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株式市場・債券市場が為替相場に与える影響とは?

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株式市場・債券市場が為替相場に与える影響とは?

為替相場と株式相場は投資という同じ土俵で取引をされる関係から、かなり密接な間柄となっています。

一般的に、株は企業業績の如何によって売られたり、買われたりすることで、株価が上昇、下落をします。

しかし、株価の上昇・下落には、為替相場の円高・円安も密接に関係していることがわかっています。

その為替相場は各国の金融政策によって大きな影響を受けます。

ということは、株価と為替の関係からいって、株価も間接的には金融政策の影響を受けるということになります。

しかも、各国の金融政策の中心となるのが、その国の政策金利を決定することですから、債券市場も金利の影響を密接に受けることになります。

つまり、為替市場と株式市場、債券市場の3者は密接な関係にあるということです。

FRBの金融政策が投資市場に与える影響とは?

この関係をアメリカの金融政策を例にとって説明をしましょう。

ご存じのように、2008年9月に世界の金融市場は激震しました。

リーマンブラザーズ証券が倒産したからです。

いわゆるリーマンショックといまでも語り継がれている金融史に残るできごとです。

このできごとによって、アメリカ経済は深刻なデフレ寸前の状態に陥りました。

そこでアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は、緊急に量的金融緩和政策(Quantitative easing=QE)を実施しました。

それも、第一弾だけではなく、第二弾、第三弾と矢継ぎ早に大規模な金融緩和政策を実施したのです。

2008年11月から2010年6月にかけて実施したQE1では、1兆7250億ドル、2010年11月から2011年6月まで実施したQE2では6000億ドル、2012年9月から実施したQE3では月額400億ドルの資金を市場に投入したのです。

大規模な量的金融緩和政策によってどんな影響がでたのかといえば、市中に出回った余剰マネーは株式市場に流れ込み、株価を支え上昇させました。

債券市場では10年債などの長期債が買われため長期金利が低下しました。

長期金利が低下するということは、金利収入、この場合米ドルからの金利収入が低下することになるので、金利の高い他の通貨を買って米ドルを売ることで、金利収入を殖やそうとします。

つまり、景気が低迷している状態で低金利になると、株価は上昇しますが、米ドルは売られて下落します。

株価は上昇するが、米ドルは下落するという逆相関関係が成立することになります。

しかし、このパターンがいつも同じように起きるとはいえません。

それが投資の世界のおもしろさでもあるのですが、たとえば、2012年末に起きたアメリカの「財政の崖問題」のときには、長期金利が低下しているにもかかわらず、株価は下落しました。

アメリカ自体のリスクが高まってくると、リスクの高い株式から、株式よりも安全資産とされる債券市場に資金が流れ込みやすくなります。

その結果、株価は下落し、低金利の米ドルも売られるという結果が生じたのです。

また、グローバルネットワークの時代には世界的な規模でリスクが高まってくると、自国経済にもマイナス要因となって影響が及んできます。

さくら
さくら

記憶にあるところでは、欧州の債務危機問題があります。

欧州の債務危機問題が注目されたのはまずギリシャからでした。

2009年10月のギリシャの政権交代による国家財政の粉飾決算の暴露から始まる、経済危機の連鎖です。

スペイン、ポルトガルなどユーロ加盟諸国(PIIGS)、あるいはハンガリーやラトビアなど中東欧諸国へ波及した場合、世界的な金融危機に発展するかもしれないと懸念されていました。

2011年以降にもユーロ圏第三位のイタリア経済が深刻化するなど、欧州不安は広範囲に拡大したのは、まだ記憶に新しいところです。

これらの状況はアメリカ経済にとってマイナス要因となりました。

そのため株価は下落しました。

では、為替市場はどうだったかというと、安全通貨として米ドルや円は認識されていますので、一時的に米ドルや円に資金が流れ込みました。

そのため、株価は下落しましたが、米ドルは上昇しました。

投資家がリスクを回避するようになり、より安全な資産に資金が向かいやすい相場状況をリスクオフといいます。

つまり、リスクが高まっている状態のことです。

そうなると、前述したように、株価は下がりますが、米ドルは上昇するという事態を招くこともあります。

ところで、FRBは2008年に量的金融緩和政策を実施するにあたって、ゼロ金利政策も導入しました。

2008年12月16日に開かれたFOMC(連邦公開市場委員会)で、全会一致で1%であった政策金利を0%~0.25%に、いわゆるゼロ金利にすることを採択しました。

しかし、経済が堅調に回復し、雇用環境も改善しつつあることから、FRBが量的金融緩和政策の終了を宣言したのは、2014年10月28日、29日の両日にわたって開かれたFOMCの場でした。

