トレンドに乗る、とは?
私たちは、FXトレードの話をするときによく、「トレンドに乗れば儲かる」とか、「トレンドにうまく乗ったら大きな利益をえることができる」といった話をします。
上昇トレンドならロングポジションを建て、下降トレンドならショートポジションを建てて、利益を狙っていきます。
同じように「あなたは順張り派ですか」「逆張りですか?」という問いをいただくことがあります。
一般的にイメージでは、順張りはトレンドにそってポジションを建てることで、逆張りは、トレンドの終焉を狙ってポジションを建てることを言います。
しかし、一口にトレンドに乗るといってもこれは、かなり難しいと思いませんか?
まず弟一にトレンドが発生し、そのトレンドがトレンドとして継続するかどうかをどうやって判断したらいいのでしょうか。
たとえば、兼業トレーダーがトレードをできるのは、仕事を終えて、自宅に帰ってから食事をしてちょっと休憩をしてからだと、夜の8時とか9時になってしまいます。
そこから、たとえば、1時間足でトレードをしようと思ったら、夜の12時までトレードをすると仮定すると、わずか4時間から3時間しかトレードをする時間はありません。
しかも、1時間足のトレードですから、ローソク足がチャート上に現れるのは4本から3本です。
そんなローソク足を見ながら、トレンドにのるにはどうしたらいいのでしょうか。
8時からトレードを開始したとして、9時に陽線が出現して、これは上昇するかと思っても、次の10時に陰線になるかもしれません。
どうやってトレンドが発生するかどうかを見極めればいいでしょうか。
そのためには、1時間足ではなく、5分足か15分足を選ぶ必要があります。
5分足だと1時間に12本のローソク足が出現しますし、15分足だと1時間に4本です。
多くのローソク足が出ないことには、トレンドが発生しているかどうか、判断することは難しいのではないでしょうか。
ところで、トレンドに乗るためには以下のことがわかっていなければ、なかなかトレンドには乗りにくいと思います。
一つは、まず、現在の相場がトレンド相場だとわかることです。
次に、トレンドが継続して今後も続いていくことがわかることです。
さらに3つ目としては、発生しているトレンドの強さがどういった強さかがわかることです。
この3つが、すべてわかっていなければ、トレンドに乗るのはかなり難しく、これがわからなくて、トレンドが発生しているとしてポジションを建てるのは、賭をするのと同じといえます。
よくテクニカル指標分析などの解説書をみると、チャートを提示しながら、トレンドの説明をしているケースが多々ありますが、これらの説明をみちていると、すべて「後出し」だということです。
後出しであれば、誰でもトレンドが発生していると指摘はできます。
したがって、刻々と動いている相場を眺めながら、トレンドが発生していると判断するには、かなりの訓練が必要になってきます。
トレンドが発生していると判断できたときにはすでにトレンドが終焉近くになっていることも少なくないでしょう。
とくに、初心者にとっては、トレンドが発生しているかどうかを見極めるのは至難の業といっても過言ではありません。
さらに大事なことは、トレンドが発生してもそれが継続するかどうかを見極めることが大事です。
トレンドが継続するかどうかは、どんな相場状況でしょうか。
トレンドが継続するかどうかを知るための手段は、やはりテクニカル分析に頼るしかないとは思うのですが、それにしても、かなり高度なテクニカル分析が必要です。
トレンドの強さを見極めるのも難しいと言わざるを得ません。
トレンドの強さを何を基準に判断していったらいいのか、そんなはっきりした基準はありません。
トレンドがかなり急角度で右肩上がりになっているから強いトレンドなのでしょうか。
しかし、そんな急角度の右肩上がりのローソク足を見て、ロングポジションを慌てて建てたところが、トレンドの終焉だということも考えられます。
以上、ことほど作用に、トレンドに乗れば儲かるといいますが、どうやってトレンドを判断していいのか、これはかなり難しいことです。
ではどうしたら、トレンドが発生して降り、そのトレンドが継続するか、あるいは、強いトレンドかを判断するにはどうしたらいいでしょうか。
それを探るのに役に立つテクニカル分析があります。
それが、DMIとADXです。
MDIとADXは?
