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【現金需要でドル独歩高 ただし長続きはしないかも】2020年3月25日

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(3月18日~3月25日)

新型コロナウイルスの感染拡大が特に欧米で加速する中、NYダウは1万9千ドル台を割り込み、一時は1万8千ドル台前半まで急落。

トランプ大統領誕生以来の上げ幅をすべて吹き飛ばす展開となりました。

しかし為替市場では、流動性危機に備えて基軸通貨であるドルを確保する動きが強まり、110円台を一気に通過して111円台半ばまで上昇しました。

週が明けると、FRBは量的緩和の規模を「必要とされる量」に変更し、事実上無制限に。

また米国議会が2兆ドルを超える景気対策を協議しており、近く成立の見込みと伝わると、NYダウは2000ドルを超える史上最大の上げ幅を記録。

これに乗じてドル円も111.71円とコロナショック発生前の高値(112.23円)を試す展開となっています。

なお24日には、東京オリンピックの1年程度の延期が決まりましたが、予想通りとの見方が多く、大きな反応はありませんでした。

非常事態

新型コロナウイルスの感染者数はこれまでに175の国・地域で計40万人を超え、1万8千人以上が死亡しました。

米国でもついにカリフォルニア州やニューヨーク州などで不要不急の外出が禁止される非常事態となっています。

ウイルスの早期封じ込めが失敗したのは明白で、大げさに言えば人類はこのウイルスとしばらく共存していかざるを得なくなったのかもしれません。

今後は世界的規模で人の移動が制限され、経済活動が著しく落ち込み、投資縮小とリストラが空前の速度で進行します。

米国でも第2四半期は瞬間風速で二けたのマイナス成長に陥ることがほぼ確実で、通年でもマイナスとの見方も出ています。

企業倒産やレイオフが激増し、失業率も大幅に上昇するでしょう。

株式市場は一旦コツンと跳ね返ったところではありますが、これで底打ちと見るのは尚早。

良くて長期低迷、悪ければ二番底をつけに行く動きと見ておかなければなりません。

現金需要=キャッシュ・イズ・キング

この非常時にドルが買われている理由はたった一つしかありません。

それは「現金需要」です。

ヒト・モノ・カネの動きが長期的に制限されるとなると、支払いに必要なキャッシュ(現金)を確保しておかなくてはなりません。

株や商品などリスク資産はもちろんのこと、平時には安全資産とされる国債や金までもが売られ、キャッシュ、それも国際基軸通貨であり決済手段であるドルのキャッシュに需要が集中するのです。

市場関係者はこういう状態を、「キャッシュ・イズ・キング」(現金は王様)と表現します。

FRBが各国中銀とのスワップ協定を通じてドルの供給を行っていますが、市場ではドルのひっ迫感が強く、調達コストは高騰する一方。

ドルを調達するのにべらぼうなプレミアムを払うくらいなら、一時的に為替リスクを取ってドルを買うという動きも出てくるでしょう。

実際、ドル円だけでなく、欧州通貨や資源国通貨・新興国通貨に対してもドルは大幅高になっています。

四半期末である3月末にかけて、現金化・ドル一極集中の動きは一段と強まる可能性が高いと思います。

ドル全面高の中で、ドル円は年初来高値の112.23円、そして昨年高値の112.40円を突破しても不思議はありません。

ドルの上昇余地少なく中期的には再び下落へ

ただし、現在のドルの現金需要は増え続ける性質のものではなく、一定の規模を満たせば、あるいは一定の期間経過すれば、下火になっていくはずです。

一方米国金利は相当期間ゼロに据え置かれる見通しで、日米金利差がほとんどない中で、ドルを新規で買っていくメリットは乏しくなります。

投資意欲が後退し、市場全体のボリュームが減少すれば、最後は需給がものを言う、つまり経常黒字国であり世界最大の対外純資産を持つ日本が有利となります。

また日本の不況が続き、本邦投資家や企業が海外資産を売却して国内へリパトリすれば、これも円高要因となります。

ソフトバンクの4.5兆円の資産売却のニュースが出ていますが、4~6月はこうした動きがテーマになるかもしれません。

結論:短期的にはドル買いも可。ただし半身の体勢で

今、あえて何かするとすればドル買いだと思いますが、市場のセンチメントは短期間でがらりと変わりうるもの。

ドルキャッシュの需要が一巡したら、本格的不況に向けたリパトリ相場(=円高)となるシナリオも十分あり得ます。

リスクの総量を十分コントロールしたうえで、いつでも逃げられるよう半身の体勢で臨むのが賢明でしょう。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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