しかし、ゼロ金利政策は引き続き継続しました。

FOMCがゼロ金利政策に終止符をうったのは、20015年12月15日、16日に開かれたFOMCの会合でした。

0.00%から0.25%の政策金利を0.25%~0.50%に利上げすることを決めたのです。

この時点でFRBは2016年中には少なくとも2回から4回の利上げを考えていました。

しかし、その方針も海外市場の危機によってとん挫することになりました。

そのきっかけをつくったのは、2016年1月4日と7日に起きた中国の株式市場の急落です。

中国政府はこの株価急落を受けて、株価急落時に取引を強制停止する「サーキット・ブレーカー」を発動しました。

さらに、イギリスがEUから離脱するかどうかのBrexit問題も浮上しました。

大きくはこれら二つがFRBの利上げ方針に大きく影響を及ぼすことになりました。

FRBが年内の利上げを躊躇したかたちになったのです。

利上げが見送られたことで長期金利は低下しました。

逆に、アメリカの株式市場は、3大指数といわれるダウ工業株30種平均やナスダック総合指数、S&P 500は大幅な伸びを記録しました。

ニューヨーク株式市場が「米ドル/円」に与える影響とは?

ニューヨーク株式と日経平均株価は密接な関係にあります。

たとえば、前日のニューヨーク株式が上昇して引ければ、翌日の日経平均株価も上昇します。

その逆もしかりです。

たとえば、景気指標が悪化すると、金融政策の緩和に対する期待が高まります。

金融緩和は長期金利の低下を招くことから、長期金利は低下し、米ドルも売られます。

しかし、株価は上昇します。

次の日の日経平均株価は前日のニューヨーク株式の上昇の影響をうけて上昇から始まります。

しかし、為替市場では、米ドルが売られたことによって、「米ドル/円」は下落(円高)してしまいます。

そして、上昇で始まった日経平均株価も円高の影響を受けて、下落する可能性が高まります。

株式市場と円高・円安の関係とは?

為替市場、とくに「米ドル/円」と日経平均株価は密接な関係にあります。

よく、テレビなどの報道で、「円高だから株価が低下した」とか「円安だから株価が上昇した」あるいは「『米ドル/円』が円高傾向にあるから、日経平均株価は下がる」などというコメントを耳にすることがあります。

なぜ円高になると株価が下がるのでしょうか。

一般的に通貨と株価は連動しています。

通貨の価値が上がれば企業業績を反映している株価も上昇するのがふつうです。

さらに、円高とは円の価値が上がっているわけですから、少ない円で海外から多くのものを購入できるのですから、消費者にとってありがたいことはないはずです。

しかし、円高になると株価が下がるのはこれまでの株価の歴史が証明しています。

これは日本だけの現象なのでしょうか。

さくら
さくら

まさに、為替と日本株の不思議な関係といっていいかもしれません。

ところで、日経平均株価とはどういうものでしょうか。

2020年3月2日現在、東京証券取引所第一部に上場している株式の銘柄数は2162あります。

そのなかで「流動性の高い株」を中心に225銘柄を選び、それをもとに日経平均株価を算出しています。

日経225とも称されます。

一部上場の大企業あるいは有名企業ばかりで、日本を代表する企業の集まりともいえます。

225銘柄のうち、多い業種をあげていくと、電気機器27社、化学工業18社、機械15社、食品11社、非鉄金属・金属11社、銀行11社、自動車・自動車部品10社となっています。

