一週間のハイライト(4月12日~16日)
米国債利回りが低下する中、ドル円も手仕舞い売りが優勢となり、下値を探る展開となりました。
109円を割り込んだ後は戻りも鈍く、一時108.61円まで下落しています。
先週発表された主な米国経済指標は以下の通り。
- 3月消費者物価指数(コア・前年比) 予想+1.5% 結果+1.6%
- 失業保険申請件数 予想70万人 結果57.6万件
- 4月フィラデルフィア連銀製造業景気指数 予想42.0 結果50.2
- 4月ニューヨーク連銀製造業景気指数 予想19.5 結果26.3
- 3月小売売上高(前月比) 予想+5.9% 結果+9.8%
- 3月住宅着工件数(年率換算) 予想161.1万件 結果173.9万件
- 4月ミシガン大学消費者態度指数・速報値 予想89.6 結果86.5
最後のミシガン大学指数のみ予想を下回りましたが、他は軒並み予想を上回り、米国の経済再開を強く印象付ける結果となりました。
それにもかかわらず米国10年債利回りは逆に1.53%まで低下し、ピーク(3月30日1.76%)から20bpあまりの低下となりました。
米国債利回りの上昇を追い風に上昇していたドル円も、つれ安となった感じです。
米国10年債利回りは低下
ドル円もつれ安に
一方米国株式市場は好決算を背景に上値を拡大する展開となり、NYダウやS&P500が最高値更新となりましたが、ドル円を支えることができませんでした。
相場の息吹
空前のヒットとなったアニメ「鬼滅の刃」の影響で、「水の呼吸」「炎の呼吸」など「呼吸」という言葉が流行りましたが、相場にも「呼吸」のようなものが存在します。
- 好材料が出たにもかかわらず想定ほど上昇しない。
- 買われるべき材料が出ているにもかかわらず逆に売られている。
これは潜在的な売り手の存在を示唆しており、弱気のサインです。
- 反対に、悪材料が出たにもかかわらず想定ほど下落しない。
- 売られるべき材料が出ているにもかかわらず逆に買われている。
これは潜在的な改定の存在を示唆しており、強気のサインです。
これらは「相場の息吹」と呼ばれており、トレードをするうえで非常に重要な考え方です。
相場の呼吸、相場の息吹を感じることができなければ、トレードは常に後手に回り、常に高値つかみ・安値たたきになってしまいます。
先週の場合、強い米国経済指標が出ているにもかかわらず、米国債利回りが低下し、ドルが下落した。また好業績を背景に株高となったにもかかわらず、円安にならなかったということ。
ドル円にとって弱気のサインです。
もう一段の下落も
米国のワクチン接種進展による経済の上振れ期待が、現時点でひとまず織り込み済みとなる一方、労働市場がパンデミック前の状態に戻るのはまだまだ先の話との見方が浮上し、過度のインフレ期待は修正されつつあります。
FRB当局者も早期の利上げはないことを繰り返して強調し、市場の金利先高観を牽制しています。
米国債利回りは上昇局面から調整局面に入った可能性が高くなりました。
ドル円も今週は上値が一段と重くなりそうで、年初からの上昇の38.2%押しの107.76円、半値押しの106.76円あたりを下値めどとして視野に入れておく必要があります。
こういう時は突っ張らずにドルロングを一旦手仕舞い、もう一段の下落に備えるのも一計かもしれません。
あくまで調整局面
ではドル高トレンドが終了し、円高トレンドに入っていくかというと、そうは考えていません。
ワクチン普及や景気回復で完全に周回遅れとなっている日本(円)を積極的に買う理由はないからです。
円が買われるとすれば、株価急落や信用不安などで市場心理が極端なリスク回避状態になったときだけです。
しかし、米国株や暗号資産(ビットコイン)の急騰を見る限り、市場は依然としてリスク・グリーディー(貪欲)であり、ここから急にリスクオフ・円高となる可能性は小さいと考えてよさそうです。
NYダウは高値更新が続く
ビットコインは年初から2倍以上に値上がり
つまり、先週も述べた通り、趨勢・大局観はあくまでドル高・円安であり、現在はその調整局面。
ドルロングを手仕舞いすることはあっても、大局観に逆らったドルショートに行くべきではありません。
調整局面が一巡するのを待ちつつ、次の買い場を探すスタンスで臨むのが良い戦略でしょう。
雨夜恒一郎氏のプロフィール
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから