そうならないために、デモトレードで、トレードの勉強を行ってから、準備が整った段階で、市場に参入すべきなのです。
たとえば、いきなり何の訓練もせずに、実弾をつぎ込んでFXをやりながら、技術が身に付くと考えている人がいます。
しかし、それはあまりにもFXの世界のことを知らなさすぎます。
なぜなら、勝っている、儲かっているということはトレードが成功していることですから、自分は実力がすでについてきたのだと勘違いしてしまうからです。
一方、負けが込んでしまったら、勉強どころではありません。
損失をどう取り戻せばいいのか、手法が間違っていたのではないか、何か違った方法があるのではないかと、気ばかり焦って、技術を修得するどころではありません。
「どうしたら損失を取り戻せるか」とそれだけで、頭がいっぱいになってしまい、他のことが考えられなくなります。下手をしたら仕事にも影響がでます。
負けが込んでしまうとよくありがちなのが、いろいろな手法に手を出してしまうことです。
いろいろな手法を知っていることが技術が身に付いたことにはならないのですが、いろいろな手法を知っているから自分には技術が備わってきた勘違いしている人がいます。
問題はその技術を生かして、トレードで勝ち残り、資産を増やしていくことです。
ですが、いろいろな手法を試している人は、何一つその技術が身に付くはずがなく、すべてが中途半端で終わってしまうケースが多くみられます。
ですから、デモトレードが大事なのです。
なぜなら、デモトレードを行っているうちは、証拠金を使うことがありませんから、資産が減ることはありません。
むしろ、月々の収入から何割でも証拠金のために貯金ができます。
ボーナスなどの臨時収入も貯めておいて証拠金の資金とできます。
しかも、デモトレードでは、負けても損失をこうむるわけではありません。
ですから、損失を取り戻す必要はなく、安心して、トレードの勉強ができます。
さらに、いろいろなことを試すことができます。
たとえば、ローソク足のパターンの勉強をするとします。
一般的にいわれているローソク足のパターン通りに相場が動いていくかをいろいろ検証できます。
どのぐらいの確率でローソク足のパターンのいっていることが当たっているかも調べることができます。
さらに、チャートから値動きの分析方法を学びます。
価格がどのように動いていくのか、チャートと経済指標の発表内容などを照らし合わせて、こんなイベントが起きたときは、「米ドル/円」は動くとか、ユーロやポンドだと、イギリスのBrexitのときはこんな動きをするのだとか、アメリカの雇用統計でもレートが動かないときと、動くときがあるのはどうしてか、などいろいろ調べることができます。
ふつう、FXのデモトレードに最低でも1年はかけたほうがいいと、勝っているトレーダーは口をそろえます。
しかも、勝っているトレーダーでも、何が気になることがあったら、デモトレードで調べてから確認し、納得してまた、実弾のトレードにカムバックする人が少なくありません。
デモトレードは、ほとんどのFX会社でデモトレードを提供していますから、こちらも手軽に口座を開設できます。
そうやって1年ぐらいの期間をデモトレードについやして、十分にチャートにもなれて、これなら勝てると思った時点から、実弾をつぎ込んだリアルトレードに移行しましょう。
そのときには、証拠金も余裕をもてるぐらいに貯まっていることでしょう。
リアルトレードで勝ち残っていくためには、デモトレードで十分、修行を行い、一つの手法を見極めて、技術を習得してから、リアルトレードに参入しても遅いということはありません。
相場はどこへも逃げません。
いつでも、優秀なトレーダーの参戦を待っています。
FXは、初心者が簡単に利益を出せるほど甘くないのですね!
まずは、しっかりとデモトレードで自分の手法を構築させるところから始めてみようね!
辻秀雄氏プロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから