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【ブラックスワン指数は株価急落を予言?】2020年7月8日号

雨夜 恒一郎氏ウィークリーコメント FXレポート

一週間のハイライト(7月2日~8日)

米国の独立記念日を挟んでいたこともあり、市場は動意薄

ドル円は107.25円~107.79円と1週間でわずか50銭少々のレンジにとどまりました。

先週木曜日に発表された米国6月の雇用統計は、失業率が11.1%(予想12.5%、前回13.3%)、非農業部門雇用者数が+480万人(予想+300万人、前回+269.9万人)と予想を大きく上回りましたが、反応は限定的でした。

雇用統計は強かったが楽観はできない

予想通り、強い数字が出たにもかかわらず、ドルはさほど買われませんでした。

前回レポートで述べた通り、今まさに感染第二波が押し寄せているなか、今回の結果で経済の先行きを楽観するわけにはいかないからです。

非農業部門雇用者数は5月と6月合わせて約750万人増加しましたが、4月に2000万人もの雇用が失われたあとの経済再開局面ですから、反動でこのくらい増えるのはある意味当たり前です。

それでも失業保険を継続して受給している人はまだ1929万人もおり、ここからが雇用回復の正念場と言えるでしょう。

FRBもその辺は分かっているはずで、再来年末までゼロ金利維持を示唆している金融政策スタンスにも影響はないでしょう。

FF金利先物の動向を見ても、ゼロ金利解除は全く織り込まれておらず、利上げは依然地平線のはるかかなたです。

株式市場はいまだ楽観中

一方株式市場は依然好調で、米国では雇用統計上振れを好感してナスダックが最高値を更新、NYダウも一時2万6500ドル近くまで上昇しました。

また上海総合指数は、ここ一週間ほどでコロナショック前の水準を一気に上回り、3400ポイントと2年5か月ぶりの高値をつけています。

世界的なコロナ感染第二波の中でも、株式市場は経済活動再開に期待し、先行きを楽観しているように見えます。

ドル円は引き続き動きにくい

そんな中、ドル円相場は引き続きもみ合いの時間帯が続きそうです。ドルと円がどちらも安全通貨として同じ方向に動くからです。

株高でリスク選好となると、安全通貨の円がまず売られて円安に振れるものの、同じく安全通貨のドルも追随して売られるため、ドル円は少し買われたあと結局元に戻ってしまいます(円安・ドル安)。

逆に株安となると、リスク回避の円買いが先行して一旦円高となるものの、やがてドルも安全通貨として買われるため、やはり元に戻ってしまいます(円高・ドル高)。

「株高・リスクオン」の局面と「株安・リスクオフ」の局面が日替わりにやってきて、いずれも想定の範囲内に収まっている限り、ドル円は大きく一方向には動けないのです。

現段階では106-108円前後が居心地の良いレベルということになるでしょう。

このレンジを抜け出してトレンドに発展していくには、ドルか円のどちらかに新たな取引材料が出てくるか、株式市場が予想を超える急上昇または急落となり、リスクオン・リスクオフが想定の範囲を超えるという状況が必要となります。

「恐怖指数」と「ブラックスワン指数」

いつどんな新材料が飛び込んでくるかを予想することはできませんが、株式市場が予想を超える動きになることは十分あり得ると思います。

特に予想を超える急落は、コロナ禍、米中関係悪化、米大統領選挙(トランプ不利)といった不確実性が存在する以上、いつでも起こりうると考えなければなりません。

下のチャートは「恐怖指数」として知られるボラティリティー・インデックス(VIX)です。

2月・3月のコロナショックによる乱高下時に85まで暴騰したあと低下したものの、平時の水準である15までは戻らず高止まりしている状況です。

VIXは米国株のオプションのボラティリティーを加重平均したものです。VIXが高いということは、投資家がオプションという保険を買いたがっている、つまり先行き不透明感を強めている状態ということです。

次に紹介するのはシカゴで取引されているスキュー指数(Skew Index)、別名「ブラックスワン指数」です。

これは米国株のコールオプション(買う権利)に対するプットオプション(売る権利)の人気を指数化したもので、この数値が高いほどプットの人気が高い、つまり市場参加者が上昇より下落に対する保険を欲しがっていることを示しています。

このところの米国株高にもかかわらず、スキュー指数は高値を更新していました。

これは単なる「高所恐怖症」だけでは説明できません。 市場参加者は株高に浮かれたふりをしつつも、内心では想定外の事象(ブラックスワン)が出現して株価が急落することを警戒しているのです。

結論:株価急落・円急騰に備えるべき

一週間に50銭しか動かないドル円を方向性で売り買いしても儲けは知れています。短期的には106-108円レンジを意識して小刻みな逆張り志向で臨むのが賢明でしょう。

ただし中期的には、恐怖指数やブラックスワン指数が物語っているように、想定外の株価急落を警戒する必要があり、ドル円も均衡が崩れて円高方向に振れる展開を想定しておくべきです。

雨夜恒一郎氏のプロフィール

雨夜恒一郎氏
20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報や分析記事をFX会社やポータルサイトに提供中。ラジオNIKKEIなどメディア出演やセミナー講師経験多数。ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析はもちろん、オプションなどデリバティブ理論にも精通する、人呼んで「マーケットの語り部」。雨夜恒一郎氏の詳しいプロフィールは、こちらから
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