いずれも日本を代表する基幹産業ばかりですが、製造業が中心であることは否めません。

製造業が多いということは輸出産業が多いということを意味しています。

そうなると、企業の業績は為替との関係が非常に深いということがいえます。

実は、それが、円高=株安、円安=株高の要因となっているのです。

輸出企業は海外へ製品を売ることで業績を伸ばし、利益を上げ、社員に給料を支払い、会社を維持しています。

では、「米ドル/円」で考えてみましょう。

ある家電メーカーがアメリカに製品を輸出していたとします。

某月某日、小売店にお客がやってきました。

そのお客は家電商品を探していました。

そして、その小売店で日本製の電化製品をみて、購入したいと思ったのですが、手持ちのお金が足りません。

カードで支払うことができたのですが、そのお客は翌日にお金を持って出直すことにしました。

求めていた電化製品はその日に買っておけば、200米ドルでした。

そのお客が翌日、200米ドルをもって小売り店に出向いて目当ての電化製品を買おうと思ったら、価格が250米ドルに値上がっていました。

驚いたそのお客は「昨日は200米ドルだったのに今日は250米ドルになっているのはどうしてだ!」と半ば怒り声で店員にたずねました。

すると店員は、「為替が米ドル安円高になったので、価格を上げざるを得ません」と答えました。

それを聞いたそのお客は、「じゃあ、日本製の電化製品を買うのはやめて、200米ドルのアメリカ製品を買うよ」といって、日本製と別の自国の製品を購入してかえりました。

前日の1米ドルが100円だったとします。

日本製の電化製品は日本円にすると2万円の価格が設定してありましたので、アメリカの小売店では2万円÷100円=200米ドルの値札をつけていたわけです。

ところが翌日、「米ドル/円」が極端な円高で80円となっていました(現実にはこんなことはリーマンショックのような金融危機のときぐらいにしか発生しませんが)。

2万円相当の日本製品を購入するには、250米ドルが必要だったということになったのです。

ということは、米ドル安円高になったせいで、日本製はお客を逃したことになります。

このことを大きくみれば、シェア拡大のチャンスを逸したことになります。

つまり、円高のおかげで海外市場でのシェアが低下をするという事実がいえるわけです。

学長
学長

これが輸出企業が円高を嫌う理由の一つだ!

もう一つは、円高になると輸出企業の売り上げを悪化させることになります。

輸出企業の貿易代金の決済は基軸通貨である米ドル決済が一般的です。

このころはユーロ決済も増えてはいますが、国際貿易の決済は米ドルの独壇場といってもいいでしょう。

ある輸出企業が、〇月に海外での売り上げを一億米ドル計上しました。

その売り上げ一億円を社員の給料や材料費の支払いをするために、米ドルから円に両替をしなければなりません。

ふつう、米ドルから円に両替をするのは、月のうち5で割り切れる五十日が多いので、その企業も20日に両替をすることにしました。

米ドル円をみると、15日頃には1米ドル=120円をつけていました。

このぶんでは、1億ドルを両替すると120億円が収入となります。

ところが、両替日の20日になってみると、1米ドル=100円になっていました。

その月の20日に両替をしないといろいろな支払いに必要な資金が足りなくなります。

その企業は泣くなく1米ドル=100円で1億ドルの両替をしました。

100億円の収入です。

もし15日に両替をしていたら120億円の収入を得ていたはずなのに、円高が進んだせいで、20億円の収入の欠損を招いてしまったわけです。

つまり、輸出企業にとって「米ドル/円」が円高になると売り上げが減るため、円高を嫌うわけです。

輸出企業の業績が悪くなると株価に即座に反映し、輸出企業の株が売られやすくなり、株価、日経平均株価が下がるというわけです。

ここに円高=株安という関係が成り立つのです。

一方、輸入が主体の企業にとって円高は歓迎するところです。

なぜなら、輸入コストが削減できるからです。

たとえば、1米ドル=100円のときに、100米ドルの製品の輸入にかかるコストは、1万円です。

しかし、1米ドルが80円になったら、100米ドルの製品の買い付けにかかる費用は8000円と、2000円も安くなります。

輸入企業にとっては円高になったほうがコストを抑えることができますから、円高を歓迎するわけです。

しかも、コストが下がるわけですから、そのぶん利益を積み増しできることになり、企業の業績があがる結果となります。

業績の向上は株価に即座に反映しますから、株価も上昇するというわけです。

このように「米ドル/円」が円高に触れるか、円安に触れるかで輸出企業と輸入企業の業績に大きく影響します。

それはすなわち株価に反映をします。

日経平均を構成している企業は輸出を主体とする製造業が多いため、円高になると日経平均株価が下がるというわけです。

円安の場合はその逆で、輸出企業の業績が向上するため、株価が上昇しやすくなります。

これが、円高だと株価が下がる、円安だと株価が上がるという、からくりです。

ただ、日経平均を構成する株価の銘柄が、製造業が減り、観光やサービス業などが増えて構成比が違ってくると、「円高だから株価が安くなる」という説は変わる可能性があります。