DMIとは、方向性指数と訳すことがあります。Directional Movement Indexの頭文字を略したものです。
このDMIを開発したのはJ・ウエルズ・ワイルダー・ジュニアという人です。
この人は、DMIのほかにも、RSI、パラボリック、PIVOTなど、多くのテクニカル指標を一人で開発したことで知られています。
ちなみに、J・ウエルズ・ワイルダー・ジュニアは、機械工学を学び、機械の設計に携わり、不動産業で成功した後、先物市場に参入しました。
その後、トレンドリサーチ社を経営し、トレーダー兼テクニカル分析の研究開発者として大成功しました。
DMIを開発したのは1970年代半ばの頃で、このテクニカル指標は、トレンドの強弱をはかるテクニカル指標として未だに活用されています。
一方で、ADXは、MT4ではAverage Directional Movement Indexという名称で搭載されていますが、本来は、DMIのなかのひとつの線でした。
それがいつのまにか、独立したかたちで使われるようになり、最近ではADXを使ってトレードをする個人投資家も増えてきています。
ADXは、トレンドの有無と強さを示す指標となります。
DMIは、オシレータ系のテクニカル指標ですが、一般的には、トレンドフォローとして使われています。
このテクニカル指標は、トレンドが発生しているかどうかを発見するだけではなく、いま発生しているトレンドに乗れば、トレードがうまくいくかどうかといった状況なども分析できることがから非常に重宝されています。
ですから、DMIは、そのほかのテクニカル指標と併用されることが多くなっています。
なぜなら、トレンドに乗ることで利益を得やすくなりますし、そのトレンドに乗っても良いかどうかは判断してくれるわけですから、トレーダーにとってはこんなに心強いテクニカル指標はありません。
DMIを構成するのは3つのラインです。
それは、+DI、-DI、ADXの3つです。
+DIと-DIは買い勢力と売り勢力の強さを表していますが、ADXはトレンドの強さを表す指標となります。
まとめると、
+DI → 買い勢力の強さを表す指標です。
-DI → 売り勢力の強さを表す指標となります。
ADX → トレンドがあるのかないのか、トレンドが強いのか弱いのかを表す指標となります。
これらの指標が表す意味から、たとえば、+DIが-DIより上にあればあるほど、買い勢力が強いことを示すことになります。
逆に、-DIが+DIより上にあればあるほど売り勢力が強いことを示していることになります。
+DI,-DIの双方が拮抗しているときや、両方の数値が低いときは、もみあい相場であることを意味しています。
では、トレンドがどんな状況下を判断するにはどうなっていたらいいのでしょうか。
それは、まず、+DIが-DIの上にあれば上昇トレンドが発生する可能性が高くなります。
逆に、-DIが+DIの上にあれば下降トレンドが発生する可能性が大いに高まってきています。
そうとらえるのが一般的です。
そして、ADXが、トレンドが継続しているかどうかを判断する指標となります。
たとえば、ADXが上昇しているのであれば、上昇トレンドや下降トレンドが継続していると判断をします。
逆に、ADXが下降しているときは、上昇トレンドや下降トレンドは終焉を迎えることを意味していることになります。
DMIから判断する売買ポイントですが、買いシグナルの場合は、+DIが-DIを下から上抜いた時です。
また、売りシグナルは、+DIが-DIを上から下抜いた時です。
DMIの計算式
計算式は以下の通りとなります(こちらを参照)
+DM、-DM(上昇幅と下降幅)
※+DM=本日の高値-昨日の高値
※-DM=昨日の安値-本日の安値
基本は上の式ですが、条件がいくつかあります。
条件1、+DM<0の時は+DM=0、-DM<0の時は-DM=0
条件2、+DM>-DMの時は-DM=0、-DM>+DMの時は+DM=0
TR(True Range)=1日の最大値動き
※本日の高値-前日の終値=Aとする。
※前日の終値-本日の安値=Bとする。
※本日の高値-本日の安値=Cとする。
TR=TRはABCの中の最大値
+DI、-DI
※+DI=(N日間の+DMの合計/N日間のTRの合計)×100
※-DI=(N日間の-DMの合計/N日間のTRの合計)×100
通常Nは14を採用。
Nは本来変更可能なパラメーターですが、ワイルダー氏は14という数字をハーフサイクルとして重要視しており、さまざまなワイルダーのテクニカル指標は14で固定されることが多いようです。
ADX
※DX=|(+DI)-(-DI)|/{(+DI)+(-DI)}×100
※ADX=DXのN日平均
+DMは、上昇エネルギーを示していますし、-DMは下降エネルギーを示しています。
上昇エネルギーの基本は、前日の高値から当日の高値が更新した幅のことをさしています。
下降エネルギーは、前日の安値から当日の安値が更新した幅のことをさしています。
また、高値を更新し、さらに安値も更新しているような場合には、更新した幅の大きいほうを採用します。
また、1日の最大の値動きをTRと呼んでいますが、これは最大となるものを採用しています。
そのため、「当日の高値から前日の終値の引いた数値」「当日の安値から前日の終値を差し引いた数値」「当日の高値と当日の安値を差し引いた数値」のなかで、その差が最大のものを選びます。
+DIは、買い勢力の強さを表すものですが、これは、14日間で+DMが全体の値動きのなかで何%であったかで数値化しています。
-DIは、売り勢力の強さを表していますが、これは、14日間で-DMが全体の値動きのなかで何%であったかで数値化したものです。
また、ADXはトレンドの強さを現していますが、これは、+DI(買い勢力の強さ)と-DI(売り勢力の強さ)の差を現しています。
※実際にはその差は+DIと-DIの合計で割ることになります。
ADXは前術の通り、トレンドが発生しているのか、いないのか、そのトレンドは強いのか、弱いのかを現す指標ですが、+DIと-DIのどちらが上にあるか、下にあるかを見極め、どちらの勢力が強いかを分析し、その後、その流れがトレンド形成につながっていくのかどうかをADXで確認することになります。
ここで注意しなければならないのは、ADXは、トレンドが上昇していようが、下降していようが、そのことにはまったく関係がない、ということです。
ADXは、上昇トレンドであれ、下降トレンドであれ、トレンドが発生していれば、ADXは上昇し、トレンドが終焉したり、なくなったりしているとADXは下降していきます。
そのため、ADXを単体で見るのではなく、必ず、+DIや-DIといっしょに調べる必要があります。
そうしないと、判断を誤ってしまう可能性があります。
最近、ADXを活用するトレーダーが増えていると聞きます。
開発者であるJ・ウエルズ・ワイルダー・ジュニアは、「DMIは、私が生涯で最も魅力を感じた研究である。この概念を数値で表すことに成功したことが私の人生の最大の成果だ」と述べています。
『マーケットのテクニカル秘録』の著者であり、テクニカル分析研究家でもあるチャールズ・ルボー氏は、「ADXを正しく読み取ることが出来れば儲かる相場を見つけられる確率は大きく上がるだろう。
これは極めて応用範囲の広い非常に有効な指標である。
結論として「あらゆるテクニカル指標の中でADXは最も使える指標である」と述べています。
トレンドが発生しているのか、トレンドが継続するのか、トレンドの勢いは強いのか、弱いのかを判断するのは至難の業といっても言い過ぎではありません。
それゆえ、トレンドが発生していることや、トレンドの強弱が判断できるのであれば、それはトレーダーにとっては願ってもないことではないでしょうか。
なぜなら、トレンドに乗れば大きな利益を得ることができるからです。
FXトレードに勢力をつぎ込んでいるのは、給料以外で資金を稼ぎ、自分の懐を豊かにするのが目的です。
そのために、仕事以外の個人の時間をパソコンの前に座り、チャートとにらめっこをしながら、「ロングだ!」「ショートだ」と、日々、闘っているわけです。
そうした貴重な時価を有効に活用するためにも、ADXに習熟して、トレードで大きな利益をあげていきたいものです。
辻秀雄氏プロフィール
ジャーナリスト。リーマンショックに世界が揺れた2008年に、日本で初めて誕生したFX(外国為替証拠金取引)の専門誌、月刊「FX攻略.com」の初代編集長を務める。出版社社員からフリーになり、総合雑誌「月刊宝石」や「ダカーポ」「月刊太陽」「とらばーゆ」などで取材・執筆活動を行う。また、『ビジネスマン戦略戦術講座(全20巻)』などビジネス書の編集にも携わる。著書に『インターネット・スキル』『危ない金融機関の見分け方』『半世紀を経てなお息吹くヤマギシの村』など。共著に『我らチェルノブイリの虜囚』『ドルよ驕るなかれ』『横浜を拓いた男たち』など。辻秀雄氏の詳しいプロフィールは、こちらから