さらに、外国人投資家も日本の株価に影響を与えることがあります。

「米ドル/円」が円高に振れると、外国人投資家は所有している日本株を売る傾向が強いといわれているのです。

外国人投資家は基軸通貨の米ドルに対して絶対的な信認を与えていることもあって、多くの外国人投資家は米ドルを自分の口座に入れて取引をしています。

ですから、為替が円高・米ドル安に動くと、株価はドル建てから見ると上がります。

為替差益が発生するというわけです。

そこで、円高になると日本株を売って利益確定に走る外国人投資家が少なくないのです。

株式を売ってしまうので、株価は下がります。

ですから、円高時には、外国人投資家の売りが入るので、株価は下がるといわれているのです。

為替と株価の関係はとっても深い関係にあるといても過言ではありません。

為替変動を招く株式市場

以上、説明したように株式相場と為替相場は密接な関係にあり、株式市場は為替変動の大きな要因となっています。

ですから、株価の動向に注意をする必要があります。

それは、日本の株式市場だけではなく、海外の株式市場にも目を配る必要があります。

ご存じのように日本の株式市場は月曜日から金曜日、毎日午前9時にオープンします。

そして、午前10時30分には中国の上海市場が開きます。

11時には香港市場が開きます。

為替市場のテーマが中国になっているときは、とくに上海市場や香港市場の株価は注視しなければなりません。

上海市場の株価が下落したりするとリスクオフになりますので、「米ドル/円」は下落しやすくなります(円高)。

15時になると日本の株式市場(東京市場)は閉鎖をします。

しかし、時差の関係で、欧州市場とニューヨーク市場がオープンします。

夏時間の場合、ロンドンやフランクフルト、ユーロネクストの証券取引所が開くのは16時30分です。

欧州やロンドンの為替市場が開くのも、株式市場が開く時間帯とほぼ同じです。

そして、ニューヨークの株式市場が開くのが22時30分ですが、為替市場も株式市場と前後してオープンします。

為替の東京市場で取引されるのは圧倒的に「米ドル/円」や「クロス円(ユーロ/円、ポンド/円など、米ドル以外で円と絡む通貨ペアのこと)が多いですが、ロンドン市場や欧州市場ではユーロやポンド、スイスフランの取引が活発となります。

為替のニューヨーク市場で活発に取引をされるのは、「ドルストレート」です。

つまり、「米ドル/円」や「ユー/米ドル」「ポンド/米ドル」など、米ドルがらみの通貨ペアのことです。

為替のニューヨーク市場の時間と同じような時間に、ニューヨーク証券取引所でも取引が始まりますが、米ドルに影響を与えるのは、ニューヨークダウ指数以外に、米国債の動きにも注意を払う必要があります。

なぜなら、10年物米国債の金利(利回り)がよく動くからです。

この長期金利が上がると「米ドル/円」は上がりやすくなります。

円安です。逆に、長期金利が下がると「米ドル/円」も下がります。

いわゆる円高になります。

10年物国債の利回りは、どれだけ債券が買われたか、売れたかによって決まります。

というのは、多くの人が債券を買うと債券価格は上昇します。

しかし、もらえる金利は変わらないので、利回りは低下します。

債券の価格が上昇すれば長期金利は低下し、債券価格が下落すると長期金利は上昇するという公式が成立するのです。

そうすると「米ドル/円」はどうなるかといえば、前述したとおりに動く可能性が高くなります。

米国債は株式よりも安全な資産と見なされていることから、危機感が高まったリスクオフのときには買われやすくなります。

FXトレードの参考にしてください。

ニューヨーク証券取引所 

アメリカ10年物国債の利回り 

ロンドン証券取引所 

辻秀雄氏のプロフィール

辻秀雄氏
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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